『ぷよぷよ』のいちばん偉い人がアレコレ語る!

 2014年9月2日~4日の3日間、パシフィコ横浜にて日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2014”が開催。9月4日に開催されたセッション“ぷよぷよをプロデュースして感じたこと”のリポートをお届けしよう。

 とてもざっくりしたセッション名だが、その内容は『ぷよぷよ』シリーズの歴史を、裏話を交えながら語るという内容だった。講師は、株式会社セガ 第二CS研究開発部 プロデューサー 細山田水紀氏が担当した。

 最初のお題は、細山田氏の自己紹介。氏は2002年、当時分社化が行われていたセガのソニックチームに入社。『ソニック』シリーズに関わったあと『ぷよぷよ』シリーズを担当するようになり、現在はシリーズの総合プロデューサーを務めている。

なぜ『ぷよぷよ』は新作を作り続けるのか? “ぷよぷよをプロデュースして感じたこと”リポート【CEDEC 2014】_01
▲セガの細山田氏。最近は肩書きが多すぎるので総合プロデューサーと名乗っているそうだ。『ぷよぷよ』チームの人員は流動的で、細山田氏ひとりだけだった時期もあったとか。

 細山田氏はプロデューサーだが管理職ではなく、また『ぷよぷよ』という単一IPのプロデュースを9年ほど続けてきており、これはかなり珍しいことだという。また若手のときにCEDECで某プロデューサーの話を聞いてとても勉強になったことから、今回講演を行おうと決断したそうだ。

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▲第二CS研究開発部は元々はソニックチームのため、『ソニック』シリーズも開発。以前は『ファンタシースターオンライン』も手がけていたそうだ。
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▲関連グッズの制作はファンの要望を聞いて、細山田氏が直接メーカーの大代表に電話をかけて「グミ作りませんか?」と企画を始めることも多いとか。

『ぷよぷよ』シリーズをリリースしてきた経緯が明らかに!

 続いてのテーマは『ぷよぷよ』について。そもそも『ぷよぷよ』は1991年にコンパイルよりMSX2版が、徳間書店インターメディアからファミコンのディスクシステム版が発売されたことから歴史がスタート。セガは1992年にアーケード版とメガドライブ版を発売し、その後IPを取得するに至ったという。

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▲『ぷよぷよ』の内部用資料。じつは過去に定義資料がなかったため、細山田氏が中心となって作成したそうだ。まだ未完成で、『ソニック』も資料がまとまっていなかったとか。

 「どこを残してどこを新しくするか、23年間その繰り返しだった」と細山田氏。近年、さまざまな『ぷよぷよ』が登場しているが、ファンの間ではアーケード版の『ぷよぷよ通』が最強、と言われている。つまり、これで完成しているからもう新作はいらない、という意見もあるということだ。細山田氏は「確かにその通りかもしれないが、新作を作らなければ『ぷよぷよ』シリーズは終了してしまうと思う」と語った。

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▲新作を作る理由があまりなくなってしまい、新作を作るのは難しいと語る。ライセンスアウトのコンペでも「古いじゃん」という理由で負けることが多いとか。
▲『ぷよぷよ』シリーズを終わらせないために、細山田氏は知恵を絞りながら新作を作り続けているそうだ。

 過去の事例も語られた。2006年は『ぷよぷよ』15周年であり、15周年のタイトルを出すことが決定していた。細山田氏はここから『ぷよぷよ』シリーズに関わることになり、「最初は一週間だけ手伝って」と言われて企画を考えたそうだ。それが「やっぱり1ヵ月手伝って」となり、今度は「ディレクターやって」と言われ、最終的にはプロデューサーになったという。「気づいたら9年経っていた」と細山田氏。

 15周年タイトルのコンセプトは“お祭り感”だったので、当初はパーティーゲームのようなものが想定されていたそうだ。そして、細山田氏が関わった時点で残された期間は4ヵ月という状況。細山田氏も最初はそのノリで“ぷよぷよじゃんけん”などを考えていたが、「これは本当におもしろいのだろうか」と思い、冷静になって再考。当時は過去の『ソニック』シリーズをプレイステーション2で出しており、旧作をいま遊んでも楽しいということから、旧作と新作を両方あそべる企画になったという。ちなみにタイトルは非常にシンプルだが、これは子どもたちがお店で「ぷよぷよください!」と言ったとき、「過去作ではなく、このタイトルが出てくるようにとの狙いがあった」と細山田氏。ただし営業から「15周年って入れないとまずいじゃん!」と言われ、サブタイトルをつけたという。

