VRが秘める可能性を再認識!
GDC2日目に行われたプレスカンファレンスで、ついに2016年上半期中の商品化を目指すことが発表された、プレイステーション4用VRヘッドマウントディスプレイ“Project Morpheus”。プレスカンファレンス後に最新プロトタイプを使ったデモを体験できたので、早速プレイしてきた。
前半はいわば『サマーレッスン』の犯罪者版!
記者が体験したのは、ロンドンスタジオが開発した“The London Heist”と呼ばれるプログラム。体験者はProject Morpheusを被り、PS Moveを両手に持ってプレイする。
記者はあえてメガネをつけたまま体験したのだが、「ディスプレイ部分を前にずらして余裕を作り→まずはバンド部分を被って→ボタンを押してディスプレイ部分をスライドさせて調整」という手順は、頭頂部でできるだけ自重を支えるような設計になったこともあって、一旦仕組みを理解すればスムーズに実行可能。ただ、焦点がうまく合うよう調整する時間はどうしても必要だ。
最初は椅子に座ってのスタート。Heistデモの前半部は、どうやらこちらを拷問か処刑しようとしているらしい、スキンヘッドのムキムキ兄貴とのふたりきりの時間を過ごせるというもの。トラッキング情報に基づいてプレイヤーの顔の方をちゃんと向いて脅したり煙草をぶん投げたりしてくれるので、いわば『サマーレッスン』の犯罪者版と言えるのではないだろうか!
表示性能が向上した新プロトタイプで見る兄貴のどアップは、注視すると若干のドットとドットの間の網目感があるものの、リフレッシュレートの向上でとにかく滑らかなのがいい感じ。煙草の煙が緩やかに流れす様子も、画面の中で埋もれることなく、はっきりと見て取ることができた。
前半の終わりでは、しびれを切らした兄貴がバーナーに火を付けて「もういいわ、お前やっちゃうわ」とピンチになった所で電話がかかってきて、「チッ! お前と話したいとよ!」と電話を渡してくれるのだが、ここからPS Moveが有効になり、椅子から立ち上がって手を伸ばし、Moveのトリガーを引くことで受け取れる。つまり物を掴むことができるようになるのだ(自分の手の位置は手首から先が浮いた形で見える)。
そのまま2本のPS Moveを使って携帯を右手から左手にポイポイ移すこともでき、耳元に持っていけば電話の主からの「当時いったいなにが起こっていたのか話してくれないかね」といったセリフがちゃんと耳元から聞こえてくる。これはMorpheusとPS Moveの位置を正しくトラッキングして、3Dサラウンドに反映させている証だ。
後半部では、プレイヤーが過去にしでかしたらしい強盗事件(Heist)の回想シーンが描かれる。ここで引き続き大活躍するのがPS Moveで、手を伸ばしてトリガーを引くだけで、戸棚や引き出しを開けたりする動作が違和感なく再生される。ここでは戸棚を開けて鍵を見つけ、鍵のかかった戸棚から宝石を奪うのが目的なのだが、そうこうする内に警備が駆けつけ、銃撃戦になる。
もちろん、自分の手で銃を引き出しから拾い上げて、マガジンを装填して戦うのだ! プレイヤーの位置がそんなに動かない、机の影からの迎撃するという限定された銃撃戦なのだが、新プロトタイプで没入感が上がっているおかげで、これがなんとも燃える。
机に身を隠しながら銃だけを出してカバーリング撃ちをしたり、相手の攻撃の合間に立ち上がって男らしくジョン・ウー気分でマガジン1個分撃ち尽くしたり、どう撃つかはプレイヤーの自由で、自分の思うように体を動かして撃てばいい。
記者の持論のひとつとして、「VRでは没入感が加わることで、それまでゲーム的にそれほど意味がなかったシーンにすら新たな意味が出てくる」というものがあるのだが、まさにこのHeistデモはそういう側面があると思う。例えば弾がなくなったらまた引き出しから拾い上げて装填しなければいけないのだが、このシチュエーションではその作業すら楽しい。普段はただのオートリロードすらめんどくさい時があるというのにだ。
要するに、視点がキャラクターと完全に一致することで、自分がなったことないもの、例えばこの場合は「周囲を囲まれて毒づきながら慌ててマガジン交換するチンピラ」になれるのだ。もちろんVRには、あくまで自分は自分のままで行ったことない場所に行ったり、会えないような人(例えば女子高生とか)と会ったりするといったやり方もあるし、どれもそれぞれ違った面白さがある。重要なのは、トラッキングやグラフィックの向上によって没入感がさらに高まることで、そのそれぞれの面白さがもっと真に迫ったものになるということ。そんなVRが秘める可能性を再認識したデモだった。