アドベンチャーゲーム好きライターが見た『カオスチャイルド』の魅力

 プレイステーション Vita、プレイステーション4、プレイステーション3での発売が発表された科学アドベンチャーゲームシリーズ第4弾『カオスチャイルド』。すでに第1章の体験版も配信されている同作のプレイインプレッションを掲載。こちらは、Xbox One版をプレイしたライター・浅葉たいがによるインプレッション記事で、週刊ファミ通2015年4月16日号(2015年4月2日発売号)に掲載されたものとなっている。『カオスチャイルド』のことが気になっている人は、ぜひチェックしてほしい。

『カオスチャイルド』インプレッション――警戒するほど高いところからワナに突き落とされる傑作アドベンチャーゲーム_11

どんでん返しを警戒すればするほど、高いところからワナに突き落とされる

 自分に課している楽しみでもあり、ゲームライターとしてのささやかな目標でもある“年間、最低でも100本ゲームを遊ぶ”という課題を昨年も無事に消化した。かなりやり込んだもの、途中で投げ出してしまったもの、いまだに遊んでいるもの。その内訳はさまざまだが、『カオスチャイルド』は、2014年に遊んだ作品の中でもとびっきりの1本で、もっと言うと、科学アドベンチャーシリーズの最高傑作ではないかとも思っている。ゲームを遊んでいて、こんなに驚かされたのはひさしぶりで、プレイ後の余韻も格別だったのだ。そんな衝撃を受けて以来、飛行機で東京に飛んで、『カオスヘッド ノア』以来の、渋谷の舞台探訪をしてみたりと、ゲーム外でのやり込みを続けている。読者の中には未プレイの方も多くいると思うので、今回は、筆者の『カオスチャイルド』初プレイ時に受けた衝撃を、ネタバレのない範囲で語ろう。

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 最初に本作を遊んだとき、かなり“警戒”してプレイを進めた。科学アドベンチャーシリーズと言うと、主人公がいて、かわいらしいヒロインがいて、という構図はいわゆる“ギャルゲー”だが、その内容はサスペンス性が強く、シリアスなものになっている。そのうえアドベンチャーゲームというジャンルは、サスペンスものが依然として人気が高く、仲間だと思っていた美少女が急に刃を向けてくるゲームは山ほどあるし、真実と思っていたことが夢の世界の出来事だったというような話も過去の名作に溢れている。そんなわけで、筆者は疑うこと、信じないこと、だまされないようにすること、そんなスタンスで『カオスチャイルド』の物語を紐解いていった。思わぬ伏線が隠されているかもしれないし、登場人物は全員疑わしい。かわいいヒロインだって、ひとりたりとも信用しない。そんなふうに、信じているのは自分のみというスタンスで、「おい拓留! だまされるな」と心の声を上げつつプレイしたものだから、何か起きると「いやいや、わかってましたから」、「やっぱりそうなんだよな」という展開の連続。そんな見かたで物語に触れているうちに、「俺は拓留以上に情報強者だ!」と思い込む高揚感が生まれてきたころ、一気に頭を叩かれた。プレイヤーがサスペンスというジャンルを、科学アドベンチャーを、『カオスチャイルド』という作品を、疑ってかかることを見越したうえで、この緻密なシナリオは作られていたのだと驚愕させられたのだった。この不健康な、すべてを疑ってプレイするという情報強者なプレイが、まさかおもしろさを増幅する仕掛けの一部に使われようとは、それこそ夢にも思わなかった。

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 本作は、推理ものではなく、超常現象的なものも盛り込まれているが、プレイヤーを揺さぶる仕組みについては、物語の設定を拾っていけば極めて論理的に組まれている。今回の紹介記事にはあまりにも強烈なので掲載を取りやめた“やりすぎに感じる残酷描写”や、“心をえぐるような真実”などは、すべてある一点のために用意されている。過激なことをウリにしただけの作品ではないことが、最後まで遊べばわかるはずだ。クライマックスだと思った場所はただの通過点で、本当のクライマックスはまったく別のところにある、そんなカタルシスもまた、『カオスチャイルド』の魅力なのだ。最後の1シーンまで気を抜くなと煽ってくる作品は多く、それらに肩透かしを感じることも多かったが、本作はまさに最後の1シーンまで気を抜かずに遊んでほしい。本作においては、物語の進行度80%の人と、すべての物語を見終えた人が抱く感想がまったく違うものになるはずだ。ちなみに、本作は単体でも十分におもしろく遊べる作品なのだが、『カオスヘッド ノア』はぜひとも遊んでいてほしいし、できることなら『カオスヘッド らぶChu☆Chu!』も、事前に遊んでおくことを筆者としては強くオススメする。これらの作品を遊んでおくことで、プレイヤーの既知の知識が増え、本作に情報強者として入っていくことができるからだ。これにより、情報強者という立場から突き落とされるスリルは何倍にもなり、「やられた、でも遊んでおいてよかった」という不思議な興奮を味わえるはず。

 これほどベタ褒めしてきた作品だが、これまではプレイできるハードが限定されており遊んでいる人も少なかったので、“プレイしている”ということにちょっとした優越感を持っていたりもした。今回の移植で、そんな優越感が少し薄れることを考えるとちょっと寂しいような気もするが、語り合える仲間が増えるのを考えるとうれしさのほうが勝るだろう。プレイした者どうしで、ネタバレを気にせず作品について語り合える日が楽しみだ

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▲レビューの内容とはまったく関係ありませんが、有村雛絵ちゃんがあまりにもかわいいことも、お伝えしておきます。『カオスチャイルド らぶChu☆Chu!』的なギャルゲーライクなものもいずれ出てほしいです。お願いします!!

(text:浅葉たいが)


カオスチャイルド
メーカー 5pb.
対応機種 PSVPlayStation Vita / PS4プレイステーション4 / PS3プレイステーション3
発売日 2015年6月25日発売予定
価格 PS Vita版は6800円[税抜](7344円[税込])、限定版は8800円[税抜](9504円[税込])、ダウンロード版は6000円[税抜](6480円[税込])、PS4版とPS3版は各7800円[税抜](各8424円[税込])、限定版は各9800円[税抜](各10584円[税込])、ダウンロード版は各7000円[税抜](7560円[税込])
ジャンル アドベンチャー
備考 企画・原作:志倉千代丸(5pb.)、プロデューサー:松原達也(5pb.)、メインキャラクターデザイン:ささきむつみ、サブキャラクターデザイン・制服デザイン:松尾ゆきひろ、メインシナリオライター:梅原英司、サブシナリオライター:たきもとまさし、安本亨、谷崎央佳、林直孝(5pb.)、シナリオ補佐:たきもとまさし、シナリオ監修:林直孝(5pb.)、演出:若林漢二(5pb.)、ディソードデザイン:麦谷興一(CHOCO)、音楽:阿保剛(5pb.)、ディレクター:松本裕介(5pb.)