1000ドル以下での実現が目標
差し出された青い手。恐る恐る握ると、青い手が滑らかに動いて優しく包み返し、周囲から歓声が上がる――。
先週ラスベガスで行われたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)のインテルブースでは、さまざまなウェアラブル技術が共同出展されていた。同社が主催したコンペ“Make it Wearable”の優秀作たちだ。
コンペで2位に入賞し、イギリスのブリストルにあるスタートアップベンチャー“Open Bionics”が出展したのは、低価格化なメカニカル義手(筋電義手)。手を動かそうとする際に発生する僅かな電位をセンサーでキャッチして動かすメカニカルな義手は、数百万するのが一般的。そこで近年では、3Dプリンターなどを使って低価格化を目指す試みが多数行われている。
Open Bionicsもそうしたベンチャーのひとつなのだが、3Dプリンティングを製造過程に使うだけでなく、3Dスキャンも加えているのがミソ。というのも、義手を取り付ける腕との接合部の形状は人によって異なり、長時間の使用に耐えうるよう調整するには、やはり専門の技師による調整が必要で、コストが大きい。そこで接合部を3Dスキャンしてコストダウンし、1000ドル以下で安価に提供しようというのだ(もちろん個別の調整も依然として必要だが、コストは大分下がる)。
メカニカルな義手というと、ゲームファンにとっては『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』版のスネークや、『デウスエクス』のアダム・ジェンセンの世界だが、約10万円という現実的な価格にもかかわらず、握手した手が握り潰されることもなく、繊細なタッチを実現していたのはちょっと感動。今年のCESで見た中で、もっともあたたかみのある技術だった。