テーマは“領域を超えた戦い ~勝利へのキーワードはリテンション~”

KADOKAWA・DWANGO ファミ通グループ代表の浜村弘一による講演“ゲーム産業の現状と展望<2014年秋季>”が開催_01

 KADOKAWA・DWANGO 取締役である浜村弘一ファミ通グループ代表(以下、浜村代表)が、業界アナリスト及びマスコミ関係者に向けて行う恒例の講演“ゲーム産業の現状と展望”。同講演の<2014年秋季>が2014年10月10日に開催された。今回のテーマは“領域を超えた戦い ~勝利へのキーワードはリテンション~”。

 順調に成長するスマートフォン市場とPS4とXbox Oneの登場で活性化してきた家庭用ゲーム機市場。両者の領域を超えた戦いが始まり、どちらが勝つかのキーワードは“リテンション”という単語に凝縮されているのはないか、というのが浜村代表の考えだ。

領域を超えた戦いとは

 かつての家庭用ゲームビジネスは、パッケージを販売すれば終わり、という売り切り型のビジネスだった。だが現在は、ダウンロードコンテンツを販売し、継続的に収益を上げるというゲームが主流に。加えて、F2P(フリー・トゥ・プレイ)のタイトルも本格的に展開され、家庭用ゲームにスマホゲーム型のノウハウを取り入れたゲームが増加。

 IP自体も、家庭用ゲームの人気IPがスマホゲームへ展開され、逆に『パズル&ドラゴンズ』から『パズドラZ』へといったような、スマホゲームから生まれたIPが家庭用ゲームに展開、成功する例も増えてきた。

 つまり、家庭用ゲームとスマホゲームは、ビジネススキームとIPでかつては大きな差があった。だが、それがなくなりつつあり、ユーザーも家庭用ゲーム、スマホゲームの両方を遊ぶ層も増えてきており、現在は“領域を超えた戦い”に突入しているというわけだ。

■家庭用ゲームも運用型の時代

 そんな時代に勝つために挙げられたキーワード“リテンション”。この“リテンション(retention)”とは、維持や継続などという意味の単語で、ここでは、ゲームユーザーの興味を喚起し続けてIPの人気を維持し、そこから新たなビジネスへつなげていく、といった意味合いとなる。

 “リテンション”に成功しているゲームの代表格として浜村代表が挙げたのは、『パズル&ドラゴンズ』と『モンスターハンター』シリーズ。両者はさまざまなコラボを展開し、ユーザーを飽きさせない、継続して遊んでもらう施策を取り、ユーザー数を伸ばしていった。『パズドラ』は、直近で言うと『聖闘士星矢』や『ビックリマン』などメディアを超えたコラボを展開し、さらには『パスドラW』というカジュアル路線も展開し、いまや世界ナンバーワンのスマホゲームへと成長した。一方の『モンスターハンター』シリーズも他IPとのイベントクエストやコラボ装備、多彩なグッズ販売、モンハンフェスタといったイベントを実施するなど、つねに話題を提供。ユーザーコミュニティを維持、継続だけではなく拡大させ、シリーズを重ねるごとに大きな収益をあげていった。最新作『モンスターハンター4G』では国内で500万本の期待もかかる作品だ。そのほか『アイドルマスター ワンフォーオール』や『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』、『マリオカート8』なども追加コンテンツを提供し、継続的な人気の獲得に成功している。

 「次々とくり出すコラボや追加コンテンツなどによるリテンションが大きな成果をあげています。これからは、家庭用ゲームであっても、運用型ゲームのようなリテンション”マーケティングが成功のカギを握っているのではないでしょうか」(浜村代表)

■囲い込みに成功することが勝つための秘策

 浜村代表は、今後の“リテンション”マーケティングで新たに重要な役割を果たすものとして動画共有や実況動画を挙げる。ご存知の通り、PS4やXbox Oneといった新世代機には、動画共有サイトとの連携強化が図られており、いまや手軽に実況配信ができる時代。人気の実況者も生まれ、有名な“YouTuber”であるPewDiePie氏は3000万人以上のチャンネル登録者数を獲得。人気実況者が扱うコンテンツは、視聴者に広がっていく。共有動画はいまや一大ムーブメントとなり、“リテンション”マーケティングの重要なファクターのひとつとなっているのだ。

 また、海外では盛り上がりを見せている“eスポーツ”イベントも規模を拡大。『DotA2』の世界大会“The International 4”の賞金総額はなんと1000万ドル(約10億円)の大台を突破し、注目を集めた。すでに海外メーカーはeスポーツを“リテンション”マーケティングの一環として力を入れている。

 まとめとして浜村代表は、ネットワークで繋がった家庭用ゲーム機は、かつての切り売りのビジネスからダウンロードコンテンツを展開するなど運用型のゲームに移行してきている。そこで必要となるのは、コラボやDLC展開などで継続的な施策を行ったり、動画共有などでコミュニティーが形成され、ユーザーを惹き付け続けるコンテンツ。浜村氏は「囲い込みに成功したコンテンツだけが勝ち残る時代になる」と述べ、ゆえに勝利のキーワードが“リテンション”なのだと説明した。

 本講演の詳報は後日、アップ予定。そちらでは、ゲーム市場のトレンドなどファミ通調べによるデータと併せて、より詳細なリポートをお届けするのでお楽しみに。