iOS/Androidタブレット向けに春ごろリリース予定

 2015年3月2日~6日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のカンファレンス、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2015が開催中。
 世界中からゲーム開発者だけでなく、最新のゲーム情報を目当てにプレスも集まるということで、会期中には新作のデモやインタビューなども行われる。そこで11 bit Studiosの『This War of Mine』のタブレット版を見せてもらった。

 本作はすでにPC/Mac/Linux版が配信中。ゲーム内容についてはBRZRKによる本誌連載でのプレイリポート(3回分が掲載中)などを参照して欲しいが、生存のために物資を死に物狂いでかき集める極限状況の中で「兵士に性的暴行を受けそうになっている女性を身を挺して助けるか/自分の安全第一で見なかったことにするか」、「生きるために老夫婦から物資を奪うか/他所を探すことにするか」といった過酷な選択をプレイヤーに迫るシリアスな内容が高く評価され、今年のGDCアワードにも2部門でノミネートされている。

 タブレット版は、見せてくれたシニアライター(脚本担当)のPawel Miechowski氏いわく「まだまだバグもあって調整しなければいけない」とはいえ、すでに操作がタッチコントロールに置き換えられ、グラフィックも違和感なくタブレットに最適化されたプレイアブルなもの。生存者グループの各メンバーに指示を出して家具を解体したり、物資を拾い集めたりといった『This War of Mine』のゲームプレイが、見事にタブレットに移植されていた。静かな夜にソファーでじっくり噛みしめるようにプレイしたい感じだ。

 気になるスケジュールだが、PC版の大型アップデート(エリア拡大など)を反映しつつ、春頃にはリリースしたいとのこと。なお画面サイズと現行のゲームデザインの関係上、スマートフォンには対応しないという。ローカライズについては日本語対応も検討しているものの、「なかなか折り合わなくてね」というわけで現状では未定。

『This War of Mine』戦時下における一般市民の厳しい生活を描いた傑作が、タブレット版も制作進行中【GDC 2015】_01
▲タッチ操作でのサバイバルライフは違和感なし。グラフィックはタブレット向けに若干調整されている。これでどこでも奪ったり奪われたりできますね(ニッコリ)。

ついでにポーランドのスタジオが今激アツな理由も聞いてきた

『This War of Mine』戦時下における一般市民の厳しい生活を描いた傑作が、タブレット版も制作進行中【GDC 2015】_02

 ちなみに11 bit Studiosをはじめ、『ウィッチャー』シリーズのCD Projekt、『ダイイングライト』などを開発したTechland、傑作アドベンチャーゲーム『The Vanishing of Ethan Carter』のThe Astronauts、“公共の場で銃乱射事件を起こす”という過激な内容が激しい議論を呼んだ『Hatred』のDestructive Creationsなど、近年のポーランドのスタジオの活躍には目覚ましいものがある。

 Miechowski氏にこの点について聞いてみたところ、ポーランドにはおおよそ300ほどのスタジオが存在するという(総人口4000万人弱)。そういった中から超大作や世界的評価を受けるインディーゲームが出てきているのは、CD Projektの『ウィッチャー』シリーズの成功が大きいのではと語っていた。作を重ねるごとに大きくなり、最新作の3ではついに最新グラフィックスによる広大なオープンワールドRPGへと展開するこのシリーズが、ポーランドの開発者に大きな刺激を与えたというのはうなずける話。

 一方でシーンが狭いことでそれぞれのスタジオの関係も深く、同氏の兄であり11 bitを率いるGrzegorz Miechowski氏とThe Astronautsを率いるAdrian Chmielarz氏が元同僚である関係でPawel氏も旧知の仲だったり、CD-ROM時代に兄弟が手掛けたタイトルがCD Projektからパブリッシングされたりといった過去があり、今でもお互い仲がいいらしい。

 今後のスタジオの予定については、PC版の大型アップデートやタブレット版の開発を進めつつ、Gamescomか夏にシアトルで行われるPAX Primeで新作の発表も検討中とのこと。それと並行して、『This War of Mine』で行っている戦争孤児への寄付プログラムも定期的に行い(1月に実施した際は4600ドル以上が集まった)、チャリティで貢献していくという。