『シヴィライゼーション』シリーズの全貌に迫る!
2KおよびFiraxis Gamesは、発売中の『シヴィライゼーション』シリーズの完全新作『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』について、本作の開発スタジオ“Firaxis”の歴史と、クリエイティブディレクター シド・マイヤー氏のコメントを公開した。
■『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』とは
『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』は、サイエンス・フィクションをテーマにした『Civilization』シリーズの完全新作。従来のシリーズのゲームの歴史概念を超え、エイリアン世界における人類の未来を切り開くことによって、人類の文明の発展を推進。プレイヤーはさまざまな文明を導いて未知の惑星を開拓し、人類の未来を切り開く。多岐にわたる技術の進化、選択した文明のカスタマイズ、そして未知の惑星での選択に基づきそれぞれのアイデンティティそのものを変化させていくなど、プレイヤーはまったく新しい『Civilization』を経験することになる。
■スタジオ:Firaxis
Firaxisは1996年、ジェフ・ブリッグス、ブライアン・レイノルズ、シド・マイヤーという3人のベテランゲームクリエイターによって創設。しかしその歴史は、有名パブリッシャーのMicroProseと切っても切れない関係にある。
1982年、プログラマーのシド・マイヤーと退役空軍パイロットの“ワイルド”ビル・スティーリーが、共通の友人を通じて知り合う。お互い航空学に興味があったふたりはたちまち意気投合し、MicroProseを設立。間もなく、マイヤーが完成させた最初のゲーム、『Hellcat Ace』を発売します。MicroProseはすぐに利益を上げはじめ、1986年には、おもにフライトシミュレーターで数百万ドルもの売上を記録した。そして1987年には、『Computer Gaming World』誌上でコンピューターゲーム会社トップ5に選ばれるまでに成長する。
1993年、大手シミュレーションパブリッシャーのSpectrum HolobyteがMicroProseを買収し、1996年の『Civilization II』発売から程なく、マイヤーはMicroProseを退社する。そして元同僚のブライアン・レイノルズとジェフ・ブリッグスとともに、Firaxisを立ち上げた。新生Firaxisで開発された最初のゲームは、南北戦争を題材にしたタイトル数本と、『Civilization』のシステムを踏襲した『Sid Meierʼs Alpha Centauri』となる。『Alpha Centauri』は大ヒットし、その後も『Civilization III』、『Sid Meierʼs Pirates』と次々にリリースを重ねられている。
当初 Firaxisは、Electronic ArtsとHasbro(後のInfogrames、さらに後のAtari)というパブリッシャー2社と提携していたため、初期に制作したゲームの権利の多くは、これらのパブリッシャーが保有していた。2004年、Take-Two Interactive/2K Gamesが『Civilization』の権利を獲得し、2005年にはFiraxisを傘下に収めることで、ようやくスタジオとその代表作が再会を果たしたのである。
その後10年の間に、Firaxisは『Civilization IV』と『Civilization V』をリリース。同作の拡張パックを多数発売したほか、『Sid Meierʼs Railroad』と『Colonization』のリメイク版もリリースされている。さらに2012年には、90年代前半にMicroProseから発売されたターン制戦術戦闘ゲーム『XCOM: Enemy Unknown』をリメイクし、自社の優れたゲームを再リリースしている。
Firaxisはモバイルゲームにも参入し、2013年には『Haunted Hollow』をリリース。続いて革新的なドッグファイト戦略ゲーム『Ace Patrol』と『Ace Patrol: Pacific Skies』もリリースしている。
2009年にはスタジオをメリーランドに移設。現在のスタッフ数は120人。2012年には、『Game Informer』誌上で“デベロッパー・オブ・ザ・イヤー”に選出されている。
■『Civilization』という伝説を創った男
シド・マイヤー氏は、Firaxisのクリエイティブディレクターでるとともに、スタジオの要。そして、史上最も成功を収めたゲームクリエイターのひとりでもある。30年以上ビデオゲーム業界で活動し、次々とヒット作を世に送り出している。作品にみずからの名を冠し、全世界の何百万という戦略ゲームファンに、極上のゲームプレイと、品質と、楽しさを保証する。そんなゲームクリエイターが、ほかに何人いるだろうか。
当然、数々の賞にも輝いており、ゲーム情報ウェブサイトの“GameSpot”は彼を「ゲーム業界のヒッチコック、スピルバーグ、エリントン」とたたえ、“史上最も影響力のあるゲームクリエイター”に選出している。インタラクティブ芸術科学アカデミー(Academy of Interactive Arts & Science)からはふたり目の殿堂入りメンバーに任命され、Game Developers Conferenceでは生涯功労賞を受賞。ゲーム情報ウェブサイトの“IGN”では“史上最高のゲームクリエイター”第2位に選出されている。こうした輝かしい経歴とは裏腹に、シド・マイヤー本人はとても腰が低く、少しシャイな印象さえ受ける人物だった。
――ご自分のことをどう思いますか?
