バンダイナムコエンターテインメント浅沼常務取締役・冷泉取締役インタビュー

 バンダイナムコエンターテインメントの常務取締役である浅沼誠氏、取締役の冷泉弘隆氏の両名にもお話を聞いた。いっそう力を入れるという北米、欧州、そして中国を始めとするアジアといった海外での戦略とは? さらに、今後の国内向けの家庭用ゲームやスマホアプリの展開に加え、バンダイとナムコの統合から10周年を迎えて始動するアニバーサリー企画についてもうかがっている。
(聞き手:週刊ファミ通編集長 林克彦)

確かな手応えを感じた中国を中心としたアジア展開

”ゲームス”から”エンターテインメント”へ…バンダイナムコエンターテインメントインタビュー2【浅沼常務取締役・冷泉取締役】_02
(左)
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
常務取締役
浅沼 誠(あさぬま まこと)氏
(文中は浅沼)
1986年にバンダイグループに入社。 バンダイネットワークス取締役などを経て現在にいたる。今期よりチーフパックマンオフィサーを担当。

(右)
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
取締役
冷泉弘隆(れいぜい ひろたか)氏
(文中は冷泉)
2005年にバンダイネットワークスへ入社し、バンダイナムコゲームスへ。NE、CS事業管掌で、おもな担当はバンダイナムコ上海やアジア方面。

--バンダイナムコエンターテインメントの海外戦略の現状や方針をお聞かせください。
冷泉 『鉄拳』や『ソウルキャリバー』は、 海外での人気が高いですし、『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』、『NARUTO-ナルト-』といった人気キャラクタータイトルも海外でかなりのファンを獲得しています。 それでも、 海外でのハードの普及台数を含めると、 もっと売れてもいいはずで、物足りないと感じています。
浅沼 我々は欧米、 アジアに拠点があるのですが、 まだまだ活かしきれていません。 原点に返って、キャラクターやゲームのIPをどう料理すべきか、 もっと真剣に考えなくてはいけないと思っています。 とくに海外は、 売れている作品も含め、 現地でのマーケティングを再度構築しなければならないでしょう。近年は、アジア系、 なかでも中国市場がどんどん拡大していくのを実感しています。 欧米という大きなマーケットはもちろん外せないのですが、新興の中国市場を中心としたマーケットにどう挑むのかが、ここ2、3年の課題です。
冷泉 アジア、中国に関しては我々も新興で、正直チャレンジではあるんです。 中国の市場規模を考えるとブレイクできるチャンスは必ずあるはずなので、 いますべきことは何かと考えると、 やはりオンライン事業であり、 スマホ事業だと思っています。 近々では、 現地のパートナーとともに『NARUTO-ナルト-』のPCオンラインゲーム『火影忍者 ONLINE』を展開しています。 ほかにも、DeNA上海さんと『ONE PIECE』のスマホゲーム『航海王 啓航』を始めまして、どちらもかなり大規模なビジネスが成立してきました。アジアに向けて、いちばんの課題である中国でこれらのタイトルが発信できたことは、 我々にとって非常に喜ばしいことです。 これに乗じて今後も積極的に展開していくのですが、 そのひとつの戦略としてバンダイナムコ上海という新たな拠点を4月1日より立ち上げました。ここを中心に中国国内のパートナーと協力して、 弊社のコンテンツをスピーディーに展開していこうと思っています。

--我々としては、 日本市場での取り組みも気になります。 今後どのように国内で展開するのかも聞かせてください。
浅沼 たまたまここ1?2年はアプリの業績が注目されていて、実績も上がっていますが、だからといってそちらへ完全にシフトしていこうとは思っていません。 前年度前半、 家庭用ゲームは苦戦しましたが、後半になってからは『ガンダムブレイカー2』、『GOD EATER 2 RAGE BURST(ゴッドイーター2 レイジバースト)』、『ドラゴンボール ゼノバース』、『デジモンストーリー サイバースルゥース』などが、非常に好調でした。さらに、3月末には『ワンピース 海賊無双3』、『ソードアート・オンライン -ロスト・ソング-』も発売され、上り調子でフィニッシュできたと手応えを感じています。
冷泉 これは昔から変わりませんが、 お客様から求められる限り、 あらゆるプラットフォームに向けて新しいものをどんどん出していきたい。 もちろん、 どのように展開していくかは、 ニーズに合わせて見直さなければならないと考えていますが。

