BioWare最新作がついに登場!

 2014年11月27日、エレクトロニック・アーツよりRPG『ドラゴンエイジ:インクイジション』が発売された。開発は名作RPGを数多く産みだしてきたBioWare。既報の通り、全世界のゲームメディアが選ぶゲームアワード“The Game Awards 2014”のGame Of The Yearに選ばれたほどの超大作だ。その魅力を、インプレッションでお届けしていこう。

 そもそも本作は、『ドラゴンエイジ: オリジンズ』、『ドラゴンエイジ: II』に続く『ドラゴンエイジ』シリーズの第3弾。舞台は過去作と同様のセダス大陸。世界に無数の“亀裂”が発生し、世界は大混乱に陥ってしまう。なぜかその亀裂をふさぐ力を持った主人公は、“査問会”を結成し、その勢力を増やしながら各地の亀裂をふさぎ、社会の秩序を取り戻す……というストーリーだ。

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▲ゲームジャンルは三人称視点のRPG。各地に現れた亀裂を、主人公だけが持つ力でふさいでいくのだ。
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▲映像のクオリティはご覧の通りトップクラス。とくにイベントシーンにおけるキャラクターの作り込みは素晴らしい。

 舞台となる大陸や歴史といった世界観はシリーズで共通しているが、続きもののストーリーではないため、本作からプレイしても問題なく楽しめる。とはいえ、魔道士とテンプル騎士団の対立をはじめ、設定やキャラクターは過去作から多くを引き継いでいるため、すべてを楽しむならば過去シリーズはぜひとも体験しておいたほうがいい。シリーズの経験者は、『ドラゴンエイジキープ』というWebサービスを利用すれば、過去シリーズで歩んできた歴史を本作にインポートし、ストーリーをアレンジすることも可能だ。

 なお本作はプレイステーション4、プレイステーション3、Xbox One、Xbox 360、PCで発売されているが、今回はXbox One版を用いて記事を作成している。

クエストを通じて査問会を成長させよう

 まず行うのは、キャラクターメイキング。種族は人間、エルフ、ドワーフ、クナリ族の4種類から選択可能。クラスはローグ(二刀流)、ローグ(射手)、戦士(両手持ち武器)、武器と盾、魔道士の5タイプから選ぶことになる。“武器と盾”は、いわゆる盾役の戦士だ。またキャラクターの顔も細かくカスタマイズできる。

 物語は、主人公が尋問を受けているところからスタート。講和会議の途中で何かしらの事故が発生し、参加者は主人公以外全員死亡。主人公は、その容疑者として捕らわれているというワケだ。

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▲主人公の種族は4種類から選択可能で、それぞれ特徴が異なる。性別も自由に選べる。
▲キャラクターの外見を細かくカスタマイズ可能だ。自分好みの見た目を作りあげよう。

 イマイチ記憶があやふやな主人公だが、それでも身の潔白を証明しなくてはならない。本シリーズは会話シーンが重厚であることが大きな特徴で、相手の会話に対してどのように回答するかで、その後の物語が少しずつ変化していくのだ。このような会話イベントは頻繁に発生し、回答によっては仲間たちの好感度も左右し、関係も変わっていく。会話を楽しみながら、物語を自分の手で紡いでいけるのだ。

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▲会話シーンでは、複数の回答からひとつを選ぶ方式。場合によっては相手の好感度が変化する。
▲冒険の途中でさまざまなキャラクターが味方になる。カサンドラやヴァリックといった、前作のキャラクターも登場する。

 本作はクエスト形式で物語が進行する。メインストーリーに加え、膨大な数のサイドクエストが存在しており、その内容自体もバラエティーに富んでいる。お腹をすかせた人のために肉を集めたり、なくしたアイテムを代わりに探すといった定番の内容から、一筆書きで星座を作ったり、展望台から隠されたアイテムの場所を探し、実際にその場へ行って収集するなど、ギミックがほどこされたものも多い。サイドクエストの数だけ、多種多様な物語を楽しめるのだ。

