ふたりが手掛ける新作の情報も……?
アクワイア創立20周年企画第2弾は、アクワイアをこれから盛り上げていく新鋭クリエイターによる対談。スマートフォン用のゲーム『ロード・トゥ・ドラゴン』を手掛ける宮内継介氏と、『ディバインゲート』を手掛ける高野康太氏が、それぞれの作品を評し、またそれぞれの開発スタイルを評するという、一風変わった内容となっている。こちらも、週刊ファミ通2014年12月18日増刊号に掲載された内容から、誌面に載せられなかった情報も含めたインタビュー全文記事となっているので、ぜひチェックしてほしい。
ディレクターとして『ロード・トゥ・ドラゴン』を開発・運営。現在は新規企画を考案中。
■高野康太氏(写真右・文中は高野)
クリエイティブディレクターとして『ディバインゲート』を開発・運営。新規作品を開発中。
約1000種類のユニットが登場するパネルアクションRPG。2012年11月リリース。
パネルを駆使した戦闘が爽快な、新感覚パネルRPG。2013年9月にリリース。
『ロードラ』、『ディバゲ』の開発者がお互いのゲームを遊んだ感想は?
――おふたりの、入社から代表作を手掛けられるまでの経緯について教えてください。
宮内 もともとアクワイアの作品が好きで、いつか自分も開発に携わりたいなと思っていたんです。そうしたら、公式サイトにスタッフ募集の告知が載っていたので、急いで応募して、面接を受けて……といった感じですね。それが7年前で、入社後は『侍道3』や『勇者のくせになまいきだ:3D』などのプランニングを担当するうちに、『ロード・トゥ・ドラゴン』のディレクターをすることになりました。
高野 僕は入社して約3年半になりますが、ディレクターとして世に出たのは、『ディバインゲート』が初めてです。入社の理由は、面接時に遠藤(遠藤琢磨氏)と話をしたところ、非常にフィーリングが合ったんです。世の中でもソーシャルゲームが流行り出した時期だったのにも関わらず、家庭用ゲームを作ろう、と盛り上がったので、ここならおもしろいことができると思ったのがきっかけですね。
――開発者の視点から、ご自身が手掛けられたタイトルの見どころを教えてください。
宮内 『ロードラ』は、ストーリーやキャラクターの造形が好評を博していますが、2Dアニメーションの部分にも注目していただきたいですね。それと、コンシューマーゲームを作り続けてきたメーカーとして、快適な触り心地にもこだわりました。もともと“片手で遊べるRPG”というコンセプトがあったので、手になじみやすい作りになっていると思います。
高野 『ディバゲ』は、独特のアートワークによるスタイリッシュな世界観が注目されていますが、システム面もかなり作り込んであるんですよ。一度クエストを開始すると、あとは瞬発力と、とっさの判断が連続するゲームなので、緊張感やライブ感を盛り上げるための調整は丁寧にしてあります。短い時間で、どこまで計算して戦えるか? そういったプレイを楽しんでいただきたいですね。
――お互いに、それぞれが開発したゲームプレイしてみた感想は、いかがでしたか?
宮内 アートワークもいいけど、いちばんやられたと思ったのは、UI (ユーザーインターフェース)ですね。行動を選択してから攻撃までの一連の流れがすごくスムーズで、カッコいいんですよ。あと、アナウンスボイスが入っているので、サウンド面でも緊張感があって。高野が言っている“スタイリッシュ体験”とはこういうことか! と思いました。
高野 『ロードラ』は、手のひらサイズのゲームとして最適な内容だな、と感じました。どのキャラクターもアニメーションで表現されているのですが、プレイしていると、本当に手のひらの上で動き回っているような感覚になるんですよ。色使いも、『ディバゲ』がビビッドなのに対し、『ロードラ』は中間色がメインのやさしい雰囲気なのが印象的で。手のひらに世界が広がる感じになっているのが、すごくいいなと思いました。
――ちなみにそれぞれの作品で好きなキャラクターはいますか?
高野 僕はイザナギというユニットが好きですね。人間の中に、1体だけペンギンのユニットがいたんです。後で聞いたら、ペンギンではなかったのですが(笑)。あとは、ナタルをメインで使っています。その2キャラには愛着を持っていますね。
宮内 僕は『ディバゲ』では堕王エビルアーサーが好きです。この作品の世界観を象徴したキャラクターだと思っています。
――開発を進めるうえで影響を受けたタイトルなどはありますか?
