子供の頃の世界が広がっていくワクワク感が詰まった傑作!

 Ubisoftが配信しているPC専用アクションゲーム『Grow Home』を紹介する。対応言語は英語のみで、Steamなどで配信中。価格は1037円。

 本作の主人公は園芸ロボットのBUD(Botanical Utility Droidの略)。マザーコンピューターに課せられた彼の使命は、とある惑星に生える巨大植物を2000メートルまで成長させ、その種子を採取して母星の危機を救うこと。栄養源を蓄えた浮き島めがけて“スターシュート”なるこの植物特有の組織を伸ばして、どんどん成長させていくのだ!

 『Grow Home』は、基本的に上方向を目指していくオープンワールドアクションだ。目的はつねに一貫していて、植物をよじ登り、スターシュートを伸ばして栄養を回収するだけ。一定数の栄養を集めると、植物が次のセクションまで一気に成長する。それ以外はスターシュートをどう伸ばすかなども自由で、必ず栄養に繋がるように伸ばさないといけないといったこともない。

 プレイヤーを追い立てるようなものが何もないので、美しく壮大な空中世界を進むうちに、つい寄り道したくなるような作りになっている。世界にはさまざまな動植物がいて、発見したからといってあまりゲーム的なメリットはないが、探索も楽しい。
 また、花をパラシュート代わりにしたり、落ち葉をグライダーにしたり、上下に長い世界を活かしたフライトアクションも用意されていて、これもまた何とも気持ちいい(なお各地に置かれているポータルデバイスを起動しておくと、ミスって落下しても下界のポータルからワープして戻ることができる)。

巨大植物を天まで育てる園芸ロボットの冒険。子供の頃の、世界を発見する喜びが詰まったアクションゲーム『Grow Home』レビュー_01
▲世界には昼夜の交代などもあって、時々ハッとするほど美しい瞬間に出会う。

 こうした、「プレイヤーが勝手に伸ばした植物をよじ登っていく」とか、プレイヤーの気まぐれな空中世界探索などの本作の根幹を成立させているのが、BUDのプロシージャル(自動生成)なアニメーションシステムだ。プレイヤーがコントローラー入力した「行きたい方向」に行けるよう、地形に合わせて手足を自動的に運んでいるので、決め打ちしたモーションの制限を受けず、複雑な地形でもアクションできるようになっている。

巨大植物を天まで育てる園芸ロボットの冒険。子供の頃の、世界を発見する喜びが詰まったアクションゲーム『Grow Home』レビュー_02
▲コントローラーでのプレイ推奨。左右のトリガーを交互に押すことで、どんな地形でも手を伸ばしてガシガシ登ってくれる。

 そんなBUDの歩行動作は少しフラフラとしたよちよち歩きだったりするのだが、彼の名前(BUDはつぼみを意味する)や、作業が進むたびに褒めてくれるマザーコンピューターのMOM(お母さん)との関係などから考えると、BUDのイメージは自分で歩いて世界を発見し始めた子供から来ているのだろう。
 実際、本作は新たな領域を発見して無心に進んでいくだけでも楽しい。新しい公園に連れて行ってもらった時や、自転車で初めて遠出できるようになった時の、子供が世界を進んで発見していく純粋なワクワク感のようなものが詰まっている。

 ちなみに成長要素もあり、世界に散らばっているクリスタルを集めることで、ホバリングなどが可能になる。……と聞くと収集が面倒に思う人もいるかもしれないが、クリアーするだけなら全然集めなくていいのでご安心あれ。どちらかと言えば、100%を目指したい人のためのやり込み要素に近い(行く必要が特にない、栄養素がない辺鄙な浮き島に刺さっていたりもする)。

巨大植物を天まで育てる園芸ロボットの冒険。子供の頃の、世界を発見する喜びが詰まったアクションゲーム『Grow Home』レビュー_03
▲特に意味は無いが、羊をぶん投げたりもできる。

 そんなわけで本作は、巨大植物の成長と、成長期の子供の世界を発見する喜びを重ねた、とても爽やかな傑作だ。2000メートルまで育てるだけなら2時間もあれば可能だが、前述したように寄り道要素がいろいろ隠されているし、エンディング後のプレイ要素(追加の種子やクリスタル集め)も用意されている。
 ローカライズはされていないが、プレイにあたって最低限の説明さえ理解できればそこまで問題はないと思うので、会社や学校などの驚きのない日常に疲れてしまった人は、休日にでもプレイしてみてはいかがだろうか。