 本作最大の特徴は、ストーリー進行と査問会の成長が密接に結びついていることだ。サイドクエストをクリアーするほか、さまざまな局面で“勢力”というポイントを入手できる。これを消費して新たなエリアを開放でき、さらに冒険の舞台が広がってメインストーリーも進んでいく……という仕組みになっている。人々を助けることで査問会の勢力が増していくことを、実際に体感しつつ冒険を進められるだろう。

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▲さまざまな場所でクエストが発生する。進行状況はジャーナルで確認可能だ。
▲戦略テーブル画面では、入手した勢力ポイントを使用して新しいエリアを開放することが可能。素材や報酬を入手できる“徴収”も行える。

細かな指示が勝利の鍵を握るバトルシステム

 RPGの目玉ともいえる、戦闘について解説していこう。本作は主人公を含めた数人でパーティーを組むことができ、フィールドやダンジョンを移動中に敵と出会うと、そのままバトルとなる。左スティックで移動、Rトリガーで攻撃、ボタンでアビリティの発動という、アクションゲームに近い感覚でバトルを楽しむことが可能だ。

 ただし、その中身はしっかりとしたRPG。キャラクターの能力と戦略がバトルの勝敗を大きく左右するため、じっくり考えて戦う必要がある。アクション要素は、じつは敵との距離とアビリティを発動させるタイミングぐらいでしか影響せず、多くの場合、格上相手の敵とは非常にきびしい戦いとなる。

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▲敵と出会うとシームレスに戦闘へ移行。右下のアイコンはショートカットで、対応するボタンを押すとあらかじめ設定したアビリティが発動する。
▲レベルが上がると入手できるポイントで、新しいアビリティを覚えたり強化することが可能。レベルはあまり上がらないため、アビリティの取得はよく考えて行うことが望ましい。

 直接操作できるキャラクターはひとりのみだが、プレイ中に切り替えることが可能。「ここであいつにこれを使わせたい!」と思った場合は、実際に操作してバトルを進められるのだ。ちなみにプレイヤーが操作していないキャラクターは、あらかじめ決められた設定にしたがってオートで戦う。この設定は非常に細かく設定できるため、事前準備にしっかりと時間をかければ、それだけ自分の思い通りに戦えるのだ。

 なお、バトルは基本的にリアルタイムで進行する。メニューを開いているときなどは時間が停止するが、「もっとじっくり考えて戦いたい!」という人もいるだろう。そんな人に便利なのが“戦術カメラ”モードだ。バトル中にビューボタンを押すと戦場を上から見下ろしたような画面になり、シミュレーションゲーム感覚で味方に指示を出せる。このモードではRトリガーを引いたときだけ時間が進行するため、より思い通りに味方へと指示を出せるのだ。モードの切り替えはいつでも一瞬で行えるため、強敵と戦うときや、戦局が悪化したときなど、ピンチに陥ったときのみ使用するといった使いかたも可能だ。

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▲戦術カメラモードでは、じっくり考えて細かく指示を出しながら戦うことができる。

 フィールドの至る場所から、鉄やエルフルートといった素材を入手でき、これらを元に新しい武具を作ることが可能だ。またポーションを作成したり、ポーションの能力を強化することもできる。これらアイテムの作成やアップグレードには、設計図が必要となるため、新たな設計図を求めて各地を探索するのも魅力的だ。

 このほかにも、キャラクターの育成やゲーム中に登場する場所やアイテムの解説文“コーデックス”を読みふけるなど、盛り込まれた要素がちょっと膨大すぎて紹介しきれないほど。遊んでも遊んでも底が見えないボリュームの多さは、特筆に値するポイントだ。

 バトルシステムで過去作からもっとも大きく変わったポイントは、“魔道士から回復魔法が(ほぼ)削除された”ことだろう。ではどうやって回復するかというと、回復用のポーションで行う。また持てるポーションの数も限られているため、過去作やほかのRPGと比べ、回復用のポーションの重要度が非常に高くなっていることは頭に入れておきたい。

世界各地を探索する楽しさも!