宮内 学生時代に趣味でフラッシュアニメを作っていたので、そのころの知識を活かしてゲーム内で2Dアニメーションを用いる、という形に落とし込みました。あとは、『カルカソンヌ』というボードゲームも参考にしていますね。
高野 『ディバゲ』は、『ウィザードリィ』が、参考にしているタイトルとしてひとつ挙げられます。ダンジョンRPGをスマホで気軽にできないかと思って研究していました。あと、学生時代にバンド活動をしていたので、ゲームならではのカッコつけかたといいますか、ライブ感、臨場感溢れる見せかたという点は、音楽をやっていた経験が反映されていると思いますね。
慎重派の宮内氏と有言実行の高野氏。代表作に反映されるそれぞれの個性
――クリエイターとして、相手の「ここがすごい!」と思うポイントを教えてください。
高野 宮内は検討に検討を重ねて、穴をすべて埋めるタイプと言いますか。企画書の段階からしっかりと作り込んでいて、抜けているところがひとつもない、というイメージですね。実際に、手掛けた作品はどれも完成度が高いものばかりだし、『ロードラ』なんて、まさにいい例ですよね。そうやって、きっちりと作品をまとめ上げられるところは、さすがだなと感じます。
――それは、ご自身にはない感覚ですか?
高野 感覚というより、物事を決める基準が違うんでしょうね。宮内は問題点をひとつずつ解決していって、全体のバランスを見るタイプです。僕は一方が劣っているなら、もう一方をさらにおもしろくして帳尻を合わせようとするタイプなんですよ。
宮内 高野は、自分に対する自信がすごいよね。もちろん、いい意味で(笑)。出してくる企画もそうだし、発言にもいっさいの迷いがないんですよ。自分が正しいと思ったことなら、まわりの目も気にせずガンガン意見を言う。そのスタイルは、しっかりとゲームにも反映されています。これが新しい、これがおもしろいと思ったものを追求するだけではなく、それによって得られる効果もちゃんと説明できるから、安心して見ていられます。
――お話を聞く限り、ゲーム作りに対するスタンスは正反対ですね。
宮内 高野は、僕のやりかたを慎重なスタイルと言いますが、単純に僕自身が“自分の感覚”を信用しきれていないんです。それだけを判断基準にして本当に正しいか? 自分の思考をいったん疑い尽くして最終的に答えを出す。そういった考えかたで物事を進めるようにしているので、なかなか『ディバゲ』のように、思いきった、尖ったスタイルの作品にはならないのかもしれませんね。
高野 宮内が“負けないように戦おう”とするのに対して、僕は“負けてもいいから気持ちよく戦おう”と考えているところが、そのままゲーム作りにも表れている気がします。UIにしても、宮内なら見やすさ、デザインのきれいさ、使いやすさをバランスよく調整しようとするのに対して、僕の場合は、見づらくて使いにくくても、デザインがいままでにないくらいカッコいいものだったら、それを優先させる、と言いますか。先ほども言いましたが、劣っているところがあっても、それを補うほどの突き抜けた何かがあるのであれば、そのゲームはおもしろくなる! というのが、僕自身のゲームに対する考えかたです。
――なるほど。お互いがまとめられている制作チームも、雰囲気は違うのですか?
高野 そうですね。うちのチームは、とにかくうるさい人間が多くて。夜になるほどテンションが上がって、毎日お祭りみたいにしています。ほぼ男しかいないので、社内では“男子校の校舎裏”と呼ばれていますね(笑)。
宮内 もともとはそんな感じではなかったスタッフも、彼のチームに配属されると、どんどん“高野色”に染まっていくんです(笑)。うちは男女の比率がほぼ同じなので、高た か野の のチームとはノリが違いますね。
――男女比がいっしょということは、女性の意見も反映されやすい環境なんでしょうか?
宮内 『ロードラ』はデザイナーに女性も多いので、色使いやキャラクターのタッチには、女性ならではのセンスが活かされていると思います。ただカッコいいだけじゃなくて、その中にもかわいらしく感じられる部分があったり。だから、『ロードラ』は、このチームだからこそ作ることができた作品だと言えますね。
――お互いに認め合っている点も多いというのは、やはり作り上げるゲームがおもしろいから、ということでしょうか?