この世で一番素晴らしい仕事に就けて、本当に幸運な男だと思います。普段、私は誰かと共同で仕事をしますが、Firaxisでは、スティーブ・マーティン(Firaxis社長兼スタジオリーダー)がビジネス面を担当してくれるので、私はクリエイターとしての仕事に専念できるんです。
ビル・スティーリーとMicroProseを始めた頃も、同じようなやりかたでした。一方、“シド・マイヤー”ブランドの話でしたら、自分とはまるで別の存在といった感じですね。箱に描かれた、“シド・マイヤー”というキャラクターです。私たちが作るゲームのファンだというプレイヤーの皆さんと直にお会いするのはうれしいことですが、どの業界でもいっしょで、自分の評価はいつも最新作で決まります。新しい挑戦や期待があるからこそ、つねに意欲を保てるんです。
――パッケージに名前を載せるのは、ビル・スティーリー氏のアイデアだったんですよね?
ええ。『Hellcat Ace』と『F-15 Strike Eagle』というゲームを作った後で、私が今度は『Pirates』というゲームを作りたいと言ったら、ビルが、「箱に君の名前を載せたら、『F-15』を楽しんでくれた人が、その海賊のゲームも手に取ってくれるんじゃないか?」と。それで、『Pirates』がうまくいったので、「1回成功したら次も」という感じです。
この名前で、特定のアプローチと、戦略と、これまでの歴史が伝わる。ゲームプレイ重視の、プレイヤーに語りかけるゲームだと分かってもらえます。
――いまやターン制ゲームのブランドですね。
そう、だから私は、ブランド名としての“シド・マイヤー”は自分とは別の存在だと思ってるんです。そう思わないと、正気ではいられない。ときどき、過度の期待をされることもあります。「ゲームの未来はどうなるか」なんて質問をされたり。私に聞かれても困ってしまいますよ。でも、いまは折り合いをつけました。面白い現象ですよね。このブランドのおかげでゲームを作る機会をもらえているけれど、私の日々の仕事に変化はありません。
――『Civilization』は、先頃亡くなられた作家イアン・バンクス氏のお気に入りのゲームでした。愛読書はありますか?
『Great Exploration Hoaxes』という本が気に入っています。「自分はあんなことをした、こんなことができる」と嘘をついていた人たちの話で、北極を発見したと主張した料理人の話などが載っているんですが、とても面白かったです。私は、面白い挑戦をした人たちを題材にした歴史の話が大好きなんです。歴史の人間的な側面に興味があって。『Civilization』をプレイする人たちは、ゲームに自身を重ね合わせて楽しみます。「もし自分がナポレオンで、ロシアを侵略したらどうなるだろう?」という具合に、その状況を想像できる。ゲームではいろいろな状況を体験できます。それは大抵、普段の日常生活よりもずっと面白いもので、自分の判断で重要な決断ができるわけです。自分が第2次世界大戦のパイロットで、地球をエイリアンから防衛する立場だったらどうするかとか。英雄になったつもりで想像できるんですね。
ほかにも、いろんなノンフィクションをよく読みます。マッキンリー大統領の暗殺に関する本を読んだんですが、エジソンが呼ばれて、死体のどこに弾丸があるのか調査するんです。その当時から世界は様変わりしたのに、いかに人間が変わっていないか思い知らされました。その状況に自分を投影できるから、緊張感を味わえる。それがたまらないんです。プレイヤーの思考と自分を重ね合わせるという心理的な要素は、ゲームデザインではとても重要です。プレイヤーは実際にゲームをプレイしながら、どうすればうまくいくのか、どうすれば失敗するのか、どうすれば楽しいのかあれこれやってみては、リセットして、ほかのアプローチを試したりします。そういう彼らの心理に自分を重ねる能力が大事です。
――作業中のプログラマーを見ていると、「十分に発達した技術は魔法と区別がつかない」というアーサー・C・クラークの有名な言葉が浮かんできます。あなたはどのように感じますか?
もう長いことやっているので、完全に無意識ですね。何かアイデアが浮かべば、それを実現できる。もはや私にとっては、自然に扱える言語です。新しいアイデアを試して、それを機能させるのはお手の物です。身体に染み込んでいますね。
――ほかのビデオゲームやボードゲームもプレイしますか?
