SCEワールドワイド・スタジオ吉田修平プレジデントが語るPS4の現状と課題、そして気になるあのタイトルは……?【TGS 2014】

2014年9月18日から9月21日まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ 2014。会期中に、ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏にお話を伺うことができた。その内容をお届けしよう。

●おなじみ吉田修平氏、PSの現状をどう見る?

 2014年9月18日から9月21日まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ 2014。会期中に、ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏にお話を伺うことができた。ソフト開発部隊のトップとして、プレイステーションフォーマットの現状をどのように見ているのか。そして、今後の展望は……? 


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●「PS3では実現不可能だっただろうな」というタイトルが揃ってきた

――まずはPS4についてですが、2014年9月1日に開催されたプレスカンファレンスでもたくさんのタイトルが発表され、豊富に揃ってきた感があります。そのあたりについて、どのように感じておられますか?
吉田 カンファレンスの直前に、発表タイトルリストを見せてもらったときには、「おお、これだけ揃っているのか」と。PS3やPS Vitaとの同時リリースだったりもしますが、まずはパブリッシャーさんがPS4にソフトを出そうとしてくれていることが、伝わったのではないかと思います。

――マルチタイトルが多いという点については、どのように感じておられますか?
吉田 私は、そこからのスタートでかまわないと思うんです。そこから、PS4のユーザーさんが少しずつ増えて、「やっぱりPS4で遊ぶと絵がきれいだ」とか、「立ち上がりが早い」とか、「“SHARE”がおもしろい」といったことが伝わっていくことで、マルチタイトルでもPS4版の売上が増えていけば、「じゃあこれからはPS4メインで作ろう」となってくると思います。まずはその第一段階に来たな、というのが私の感想ですね。

――実際、PS3とPS4のマルチタイトルでは、PS4版のほうが売れているタイトルもありますし、コアなゲームファンは、すでにシフトし始めている感じがありますね。
吉田 『Destiny(デスティニー)』もそうですよね。まだ時間はかかるとは思いますが、まずはいい方向に動いているな、という実感はあります。

――とはいえ、マルチタイトルの流れがしばらく続くとすると、ファーストパーティー製タイトルの重要性が高くなりますね。


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吉田 はい。我々はPS4だけのために作っていますから、なぜPS4を買ったほうがいいのかを、タイトルで示せないといけないですよね。それは、グラフィックスのパフォーマンスだったり、フィーチャーの使いかたなど、いろいろあります。たとえば『Bloodborne(ブラッドボーン)』では、「このグラフィックはPS4じゃないと出せないよな」とか、宮崎さん(ディレクター・宮崎英高氏)が言うところの“死闘感”――絵から来る迫力、これだけ広い世界で、これだけたくさんの敵がウジャウジャ動いている感じとか。そのあたりはPS4じゃないと無理だな、と感じていただけると思います。
 『The Order: 1886(オーダー1886)』にしても、映像のこだわりは最高峰のものになっています。……そのぶん、時間もかかってしまっていますが(苦笑)。『DRIVECLUB(ドライブクラブ)』も同様ですね。でも我々の使命、ファーストパーティーのタイトルとして、「PS3では実現不可能だっただろうな」というタイトルが揃ってきていると思います。ですから、PS4を買って友達に自慢したいときには、ぜひワールドワイド・スタジオのタイトルを選んでいただければ、「これ見て!」と言えるものになっているはずです(笑)

――ちなみに、ワールドワイド・スタジオでタイトル企画を選定する際の基準について教えていただけますか?
吉田 その前にまず、これは業界全体としてですが、ひとつのタイトルにかかるコスト、リソースが大きくなっていますよね。デベロッパーの技術も上がって、できることも増えているし、ユーザーさんのコンソールゲームへの期待値も上がっています。いまやフリー・トゥ・プレイのゲームがたくさんある中で、数千円分の価値が求められるわけですからね。そこで我々も、ほかのどのパブリッシャーさんも、タイトル数を絞って、そのぶんひとつひとつのタイトルに、より時間とお金をかけて作るようになってきています。
 一方で、いまでも我々は、世に出ている倍くらいの企画を進めてみて、そこから作っていくスタイルは変えていません。ただ、数を絞っていく中で、それぞれの可能性を見るだけではなく、より大きな視点――プラットフォームとしてどういうものを見せたいのか、どういうユーザーさんに届けたいのか。そのマッチングを意識するようにしています。

