さまざまなジャンルがお目見え

 2014年9月2日から4日まで、神奈川県・横浜にあるパシフィコ横浜で開催中の日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2014”(コンピューター エンターテイメントデベロッパーズカンファレンス)。2日目である9月3日に行われた、“CEDEC AWARDS 2014”授賞式の模様を以下にお届けする。

『艦これ』、“PS4 Share” などなど “CEDEC AWARDS 2014”最優秀賞が発表【CEDEC 2014】 _01
『艦これ』、“PS4 Share” などなど “CEDEC AWARDS 2014”最優秀賞が発表【CEDEC 2014】 _04
▲JAGMO

 “CEDEC AWARDS”は、コンピュータエンターテインメント開発の進歩へ顕著な功績のあった技術にフォーカスし、技術面から開発者の功績を称え表彰することで、開発技術の普及・啓蒙と産業の発展を目指すというもの。今年も、昨年度CEDECにおける聴講者アンケート結果上位者のメンバーで構成される“CEDEC AWARDSノミネーション委員会”が組織され、CEDEC運営委員会とともに協議しノミネーションリスト(優秀賞)を決定し、ノミネーションリストからCEDEC受講者が投票して、栄えある最優秀賞受賞者が決定した。

 なお、開場入場時と表彰の一部にて、ゲーム音楽を主体として演奏する日本初のプロフェッショナルオーケストラ、JAGMOの演奏が行われた。

■表彰部門(全7部門)

(1) エンジニアリング部門
(2) ビジュアル・アーツ部門
(3) ゲームデザイン部門
(4) サウンド部門
(5) ネットワーク部門
(6) 特別賞(ゲーム開発への貢献全般)
(7) 著述賞

 表彰部門は上記の7部門。はじめに著述賞、特別賞の表彰が行われた。

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■著述賞
Mobageを支える技術 ~ソーシャルゲームの舞台裏~
ディー・エヌ・エー
執筆担当:小野篤司氏、城戸忠之氏、小林篤氏、渋川喜規氏、嶋田裕二氏、武部雄一氏、立花啓氏、濱田晃一氏、藤井正義氏、松信嘉範氏、山口徹氏

<授賞理由>(武部雄一氏が代表して挨拶)
 ソーシャルゲーム開発においては、フロントエンドからバックエンドまで、広く深い知識が求められる。本書では、これら各領域の開発・運用テクニックを網羅的に解説してあり、初心者は技術を俯瞰的に把握でき、経験者は再検討に役立てることができる充実した内容となっているとのこと。

<コメント>
 栄えある賞を受賞させていただき、大変驚いて、そして恐縮しております。本書は、大変な思いをしてみんなで書き上げた本ですので、喜びはひとしおです。なかなか本というものは形にするまでに時間がかかりますので、Twitterやブログでもどんどん情報を配信して、少しでも皆様に貢献できるようがんばります。今日はありがとうございました。

■特別賞
すぎやまこういち氏

<授賞理由>
 国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズの作曲家であるすぎやま氏は、同作品をはじめとする数々のゲーム音楽の楽曲制作および演奏活動に携わってきた。音源の性能に頼らなくとも純粋に譜面の力でプレイヤーを魅了できることを証明し、今日のゲーム音楽発展の礎を築いたことが評価された。また、すぎやま氏自らがタクトを振るう交響組曲『ドラゴンクエスト』のフルオーケストラコンサート開催など、ゲームユーザーに留まらない幅広い層の支持を受け続けている点も、受賞の理由となっている。

<コメント>(欠席のため、司会者が手紙を代読)
 この度は、特別賞をいただきありがとうございます。本日はお伺いすることが叶わず、残念に思っております。

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■エンジニアリング部門
ゲームエンジンの民主化を更に推進
“Unreal Engine 4” 開発チーム (Epic Games)

<授賞理由>
 ハードウェアとソフトウェアのバランスを上手に取りつつ、ゲーム開発者が力を発揮しやすいプラットフォームを構築。 従来のハードウェア・プラットフォームよりも開発中の情報が積極的にシェアされてきた点が評価された。