ええ。本当はもっとできればいいと思うんですが。『Minecraft』や『Starcraft』のような作品が出たら、すぐ飛びついて楽しみます。いまは本当にたくさんのゲームがあるので、あれもこれも試してみたいと思うときもありますが、私にとって一番楽しいのは、新しいゲームを作っているときです。ほかのゲームをプレイするのは、口直しのようなものですね。
――新しく登場したゲームをプレイすれば、新たなメカニクスや手法を発見でき、それらを組み合わせる方法にも気づかされますね。
そのとおり。私たちは、つねにほかのゲームからアイデアを借りて、その上に新しいものを築きます。それがこの業界の強みなんです。FPSを1作プレイすれば、次からはコントローラーのボタンの配置が分かる。私はいつも、そんなふうにゲームをプレイしています。デザイナーの視点で見る、ということですね。自分のゲームをプレイするときは、批評家の視点で見ます。ほかの人のゲームをプレイするときも同じです。
――『Civilization: Beyond Earth』では、制作に直接関わっていますか?
クリエイティブ面の監督はしていますが、デザインを担当したのはデイビッドとウィルです。それがFiraxisのやりかたなので。才能ある人材に自由にやらせて、彼らの創作の邪魔をしないようにしています。
――『Alpha Centauri』の制作時に行われたリサーチは、とてつもない量でしたね。
あのタイトルのリードデザイナー、ブライアン・レイノルズの功績は多大なものです。あれだけの背景設定と世界観を生み出したのは、並大抵のことではないと思います。『Alpha Centauri』に取りかかるまでSFに手を出さなかった理由は、歴史ものなら、背景設定はすでに存在しているので、プレイを始める前にあれこれ説明する必要がなかったからです。『Alpha Centauri』では、背景設定を明らかにすることがゲームの一要素でした。ブライアンはそれを見事にやってのけてくれました。
――『Civilization: Beyond Earth』で、ある意味それがよみがえったわけですよね。
Firaxisにとって、本当にワクワクすることです。これまでリクエストが一番多かったゲームの1つですからね。ファンの皆さんと話すと、いつも要望が一番多いのがSF版『Civilization』と『Pirates』でしたから。
――『Civilization』がこれほど見事に未来へ移行したのを見て、どうですか?
最高ですよ! これほど広範な設定やアプローチに、ひとつのシステムが適用されているというのは、素晴らしいことです。第1作目の『Civilization』を開発していたときは、試行錯誤しながら作っていました。そのとき私たちが取り入れたコンセプトが、『Civilization II』、『CivilizationIII』、『Civilization IV』、『Civilization V』にも生かされて、いま『Civilization: Beyond Earth』でも生きている。こうしたテーマを身近なものにできたことは、なんだか不思議に思えるぐらいです。シューティングゲームみたいに、もはや共通言語なので、新しいこともすぐに取り入れることができるんです。
――ほかの戦略シミュレーションゲームをプレイすると、『Civilization』をベースにしている要素がたくさん見受けられます。あなたが作ったゲームが、1ジャンルを築いたことになりますね。
そう! 素晴らしいことだし、誇りに思います。『Civilization』が、ほかのデザイナーたちが独自の楽しさを生み出す力になっている。これはとてもうれしいことです。長年生き残ってこられた、数少ないジャンルのひとつです。
当初ゲームプレイ重視の方針をとったのは、グラフィックス上の制限でそうせざるを得なかったからでした。でも、ゲームプレイが堅牢だったおかげで、中身の詰まった、一貫性のある安定したジャンルでありつづけることができたんです。
――10年後は何をしていると思いますか?
ゲームを作っていたいですね。ゲーム作りが大好きですから。最高に楽しい仕事ですよ。毎日が新鮮で、新しい挑戦や達成感をもたらしてくれますし、満足感も得られる。技術の発展がもたらすものを目の当たりにするのもワクワクします。
どこで、どんなふうに、どんなプラットフォームでゲームがプレイされているかとか。でも、やはり重視するのはゲームプレイです。テクノロジーは私たちの進路を変えるものではなく、新しい可能性や選択肢を与えてくれるものです。ゲームはいずれ世界を支配するというのが私の持論で、それはいままさに起こりつつあると思います。ゲームには他の娯楽にはない魅力がある。双方向性とか、個人的なつながりとか。多くの人にとって、それは魅力的で、満足感を得られるものだと思います。
――自分の人生で、一番大きな功績はなんだと思いますか?
私は、この業界で活躍する多くの人に、ゲームを制作する機会をもたらす役割を果たせたと思います。Firaxisにも、自分が好きな仕事に就いているスタッフがたくさんいる。自身の仕事レベルでの貢献としては、それが挙げられると思います。彼らの中には、独立して自分のスタジオを構え、戦略ゲーム開発のノウハウを広めた人もいる。そして、私にとってもうひとつ大切なのは、私たちが作ったゲームをプレイした人たちが楽しんでくれることです。会ったこともしゃべったこともなくても、ある意味、私はプレイヤーの皆さんとつながっている。『Civilization』のファンに出会うと、私と彼らのあいだには共通の言語と絆がある。初対面なのに、まるで以前からの知り合いみたいな感覚です。それから最後にもうひとつ、ゲームを作れる業界にいるということ。これは本当に素晴らしいことです。