新境地のバトル表現に燃えろ!

 曲線の用いられた武器を携え、純白の衣装に身を包んだ登場人物たちは、皆まるで騎士を思わせる出で立ち。彼らは“正義”の名の下に結成された特殊部隊“七聖騎士団(セブンスコード)”。宇宙より飛来した未知の鉱物“発掘された超金属(オーパーツ)”と融合を果たし“不死性”を獲得した“召喚せし者(マホウツカイ)”を討ち、具現化された“戦略破壊魔術兵器(マホウ)”の回収のため、任務難度(ミッションランク)SSS級の戦いが幕を開ける――!

 何を言っているか、さっぱりわかりませんね。こんな感じで片仮名のルビが振られた専門用語が飛び交いながら刃と刃、閃光と閃光が激突して熱い火花を散らしまくる。それがプレイステーション Vitaで発売される『カデンツア フェルマータ アコルト:フォルテシモ』です。専門用語といってもただ難しい漢字があてられているだけではなく、それぞれにきちんと奥深い設定づけが行われているので、近年のライトノベルなんかのノリが大好きなプレイヤーなら垂涎ものの1本となっている。更に、従来のボタンを押してテキストを読み進めるというアドベンチャーゲーム鉄板とも言えるゲーム進行に一石を投じ、新しいステージへと進もうとする新たな試みが幾つも搭載されている意欲作でもあるのだ。

中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_01
中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_02
▲劇中では登場人物どうしの熱いバトルが要所でくり広げられるのだが、キャラクターが必殺技の名前を声高に叫んでくれる。

謎に満ちたシナリオをふたりの主人公の視点で体験せよ!

 本作では登場人物たちが大きくふたつの勢力に分けられている。“発掘された超金属(オーパーツ)”の力を操る、神に近しい存在である7人の“召喚せし者(マホウツカイ)”と、それを討ち果たさんとする“戦略創造技術兵器(キセキ)”の使い手、特殊部隊“七聖騎士団(セブンスコード)”だ。ゲームを開始するとキセキツカイのフレイアと、マホウツカイのリーダー的存在である芳乃零二の両者からプレイヤーの視点役となる主人公を選ぶことになる。

 ふつうのアドベンチャーゲームであれば、選択しなかったほうの主人公は本編で敵として登場し、そちらの物語はまたつぎの周回で主人公を選び直すという流れになりがちだが、本作ではゲーム中の好きなタイミング(戦闘中以外)でプレイヤーの目となり耳となる主人公を入れ替えることができ、同時期に発生したイベントでの両勢力の温度差なんかを楽しむことができる。たとえば、キセキツカイ側では皆が神妙な面持ちで敵の情報を整理し作戦会議を行っているのに、かたやマホウツカイ側では主人公を取り合ってラブコメ展開がくり広げられていたり……。両勢力を俯瞰できるプレイヤーだからこそニヤリとする展開だ。

中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_03
中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_04
▲双剣を操る眼帯褐色美少女のフレイアと、かつて大きな戦いを勝ち抜いた経験のある少年・零二。美少女の視点になりたいか、美少女に囲まれた生活を送りたいか、重大な選択だが、プレイ中に視点変更を行えばその両方を好きなタイミングでまとめて楽しむことが可能!

もう傍観者ではいられない! 運命に介入し結末を切り拓く斬新なバトルシステム

 本作の最大の特徴と言えるのが、バトルシーンに搭載され、プレイヤー自身が戦闘の結果に介入できる“F.F.OBS(フリーフィニッシュ・オーケストラバトルシステム)”。キャラクターたちが対峙し、得物をかまえ、突入するバトルシーン。交差する剣戟(けんげき)、まばゆい閃光がほとばしり、息もつかせず強烈な一撃がつぎつぎとくり出される迫真の戦闘。手に汗握る一進一退の攻防を、先へ先へと読み進めていくと……本作では必ず敗北という結末が待っている。そんな絶望的な運命に一石を投じるのが、プレイヤーの手によるキャラクターへの指示だ。