<コメント>(河崎高之氏)
 アメリカ人のスタッフがおもなメンバーとなって、“Unreal Engine 4”の開発を進めているのですけれど、彼らと関わって強く感じるのは、日本のゲームへ対する憧れです。彼らの多くが、子どものころ日本のゲームを遊んでいます。そして、それがきっかけでゲーム業界へ入る人が多いのです。そんな日本のゲーム業界の中で、こんな栄誉ある賞をいただけることはとても光栄ですし、仲間たちも誇りに思うはずです。本当にありがとうございました。

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■ビジュアル・アーツ部門
3DCGゲーム開発黎明期から多くのアーティストを支え続けた陰の立役者
“SOFTIMAGE” 開発チーム(Autodesk)

<授賞理由>
 3Dゲーム開発黎明期から現在に至るまで数多くの作品、アーティストを生み出し続けている3Dコンピュータグラフィックスの制作用ソフトウェア。その存在はアーティストにとって、苦楽をともにした相棒のように大きく、いまもなお新たな作品、アーティストを生み出し続けている。ゲーム業界の発展に貢献した功績は大きいとのこと。

<コメント>(門口洋一郎氏が、元々開発に携わっていたマーク・スティーブン氏からのメッセージを紹介)
 “SOFTIMAGE” が受賞したことをとても誇りに思います。いままで日本の開発者やアーティストの方々とコラボレーションできたことがうれしいです。“SOFTIMAGE” は残念ながら今年で開発が中止になりますが、今後も引き続き、皆さんをサポートさせていただきたいと思います。

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■ゲームデザイン部門
擬人化・女性化という手法を艦船に応用したコンセプトワーク
艦隊これくしょん』 開発チーム(DMM.com/角川ゲームス)

<授賞理由>
 ミリタリーという分野でもとくに擬人化、女性化が難しいと思われる艦船を、その特徴的な部分をキャラクターに残し、広く受け入れられるコンテンツに昇華させた点が評価された。

<コメント>(田中謙介氏/岡宮道生氏)
 開発当初は、こんなにも素晴らしい賞をいただける未来を想像できませんでした。スタッフの皆さん、そして支えてくれた提督の皆さん、本当にありがとうございました。心より御礼を申し上げます。今後ともよろしくお願いします。

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■サウンド部門
ファンとの交流を通じてゲーム音楽を文化に昇格させるための積極的取組み
坂本 英城 氏(ノイジークローク)

<授賞理由>
 『討鬼伝』など評判の高い自らの音楽制作はもちろん、2日におよぶゲーム音楽イベント“沖縄ゲームタクト2014”の企画、ゲームコンポーザーによるトーク&ライブの配信、“世界で一番長いゲーム用書き下ろし楽曲”としてギネス世界記録認定など話題作りやファンサービスを通じて、ゲーム音楽を文化に昇格させるための積極的取組みが評価された。

<コメント>
 こんなことなら両親を呼んでおけばよかったと思います(笑)。非常に栄誉ある賞をいただいて、うれしく思います。ゲーム音楽が認知され始めたのは、ファミリーコンピュータ登場のころだと思いますが、それから膨大な数の曲が世に出てきました。当初、ゲームにおいて楽曲というものは蔑ろにされがちでしたが、いまは広く認知されるようになりました。それは、きっと誰かが多大な努力をしてくれたからだと思います。そして、そういった人たちのために、これからもさまざまな催しをしていきたいと思います。これからもゲーム音楽を後世に残せるような活動をしていきたいです。本日はありがとうございました。

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■ネットワーク部門
PS4のユーザー自身による体験の配信と共有手段
“PS4 Share” 開発・運営チーム(ソニー・コンピュータエンタテインメント)

<授賞理由>
 ユーザーのゲーム体験を自由に共有できる手段を、権利的にクリアな形でプラットフォームが提供したことを高く評価。観るだけでなく、参加する形の共有ができることへの将来性に期待とのこと。

<コメント>(榎本繁氏) 
 3年以上前、PS4のキーコンセプトを社内で議論しているときから、ひとつの柱として“シェア”というものを考えていました。携帯電話で写真を取って送るのと同じような手軽さで、動画を共有できるようにしたかったのです。初代PSからあったセレクトとスタートボタンのひとつをなくしてでも、シェアボタンを搭載しようと思っていました。それが功を奏してか、実際にたくさんのシェアが行われるようになり、開発者としてうれしく思っています。ありがとうございました。

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