開発者ふたりからの序盤のアドバイスも

 セガが2014年11月27日に発売を予定しているプレイステーション Vita用ソフト『ファンタシースター ノヴァ』。ここでは、開発を終えたばかりだという、同作のプロデューサーの都築靖之氏とディレクターの山下浩平氏へのインタビューをお届けしよう。インタビューでは、ゲームの新要素やコンセプなどを語っていただいた。

『ファンタシー スターノヴァ』“汚れた”世界観になった理由とは? シリーズから大きく変化したコンセプトが語られた開発者インタビューをお届け_06
▲山下浩平ディレクター(左)と、都築靖之プロデューサー(右)。

――まずは、開発を終えられたいまの、率直な感想をお聞かせください。

山下浩平(以下、山下) 長かったですね。何せ、開発が始まったのが2年以上前になるのですから。本作は『ファンタシースターオンライン2』の移植作だと誤解されることが多いのですが、共同で開発をしていただいたトライエースさんのエンジンに載せるために、ほとんどイチから作り直す形になったんです。実際はモデルの一部を流用したくらいで、プログラムも最初から書き直したため、その作業量は気が遠くなるくらい膨大なものでした。しかし、長い時間をかけたおかげで、トライエースさんらしさ、『ファンタシースター』らしさを存分に出すことができたと自負しています。

都築靖之氏(以下、都築) 僕のなかでは、このゲームの開発はまだ終わっていません。プロモーション周りも継続中で、ダウンロードコンテンツの制作や、さらには中文版のローカライズ作業も進んでいて……と、ぜんぜんひと息つける段階ではないです。これからもまだまだ大変です。

――新しい『ファンタシースター』シリーズということで、ファンの期待に応えなければならないことと、新鮮さを出さないといけないというプレッシャーがあったと思います。その点はどのように考えていたのでしょうか?

山下 まず、『ファンタシースター』シリーズに期待されているのは“自由”だと思うんです。好きなようにキャラクタークリエイトをして、いろいろな武器やスキルを覚えて、アクションを楽しむという点は、『ファンタシースター ノヴァ』でも変えていません。その点を踏まえて、『ファンタシースターオンライン2』にはない新しい惑星、敵、戦闘システムを取り入れて、差別化を図りました。

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――ゲームをプレイしたところ、“サバイバル感”が強く打ち出されている印象を受けました。“サバイバル”の要素を取り入れたことには、どのような理由があるのですか?

山下 『ファンタシースター』シリーズそのものに、“SF的で、きれいな世界のRPG”というイメージがあったと思うんです。そこで本作では新鮮さを出すために、あえて“汚す”ことを考えました。本作では、文明の発展した世界で暮らす人々が、ある日突然原始的な世界に放り込まれ、必死で生き抜いて、脱出しようとするんです。もう衣服なんてボロボロ、泥まみれですよ。そこに、いままでの『ファンタシースター』にはないおもしろさがあると、手応えを感じていました。

都築 自分たちが住む場所をイチから作るというところも魅力的ですね。本作では、ゴザを敷いたような貧乏臭い露店が、どんどん立派に、快適な環境に進化できるようになっています。居住環境がよくなりすぎて、そのうち「冒険に行かなくてもいいのでは?」、「脱出しなくてもいいのでは?」と思ってしまうかもしれませんね(笑)。そんなところもぜひ楽しんでいただきたいです。

――サバイバル感だけでなく、たしかにそういったカスタム性が楽しめる部分もありますね。

山下 キャラクタークリエイトももちろんですが、“武器アタッチ”もおもしろいものに仕上がっています。たとえば、剣の先にもう1本剣をつけて鎌みたいな武器に作り変えることができるんです。拡大と縮小もできるので、“脇差”みたいな刀を巨大な剣に変えてしまうこともできます。ほかにも“スキルボード”では、さまざまなスキルをはめていくことで、複数の効果が得られたり、隣あったスキルどうしで“コンボ効果”が発動したりするので、いろいろな組み合わせを試してみてください。

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――サバイバルと言えば、本作には“コールドスリープ”という要素があるのですが、これはどういうものなのでしょうか。

山下 ランダムでNPC(ノンプレイヤーキャラクター)をコールドスリープから解凍させて、「お前は今日から、アイテムショップの店員だ」とか、「お前は俺といっしょに冒険に出るぞ」などと、役割を与えていくことができるというものです。NPCには“戦闘でレアアイテムを落としやすくなる”などの特徴があるので、それに沿って配置してもいいですし、見た目がかわいいキャラをアイテムショップに置いておくというのもアリです。解凍を進めて行くと、どんどん拠点がにぎやかになっていくことも魅力になっています。

――マルチプレイについて、本作ならではの独自性があれば教えてください。

山下 大きな敵“ギガンテス”との戦いは独自性があります。たとえば、“パイル”という武器を打ち込んで、その場所をみんなで殴ったりすると効率的に戦闘を進められます。「右から攻めよう」、「それだったら右側にパイルを刺すよ」っていうふうに、みんなで倒しかたを組み立てていくのが楽しいポイントですね。

