『アップルシード アルファ』をゲーム化してほしい

 2015年1月17日(土)より、新宿バルト9ほかにて『アップルシード アルファ』が全国劇場公開。ここでは、同作の脚本を担当したマリアンヌ・クラヴジック氏への書面でのインタビューの模様をお届けしよう。マリアンヌさんは、『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズのシナリオなどでも知られ、ゲームユーザーにとってもおなじみ方。どのような想いを込めて、『アップルシード アルファ』の脚本を執筆したのか?

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『アップルシード アルファ』脚本を手掛けたマリアンヌ・クラヴジック氏に聞く ゲームのオープンワールドのストレートなストーリー展開の手法が役に立った_07

――シナリオを書くにあたりどのような点を重視していますか。
マリアンヌ シナリオを書くときはいろいろなことを考えるのですが、まずはキャラクターに集中します。派手なアクションシーンが大好きなので、それを書き綴るのもおもしろいのですが、アクションの合間に垣間見えるものに思いを巡らせることを楽しんでいます。ストーリーの中で登場人物に何が起こるか考えるのはとても大変なのですが、同時に楽しんでいるところもあります。

――『アップルシード アルファ』は『ゴッド オブ ウォー』シリーズとは異なる世界観を持っていますが、今回の映画シナリオの執筆にあたり、ゲームシナリオの場合と比べて興味深かったこと、独特だと感じたこと、難しかったことを教えてください。
マリアンヌ 私が書くゲームのシナリオはかなりダイレクトなものです。私が関わるのはオープンワールドのゲームなのですが、このようなストレートなストーリー展開の手法が今回の『アップルシード アルファ』に役に立ったのではないかなと思います。『アップルシード アルファ』は設定がすばらしいだけでなく、アクション映画としての要素がたくさん含まれています。私の経験はここで活かされるわけです。アクションがキャラクターの感情と相反してはいけないのです。ゲームデザインではこういうことがよく起こるのですが、こういう矛盾を解決するのが私の得意とするところです。本映画における私の役割は、ゲームシナリオを書くときと同様に、この映画に感動的な要素を盛りこんだということです。深い意味のあるアクションによって、最終的に満足いただけるストーリーになっていたら、私の狙い通りできた、と言えるでしょう。

『アップルシード アルファ』脚本を手掛けたマリアンヌ・クラヴジック氏に聞く ゲームのオープンワールドのストレートなストーリー展開の手法が役に立った_02
『アップルシード アルファ』脚本を手掛けたマリアンヌ・クラヴジック氏に聞く ゲームのオープンワールドのストレートなストーリー展開の手法が役に立った_03

――シナリオを書く前にアップルシードの原作コミックを読まれましたか? 読まれたとしたらどんな印象でしたか?
マリアンヌ 原作も読みましたし、劇場版の前2作とも観ました。今回シナリオを書くにあたり、キャラクターにとって重要なもの、何が彼らを駆り立てるのかを追求したいと思っていたのですが、原作からたくさんのヒントを得ています。ただ、心がけていたのはこの映画は原作や前2作の映画の前日譚であり、リブートであるということです。ストーリーはもちろん、キャラクターに対しても新しい見かたでとらえるようにしました。もとになる素材を活かしつつ、ファンの期待に応える内容に仕上げるのは難しいチャレンジでした。

――荒牧伸志監督とは言葉や文化の違い、地理的な距離感を超えて協力関係を構築される際、どのようにコミュニケーションを取っていらっしゃったのでしょうか。
マリアンヌ 荒牧伸志監督と仕事ができて本当にうれしかったです。実際にお会いしたのは、荒牧さんが米国にいらしたときに、回数はそれほど多くはないのですが、彼との会話の中で言語の違いを超越した感覚がありました。最初のドラフトの内容で荒牧さんの理解と私の理解が同じだったところがたくさんありました。ストーリーを構築する上で同じ方向を向いているというのは素晴らしいことです。後に、ストーリーボードを通じてコミュニケーションを取ったのですが、これが非常に役に立ちました。荒牧さんがシーンを作ったものを見て私がシナリオを調整するというやりかただったのですが、彼のような力強い監督と仕事ができたことは私にとってとてもいい経験になりました。

――『アップルシード アルファ』を実際にご覧になった率直な意見をお聞かせください。初めて観た時に印象に残ったシーンやキャラクターなどはありますか?
マリアンヌ CGが素晴らしかったです。双角がストーリーをポップにしてくれていますし、ふたりのメインキャラクターを引き立ててくれていると思います。また、主人公ふたりの声優の方々がキャラクターに声を与えてくれたことで、映画全体の一体感が生まれていると感じました。

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『アップルシード アルファ』脚本を手掛けたマリアンヌ・クラヴジック氏に聞く ゲームのオープンワールドのストレートなストーリー展開の手法が役に立った_01

――『アップルシード アルファ』をゲーム化するとしたら、どんなゲームがいいと思いますか?
マリアンヌ 『アップルシード アルファ』は当然ゲーム化すべきだと思います。Co-op(協力)アクションゲームでもいいですね。デュナンかブリアレオスを選んでプレイするのでもよいですね。ふたりのキャラクターが補完し合って進めるというのはどうでしょう。また、ブリアレオスのアップグレードなどがあるとおもしろいですね。ペアのひとりがもうひとりのプレイヤーのためにパーツや回復系のアイテムを集めるためにシングルクエストに挑むという誘導も考えられます。また、世界大戦後の廃墟となったニューヨークを舞台にするのもいいかと思います。この世界では危機感をあおるゲームプレイを演出しやすいですし、サイドミッションもたくさん設定できると思います。こんなアイデアが現実になれば素晴らしいと思います。ぜひどなたかに作っていただきたいです!

――日本のゲーム、映画、コミックなどでお気に入りのものはありますか?
マリアンヌ SCEジャパンスタジオの『ワンダと巨像』の大ファンです。ゲームプレイの裏にある感情表現や世界観の美しさ、そして、静かでありながらパワフルなストーリー展開が素晴らしいと思います。彼らの最新作、『人喰いの大鷲トリコ』の発売が待ち遠しいですね。

――マリアンヌさんの次回作が楽しみです。可能な範囲で現在手掛けていらっしゃるお仕事について教えて下さい。
マリアンヌ 『The Long Dark』 というゲームのお手伝いをしています。Steamの早期アクセスでサンドボックスモード(長く生存することを目指すサバイバルモード)をプレイしていただけるのですが、2015年よりストーリーモードの展開を予定しています。かなりいいものに仕上がっていると思います。ほかにも案件はありますが、まだ公表ができません。

――偶然にも、『アップルシード アルファ』日本版の双角と『ゴッド オブ ウォー』日本版のクレイトスは同じ玄田哲章さんという声優さんが演じていらっしゃいます。
マリアンヌ 知りませんでした、それは驚きですね。双角とクレイトスはキャラクターとしてはまったく違うのです。それを考えると、玄田哲章さんは違うキャラクターの声を完璧に使い分けられる演技の幅の広い声優さんなのですね。

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