「テクノロジーで人の生活や社会を豊かにする」
2014年9月2日~4日の3日間、パシフィコ横浜にて日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2014”が開催。開催初日の9月2日に、日本マイクロソフトによる“Kinect update 2014 ~テクノロジーは希望を与えてくれる~”が行われた。
いよいよ9月4日に発売されるXbox One。その大きな特徴のひとつとして挙げられるのがKinectセンサー。Xbox OneではKinectセンサーも進化しているのはご存じの通りだが、こちらは、そんな新型Kinectセンサーの性能にスポットをあてたセッションだ。講演者は、“Kinectのスポークスパーソン”とも言うべき、日本マイクロソフト インタラクティブ エンターテイメント ビジネス デベロッパー エコシステム ソフトウェア デベロップメント エンジニアの千葉慎二氏が務めた。
“人に希望を与え、人と人とを繋げる”テクノロジービジョンを掲げているマイクロソフト。NUI(ナチュラルユーザーインタフェース)は、そんなマイクロソフトの方針を具現化するものだ。マイクロソフトのNUIにおける考えかたの基本は、「人とコンピュータとが自然にやりとりできるようになって、“コンピュータ”として意識することなく使えば、より多くの人がコンピュータの恩恵を受けられる」(千葉氏)というもの。Kinectは、そんなマイクロソフトのNUIに対する理念を実現したセンサーデバイスだ。以下、講演内容をもとに、新型Kinectセンサーの特徴を紹介していくことにしよう。なお、今回の講演では、発売されたばかりのWindows版の新型Kinect“Kinect for Windows v2センサー”がお話のテーマになっていた。以降は、従来からのKinectセンサーを“v1センサー”、新型Kinectセンサーを“v2センサー”と表記することとする。
“v2センサー”の大きな特徴は、センシングの方法として、“Time of Flight(TOF)”を使用していること。これは、投射光が即座にシーン全体を照らし、物体に反射して戻ってくる時間を計測するという方法だ。このTOFを採用したことで、周囲の明るさに関係なく動きを認識できるなど、センシング機能が大幅に向上することとなった。
人の骨格情報の取得にあたっても、“v1センサー”と“v2センサー”とでは、視野内追跡人数は6人と変わらないものの、全関節追跡人数はふたりから6人に増加。ひとりあたりの関節数も20関節から25関節に増えた。追加されたのは、あごや指先、親指などで、これにより、“v2センサー”の特徴である指の閉じ開けを認識できるようになったのだ。表情認識も“v2センサー”の得意とするところで、“ふつうの顔/笑顔”や“左右の目が閉じている”、“よそ見をしている”、“集中している”などを認識できるようになっている。会場では、映しだされた顔を見て、どういう表情をしているか、コンピュータが忠実にトレースする“HD Face”というデモが披露されていたが、しっかりとした再現ぶりだった。
“v2センサー”は、処理アーキテクチャーの面でもすぐれている。“v1センサー”では、処理が1本道だったために「動かすと排他的になった」(千葉氏)という。それが“v2センサー”では、“ランタイム サービス”で吸収することによって、複数のアクションを同時にこなすことが可能になったという。
“v1センサー”と“v2センサー”の違いに触れたパートでは、興味深い言及も……。人の骨格を認識するときに、“v1センサー”では腰が上の位置で測定される傾向があった。そのため長い足が生成されたのだが、これはXbox アバターが原因だという。Xbox アバターは見た目を重視して足を長めに設定していたのだが、Kinectではアバターのスケルトンに合わせて、生体から少し上の地点で腰の高さを選択していたのだという。もちろん、“v2センサー”では元に戻しているという。
“v1センサー”のときもそうだったが、いまやKinectはゲームのみならず幅広い用途で使用されている。イベント、リハビリ、教育、デジタルサイネージなど……枚挙にいとまがない。講演では広がるKinectの活用例としてNECによる“振付採点”が紹介されていた。身体の動きをお手本と比較し、一致度を評価するというこの“振付採点”は、いま教育現場で活用されているという。千葉氏によると、中学の授業ではヒップホップが必須科目になっているが、教えられる先生の絶対数が少ない。そのため、教師のコソ練のツールとして、この“振付採点”が使用されているというのだ。
進化し続けるマイクロソフトのテクノロジーを象徴する最先端のNUIテクノロジーであるKinect。Kinectが、今後どのような形で人の生活や社会を豊かにしてくれるのか……興味深いところだ。