選手は意思を持っている! “エモーショナル・インテリジェンス”

 2014年9月18日~21日、千葉・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ 2014にて、エレクトロニック・アーツから発売されるシリーズ最新作『FIFA 15』について、今年も牧田和也氏(EA Japanスタジオ バイスプレジデント ジェネラルマネージャ)にインタビューを行った。

『FIFA 15』新世代機のパワーでいよいよゲームとリアルが融合へ!? 牧田ジェネラルマネージャを直撃【TGS 2014】_04
EA Japanスタジオ バイスプレジデント ジェネラルマネージャ
牧田和也氏

--今年もよろしくお願いします。今回は、やはりプレイステーション4やXbox Oneにフォーカスしたお話をうかがえればと思います
牧田和也氏(以下、牧田) はい。いちばんのポイントは“エモーショナル・インテリジェンス”ですね。ピッチ上の選手、22人それぞれが“感情”を持っています。試合の状況や流れを把握しながら、お互いの動きを意識しています。試合の前半と後半では選手の反応が変わってくるんですよ。たとえば前半なら、シュートを防がれても味方は拍手してくれたりしますが、リードされた後半に明らかな決定機を外せば、試合に負けているという情報を持っているので、ガッカリしたり、不満を示すジェスチャーを取ります。マッチしたポジションの相手と小競り合いしたり、試合の流れによっては激しいチェックをすることもあります。
--それは選手のAIがある程度のパターンを持っていて、さらに試合の情報を持つと?
牧田 そうです。その情報に応じて、さまざまなリアクションを取ります。また、スタジアムの観客も、試合の流れによって応援のスタイルが変わります。ですから、現地で実際に行われているような試合の雰囲気になっていると思います。
--試合に対する感情に加え、選手間、相手との距離感など、内部作業的には、かなりたいへんそうですね。また、自分がマズいプレイをすることで、チームのテンションが落ちる……ような。
牧田 その通りです(笑)。つねにいろいろな計算をさせる必要があるので、500以上の計算をしています。そのくらいの判断をしないと、ゲームとして成り立たないんですよね。
--相当、試合や選手に感情移入できそうですね。
牧田 ファンも、国やクラブによって違うんですよ。チャントも違いますし。サッカーファンにとって、そういったこだわりも重要ですから。
--ブンデスやセリエのように、スタジアムの実況とサポーターがゴールした選手の名前を掛け合いで叫ぶ、なんてこともいつか……。
牧田 そういったアプローチは大事だと思っています。一度にすべては変えられませんが、とくに新世代機になって、ハードのパフォーマンスが上がったこともあり、いろいろなことができるようになりました。

『FIFA 15』新世代機のパワーでいよいよゲームとリアルが融合へ!? 牧田ジェネラルマネージャを直撃【TGS 2014】_05

※タブレットを使って説明

--ちなみに、これはゲーム画面ですよね? 引きの画面で見ると、もうテレビの中継と変わりませんね。
牧田 そうなんですよ。もうテレビで見たまま、現地で見たままの臨場感を体験してもらえると思います。リプレイも工夫しています。リプレイというのは、短い時間でその試合の“ストーリー”を伝える必要があります。シュートシーン、カードが出たシーン、選手交代だけを繋いでも、試合の“ストーリー”は伝えられません。本作では、リプレイを見ただけで、その試合がどんな内容、雰囲気だったのかまでわかるような記録の仕方をしています。ただ、テレビのように、ディレクターが意思を持ってシーンを選ぶのとは違うので、これはけっこう難しいです。

『FIFA 15』新世代機のパワーでいよいよゲームとリアルが融合へ!? 牧田ジェネラルマネージャを直撃【TGS 2014】_03

個性をいかんなく発揮できる“チームマネジメント”

