今回のテーマはグローバル展開とネイティブアプリ
コーエーテクモゲームスは、2014年8月26日、東京・丸の内でネットワーク事業戦略発表会を開催した。
発表会には同社代表取締役社長の襟川陽一氏ほか、ネットワーク事業に携わる担当者が登壇。ネットワーク事業に関する現況や今後の展望の報告が行われたほか、スマートフォンアプリゲームの新タイトルが発表された。
本日の発表会に関するトピックスは、大きく分けてふたつ。ひとつがおもに海外市場に対する同社ネットワーク事業の実績と今後の展開、もうひとつが今冬にサービスインが予定されている新作スマートフォンアプリ3タイトルの発表だ。
■2014年、コーエーテクモゲームスのテーマは“IPの創造と展開”
はじめにコーエーテクモゲームス 代表取締役社長・襟川陽一氏が登壇。会場には各国のパートナー企業の担当者も来場していたとのことで、「ニーメンハオ、アンニョンハセヨ、サンキュー」と、各国語を交えながら挨拶を行った。襟川氏は「現在、ネットワークゲーム業界では技術革新やユーザー嗜好の変化が早く、これらに応じた新商品・新サービスの導入が求められる。この環境の中で、当社は急速な技術革新に柔軟に対応する態勢をとり、独創性の高い高品質なコンテンツをタイムリーに開発・販売することで、他社との差別化を行い、安定収益化を確保する方針をとってきた」と説明。1998年『信長の野望Internet』から始まった同社のネットワーク事業に関する歩みを振り返った上で、早くから海外市場を見据え、同社が中国、シンガポール、台湾、アメリカなどでゲームソフトのみならずオンライン・モバイル事業を展開し、長期にわたって安定した収益をあげてきたと述べた。
そして同社は2014年度、“IPの創造と展開”をテーマに、新規ネイティブアプリタイトルの創出に注力していることを公表。襟川氏は「勢いのあるネイティブアプリ市場でなんとか橋頭堡を築きたい」と意気込みを語り、今回の発表会では襟川氏が“チャレンジタイトル”と称する新規3タイトルが発表されることとなった。また、スマートフォン・ブラウザゲーム市場がアジアを中心とした海外で急成長を遂げている背景を踏まえ、同社も一層のグローバル展開に注力するという方針が明かされた。今回の発表会では、ネットワークゲームの海外展開を業界内でも先立って行い、成功を収めてきた同社ならではの将来展望が明かされることとなる。
■ネイティブアプリへの積極的な参入を予定
つぎに、コーエーテクモゲームス 専務取締役 ネットワーク事業部長・小林伸太郎氏が登壇。同社のネットワーク事業について、改めてこれまでの変遷と展望が語られた。
オンラインゲーム、モバイルゲーム、ソーシャルゲームといち早くそれぞれのデバイス、プラットフォームにチャレンジしてきた同社。約4年前に始まったソーシャルゲームの波にも対応し、『100万人の信長の野望』を始めとした『100万人の』シリーズでも安定した業績をあげている。この1年ほどはネイティブアプリという形でモバイルゲームの新しい分野で多くのタイトルが登場していることから同社もこの流れを取り入れ、ネイティブアプリにも積極的に参入する方針だという。
同社の業績では、2014年3月期のオンライン・モバイル事業において、経営統合以来最高のセグメント業績を達成したことが発表。とくに海外売上に関しては前年比で50%以上の数字を達成しており、好調ぶりがうかがえる。この現況を踏まえたうえで、同社のネットワーク事業は“ネイティブアプリ”へとシフト。先駆けて『ギャロップレーサー』、『大航海時代V』、『戦国無双シュート』といったタイトルをリリースしてきた。小林氏は今期も続々と同社看板IPを活かしたタイトルを導入する方針を述べ、『ぐんたま ~軍師の魂~』、『真・三國無双ブラスト』、『クイズバトル討鬼伝』、『アトリエクエストボード』を直近のタイトルとしてリリース。『アトリエクエストボード』はすでに開発が完了しており、8月末~9月頭のサービス開始を予定しているという。またIPの多方面展開として、『信長の野望』と『モバプロ』のコラボタイトル『モバノブ 信長の野望』などのタイトルも紹介された。
そして話題は小林氏が本発表会のひとつの命題とする“グローバル展開”へ。小林氏は「東アジア、東南アジアの市場はここ数年で急速にモバイルゲームの市場規模が大きくなっている。やはりこれらの急速に拡大するアジアの市場は無視できない」とし、目下の展望として、東南アジア市場に注力してタイトルのグローバル展開を図るという。すでに『大航海時代V』や『真・三國無双ブラスト』に関しては現地のパートナーも決定し、いずれも今秋~今冬を目途に正式なサービスインが行われる予定。『ぐんたま ~軍師の魂~』、『のぶニャがの野望』に関しても同様に展開が進んでいることが明かされた。とくに『のぶニャがの野望』に関しては小林氏も「キャラクターがネコということもあり、ノンナショナリティー。海外でも通用すると確信している」と自信をうかがわせ、アジアのみならず北米・欧米でも商談を行っているという。
