レメディー流のこだわりが随所に光る傑作の予感

 2014年8月13日(水)~17日(日)の5日間、ドイツ・ケルンのケルンメッセにてヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2014が開催中だ。gamescom前日に行われたマイクロソフト主催による“gamescom 2014 Xbox Briefing”にて、「印象的だったタイトルは何でした?」と聞かれれば、多くの来場者がこのタイトルの名前を口にするのではないだろうか? そう、『Quantum Break』だ。2013年4月のXbox One本体の発表時にアナウンスされたものの、あまりにも謎深きタイトルだった『Quantum Break』だが、いよいよこのgamescom 2014で全貌……というにはあまりにもささやかだが、ゲームの一端が明らかにされることになった。まずは最新のプレイデモをどうぞ。


『Quantum Break』の概要が明らかに “時”がカギを握るXbox One期待の一作【gamescom 2014】_02
▲レメディー・エンターテインメントのクリエイティブ・ディレクター、サム・レイク氏(左)と、ヘッド・オブ・フランチャイズ・デベロップメントのオサカリ・ハッキネン氏(右)。

 『Quantum Break』の開発を担当するのはレメディー・エンターテインメント。Xbox 360ユーザーには『アラン ウェイク』でおなじみの、フィンランドに本社を構える開発スタジオだ。『アラン ウェイク』を作ったスタジオということでいうと、いろいろと共通点が見えてくるところがある。まずは、骨太のアクション・アドベンチャーであること。そして、アクションにスパイスが加えられていること。たとえば、『アラン ウェイク』では、闇の存在に対して主人公はそのままの状態では非力で、サーチライトの光を当てることで敵の弱体化を図り、有効な攻撃を駆使できるようになる。『Quantum Break』でのスパイスは“時間”だ。本作では、ひょんなことから時間が止まってしまう瞬間があるのだが、それがゲームプレイにも絶妙なスパイスを与える。本当に簡略化して説明してしまうと、時間の流れが不安定な状態だったとして、橋が落ちたり元に戻ったりをくり返す場所があったとしよう。プレイヤーは、橋が元に戻っているタイミングを見極めて道を渡っていく……といった具合だ。2Dアクションゲームにありがちなシチュエーションに世界観で整合性をつけた印象だが、その認識は間違っていないのではないか……と思われる。さらに、『Quantum Break』の主人公であるジャック・ジョイスには、極めて限定された範囲ではあるが、時間を一瞬止められるという特殊能力がある。これにより、敵の動きを一瞬止めて敵を倒す……といったメリハリの効いた攻撃が可能になる。本作では、“時”の操作がカギとなるのだ。

『Quantum Break』の概要が明らかに “時”がカギを握るXbox One期待の一作【gamescom 2014】_03

 さて、少し先走ってしまったが、まずは『Quantum Break』のストーリーを紹介しよう。本作の舞台となるのは、東海岸の“リバーポート”。タイムトラベルの実験が悲惨な結果を招き、時間の流れがおかしなことになり始めるという設定だ。主人公のジャック・ジョイスは、この実験に巻き込まれ、時間の終わりがくることを阻止しないといけなくなる。「レメディのゲームなので、ご存じの通りストーリーは奥深いです。ただ、今回はあまり掘り下げて語りません(笑)」とディレクターのサム・レイク氏。

 プレゼンで披露されたデモは物語の中盤だ。ジャックは、もうひとりのヒーローと再会しようとするが、敵対するモナーク・ソリューションズに邪魔をされ、さらに悪いことに時間の亀裂はさらに不安定になっている。モナーク・ソリューションズは当局を味方に引き入れ、ジャックを探す。一方で、モナーク・ソリューションズが当局から何の規制も受けないことに反対するリバーポートの住民はデモをするなど、事態は混沌状態にある……というシチュエーションになる。

 『Quantum Break』は、『アラン ウェイク』とグラフィックの質感などが極めて近しいが、それもそのはず『Quantum Break』には、『アラン ウェイク』と同じ、“ノーザンライトエンジン”という自社エンジンが採用されているとのこと。『アラン ウェイク』で培ったノウハウが、さらに洗練されたとの印象だ。

『Quantum Break』の概要が明らかに “時”がカギを握るXbox One期待の一作【gamescom 2014】_01

 さらに、サム・レイク氏によると、『Quantum Break』では、興味深い取り組みを予定しているようだ。それは、レイク氏いわく「シネマティック・アクションゲームとライブアクションショウの融合」とのこと。ライブアクションとは、日本でいうところの実写ドラマ。ゲームではヒーローのストーリーが描かれ、ライブアクションショウ(実写ドラマ)では、悪役のストーリーが描かれる。ドラマは、ジャックの敵であるモナーク・ソリューションズの権力抗争の物語になるという。ゲームとドラマは同じパッケージで販売され、プレイヤーの選択がいろいろな形でゲームとドラマに影響を与えるのだとか……。ゲームとドラマのリンクがどのような形になるのかは不明だが、新世代機ならではの融合が期待できそうだ。ちなみに、『アラン ウェイク』のときも実写ドラマが制作されたりしていたが、ゲームと実写ドラマの混合もレメディー流と言えそうだ。

 本作のリリースは2015年。いわゆるタイムトラベルものはストーリーの整合性をつけるのが難しいが、その懸念はスタッフ内でも共通認識としてあり、本作では、専門家に何度も相談するなどして、ストーリーを詰めていったのだという。レメディー・エンターテインメントのこだわりが随所に感じられる『Quantum Break』のリリースが待ち遠しい。

 と、ここまで『アラン ウェイク』と『Quantum Break』の共通点をピックアップする形で、レメディー・エンターテインメントの傾向をいくつか紹介してきたが、両作にはさらなる共通点があった。それはストーリーが若干暗いというのと、主人公がちょっぴりイケてないということ(笑)。“等身大の主人公”ということで、愛着が沸くから良しとしようか。

(取材・文 編集部/F)