--いままでの方法が通用しない部分が出てきて、 新たな挑戦を積極的に考えなくてはならないターンでもあると。
浅沼 5、6年前からパッケージはきびしいと言われていて、 市況全体を見ると若干落ちているのですが、 我々自身の業績は極端に悪くなってはいませんし、 売れているタイトルも多数あります。 ワールドワイドで見ても、 パッケージソフトはまだまだ売れていて、 できることはたくさんあるとも思っています。

”ゲームス”から”エンターテインメント”へ…バンダイナムコエンターテインメントインタビュー2【浅沼常務取締役・冷泉取締役】_01

クラシックIPを活用したアニバーサリ企画が始動

--今年はバンダイとナムコが経営統合してから10周年という、 アニバーサリーイヤーでもありますよね。 何らかしらのアニバーサリー的な企画はあるのでしょうか?
浅沼 よくぞ聞いてくださいました(笑)。 弊社は、近年の『アイドルマスター』、『ゴッドイーター』など、いろいろなキャラクターのIPを持っています。 過去にさかのぼると、 旧ナムコIPがほとんどになりますが、 それこそ数百という単位で多数のIPがあるんです。

--いわゆる往年のアーケード作品など、 有名タイトルは本当に多いですよね。
浅沼 『パックマン』のように現在進行形で展開しているIPもありますが、そのほかにも『ギャラガ』、『ゼビウス』、『マッピー』、『ドルアーガの塔』など、山のようにあるんです。正直なところ、 これらのIPに関しては休眠してしまっているものも少なくない。 そこで、 経営統合10周年となるこのタイミングで、ユーザーの皆さん、 クリエイターの皆さんが、 これらのIPを幅広く使える環境をご用意させていただこうと考えているのです。

--なんと! それは驚きました。ユーザーが自由に御社のキャラクターを使えるということでしょうか?
浅沼 すべてが自由にということではありませんが、 現在詳細を詰めているところです。ある程度の枠は作りますが、 その範囲内であれば、IPを使ってフリーに作品を作っていただけるようにしたいなと。UGC(※1)と言うのでしょうか。 パッケージソフトを作るのは簡単ではないですが、 たとえばアプリならハードルは低く、 さまざまなアイデアのゲームが生まれるかもしれない。 そうなると、 すごくおもしろいと思うんです。 ゲーム会社で働かれているクリエイティブな方々、『ゼビウス』とか『マッピー』で遊んでいただいた方々に、ぜひとも参画していただきたいなと。--『ゼビウス』や『マッピー』、『パックマン』などがUGCの対象になれば、相当話題になりますし、おもしろい作品が多数生まれそうです。これは期待が膨らみますね。
冷泉 作品に関してはゲームでなくてもいいんですよ。 本当に作りたい人が、 我々が持っていない視点で新しい作品を作る。 それはゲームに限らず、たとえばツールでもいいですし、アニメーションでもいいんです。

--往年のIPが生まれ変わり、 いまの時代にムーブメントが起きたりしたら、 これは楽しいですね。 ちなみに、 対象のタイトルは決まっているのですか?
浅沼 最初は17タイトルから始める予定です。皆さんが想像されるような、 クラシックIPを中心にスタートいたします。

--詳しい発表はいつごろでしょう。
浅沼 本施策の詳細はニコニコ超会議(※2)で発表する予定となっておりますので、お楽しみに!

--バンダイナムコエンターテインメントの今後の展開が楽しみです。
浅沼 2015年、皆さんの期待を裏切らないようなタイトルを、 しっかりとリリースしていきたいと考えています。 皆様が想定している以上のものを、 そして「こんなこともやるんだ!」と思っていただけるようなことを、今年はもっともっとやっていきたいです。
冷泉 家庭用ゲームもスマホアプリも境目なく、"バンナムらしい"タイトルを、これからも出していくつもりです。 我々が作ったからこその強みがある作品も多数ありますので、 まずは興味を持ってもらい、 触ってほしいです。 今後とも応援よろしくお願いいたします!

※1:UGC…… User Generated Contentsの略。ユーザー生成コンテンツのこと。BBS、ブログ、SNS、投稿サイトなど、各種ソーシャルメディアに書き込まれた投稿、写真や音声、動画コメントレビ
ューといったすべてのコンテンツを指す。
※2:ニコニコ超会議……動画投稿サイト“ニコニコ動画”が主催する巨大イベント。2012年に初めて行われ、今年は4月25日、26日に幕張メッセで開催予定。

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