いよいよ発売! ヤーナムへの扉が開いた
ついに国内でも解禁となった『Bloodborne(ブラッドボーン)』。2014年の発表から1年弱。さまざまな期待と憶測が飛び交った日々も終わる。
本作では、発表当初より“死闘感”、“未知の探索”、“探索の自由な共有”というテーマを掲げていた。これらのテーマは、果たしてどうなっているのか。結論から言うと、期待以上の体験をもたらしてくれるものになっている。
ギリギリの死闘を楽しむ
変形機構を持つ仕掛け武器と銃を使用した戦闘。防御という概念をより“能動的”に行えるシステム“リゲイン”。この組み合わせは、予想を越える緊張感と爽快感を実現している。変形することによって攻撃範囲やコンボが変わる仕掛け武器は、状況に合わせた選択で立ち回りかたが大きく変わる点がユニークだ。銃は、致命傷を狙うというよりも、敵の体勢を崩すために使う意味合いが強い。体勢を崩すことで敵の行動にスキが生まれ、そこを狙ってカウンターを決めたり、強力な近接攻撃“内臓攻撃”をくり出すことが可能となるのだ。いかに巨大な敵だとしても例外ではなく、内臓攻撃が通用する。ご存じの通り、複数の敵に囲まれると危険な状態に陥るが、銃を使えば危機を脱することができることも多い。銃は添え物ではなく、戦略を立てる際に不可欠な武器であることは間違いない。
本作の戦闘においては、敵との間合いが重要な意味を持つ。ジャンプなどで一気に距離を詰められて、あっという間に倒されてしまう場面も多々ある。間合いを保ちながら観察し、敵の動作からスキを見つけ出す。近接攻撃がメインとなる戦闘では、そのスキを狙って間合いを詰め、どれだけダメージを与えられるかがキモだ。反撃を食らう前に距離を取って、つぎのチャンスを狙う。これが戦闘の基本と思っていただいて、問題はないだろう。そこで登場するのが“リゲイン”だ。ダメージをもらっても、一定時間内に反撃すれば、HPが回復するこのシステムが生み出すもの。それは“斬り合う”ことの必然性である。致命的なダメージでも、反撃することでHPが回復し、さらに攻撃を加えるチャンスが生じる。回復アイテムの“輸血液”を使用する際には、若干ながら時間が必要となる。それすらも許されない緊迫した状況では、一縷の望みを懸けて敵を斬るしかない。その一撃で、壁を乗り越えられるかもしれない。わずかな可能性でも状況を一変することがある限り、プレイヤーは敵と斬り合うだろう。これこそ、本作に置ける“死闘”なのである。
未知なる世界を歩いてみる
ゴシック調の重厚な意匠や建造物が立ち並び、何が起きるかわからない恐怖が漂う空気感が圧倒的に迫る世界も、本作の持ち味だ。複雑な構造を持つ、まさに“都市”と呼ぶにふさわしい古都ヤーナムは広大で、謎に満ちている。最初はその広さと入り組んだルートにとまどうかもしれない。しかし、知らない土地でも、くり返し歩くことで何となく地図が頭の中に出来あがっていくように、本作でも何度も探索することで徐々に構造が理解できるようになる。ちょっとした寄り道から、新たな発見が見つかることもある(危険はつねに伴うが)。その結果、予想もしなかったルートが広がる場合もあれば、狩りに役立つアイテムが入手できるかもしれないのだ。
ヤーナムを進むにあたって、“こうしなければならない”というルールは存在しない。どのように探索するかは、プレイヤーの手に委ねられている。それぞれのやりかたで好きなようにヤーナムを歩く。もちろんストーリーは存在するので、徐々に明らかになる“謎”を追う楽しみはあるが、本質は“この世界をいかに冒険するか”ということだろう。倒したい敵がいる。扱ってみたい武器がある。目的は何でもいい。その目的を果たすために、どうすればいいのか? 考え、幾度となく挑戦し、困難を突破したときの達成感。これこそ、本作をプレイした人だけが感じられる“特権”だ。
この楽しさをみんなで味わう
最後に、“探索の自由な共有”を。この楽しさは、オンラインにつないだときに本領が発揮されるものだ。たとえば、“手記”がある。これは、“使者”を媒介にすることで、ほかの世界にいるプレイヤーに簡易的なヒントやメッセージ、ジェスチャーを書き残せる機能だ。ほかのプレイヤーが死亡した場所に立つ墓標に触れることで、そのプレイヤーが死亡した経緯を知ることができる“遺影”。同時に同じエリアをプレイしているほかのプレイヤーの姿を一瞬だけ表示する“幻影”。これらは、非同期のオンライン要素で、直接的ではないコミュニケーション、いわゆる“ゆるいつながり”が実感できるものとなっている。ヤーナムを探索する狩人は自分ひとりではなく、仲間がいると感じられることは、心が折れかけたときの清涼剤としては、十分すぎるくらい機能してくれるだろう。
話題の“聖杯ダンジョン”も、オンラインとオフラインの両方でプレイできるが、生み出した聖杯ダンジョンをオンライン上に公開して、共有することが可能となっている。このダンジョンが大いに盛り上がるのはこれからだと思うが、きっと誰もが驚くダンジョンが公開され、世界中のプレイヤーが挑戦する(そして、数えきれないほどの墓標が並ぶ……)ような事態が生まれることだろう。本作は当然ながら“SHARE機能”に対応しているので、挑戦している模様が配信されるかもしれない。攻略情報をSNSで共有して、みんなでトライするのもおもしろい。プレイヤーそれぞれが、自分なりのスタイルで本作の楽しさを“共有”できる。それもまた、本作の魅力であり、醍醐味のひとつだ。
さあ、覚悟を決めて旅立とう!
確かに、万人受けするゲームではないし、この骨太さは相当なものだ。かなりの猛者でもない限り、サクサクと進めることはない。ただ、プレイヤーの心を“折る”ために作られてはいない。観察と学習は必須だが、その成果は必ずもたらされる。システムそのものも、複雑ではない。プレイヤーを“楽しませる”ために、細かい部分まで丁寧に作り込まれている。死闘感、未知の探索、探索の自由な共有――。ここまでごちゃごちゃと書き連ねておいて言うのもなんだが、これらのテーマが生み出す“おもしろさ”は、その手で実際に体験してもらえれば一発で伝わるはずだ。
いろいろな意見や評判を聞いて、プレイに躊躇する人がいるのも仕方がないが、これだけは自信を持って言える。まずは、プレイしてみよう。あきらめることなく、挑戦しよう。成し遂げた瞬間、何物にも代えがたい喜びがプレイヤーを待っている。