 この『ぷよぷよ!』は大成功し、非常に売れたそうだ。だが反省点もあり、開発期間が短くてデバッグが不十分だったため、回収騒ぎになったという。ともかく『ぷよぷよ!』はヒットしたため、会社からは次回作のオファーがあった。だが「同じようなタイトルは2本もいらないのでは」という考えから、大きく変わった『ぷよぷよ7』が生まれたという。当初はアニメやライセンスアウトも検討していたが、実現が難しそうだったので展開を変更したそうだ。

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 当時の中長期計画では、「コンシューマ版はきっちり作って長く売る」という作戦があった。だが結果的に多数のタイトルを作ってしまったので、他方面から展開しようという意識があり、アーケードやパチスロでもリリースする計画を進めた。しかしいろいろと問題があり、アーケードに関しては「上からはメダルゲームならいいよ」と許可が出たので、メダルゲームを作成したそうだ。パチスロはサミー側から企画をオファーされ、2007年頃から進めてきたが、法律の問題など多彩な問題があり、2011年の11月にやっとリリースできたという。

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 そうしている間に、今度は『ぷよぷよ』20周年が近づいてきた。ニンテンドーDSやPSPではすでに『ぷよぷよ』シリーズが4作発売されており、つぎを作ると1機種で5本目となる。そんなに必要?とも思ったが、最新機種で遊べるモノを展開しよう、という考えで20周年記念タイトル『ぷよぷよ!!』が誕生した。そのような理由から、「この作品を最後に、新作は当分作らないという予定で進めていた」との裏話も飛び出した。

 また基本無料のタイトルにも触れられた。じつは構想自体は2006年頃から考えていたが、なかなか許可がおりず、結局スマホ用『ぷよぷよ!!クエスト』が登場したのは2013年。アーケードでも基本無料をやりたいというセガらしいチャレンジ精神で『ぷよぷよ!!クエスト アーケード』も制作した。

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 そして最新作である『ぷよぷよテトリス』だが、こちらも構想は非常に昔から考えていたそうだ。いちばん最初に企画を書いたのは「僕が『ぷよぷよ』チームに入るまえだったと思う」と細山田氏。ただし交渉で折り合いが付かず、過去何度も断念していた。2012年、なんとか実現できそうという可能性が出てきて、2014年にやっと世に出せたという。現在はPS4版とXbox One版の開発が佳境だとか。

 このようなアグレッシブな企画にチャレンジする理由は、「アクションパズルや対戦のおもしろさを最新機種で味わってほしい」と細山田氏。また『テトリス』が30周年を迎え、過去にセガが『テトリス』をリリースしていた経緯もあり、日本でも盛り上げたいという意図があったそうだ。

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▲「『ぷよぷよ』は失敗できないし、なかなかチャレンジできないIPではあるが、そこを頑張って新しいことにチャレンジしていく」と細山田氏。

 最後のお題は“ぷよぷよをプロデュースして感じたこと”。このように『ぷよぷよ』シリーズを作り続けてきた細山田氏だが、リリースするときに重要視していることは、お客様がやってほしいこと、自分たちがやりたいこと、会社がやってほしいこと、利益を出すこと。この4つに優先順位を付けて考えていくそうだ。

 また開発体制についても持論を展開した。「ディレクターは経験しないと育たないので、若手にいろいろ経験させるべき。そのようなチャンスがなければ、経験させられるプロジェクトから立ち上げることも視野に」と、プロデューサーや管理職へのお願いを語る。管理職ではない、細山田氏らしい視点での意見を展開した。

 2015年は『ぷよぷよ』24周年で、2016年は25周年となる。まだとくに何も決まっていないが、「ひとまず『ぷよぷよ』25周年にご期待ください!」と展望を語り、大盛況のなかセッションは終了した

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