宮内 先ほどの話にもあった“負けてもいいから突っ走る”というのは、なかなか真似できないところです。ふつうなら、どうしてもリスクを考えて、ブレーキを踏んでしまう。それが、全力でいって、崖から落ちるときはいっしょに落ちようぜ、というスタイルでいけるところは素直にすごいと思います。そういう姿勢で作っている姿は、傍から見ていてると楽しそうなんですよね。世に出たときにどんな反応が返ってくるのか興味があるし、自分も見てみたいと思います。
高野 そういった意味では、宮内さんはどんなときでも、キレイにきっちりしているイメージですね。スケジュールも細かく仕切っているし、チームメンバーにお土産をひんぱんに買っていったりというケアもしている。チームの“お父さん”的な感じがします。僕が突っ走るタイプだとしたら、宮内さんは、みんなできっちり、大縄跳びで飛ぶことを心掛けているんですよね。うちは、ひとり倒れていても回し続ける感じ(笑)。僕が乱暴な人みたいですけど、そういうチームの違いはあります。あと、作ったゲームではなく、企画書を見た時点で、この人は考えていることがすごいなって感じるんですよ。確か、入社した初日に、僕と宮内は企画書を見せ合うことがあったんです。そのとき見せてもらった企画書が、すごくて。それまで自分のまわりには敵はいないと思っていたんですよ。企画書を作るスピードや精度には自信があったんです。でも、宮内の企画書を見て、初めて「これはヤバいな」と感じました。そういう意味では、いままでに見てきた企画書の中で、宮内はズバ抜けていいものを作っていたんです。世の中に出ていない企画の中にも、いっぱいいいものがあるので、嫉妬していますね。
――ちなみにおふたりをそれぞれ何かにたとえるとしたら、何になると思いますか?
宮内 難しい質問ですね(笑)。うーん……。
高野 そうですねぇ……。弊社の新しいロゴがヒントになるかもしれませんね。宮内はバランスが完璧な“正三角形”だと思います。
宮内 なるほど。それなら高野は、1角が30度の“直角三角形”じゃないですかね。「尖ってココロに刺さる」から。
2大タイトルがついにコラボ! 完全新作タイトルも同時進行で開発中
――おふたりの近況を教えてください。
宮内 10月末に実施した『ロードラ』の大型アップグレードが、たいへんご好評をいただきました。とにかく年内は『ロードラ』の運営で大忙しですね。とはいえ、まだ構想の段階ですが、いくつか新作の企画も考えていますので、そちらにも期待していただきたいです。2015年の早めの段階で、何らかの発表はしたいと考えています。
高野 『ディバゲ』に関しては変わらずに全力投球で取り組みながら、新作の開発も考えています。現状では、イメージビジュアルのラフ(右記を参照)しかお見せできないのですが、こちらの絵からもわかる通り、舞台は都内のある場所です。エンディングまできっちりと描いた、ボリュームのある家庭用ゲームになりますので、ご期待ください。イラスト内に描かれている“雲”については、ぜひいまから想像しておいてください。ゲームシステムにも関わるモノかもしれませんよ?
――それぞれの新作も楽しみですが、『ロードラ』と『ディバゲ』のコラボレーションというのは行われないのでしょうか?
宮内 じつは、ずっとやりたかったコラボ企画が、ようやく実現に向けて動き出しています。もっと早くやりたかったんですけどね。コラボを実施する時期や内容は、現時点ではまだ言えないのですが、両タイトルのキャラクターにプロフィールが用意され、それに沿ってストーリーが展開していくので、おもしろいことになると思いますよ。
高野 『ディバゲ』のキャラクターは止め絵しかないので、それが『ロードラ』でアニメーションで動く姿は僕自身も見てみたいですね、
――両作品の今後の展開にも注目ということで、最後に意気込みをお願いします。
高野 20周年を節目に、アクワイアはさらに進化していくと思います。古きよき伝統は守りながら、新しい試みにもどんどんチャレンジしていきたいですね。これから発表する新作でも、いい意味でユーザーの皆さんの予想を裏切っていきたいし、「ここまでやるとは、さすがアクワイアだな」と言っていただけるような、極端に尖ったタイトルを提案していくつもりです。油断せずに、すべてを受けとめる覚悟で準備をしておいてください!
宮内 『ロードラ』と『ディバゲ』のコラボにせよ、それぞれの新作にせよ、皆さんに喜んでいただけるタイトルを、これからも作り続けていきます。一見すると、丸みを帯びた、手になじみやすそうな外見だけど、ある一点に関しては針のように鋭く尖って、皆さんの心に突き刺さる。そんなタイトルを目標に、これからもがんばります。