――ギガンテスはどれも特徴的なデザインになっていますね。

山下 ギガンテスにはテーマとなる武器をそれぞれ持たせています。こいつはチェーンソー、こいつは火炎放射、こいつは大砲みたいな感じで。巨大な“怪獣”と闘うようなワクワク感やバリエーションの多さを楽しんでほしいですね。そうそう、ギガンテス捕獲所という施設が拠点にあるのですが、そこでギガンテスを見ると意外とかわいいんですよ。本来凶暴な生き物も檻に入れてじっくり見ると違って見えるというか、動物園で観察している感じですね(笑)。

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――キャラクターはどこか欠点を抱えた人物が多く、魅力的でした。

山下 本作のキャラクターに、完璧な人間はいません。みんなどこかで、サバイバルの中で“背伸び”をしているんです。たとえば屈強に見える女隊長のフィルディアにしても、“自分には能力が足りないけど、自分しかできる人がいないから、能力以上のことをしなければならない”などと悩んでいるんです。実生活もそんなものですよね。そういう意味では、多くの人に共感してもらえるキャラクターたちが作れたと思います。

――現在“序盤体験版”が配信中ですが、前回の“バトル体験版”からどのようなところが変わったのでしょうか。

都築 移動速度や足場の作りかたなど、ユーザーの方の指摘を受けて、さまざまな修正を施しています。また、『ファンタシースター』シリーズのウリであるキャラクタークリエイトを試したいという意見が非常に多かったので、そこも含めて序盤を丸ごと楽しめるようにしました。無料でプレイできますし、製品版へのデータの引き継ぎもできますので、ぜひ気軽に遊んでみてください。

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――本作は『ファンタシースター』初心者にもおすすめということですが、どんな点が挙げられますか?

都築 本作はRPGなので、レベルの概念があります。レベルを上げれば、誰でもクリアーできるという救済措置があるので、アクションが苦手な人でも安心してプレイしていただくことができるでしょう。また、本作は『ファンタシースターオンライン2』のシステムを再構築しているので、操作感や基本的な遊びかたはあまり変わっていません。慣れている人なら、培ったテクニックを活かしてガンガン進んで行けるかもしれませんね。もちろん、歯応えのあるステージも用意していますので、コアゲーマーの方も楽しみにしていてください。

——序盤をプレイするにあたり、何かアドバイスがあれば教えてください。

山下 クラスを選ぶ際、アクションゲームが好きな方にはハンターを選んでいただきたいですね。ハンターなら、敵の予備動作からつぎの行動を予測し、攻撃をかわしつつアタック……という、本格的なアクションを楽しむことができます。反対に、アクションは苦手という方には、フォースがオススメです。フォースなら遠距離から攻撃できるので、敵の動きを気にせずに体力を削っていけますよ。

都築 僕から伝えたいのは、“アイテムはけちらずに、どんどん使ってほしい”ということです。本作では、アイテムをひとつ作るにしても、素材を集めてアイテムショップに持ち込んで加工する……という手間がかかります。そのため、ついつい使用をためらいがちになるのですが、ストーリーが進めば素材もたくさん手に入り、簡単にアイテムを作れるようになるので、出し惜しみせずに積極的に使い、快適なゲームプレイを楽しんでいただきたいですね。

山下 アイテムショップと武器ショップ、クラスカウンターは最優先で作ったほうがいいと思います。マメに武器を作ることで、より戦闘を進めやすくなるはずです。

都築 そこは悩むところですね。人によってはエステやコスチューム屋を選ぶ人もいるだろうし……でも、ゲームを楽に進めたいなら、アイテムショップは必要だと思います。また、食堂も重要です。ちゃんとご飯を食べてからクエストに出ると、いままで勝てなかった敵にも勝てるようになるかもしれません。

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——最後に、読者の皆さんに向けてメッセージをお願います。

都築 新しい『ファンタシースター』を目指して開発に取り組んできました。トライエースさんの協力を得て、非常に遊びやすい作品に仕上がっているので、いままでシリーズ作品をプレイしたことがない方も、本作をきっかけに『ファンタシースター』を知っていただいて、シリーズそのもののファンになってもらえるとうれしいですね。

山下 ぜひ、配信中の“序盤体験版”をプレイしてみてください。拠点のカスタマイズ、コールドスリープ、スキルの組み合わせなど、体験版に収録されていない要素はまだまだ大量にありますので、ぜひ製品版でそれらのやり込み要素にも触れてみてください。

 『ファンタシー スターノヴァ』の“序盤体験版”をプレイすれば、都築靖之氏と山下浩平氏が語った、従来の『ファンタシースター』シリーズから大きく変化したコンセプトが実感できるはず。ファミ通.comの特設サイトでは、さらに踏み込んで『ファンタシースター ノヴァ』の世界観を紹介しているので、体験版をプレイする前に、一度覗いてみてはいかが?

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