 基本的には査問会の一員として行動する主人公たちだが、探索要素も楽しめる。マップは移動した場所の地図が判明するオートマッピング形式で、各地を探索して世界の全貌を明らかにしていく醍醐味は、RPGならでは。また特定の場所では査問会のキャンプを設営することが可能。キャンプは、ポーションの補給や体力回復を行える拠点となるため、“まずはキャンプできる場所を見つけ出そう”というように、行き当たりばったりではなく、戦略的な探索が楽しい。各地にあるランドマークを見つけたり、見つけた何気ない文書から新しいクエストが始まったりと、各地を旅して歩き回るおもしろさはしっかりと作り込まれている。

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▲こちらがクエストマップ画面。各地を探索し、地図を埋めていく楽しさを味わえる。クエストの目的地などはマークで表示される親切設計。
▲特定の場所では、拠点となる査問会のキャンプを設営できる。戦闘で消耗したら、いったんキャンプに戻って再起を図るのだ。
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▲入手した素材をもとに、装備を作ったり強化することが可能。生産要素も楽しめる。
▲ローグのみ開けられる扉も存在する。パーティ編成はバランスよく行うと、スムーズに冒険を進められる。

手軽に共闘を楽しめるマルチプレイモード

 本作はマルチプレイモードも搭載している。こちらは本編とはつながりがなく、マルチプレイ専用のキャラクターで遊ぶことになる。キャラクターは12種類存在するが、最初から選べるのは軍団兵、射手、伝承者の3タイプのみ。それ以外は、特定の防具を入手または作成するとアンロックされる。なおアビリティツリーも、マルチプレイ専用のものが用意されている。

 用意された目的地(ミッション)は全部で3つ。フレンドまたはオンライン上のプレイヤーと力を合わせ、目標を達成するために共闘するのだ。ミッションはよくあるWaveタイプではなく、宮殿や遺跡といった小型のダンジョンを探索していくスタイル。当然、敵は山盛り待ち構えているので、いかに上手く敵を排除できるかが成功のキーポイント。筆者も何度かプレイしたが、本編と同様に回復できるチャンスが限られているため、いかにダメージを受けずに戦うかが重要に感じた。

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▲最初に選べるキャラクターは3種類。特定の装備を入手すると、新たなキャラクターが使用可能になる。
▲協力プレイのミッションを手軽に楽しめるのが特徴。仲間が倒れた場合、近づいて一定時間ボタンを押すと蘇生できる。

 ミッションに挑むと、戦いに応じて経験値やアイテムを獲得できる。キャラクターのレベルが上がるとポイントを入手でき、新たなアビリティーを取得してキャラクターを強化できる仕組みだ。ゲームシステムはシンプルながら、短時間で濃い協力プレイが楽しめるため、本編と同じくらい遊び込めそうなゲームモードと感じた。

 練り込まれた世界観に多彩なクエスト、膨大な会話によって変貌していく物語と、非常に作り込まれた力作。さらにマルチプレイも長時間楽しめるとあれば、Game Of The Yearを受賞するのも納得の完成度といえる作品だ。RPGファンであるほど、本作にどっぷりと楽しめることだろう。世界設定は正直作り込み過ぎなので、そのあたりがヘビーと感じる人は、あえてコーデックスを流し読みする範囲に留めるなど、自分に合ったプレイスタイルで対応させていきたい。

 なお、会話が重視されるシステムや膨大な世界設定とコーデックス、リアルタイム寄りのバトルなどは、BioWare制RPGで共通する特徴。もし本作が気に入ったのであれば、シリーズの過去作や『マスエフェクト』シリーズに手を出してみてもいいだろう。

著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当していたフリーライター。久々の『ドラゴンエイジ』は、想像してたよりもはるかに作り込まれた超大作でした!