年々拡大を続ける中国ゲーム市場

 2014年9月2日~9月4日、パシフィコ横浜で開催された、日本最大級のゲーム開発者カンファレンスCEDEC 2014。中国ゲームショーChinaJoyが盛大に開催されるなど、ユーザー目線でも盛り上がりを感じる近年の中国ゲーム市場。その成長ぶりを、研究者として、またはビジネスマンとして間近で見てきた登壇者たちによる、パネルディスカッション“中国ゲームビジネス最前線2014~第一線を見つめてきた経営者と研究者の視点からみる中国進出成功の鍵~”が行われた。3名の登壇者による討論の模様をリポートする。

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 まずは立命館大学映像部の中村彰憲教授が、中国ゲーム産業の概観を説明。細かい数字はスライド画像を確認してほしいが、かいつまんで説明すると2008年以降の中国ゲーム市場は、倍々ゲームかのように成長し、2013年度には1兆円を超える市場にまで到達しており、さらにその8割以上が、PCやモバイル機器によるオンラインゲームが占めている。とくに(スマートフォンの普及も手伝い)モバイルゲーム市場はここ1年で急激に成長し、3億5000万人いるPCゲーマーと並ぶかのような勢いになっていると、中村教授は語った。

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 中国市場で好まれているゲームは、PC向けのランキングを例題に『Leage of Ledgends』『World of Warcraft』というワールドワイドで人気のもの以外は、すべてが中国独自のタイトルであるとも説明。特に“武侠もの”と呼ばれる中国の歴史を題材としたものが人気で、この傾向はスマートフォン向けゲームにも影響しているという。

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 中村教授によると、モバイルゲームの市場にゲームを提供する会社としては、大手パブリッシャー・テンセントが2割以上を占めているが、そのほかの多数のメーカーはほとんど横並びで、群雄割拠状態であるとのこと。タイトルとしては人気ゲームのクローンも多いが、中国独自のコンテンツも増加してきているという。

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中国スマホゲームは協力より対戦。チートが当たり前!?

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 続いて登壇したのは、中国市場向けに国内タイトルのローカライズ、カルチャライズ(協力より対戦といった、市場の好みにあわせての内容変更)を行っているアクセスブライトのCTO・谷井貴宗。谷井氏は自身の経験を踏まえ、中国ゲーム市場を目指す際に抑えるべき技術的ポイントを説明していった。

 ひとつは「携帯回線の通信速度が遅く、パケット通信し放題サービスはない」という点。これにより、通信料の多いタイトルは面白くともすぐに削除されてしまう傾向にあるという。また、クラウドサーバーの価格も中国の物価に対しては割高だという。

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また、チートが当たり前に使われている点も日本とはことなり、通販サイトで手軽にチートツールの販売・購入が行われていると谷井氏は語る。そして、開発を手がける中国人社員は上昇志向が強いので、スキルアップのできる仕事を用意するのが重要であり、また定期的な酒席にてコミュニケーションを図ることも大事だと説明した。

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中国でのスマホゲームユーザーも非課金と重課金に二極化

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 3番目の登壇者は、崑崙日本株式会社で副社長を務める北阪幹生氏。約10年間にわたり日中韓のゲーム市場にて活躍してきた北阪氏は、長くに渡って接してきた中国人ゲームユーザーの動向、そして日本企業になにを求めているかを説明していった。

 北阪氏いわく、中国のゲームユーザーの動向としては、市場はカジュアルとハードコアに、ユーザーは非課金と重課金に“二極化”しているという。非課金ユーザーは10代の学生が、重課金ユーザーは社会人が中心というから、このあたりは日本と似たような構造になっているといえそうだ。

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 続いて北阪氏は、中国で人気のスマートフォン向けカードゲーム『武侠Q伝』を例に説明を進めた。画面を見てもらえばわかるかと思うが、非常に込み入ったメニューで、対戦や強化、チャットといった多くの機能が盛り込まれていて、さらにキャラクターや武器といった項目ごとに強化要素が用意されているという。

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 そんな中で中国人ユーザーが日本企業に求めるのは(正規版の)版権タイトル、あるいは日本らしいゲーム性の高いタイトルであるとまとめた。

さまざまな意見が取り交わされたパネルディスカッション

 ここからは登壇者たちによるパネルディカッションが行われていった。最初のテーマは今後の中国ゲーム動向。具体的には、これまでは野放しであったガチャ課金について、賭博性があると2013年12月に政府による勧告が行われたと中村教授が解説。これについては「政府が突然言ってくるので予定は立てられないので、それにその都度変更していくしかない」(谷井氏)、「ガチャのような抽選機能自体はなくなることはないが、程度の問題。ガチャ依存のゲームはコンテンツとして長持ちしない」(北阪氏)と語った。

 また、中国国内の事情としてある沿岸部と内陸部の都市での経済格差については、「会社としては上海や北京、広州といった沿岸部の大都市圏を重点的にプロモーションしてから内陸に転じていく」(北阪氏)、「内陸部だからといって通信環境が悪いわけではないので問題はない」(谷井氏)と説明。ほかにも、(プロモーション的には)アイドルや声優は中国のスマホゲームユーザーにも親和性が高い、2014年より解禁となるコンシューマーゲーム機は(PC市場が形成されているので)あまり伸びないであろう、中国市場でも版権意識は高まっていてIP侵害は減ってきている、といったことが語られた。

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 当たり前だろうが、同じゲーム市場といっても所変われば品変わるということを感じたのと同時に、「バブルがずっとはじけない」と北阪氏が語ったように、マーケットとしての中国の熱さはまだまだ続くであろうことを強く思わされるセッションとなった。