現在、東アジアにおけるスマートフォンゲーム市場規模の推移は右肩上がりに伸びており、小林氏は2016年、2017年に予想される数字に関して「(参考データの予想地よりも)もっと上になるのではないか」と想定。同社は今秋より本格的にアジアでネイティブアプリゲームのサービスインを行い、小林氏は「必ずや各市場で大きな数字を得ることができると確信している。それらを牽引車にして、これからどんどんグローバル化を進めていきたい」と語った。アジアで橋頭堡を築いた後は北米、欧州での展開も積極的に進める方針だ。
■IPを活用した注目の3タイトルが解禁
そしていよいよ新作スマートフォンアプリゲームの発表へ。ここからは各作品のプロデューサーが登壇し、プレゼンテーションを行った。
(1)『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』
コーエーテクモゲームス ネットワーク事業部 プロデューサー・廣重演久氏から発表されたひとつめのタイトルは、ダンジョン探索RPG『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』。『のぶニャが』シリーズの完全最新で、発表会ではムービーも初お披露目された。
本作のRPGということもありストーリー性を重視。シナリオに『ドラゴンクエストキャラクターズ トルネコの大冒険2 不思議のダンジョン』などを手掛けた手塚一郎氏を迎え、“織田のぶニャが”がねこ武将の世界を救うため時を駆け巡る、壮大な物語が描かれる。さらにオープニングアニメは近年注目を集める“MMF Group inc.”が担当。こちらは近日公開される予定だ。
さらに舞台『のぶニャがの野望 弐(にゃん)』(東京・シアターサンモール/11月19日~24日公演)の上演、ファミマドットコムでのタイアップカレーの発売、ペットラインとのペットフードタイアップなど、数多くのコラボ企画が発表された。舞台化に関してはボーカロイドの“IA”を主題歌に起用することも発表。廣重氏は舞台について「イケメンにネコ耳をつけた実写化。のぶニャが様がキリリとしたイケメンに変身します」とアピールした。
『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』は今冬配信開始予定、対応機種はAndroidおよびiOS(予定)。
※『ぐるぐるダンジョン のぶニャが』公式サイトはこちら
(2)『信長の野望 201X』
続いて、コーエーテクモゲームス 執行役員 ネットワーク事業部 プロデューサー・竹田智一氏がふたつめのタイトルを発表。“現代に甦る『信長の野望』”のキャッチフレーズのもと、『信長の野望 201X(ニマルイチエックス)』が公開された。
本作の舞台は現代の日本。戦国時代の封印から復活した魔物が全国各地を“戦国化”する中、陰陽師の末裔であるプレイヤーは現代に甦った戦国武将と協力しながら、日本をあるべき姿に戻すため奮闘する。戦闘システムはRPGで、これまでの『信長の野望』とは一線を画した新たな物語が紡がれる。操作性はシンプルながら、状況に応じた高度な戦術性が要求され、緊迫感あふれる戦いを楽しむことが可能。
また、ともに現代世界の平和を守るため、プレイヤーと戦国武将の戦いをサポートするパートナー企業・団体を募集する相互タイアップ企画も発表。オリジナルアイテムの作成やゲーム内告知、商品ページへのリンクなど、幅広い分野でのタイアップが行われる予定だ。竹田氏は「戦国武将が商品やコンテンツを手にする姿をご想像いただき、“アリだ!”と思われた方はぜひご一報ください」とユーモラスに告知を行った。
『信長の野望 201X』は今冬配信開始予定、対応機種はAndroid、iOS、PC(予定)。
※『信長の野望 201X』公式サイトはこちら
(3)『三國志レギオン』
最後にコーエーテクモゲームス 常務執行役員 ネットワーク事業部 副事業部長・藤重和博氏が登壇。3つめのタイトル『三國志レギオン』が発表され、ティザー映像が公開された。
プレイヤーは劉備、曹操、孫堅ら三国の英雄とともに、天下覇権をめぐる戦いを体験。個性あふれる武将の活躍を楽しめる、新たな『三國志』タイトルとなる。
『三國志レギオン』は今冬配信開始予定、対応機種はAndroidおよびiOS(予定)。
※『三國志レギオン』公式サイトはこちら
今回発表された3タイトルについて、藤重氏は「まず日本での成功はもちろん、アジアを中心としたグローバルマーケットでも展開していく予定。今回発表した3タイトルのほかにも、数タイトルがプロジェクトとして動いている。今後もコーエーテクモゲームスののネットワーク事業にご期待ください」と締めくくった。
コーエーテクモゲームスの看板IPを活用した3タイトルが発表され、ネイティブアプリに対する同社の意気込みをうかがうことができた今回の発表会。国内での普及はもちろん、海外市場に向けて、日本発のコンテンツがどの程度の爆発力を見せるのか、期待したい。
■機関銃を持った信長に襟川氏も絶句?
