GDCから任天堂とDeNAの業務提携まで、ここ数ヵ月の業界の話題に迫る【御徒町デブ―チョの“Road to デブートン”・第3回】 _05

 “御徒町デブ―チョ”はGDCから始まり18日間に及ぶ北米出張を経て、今週ようやく帰国しました! 遅くなっちゃいましたが第3回目をお送りします! GDCのネタ! と思いきやそれはすでにいろいろとニュースになっているので、むしろアメリカに行って話を聞いてみたらいろいろ発見があったことを中心に書いてみようかなと思っています! え、また2ヵ月空いた? はい……申し訳なかったです。ネタが溜まったら吐き出すというところてん方式をとっていますので、今後はもう少しネタ集めに力を注ぎたいと思っています。

でも、まずはGDCのお話

 2015年3月2日~6日にサンフランシスコ市内Moscone Centerで行われたGame Developer Conference 2015(以下GDC)は盛況のうちに終了。事務局からは26000人以上の業界関係者が参加したとの発表があったよ。確かに業界の商談用のイベントではなくゲームを作る人たちのイベントなのでこの数はすごいことかもしれない。

 しかも、入場するためのお値段がハンパない……。早割を使わずに入ろうとするとAll Access Pass(GDCのすべてにアクセスできるパス)で2095ドル(約25万円)、Expo Pass(展示場のみに入れる)のみでも250ドル(30000円)。会場の立地や内容を考えると当たり前なのかもしれないけど、ま、高額なイベントですよね。

 29回目を迎えたこのイベントもどんどんと進化の道をたどり、アジアからの参加が増えてきた印象を受けています。ただ、残念ながらその中での日本人比率は下がっていること、日本人のセッションも減っていることを痛感したGDCでもありました。

 直後にボストンで行われたPAX EASTに日本から出かける方々も多かったようで、極寒のさなかに行われたにもかかわらず、早々にチケットが売り切れてしまうという大盛況ぶりでしたね。

 ズバリ、日本以外はゲーム産業が盛り上がっているわ! と感じました! この「日本以外は」ってところが切実で、業界に長いあいだおりますがギャップはマックス! という感じまで来ています。今世代機であるPS4やXbox One が史上最速で出回っているというお話も、日本にいると何だかピンとこない感じ。この乖離たるや未曾有感満載ですわよ。

GDCから任天堂とDeNAの業務提携まで、ここ数ヵ月の業界の話題に迫る【御徒町デブ―チョの“Road to デブートン”・第3回】 _01

 余談ですが、最近のGDCではキャリアExpoなる大きな人材争奪戦も裏で行われているのだ。求人する企業がブースを出して求職者に対応するという、日本でもよく行われるキャリアセミナーのゲーム業界版がココで行われているのだから、参加者はセッションを聴きに来て、ついでに転職活動もできてしまうという……。
 じつは、北米のパブリッシャーやデベロッパーが社員をGDCに送るのを嫌がるのは、これが原因だったりする。だって大枚をはたいて社員を勉強しに行かせたつもりが、転職活動もついでにやってきちゃったので会社辞めます! では割に合わないということらしい。ま、確かに。笑。

<GDC: ゲームエンジンの話

 さて、GDCに話を戻します。“カンファレンス”の字のごとく、クリエイターたちによる講義がメインなのですが、脇で GDC Expoと言われる展示会を行っており、いろいろなテクノロジー、ツールを展示するのがつねになりましたね。

 今年の大きなニュースとしては、Unreal Engine(UE)4 が無償化された! ということでしょうかね。Epic Games が提供するUEを使ってゲーム開発をする際にはエンジンのライセンス契約交渉をしていたのですが、今後まさに“誰でも”ダウンロードして使っていいよということです。ただし、発売して売上が上がった際には、その売上の5%を上納してねというお約束。

 言わずもがなですが、Unity様のおかげ。この画期的なビジネスモデルはもともとUnityが行ってきた手法で、Unityが成功を収めた大きな要因ですからね。「よいものは高く売れる」もしかりですが「広く認知され多くの人に使われる」ことがビジネスの極意であることも証明してくれましたね。

 エンジンの話題をもうひとつ。Steamで有名なValve社が“Source 2”というエンジンを発表しました。こちらも無償でゲーム開発者に提供される予定です。ゲームエンジンのカテゴリでも熾烈な闘いが続きそうですね。

<GDC: VRのお話

GDCから任天堂とDeNAの業務提携まで、ここ数ヵ月の業界の話題に迫る【御徒町デブ―チョの“Road to デブートン”・第3回】 _02

 ソニーのProject Morpheus、Facebook傘下のOculus Riftやサムソンとのスマホ向けGear VR、Steam VRなどなど、VRの話題は事欠かないGDCでしたが、ソニーはProject Morpheusを2016年初めに発売する見込みのようです。技術的には非常に興味深いものであることは間違いないのだけれど、ビジネスマンの私としては価格とか対応ソフトとかが気になるばかり……。

 インディーズの方々のパネルディスカッションなどもあったようですが、私は実際に大手メーカーさんに「どうよ?」と聞いてみたのだ。上述のエンジンの話とかぶるようだけど、やはり「出回ってなんぼよねぇ」というお話。

 ペリフェラル(周辺機器)のハードルはゲーム業界では鬼門というお話なのですわ。ソニーが発売したPS Moveや任天堂が発売したWii Speakなど、必ずしもハードやソフトを牽引する結果には終わっていないし、最近の話ではマイクロソフトがKinectを外したXbox Oneを年末に値下げして売ったところ爆発的に売上を上げたことを考えると、やはり難しいビジネスであると考えられるよね。

 結構なお値段のハードを買ったうえ、安くないペリフェラルを買わないと遊べない、さらにソフトウェアも購入だとしたら、ユーザーにとってはどうしてもやりたいソフトが準備されていない限りは難しいと思ってしまう。ペリフェラルの値段自体も興味の的ですけど、どんなソフトラインアップになるのかが、いちばん重要なファクターになると思われます。

 エンターテインメントにおいては、技術がすばらしいので必ず売れるというのは通用しないと考えています。技術を以て「どんなエンターテインメントを経験させるのか?」が肝であるというのが私の持論です。壮大なソフトウェアとのコラボレーションに期待しましょう!

 GDCでは、このほかにもIndependent Games Festival(IGF)というイベントがあり、毎年アワード発表をしているのですが、こちらもすでに報道されているので記事としては割愛しますね。

 来年のGDC 2016は本年同様サンフランシスコ市Moscone Centerにて2016年3月14日~18日の日程で開催される予定です。年に一度のデベロッパーのためのイベント、みなさんも参加されてはいかがでしょうか?