新世代ゲーム機で、あの感動が蘇る

 2011年11月に、プレイステーション・ポータブルで発売され、多大な評価を受けると同時に、現在も熱狂的なファンが存在する『ファイナルファンタジー零式』。そのHDリマスター版である『ファイナルファンタジー零式 HD』が、ついに今週2015年3月19日に発売される。そこで本稿では、同作がいかに進化したか、そのプレイインプレッションをお届け。

『ファイナルファンタジー零式』という作品

 そもそも、『ファイナルファンタジー零式』はどういった内容のゲームで、どんなところに魅力があるのか。HD版のインプレッションの前に、まずはそこについて軽く触れておこう。本作の舞台となるのは、4つの国家が存在する、東方国家群オリエンスという世界。プレイヤーは国家のひとつである“朱雀領ルブルム”に属する“0組(クラスゼロ)”のアギト候補生14名を操り、クリスタルを巡る戦いへ身を委ねることになる。

『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_14
『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_15

 本作において、彼らは国家間の戦争に投入される若き兵士である。当然だが、戦場は人を殺し、殺される場所。0組の面々も、自らの手を血で汚しながら、やり切れない思い、やり場のない怒りを胸の内に秘めながら、戦争、そして人の死について学び、成長していく。特徴的なのは、本作の世界では、クリスタルの力によって“死んだ者の記憶を失う”という点。それが親友であっても、家族であっても、死者の記憶は、人々から失われていってしまうのだ。そこでいろいろと、それこそなんやかんやとあるのだが、思いっきりネタバレになるので割愛。ただ、本作をプレイした人間にとって、0組メンバーたちが綴ったストーリー、そして“記憶”は、決して忘れえない、かけがえのないものになるであろうことは間違いない。

『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_09
『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_10
『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_11
『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_12
『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_13

 バトルは最大3人のキャラクターでパーティーを組み、襲い来る敵を倒していくアクションタイプのもの。通常攻撃や魔法、固有アビリティなど、多彩な攻撃方法が存在するうえ、14人それぞれで攻撃モーションや所持アビリティが異なるのがポイント。操作キャラを変更するたび、新鮮な気持ちで戦いに没頭できるのだ。また、赤色、黄色のサークルが出現した瞬間に攻撃することで、敵を即死させる、あるいは大ダメージを与えられる“キルサイト”、“ブレイクサイト”といった特有のシステムなどもあり、奥深く、爽快なバトルが楽しめるようになっている。

『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_06
『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_07
▲プレイ感覚は大きく違うが、遊びやすくなっている、というのがポイント。とくに画面全体を見渡しやすくなっているのがいい。オリジナル版では、方向キーを指で操作する、いわゆる“モンハン持ち”でやっていた自分としては、いろいろと感慨深いです。
『ファイナルファンタジー零式 HD』HDリマスター化され、改めて感じるその完成度と魅力――プレイインプレッション_08

 圧倒的なまでのボリュームを誇ることも、本作の魅力のひとつ。本筋からは外れた、いわゆるサブイベントがそこかしこに存在するほか、ワールドマップ上で、ストーリーでは訪れることのない地域やダンジョンが無数に存在する。さらに、2周目(本作は、さまざまな要素を引き継いでの周回プレイが可能)限定の要素もあったりするなど、やれることが山のように用意されている。すべてをやり尽くそうとすれば、100時間、200時間を費やしてもまだ足りないほど。かくいう筆者も、全要素には手を出し切れていない。もちろん、ストーリーだけを追っていけば、サックリと終わらせることもできる。この辺の懐の深さには、脱帽するばかり。

 以上のように、『ファイナルファンタジー零式』は、多様で多彩な魅力を内包した作品だ。と言いつつも、これだけでは魅力の半分も伝えられていないのが心苦しい。ただ、ストーリーやキャラクターなどについて、事細かに書き始めると、誰も望まない大長編ができあがってしまうので、ここではこの辺で。