PS4初の『FF』に込めた思い
2015年3月19日に発売された、プレイステーション4・Xbox One用ソフト『ファイナルファンタジー零式 HD』(以下、『FF零式HD』)。本作では、映像だけでなくサウンドもリファインされ、さらに特典映像と、それとともに流れる新曲『UTAKATA ~泡沫~』が追加されている。生まれ変わった音と、新たな“声”について、ディレクター&プロデューサーの田畑端氏と、コンポーザーの石元丈晴氏に訊いた。
なお、石元氏は自身が率いるバンド、“The Death March”のギタリストとしても活躍中。ニンテンドーDS作品『すばらしきこのせかい』からスピンアウトしたこのバンドはコアな人気を誇っており、2015年5月31日には、shibuya duo MUSIC EXCHANGEにて3rd ライブの開催が決定している。こちらでは、『FF零式HD』の楽曲を始め、『すばらしきこのせかい』や、先日アーケード版の制作が発表された『ディシディア ファイナルファンタジー』の楽曲などもパフォーマンス予定。2015年4月8日まで、チケット先行抽選受付中だ。興味のある方は、こちらをチェック!
『ビフォア クライシス -FFVII-』から11年の付き合い
――田畑さんと石元さんは、『FF零式』以前にもお仕事をされているんですよね。どのように知り合ったのでしょうか。
田畑端氏(以下、田畑) 携帯電話向けの『ビフォア クライシス -ファイナルファンタジーVII-』(以下、『BC』)のときですね。曲を誰に書いてもらえばいいのか社内の者に相談したら、コンポーザーは何人かいますよという話をされたんです。でも、『BC』は僕がスクウェア・エニックスに入社して最初に作ったゲームだったので、当時は誰がどんな曲を書くのかがわからず、選べなかったんですよね。だから、こういうゲームを作るので、「書きたい!」と言ってくれる人に書いてほしいという話をしました。そうしたら、即「書く!」と言ってデモまで出してきた人がいて、それが彼だったんです。
石元丈晴氏(以下、石元) それまでに、社内のコンペで4回落ちてたんですけどね(苦笑)。
田畑 そうだったの? その早さと、誰よりも勢いがあっていいなと思ったけど。
石元 あのときは、土、日の2日間で、2曲ぐらい作りました。ロック系の曲を。
田畑 そうそう、ロックだった。『BC』ではタークスというキャラクターを主人公にしていて、若さとノリのよさのある曲にしたくて。そこにロックがきたので、「いいな」と。
石元 そこからだから、10年くらいの付き合いになるんじゃないですかね。
田畑 僕の入社が2004年1月1日なので、11年かな。石元は、『BC』以前はマニュピュレーターで、作曲はしていなかったんですよ。それなのに「俺に曲を書かせてくれたら、絶対にいいものにする」と言っていたところが、「根拠があるのかな?」と思いつつもよかった。
石元 僕にとってはマニュピュレータ-という仕事が物足りなくて。上を目指したくて、そのためには作曲しかないと思っていました。当時は、コンポーザーはコンポ―ザーとして入社してきていて、マニュピュレーターとして入社してコンポーザーに変わったのは、僕が初めてでしたね。
――その『BC』の仕事で石元さんの曲を気に入って、つぎの『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』(以下、『CC』)でも起用されたんですか?
田畑 そうです。『CC』ではギターで何かやりたいなという話をしたら、彼が「アコースティックをメインで使いたい」と。物語上でザックスが死んでしまうことがわかっていたので、アコースティックは合うだろうなと思いました。『BC』をやっているときから、「つぎはどうしようか?」、「ザックスを主人公にして……」という話をしていて、そのころから「アコースティックにしたい」と言っていたよね。
石元 言ってたね。
――その流れで、『FF零式』も石元さんで、ということに?
田畑 はい。『CC』から『FF零式』は、すぐに着手したというわけではないんですけど。プロジェクト的にも少し期間が空いていますし。
石元 最初はiモードでしたからね。
田畑 そう。最初にモバイルで『FFアギトXIII』を制作するというプロジェクトがあったときに、曲を頼んでいて。ただ、1回休止して、ハードを変えるということがあり、その後「PSPで作るんだったらこうしたいな」という方向性が見えてから、改めて依頼した記憶があります。
――『FF零式』の作曲のときは、田畑さんからどのようなオーダーがあったのでしょうか。
田畑 『FF零式』のときは、いちばんないよね? 「ドキュメンタリーにしたい」という以外は。
石元 そうですね。最初にいろいろ話し合って大元のオーダーを受けていたので、メインになる『我ら来たれり』のメロディーをいろいろなところで使うなど、根本の部分から派生させるのは自由にやっています。
田畑 オーダーというか、“共有”だよね。作ろうと思っているもののイメージを、なるべく共有しているということです。石元の特徴は、そこをすごくしつこくやるんですよ。気が済むと、とくにやり取りもなくなって、「もう、ご馳走様なのかな?」って(笑)。自分の中でイメージが構築できるまでは、話し合いたいんじゃないかな。
石元 田畑はレスポンスが早いし、わからないことはわからないとハッキリ言うし、物事について即答するのでやりやすいんですよ。それから僕もそうなんですが、壁にぶつかったときに、「何としてでも前に進みたい」と考えるんですよね。そこはいっしょにやっていて、おもしろいというか。どっちかが、「もういいよ、それで」となっていたら、それ以上は進めないような気がする。
田畑 そうだね。お互いしつこいもんね(笑)。
石元 しつこいですね(笑)。
――『FF零式』の楽曲全般について、石元さんは田畑さんのオーダーを消化して、どんなコンセプトを持たれていたのでしょうか。
石元 ストーリーが暗いので、明るい曲はほとんどなくて。“戦争”というのが、やっぱり大きいかなと。自分は、けっこうそういう暗めの曲の方が向いているというか、合っていますね。
田畑 じゃあコンセプトは“暗い”?
石元 (笑)。
田畑 僕も石元もロックが好きで、「クラシックのような曲をロックで作れない?」と提案したら、「何を言ってるのかよくわからない」と返されたのを思い出しました(笑)。「僕もよくわかっていないんだけど、壮大な曲で、それをロックにしたい」というようなことを言うと、彼はしばらく黙っていて。自分の中で消化できないと思ったら、何かを聞いてくる、といった感じでした。
石元 音楽的に難しいハードルではあるんですよね。
田畑 そうなんだ。
石元 こういう曲は、いろいろな人がやりたがるものではあるんですけど。ギターも聞かせたいし、ストリングスも聞かせたいし、歌も聞かせなきゃとなると、まとめるのはけっこう難しいんですよ。
田畑 でも『BC』の『Rebirth』のときから、そうだよね。いくつか展開を入れて、変化していって、飽きないでずっと聴けるんですよ。それが、石元の曲の好きなところです。じつは僕は『FF零式』のとき、BUMP OF CHICKENの藤原さんに、「こういう曲がいいです、1曲の中で、ドラマが展開していくような」という話をしたんです。それで藤原さんに「たとえばどんな曲ですか?」と聞かれたので、「うちのコンポーザーの曲とか……」と、ふたりでいろいろな曲を聴いたりしました。