――なるほど。ただ、PS4の日本での普及を後押しするためには、日本向けのタイトルがさらに求められるところだと思うのですが……?
吉田 日本向けのゲームの数を減らしているのではないか、と訊かれることがありますが、そうではないんですよ。全体に数を絞って集中しているぶん、日本向けのタイトル数が減っているように見えているんだと思います。ただ、日本のスタジオは、日本のユーザーさんが求めるタイプのゲームを作れるという意味で、非常に貴重なチームだし、ほかの海外のスタジオにプラスアルファで、そういうミッションも持っていると思うんですね。では日本のクリエイターが何をすればいちばん成功するか、ユーザーさんに届くのか。それを考えてひとつひとつのテーマを決めています。
 PS Vitaでは、『フリーダムウォーズ』や『俺の屍を超えてゆけ2』など、非常に日本的な絵柄のタイトルを出しました。一方でPS4では、いまのところたまたま『Bloodborne(ブラッドボーン)』や『The Tommorow Children』と、海外向けのように見えるタイトルが先行して出てきていますが、カンファレンスで発表した『みんなのGOLF』のように、日本市場を中心に狙っているタイトルもあります。ただいずれも、日本のスタジオが作っているゲームで、日本のユーザーさんに受け入れられる素地のあるゲームになっていると思うんです。ですから、1本1本を大切にして作っていきたいと思っています。

――そういう意味でも、ファーストパーティーにかかる期待は大きいですね。
吉田 正直に言うと、日本市場におけるプレイステーションの歴史は、つねにサードパーティーさんのすばらしいタイトルに支えられてきました。『リッジレーサー』や『バイオハザード』、『ファイナルファンタジーVII』、『メタルギア ソリッド』、『モンスターハンター』……そうしたすばらしいタイトルに恵まれてきたという環境があったため、個人的には、ファーストパーティーを育てることへの意識が、社内的に希薄だった部分もあるのかな、とも思います。でも河野さん(前SCEJAプレジデント・河野弘氏)の時代からは、そこをとても努力をしてやってきましたから、少しずつ結果は出てきているのではないかという実感もあるんですよね。


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●はたしてProject Morpheusはいつごろ……?

――今回のTGSでは、Project Morpheusがついに体験できるということで、非常に注目を集めていますね。
吉田 やはり、ユーザー、プレイヤーが“その場にいる”という体験は、VRでなければできないことですからね。VRコンテンツは、ポテンシャルがとても高いし、開発効率も高いと思っています。

――それは開発がしやすいということですか?
吉田 それもありますが、家庭用ゲーム機では、すごく3Dグラフィックスの技術が上がっていて、いまはひとつひとつのタイトルに数十億円もかけるような時代になっていますよね。でもVRだと、小さいコンテンツでも、これまでになかったような体験が得られるので、それは業界にとっても、すごくいいコンテンツになると思うんです。

――確かに、いままでならアミューズメント施設などでしかできないような、劇的な体験ですからね。


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吉田  はい。ただ一方で、システムのパフォーマンスが低かったり、レイテンシ(表示遅延)などが一定のレベルに達していないと、違和感を感じて酔ってしまったりするんですね。またコンテンツの作りかたにしても、FPSでよくある、歩いているときにカメラを上下させるような演出を入れると、VRでは簡単に酔ってしまったりと、やはりノウハウがあります。ハードとソフト、両方がきっちりしていないと気持ちのいい体験ができないんですね。
 ですから、まず我々の責務として、ハードウェアのシステムとして、人間が酔いを感じる原因になる部分を取り除くこと。それができて初めて、一般向け商品となりうるのだと考えています。そこを生煮えで出してしまうと、「やってみたけど気持ち悪かったよ」といった悪い第一印象を持つ人が多くなり、それは業界全体にとって大きなマイナスになる恐れがあります。我々の責任として、いいシステムまで仕上げたうえで出したいと思っています。
 そしてコンテンツについてのノウハウも、一生懸命集めて、みんなでシェアして。業界全体で学びながらシェアしていくこともやらなければいけません。
 それらを達成したうえで、最終的にユーザーさんがお求めやすい価格や、豊富なコンテンツも実現する必要がある。これらが、いまやらないといけないことです。
 いまのプロトタイプは、けっこういいところまで来てはいますし、開発キットとしては十分なものではありますが、まだコンシューマ製品として出せるレベルには達していませんので。そこが達成できて初めて、発売時期を検討することになります。

――なるほど。たとえば、「ストレートに来年遊べますか?」とお聞きした場合のお答えは?(笑)
吉田 はっきり言えることは、今年はない、ということです(笑)。となると、いちばん早くても来年、ということになりますが、まだまったく決まっていません。ただ開発は極めて順調ですよ。

――最後に、PS4を持っている人、または購入しようか迷っている人に、コメントをお願いします。
吉田 PS4はパフォーマンスが高いだけでなく、ソーシャルなつながりや、いろいな遊びが作れるシステムです。でもそれは、それらをうまく使ったゲームがあって初めて伝わること。ですから、ひとつひとつのPS4のプロジェクトで、それを実現するべく、一生懸命ゲームを作っています。まずは『Bloodborne(ブラッドボーン)』に期待していただきたいと思います

――もうひとつ、最後に、しつこいですがこれだけ! 『人喰いの大鷲トリコ』については……?
吉田 絶好調で開発しています。……ちょっと言い過ぎかな(笑)。引き続き粘り強く開発を続けていますので、ご期待ください。


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