最後に、質疑応答の模様をお届けする。
――今回発表された3タイトルの毎月の売上目標は?
小林 具体的な数字は控えさせていただきます。ただし、Google playやApp Storeのランキング上位に入る売上を想定して開発していますし、それを目標にしたプロモーションも考えています。数字はそこから類推していただければ。
――グローバル展開について、北米や欧米での展開をもう少し詳しく教えてください。
小林 各タイトルともアジア地区でそれぞれ契約も締結してサービスも決定しています。同時進行で北米やヨーロッパでのサービスに向けて数社と折衝中。『大航海時代V』に関しては近々に発表ができると思います。各タイトルとも当初はアジア市場を意識していますが、当然のごとく北米やヨーロッパを含むグローバル市場を意識していますので、むろん南米やそのほかソーシャル・モバイルゲームが伸びている地域も含めて、これから展開を考えています
――『信長の野望』最新作『信長の野望 201X』のリリースにあたり、襟川氏のゼネラルプロデューサーとしての襟川氏の意気込みをお聞かせください。
襟川 1983年に『信長の野望』の初めてのバージョンを作り、昨年で30周年、今年で31年目になります。『信長の野望』も新しい時代に入ってきたと感じている中、現場の竹田プロデューサーからの「こういった『信長の野望』を作ってみたい」というイメージイラストを見て、私は絶句いたしました(笑)。織田信長が機関銃を持っているので……(笑)。時代とともに『信長の野望』も変わるし、同シリーズはゲームジャンルやプラットフォームに常に新しい対応をして、新しいおもしろさを展開してまいりましたので、きっとお客さまもこういう展開を喜んでくださるだろうなぁ、と。ゼネラルプロデューサーとして、最後まで開発に関してはチェックをし、自分で納得したものをお客さまに出そうと意を決しております。途中のバージョンをプレイしましたが、非常におもしろい出来になっていますので、ご期待ください。
――今回発表された3タイトルについて、いままでの作品や他社タイトルとの違いは?
廣重 そもそも既存IP『信長の野望』をネコにしたというだけで、『のぶニャがの野望』は中国・台湾などで好評です。あえてRPGにして、タッチする爽快感を増した点がより新しいところかなと思います。まぁ、『のぶニャが』は出オチでネコですから、それ以外に推すところはないのかなというのが本当に正直なところです(笑)。
竹田 『信長の野望』はそもそも大人のための趣向ゲームというポイントが受け入れられていた。今回の『201X』も操作性はシンプルながら、かなり歯ごたえがあり、趣向ゲームとして完成度は高いと自負しています。『信長の野望』に知的好奇心を駆られている皆さまにご満足していただける奥深さがあると考えています。
藤重 やはり『三國志』に関連するタイトルはマーケットにたくさんある。その中で新しい楽しさを感じ取っていただけるものにしないと意味がないかなと思っています。開発を統括する立場ですべて同じことが言えますが、常に新しい価値を作り出してお客さまに貢献していく“創造と貢献”というテーマの中、とくにソーシャルやアプリの作品は開発期間が(コンシューマータイトルと比べて)短いです。いま流行っているものを半年後、1年後に提供しても古くなっている可能性がある。やはりひとつふたつでも新しい何かを入れて提供していきたいという開発方針でやっています。
――ネイティブアプリの開発期間はどれくらいですか?
襟川 だいたい1年前後ということでご理解いただければ。
――海外展開に要する期間はどれくらいですか?
小林 『大航海時代V』はサービスインする前の今年の前半には各パートナーと具体的な話をしていました。そこから考えると、今秋サービスインするタイトルであれば、順調にいけば来年の春~夏にかけてくらいではないかと。グローバル展開はスピーディーに、なるべく早い時期で行なっていきたいと考えています。