舞台化のメリットや成功するためのポイントとは?

 近年、とみに活況を呈する、マンガやアニメ、ゲームなどの二次元コンテンツを原作にした舞台演劇・ミュージカル作品。市場の盛り上がりを受けて2014年3月に設立された“一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会”は、2015年3月時点で65社を擁する規模に拡大している。同協会は、二次元コンテンツを舞台化した演劇・ミュージカル作品を“2.5次元ミュージカル”と位置付け、国内、さらには海外に向けた市場の活性化に取り組んでいる。

 「なぜ、いま舞台化なのか」。“2.5次元ミュージカル”の黎明期とも言える2000年代前半より舞台作品を手掛け、同協会の理事のひとりであるマーベラスの中山晴喜氏に、“仕掛ける側”から見た市場の現況や舞台制作の裏側、海外展開の展望などを訊いた。

人気シリーズが続々と舞台化!

 インタビューをお届けする前に、まずは今後上演が予定されているおもなゲーム原作の舞台作品を見てみよう。『薄桜鬼』や『逆転裁判』など、過去にも舞台化しているタイトルはもちろん、『龍が如く』、『ぷよぷよ』、そして『戦国無双』といった、根強い人気を誇るシリーズ作品も初舞台化。今後はどんな作品が舞台化を果たすのか、注目していきたい。

<今後上演が予定されているおもなゲーム原作の舞台作品>
舞台「龍が如く」
(4月24日~29日:東京・赤坂ACTシアター)
舞台『逆転裁判2~さらば、逆転~』
(4月29日~5月10日:東京・俳優座劇場)
舞台「ぷよぷよ オンステージ」
(5月2日~6日:東京・赤坂ACTシアター)
舞台「戦国無双」関ヶ原の章
(5月2日~7日:東京・シアター1010)
ミュージカル『薄桜鬼』黎明録
(5月23日~31日:東京・アイア 2.5 シアタートーキョー/6月10日~14日:京都・京都劇場)

“2.5次元ミュージカル”は新たな日本発エンタメの定番になるか? 舞台化の裏側を“日本2.5次元ミュージカル協会”のキーマンに直撃!!_01
▲舞台「戦国無双」関ヶ原の章

人気の秘訣は“ライブ”への飢餓感

“2.5次元ミュージカル”は新たな日本発エンタメの定番になるか? 舞台化の裏側を“日本2.5次元ミュージカル協会”のキーマンに直撃!!_02
▲日本2.5次元ミュージカル協会
理事 中山晴喜氏(文中は中山)
(株式会社マーベラス 代表取締役会長 兼 社長 CEO)

――まずは、改めて“日本2.5次元ミュージカル協会”設立の経緯をお教えいただけますか。

中山 マンガやゲームなどが海外に出ていったように、つぎは“2.5次元ミュージカル”を持っていこうという主旨で始まりました。そこで、各社バラバラにやるよりも、協会を作ってみんなで発信しようよ、と。現在の活動としては、ノウハウを共有するための会員向けセミナーを隔月で開催しているほか、海外のイベントに出展して、プロモーション活動を行っています。あとは“アイア 2.5 シアタートーキョー”ですね。“聖地”を作ろうということで、3月よりまず1年間、“2.5次元ミュージカル”専用劇場として運用します。

――“2.5次元ミュージカル”は、主にどんな層に支持されているのですか。
中山 コアなファン層は、やはり10代後半~20代前半の女性が多いのですが、最近は、学生やOL、主婦の方……女性に連れてこられたのか、男性もいらっしゃいます(笑)。

――いまはSNSの普及などもあり、評判が広まりやすくなっていることも、ファン層が広がっている理由でしょうか。
中山 『テニミュ』(ミュージカル『テニスの王子様』)を始めたころはSNSがなく、メールと携帯電話でした。初日はお客さんがあまり入っていませんでしたが、1幕が終わり休憩時間になると、一斉にロビーへ向かい携帯電話やメールで「すごいよ! そっくりだよ、観たほうがいいよ!」と言ってくれていたのをよく覚えています。そういう“口コミ”がどんどん広がっていってたからでしょう、千秋楽は満席になりました。それで「この熱が冷めないうちにすぐ再演しよう」ということで、通常よりも短い期間で再演しました。当時は劇場も押さえやすかったですし。

――と言いますと?
中山 ここ数年は作品数に比べて劇場が足りないように思います。アジア全体的にそういう傾向のようです。ロンドンやニューヨークなど演劇文化が根ざしているところと比べて、本当に劇場が少なく、そもそも(欧米と違い)観劇をする習慣があまりなかった。かつて日本では、観劇に行くのは年齢が高い女性層が中心でしたが、いまや若い層が増えており、我々が市場ごと掘り起こしてきたという自負はあります。

――“2.5次元ミュージカル”がいま人気を集めている理由を、中山さんご自身はどう分析されていますか。
中山 情報が溢れて、見たいものをすぐ見られる時代になればなるほど、アナログやライブに対する欲求が高まって、ライブエンターテインメントに対する飢餓感が強まるのだと思います。また、CDやDVDとは違い、ライブだけは(インターネットなどで)無料では見られないので、そこにお客さんが集まってきています。ネットの時代になればなるほど、“生の息遣いが聞きたい”という欲求が生まれるのではないかと思います。一方で、すべてというわけではありませんが、努力や友情といった、純粋な題材が多いことも理由ではないでしょうか。いまの若い子にとっては、逆に新鮮なのかもしれませんね。

――クオリティーの高さも人気の一因なのではないでしょうか?
中山 クオリティーは、高く“なった”のだと思います。最初はみんな手探りで創っていましたから(笑)。初期のころは原作ファンしか観にこないので、演劇としてのクオリティーよりも、とにかく(原作のキャラクターと)似ていることに重きを置いていました。でも最近は、そういうものばかりでもなくなってきましたね。役者のファンで、原作をよく知らずに観にくる人もいるようなので、クオリティーはすごく上がっていると思います。そもそも、役者の人口が増えています。昔は、女性の役者はけっこういましたが、男性はあまりいなかった。『テニミュ』を始めたころは、10代の若手の役者はほとんどいなかったと思います。いまは若い役者も多いですし、役者が多くなれば切磋琢磨してクオリティーも上がります。いま観ると、初期の『テニミュ』は、シンプルな振り付けで表現していましたね(笑)。

――マーベラスは、ゲームメーカーとしてはもちろん、舞台制作の歴史も長いとか。
中山 ゲームを作っている年数と、舞台をやっている年数はあまり変わりません。設立から18年になりますが、舞台は15年くらいやっています。