 なんと本作では、戦闘中にプレイヤー自身の望むタイミングで操作キャラクターに必殺技を撃たせることができるのだ。ただし、戦う相手も並みいる手練れ。ただ何となくボタンをタップするだけでは強力無比な一撃も防がれてしまう。プレイヤーはテキストを読みながら主人公の視点を介し、キャラクターの一挙一動に注目し、目まぐるしく展開される攻防から戦いの機微を読み取って、最適のタイミングで必殺技をくり出す必要があり、これによって主人公との一体感とも言える物語への没入感を得られる。ちなみにフレイア以外のキャラクターを操作する場合は、そのキャラクターが持つ数種類の特技の中から戦況に最適なものを選択する、さらに異なったプレイングが要求される。そのほかにも、戦闘中にキャラクターに戦略的な行動をとらせる“EXS(エグゼス・システム)”などが搭載されていて、1度のバトルが非常に濃密な作りになっている。

 筆者の個人的な嗜好ではあるが、テキストを読み進める性質のアドベンチャーゲームはプレイヤーの想像力に頼る部分が大きく、楽しむためには物語とその登場人物へどれだけ強く感情移入し、自分自身を物語の中へと投影できるかでプレイの満足度がかなり違ってくる。その点、本作は搭載された独自のシステムにより、このうえないプレイヤーと物語との一体感を産み出しており、戦うキャラクターたちの“熱”がこちらにも伝わってきて熱い気持ちにさせてくれる。

中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_05
中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_06
▲戦闘が始まると“FF”アイコンが解禁され、任意のタイミングでタップできる。敵が策を張ろうとする瞬間、大技をくり出すスキ、さまざまな状況から最適のタイミングを見極めよう。
中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_07
中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_08
▲必殺技を発動させ状況の打破に成功すると、それによって相手の戦法も変化し、戦闘はつぎの段階へと移行する。主人公であるフレイアの必殺技の回数制限は3回。全力をもって強敵を打ち破るのだ!

戦いの合間に、ほっこりする日常シーンも充実

 とにかく熱く力の入ったバトル描写が魅力的な本作だが、もちろん登場する女の子は皆美少女揃い。“燃え”だけでなく、“萌え”もしっかり感じさせてくれる作りになっている。

 戦いの合間には、舞台となる月読島を散策する日常パートが挿入される。こちらもアドベンチャーゲームにしては自由度が高く、島にある施設の一覧から自分が行きたい場所を実際に選択して移動可能。島の施設もショッピングモールから学校、砂浜、教会、温泉など多彩なラインアップのイベントが用意されている。“七聖騎士団(セブンスコード)”の熟練の使い手といえど、ひとりの人間なのだな、と愛着が持てるシーンも多数あり、キャラクターへの理解度を深めてくれる。

中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_09
中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_10
▲こちらは戦いを控えた“七聖騎士団(セブンスコード)”の決起集会会場。ロケーションはなんと島の居酒屋(笑)。未成年はミルクを飲むべし。
▲ショッピングモールで携帯電話を購入したフレイア。機械にはウトいので仲間たちから教えてもらっているようだ。
中二病上等! 熱く燃え上がれるバトルアドベンチャーゲーム『カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ』の魅力をお届け_11
▲温泉があるとなったら、お約束のムフフなイベントCG! 裸の付き合いをしてこそ戦友としての絆も深まるというもの!

 “燃え”と“萌え”が同居し、アドベンチャーゲームとしての基本を押さえつつ、画面タッチやプレイ状況のTwitter連動機能などプレイステーション Vitaの機能を活用し、さらに新機軸のバトルシステムを搭載した本作はまさにノベルゲームの新時代を開拓しようとする意欲作だ。アツくなれるバトル、中二病上等の重厚な世界設定、そしてプレイヤーとキャラクターとの一体感。新時代の幕開けに立ち会いたいプレイヤーから、少年漫画のような燃える展開が大好きなプレイヤー、生粋の美少女ゲーマー、褐色眼帯美少女大好きゲーマーまで幅広い層にオススメできる1作となっている。本作は体験版が無料で配信されているので、『カデンツァ』の雰囲気を味わいたいなら、まずはそちらをチェックしてみるのもいい。

(文:ライター・さいとう)


カデンツァ フェルマータ アコルト:フォルテシモ
メーカー 5pb.
対応機種 PSVPlayStation Vita
発売日 2014年12月11日発売予定
価格 6800円[税抜](7344円[税込])
ジャンル アドベンチャー
備考 限定版は9000円[税抜](9720円[税込])、ダウンロード版は6000円[税抜](6480円[税込]) 脚本:神夜優、johnny、村上佐知子、ごとうしん、原画:大場陽炎、結月かりん、こなた、丸山クレヒロ、蛇ノ眼、卯翠 芯、秋蕎麦、かゆらゆか、櫻野露