--目的別に最大6種類のメンバー表を作成できるそうですが、もう少し具体的に説明してもらえますか?
牧田 各選手に、ポジションごとにどういった動きをさせるのかを設定できます。たとえば、“オーバーラップラン”をディフェンダーに設定しておけば、チャンスにどんどんと前線に上がるようになるわけです。そうした戦術を設定できるわけですが、選手によって得手不得手もありますし、クラブのスタイルに合わないかもしれません。自分が操作する以外の選手にどういった動きをさせたいか、いろいろと工夫してほしいですね。
--“守備的に”といった大雑把な指示ではなく、もっと細かく?
牧田 そういうことです。
--本作では、1対1の駆け引きがより楽しめるようですね。
牧田 このマンツーマンバトルが、今回いちばんお客様に評価していただいていることです。まずドリブルの仕方が変わりました。利き足をうまく使ったり、ボールタッチも局面に応じて細かく変えています。その細かなボールタッチの動きを作ったので、レスポンスがよくなったのと、マンツーマンでの駆け引きが楽しくなりました。ボールもちゃんと触った方向に動きますし、そうすると芝との摩擦がキチンと計算でき、それに応じてボールの転がりかたもよりリアルになっています。ワンタッチでのパスも方向を変えるだけなので、バルセロナのようなサッカーはしやすくなったのではないでしょうか。
--ドリブルとチームマネジメントの設定をうまく組み合わせると、戦術も広がりますね。
牧田 ドリブルだけでもかなり抜けると思います。また、自分が敵を引きつけておいて、オーバーラップしてきたディフェンダーにヒールパス、ということも簡単にできますよ。
--さらに、そのプレイに観客が反応するわけですね。
牧田 はい。ディフェンスはどうかというと、使用しない選手も試合状況を把握しているので、明確な意思を持って数的用意を作り出します。ドリブルが強くなったぶん、そうしてバランスを取っています。CPUが攻撃する側の場合、『FIFA 14』では相手フォワードは自分の操作するセンターバックに対して、逃げるような動きを取っていましたが、『FIFA 15』では明確な意思のもと、実際のプレイヤーと同じように、突破しようとします。ほかにも、時間稼ぎをしたり、ロングボールに対してお互いをサポートしながら、いいポジションを取るように動いたり、AIがかなり進化していると感じると思います。
--それは“Ultimate Team”でも同じわけですよね?
牧田 そうです。
--個人的には、“Ultimate Team”でケミストリーを上げたり、クラブを強くしていく過程をより強く楽しめると感じました。
牧田 おっしゃる通りです。自分のチームが強くなっていく感覚が、いままでよりわかりやすいと思います。
--ゴールキーパーもかなり進化したそうですね。
牧田 まったく新しいシステムに変えました。日本人のプログラマーが作ったのですが、2年くらいかけて開発してきました。たとえば左に飛んだ直後に反対側に蹴られたボールに触ろうと足を伸ばしたり、ゴールキーパーはとても難しいですのですが、今回はそれが可能になったので、本当に変化を感じられると思います。
--2年前からそういった目標を持って、今回、満を持して搭載されると?
牧田 そういうことです。動きが全然違うし、より賢く動くと思います。
--点を取るのはたいへんですか?
牧田 うーん。全体のバランスなので、とくに変わっていないと思いますよ。

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--今回、牧田さんがいちばん注目してほしい部分を教えてください。
牧田 ふたつあって、ひとつはビジュアルで、スタジアムや観客、控えの選手や監督などです。それから今回は、試合中にタイミングよくボタンを押すことで、ユニフォームを引っ張ることができます。スライディングをすればユニフォームは汚れるし、スタジアムも試合が進むにつれ、だんだんと跡がつくように少しずつ変化していきます。生きている試合を忠実に再現できるようになっているので、いままでと違う体験ができると思います。
--自分で操作するのも楽しいのですが、CPU対CPUの試合を見るのも楽しそうですね。
牧田 まずは見た目のビジュアルで楽しめると思います。もうひとつは、操作したときの触り心地です。ドリブルしたときのレスポンスのよさ、ボールの転がりかた。選手の動きなど、体験版のフィードバックでも評価していただいています。
--説明を聞かなくて、プレイすれば「ここが変わった」とすぐわかるくらいですね(笑)。
牧田 そうですね。触っていただければ伝わるのではないかと思います。
--では『FIFA 15』を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
牧田 新世代機になって2作目ですが、いままでやりたくてもできなかったことがたくさんできるようになりました。ぜひ触っていただいて実体験してもらえると、これまでとの違いがはっきりとわかると思います。ぜひ遊んでいただければと思います。
--すでに、『FIFA 16』に向けてスタートしているんですよね?
牧田 もちろんです。
--来年もよろしくお願いします(笑)。

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