注目のテクノロジーはVRだけじゃない!

 2015年3月2日~6日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のカンファレンス、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2015が開催中だ。

 今年のGDCはVR花盛りだったりするわけですが、そのほかに、今後が注目されているテクノロジーが続々とお披露目されている。そのひとつが、アイトラッキングだ。アイトラッキングとは、人間の視線の動きを追跡する技術。一部で、ゲームの操作に導入する動きも出てきており、この3月には、アイトラッキングの技術を導入した、PC版『アサシンクリード ローグ』が、海外でリリース予定だ。そういった意味では、ゲーム業界が今後注目すべきテクノロジーと言える。開催4日目の3月5日に行われた、トビー・テクノロジーによるスポンサーセッション“Assassin's Creed's Infinite Screen and Tobii Eye Tracking in Games”は、『アサシン クリード ローグ』のアイトラッキングの使用事例を紹介するセッションだ。なお、トビー・テクノロジーはアイトラッキングの大手企業で、14年前に障害者向けのアイトラッカーを作ったのが創業のきっかけ。“Infinite Screen”は、同社が提供するアイトラッキングのブランドとなる。

「今年は、アイトラッキング元年!」目の動きでゲームを操作する『アサシン クリード ローグ』の使用事例を紹介【GDC 2015】_01
「今年は、アイトラッキング元年!」目の動きでゲームを操作する『アサシン クリード ローグ』の使用事例を紹介【GDC 2015】_02
▲トビー・テクノロジーのマット・クライン氏。
▲ユービーアイソフトキエフのコーネル・バシリフ氏。

 まず登壇したトビー・テクノロジーのマット・クライン氏は、「2015年がアイトラッキングの元年になります!」と宣言。『アサシン クリード ローグ』で、初めてAAA(トリプルA)タイトルに採用されたことで、今後アイトラッキングの使用事例が広がっていくであろうという見通しを示唆した。

 『アサシン クリード ローグ』ではアイトラッキングが使用されているのは、カメラ移動など。ユービーアイソフトキエフのプロデューサーであるコーネル・バシリフ氏は、「アイトラッキングを駆使することで、マウスやタッチスクリーンは使用しない、まったく新しいゲームプレイが実現します」と説明。ゲームポジションをぜんぜん変えなくてもプレイできるということもあり、さらなる没入感が促されるとした。

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▲『アサシン クリード ローグ』では、さまざまな用途でアイトラッキングが使用された。

 マット・クライン氏は、「アイトラッキングにより、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)の注意を促す“アイコンタクト”のような使いかたもできます」と、今後の可能性に言及する。また、バシリフ氏同様に、「グラフィックとサウンドへの没入感がハンパなくなります」と、アイトラッキングの魅力に触れた。さらに、トビー・テクノロジーのアイトラッキングテクノロジーは、API(ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様)が充実しているために、開発がしやすいと、来場者にアピールした。

 ちなみに、VRとは相性がいいようにも思われるアイトラッキングだが、質疑応答でそのことを問う質問が飛び出すと、「VRやARに関しては、いろいろなところから引きがあります。現時点ではどことは言えませんが、お話をしています」とのことで、両者がいっしょになることで、どのような新しい体験が可能になるのか、楽しみなところだ。

「今年は、アイトラッキング元年!」目の動きでゲームを操作する『アサシン クリード ローグ』の使用事例を紹介【GDC 2015】_07
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 プラットフォームフォルダーやツールメーカーが自社の製品をお披露目するGDC EXPOでは、トビー・テクノロジーが出展しており、実際にアイトラッキングの技術を使ったソフトが体験可能だった。記者が試したのは、『Spectrophobia』というデモソフト。ダンジョン探索型のアクションで、基本はキーボードとマウスで操作しつつも、鏡に写った自分の姿を一定時間見ると、魔法が使えるようになったり、壁に溢れる“目の化け物”と目を合わせると倒されてしまう、といったアイトラッキングを駆使したギミックが盛り込まれていた。さすがに完成度はこれから……といったところだが、“アイトラッキング元年”とアピールされることもあり、今後アイトラッキングがさらに注目を集めることは間違いなさそう。アイトラッキングにより開発者がどんなふうにクリエイティビティを刺激されるのか、興味深い。

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「今年は、アイトラッキング元年!」目の動きでゲームを操作する『アサシン クリード ローグ』の使用事例を紹介【GDC 2015】_10
▲GDC EXPOの会場では、『アサシン クリード ローグ』などが実際に遊べた。