楽曲制作の裏側や、歌に込めた想いなどを聞く
NHK Eテレにて放送中のテレビアニメ『ログ・ホライズン』のオリジナルサウンドトラック第2弾が、2015年3月4日に発売された。そこで、全楽曲を作曲した音楽家の高梨康治氏と、五十鈴役の声優であり、劇中では歌声を披露している松井恵理子さんにインタビューを実施。今回の楽曲制作の裏側や、歌に込めた想いなどを聞いた。記事ではサントラのプレゼントを実施しているので、興味を持った人はぜひご応募を。
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なお、高梨氏は、2015年3月28日に開催予定のHANEDA INTERNATIONAL ANIME MUSIC FESTIVALへの出演が決定。こちらは、羽田空港国際線増便1周年を記念して開催されるイベントで、世界10ヵ国のアニメエキスポとコラボし、日本のアーティストはもちろん、各国のアニメや日本好きな海外のシンガー&アイドルたちがコンサートを行う。詳細はこちらにて。
“幅広い音楽家”ではなく、“幅が狭い音楽家”でいたい
――まず、高梨さんが『ログホラ』の曲を担当することになった経緯を教えていただけますか? たとえば、前々から石平(信司)監督とお知り合いだったとか、そういったご縁が?
高梨康治氏(以下、高梨) 石平監督とは『FAIRY TAIL』でごいっしょさせていただいて、僕の曲を「いいな」と思ってくださっていたみたいです。そして、『ログホラ』の版元であるエンターブレインさんとは、ドラマCDの『まおゆう魔王勇者外伝 ~二人の王、一つの道~』で曲を書かせてもらっていて、そちらでも僕がいいなと思ってくださったみたいで。
――双方からのラブコールがあったわけですね。しかも今回は、第1期が終わって、第2期も担当されるということで。
高梨 きっと第80期くらいまであると思います(笑)。
――(笑)。『ログホラ』の曲について、高梨さんはどういうコンセプトをお持ちなのでしょうか。
高梨 僕は、基本はロックミュージシャンなんですね。世間では作曲家というカテゴリーで見てくださっている面もあると思うんですけど、根本はロックミュージシャンとしてずっとバンドでやってきた人間で、作曲の仕事もしている、という感覚なんです。そのため、『ログホラ』も当然、『FAIRY TAIL』なども“バンド系のロック”になっています。ただ、『ログホラ』はゲームの世界が舞台になるので、少しそれにサイバーなテイスト……シンセで電子音を入れたりといったことをしています。それと、第1期のころからオーケストラとロックを融合させたようなものを作ろう、というのはありましたね。
――第2期については、第1期との違いがあったのでしょうか。
高梨 石平監督に、「戦闘が多くなるよ」と言われて「よっしゃー!」と(笑)。
松井恵理子さん(以下、松井) 腕の見せどころみたいな(笑)
高梨 そう! 「キター!」という(笑)。オーケストラでファンタジーの世界を表現するのも大好きなので、それももちろんいいんですが、やっぱりバトルは燃えますよね。
――曲を作るときというのは、たとえば、石平監督や音響監督のはた(しょう二)さんから「こういう曲で」という、オーダーがくるんですか?
高梨 はたさんと僕とのあいだだと、「任せるから、よろしくね」ということが多いですね。「原作の○巻、読んでおいて」というような感じで。『FAIRY TAIL』のときもそうでした。あとこれは、はたさんの手法なのですが、まず大きなメインテーマをいくつか作って、そこからバリエーションを作っていくんです。メインテーマのバラードバージョンとか、日常バージョンみたいなものとか、誰々のメインテーマとか。メインテーマを軸にいろいろな形で広げていくという、映画的な作りかたをされるんですよ。
――それでバリエーションがありながらも、統一感もあると。
高梨 場面ごとに選曲していくというよりも、全体にひとつのテーマを持ったやりかたですね。そして大事なところで、メインテーマがバンッ! とくるという。何年もごいっしょしているので、うまくコンビネーションが取れたかなと思います。
――なるほど。先程、原作を読んでおいてと言われる、というお話がありましたが、高梨さんは『ログホラ』の原作も読まれているのですか?
高梨 それはもちろん。作品をやるときは原作を全部読んで、自分の中でイメージを作っていきます。自分の音楽性の根本はどの作品でも変わらないので、そこに作品から得たテイストをどう持ち込むか、ですね。たとえば『ログホラ』だったら、“ゲームの世界”なので、先ほど言ったようにサイバーな部分を取り入れるとか、作品によって、自分の基本の音楽にいろいろな味付けを加えていくという手法です。
――松井さんも、役に入られるときに、台本を読んだり、原作を読んだりされたと思うのですが、高梨さんの『ログホラ』の楽曲を、どのように風に感じますか?
松井 すごく世界が広がる感じがしましたね。ネットゲームの世界というのは、私も遊んだことがあるので、なんとなくイメージが固まっていた部分があったんです。でも、高梨さんの曲には、サイバーなテイストだけじゃなくて、オーケストラとかも入っていて、“本当にこの世界が存在しているんだ”という生きた感じがあって。
高梨 うん、そういう“息吹”を入れたかったんですよ。
松井 本当にその場に立って、風が吹いていたりとか、水が流れていたりするというのが、音楽からすごく感じられて。曲でアニメーションが彩られていくという感じがしました。
高梨 ナイスな解説!(笑)。ありがとうございます。
――ロックとオーケストラの融合というお話もありましたが、ポイントで使われている楽器も多彩ですよね。『アカツキの想い』だったら、和風の楽器であったり。
高梨 アカツキのときは和風を意識したというより、「スパイっぽい曲にして」と言われてのアレンジだったんですよね。彼女は忍びなので、秘密指令を請け負っているようなイメージでやれないかな、という話があって。
――『大地人』の楽曲など、息遣い……ブレスを使われているのもおもしろいなと思いました。
高梨 ありがとうございます。大地人の曲は、ほかの曲とはちょっと差別化したいというのがありました。彼らは『ログホラ』の物語ではある種、独特な存在なので。以前見つけた、アフリカ系のブレスなんですけれど、こういうのとかもいいなと。あの世界観とアフリカは違いますが、息吹を感じさせる声というか、“息”が合うんじゃないかなと思って入れてみました。
――いろいろなバリエーションの曲を作っていると、使う楽器を選ぶときに迷ったりはしませんか?
高梨 以外とそこは、統一しているんです。いろいろな作品の曲を作るんだけれども、自分の使う楽器というのはある程度決めていて。僕は、“幅広い音楽家”というようなキャッチフレーズが嫌いなんですね。むしろ、“幅が狭い音楽家”でいたい。「あいつの作る曲って、これだよね」というものを作りたいので、作品が変わったとしても、自分が使う楽器は大きくは変えず、レコーディングをするメンバーも変えず、同じスタジオで録ります。僕のサウンドは、あくまでも本質は変えないで、作品に合わせて味付けを変えていく、といったものなんです。
――その高梨さんの“本質”というのは?
高梨 ヘビーメタルです。たとえば、オーケストラを使っていても、あれはロックなんですよ。ビオラやチェロは、バンドでいったらギターやベース。僕は音大を出たりとか、ちゃんとしたオーケストラの勉強をしてきてるわけではないので、全部、我流ですけれどね。だからこそ、固定観念を持たずにやっていきたいなと思っているんです。