『Bloodborne(ブラッドボーン)』は“かなり怖い”作品に!?

 SCE JAPANスタジオとフロム・ソフトウェアという、『Demon's Souls(デモンズソウル)』(以下、『デモンズ』)を生み出したタッグが手掛ける『Bloodborne(ブラッドボーン)』。完全新作にしてプレイステーション4独占タイトルとしても話題の本作だが、gamescom 2014にて出展されているプレイアブル版を触ることができた。さっそく、そのプレイインプレッションをお届けしよう。

『Bloodborne(ブラッドボーン)』プレイアブルを体験! インプレッションをお届け【gamescom 2014】_01
『Bloodborne(ブラッドボーン)』プレイアブルを体験! インプレッションをお届け【gamescom 2014】_02

 本作の概要については、週刊ファミ通やファミ通.com、公式サイトでも紹介されているので、ここではプレイした感覚や感想に集中しよう。ということで、いきなりプレイした感想から。それは、本作は“怖さが際立った作品”ということだ。とにかく、怖い。ホラー映画の主人公になったような……と書くと陳腐だが、子どもが見たらトラウマになりそうな怖さがある。決してゴアな描写やB級スプラッター映画のようなノリがあるのではなく、もっとクラシカルなゴシック調の怖さだ。さらに、生物的というか、本能に訴えかける怖さもある。

 “ダーク”な世界と言っても、盾と剣やドラゴンなどが登場する“ダークファンタジー”をテーマとした『デモンズ』とは大きな開きがある。だが、時代や設定が異なるだけでは、ここまで異なる印象を受けない。新たな戦いのスタイルや、漂う空気感、映像美など、計算し尽くされたうえで形作られたものなのだろう。『デモンズ』に似たゲームではなく、似て異なるゲームになっていると実感できることに驚かされた。プレイステーション4で表現されたグラフィックも、かなり緻密だ。グラフィックやデサインに定評のあるフロム・ソフトウェアが手掛けた作品なので、ある程度は想像できたが、期待を上回る美しさだ。その美しさが、恐怖を増幅させる要因になっていることもまた、すばらしい。ほんの一例だが、たとえば『デモンズ』などでもよくあった、亡者兵士が角から突然飛び出してくるショックシーン。または、いきなり背後から襲われるシーン。今回のプレイアブル版でも同じようなシーンと出くわすのだが、演出がいっそう“ヤバイ”ことになっている。敵が緻密な背景と同化していて、たとえ視覚で認識できても、脳で認識するまでには至らず、反応が遅れてしまうのだ。

 そして、血が騒ぐような興奮が味わえる戦闘だ。『デモンズ』では、「角の向こうに何かいるのでは?」とドキドキして、なかなか前に進めなかったプレイヤーも多いらしいが、今回は、その2倍では効かないくらい、怖さが増している。より命がけの戦いが待っていることは確実で、気の弱い人は覚悟したほうがいいかもしれない。とても刺激的な作品だ。

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■左手に銃、右手に変形武器を持って戦うスタイル

 本作の特徴となるのが、プレイヤーキャラクターの持つ武器の形状だ。今回のプレイアブル版では、操作キャラクターをふたりから選択できる。ひとりは、右手にノコギリ鉈(なた)、左手に獣狩りの銃を装備している(ちなみに、銃は点灯時間無制限の松明と切り換えられる)。ノコギリ鉈は、文字どおりノコギリ刃の付いた鉈。ふだんは柄と刃の付いた部分を折りたたんで使い、変形させると長くなるという仕組みだ。本作の武器は、この変形する仕掛けが特徴となる。短くしてスピードを活かして戦ったり、伸ばして長いリーチを活かして叩きつけたりできる。武器ひとつで、ふたつの機能が使えるのである。『デモンズ』での武器持ち替えに近い効果が得られる、と言えばいいかもしれない。そして、左手の銃は、いわゆる散弾銃だ。しかし、敵は弾に強いのか、致命傷を与えられないどころか、少ししかHPを減らせない。ただし、牽制には使えるようで、ひるませることができる(できないこともある)し、後述する“リゲイン”システムにも関係する、“出血”をさせられるのだ。

 もうひとりのキャラクターは、獣狩りの斧というヘビータイプの武器を右手に、左手は短銃を装備している。キャラクターふたりのうち、スピード重視か破壊力重視で、好みのものを選択できるということだろう。すでに明らかになっているが、本作の戦いのスタイルは、両手に武器を持ち、盾を装備していない。そもそも盾を使って戦う時代の話でないし、それこそが『Bloodborne(ブラッドボーン)』のスタイルということだが、『デモンズ』などで盾に頼っていたプレイヤーは、最初はけっこう苦労するかもしれない。盾を背中に収めて、両手持ちプレイをしていた人なら、そんなに違和感がないだろう。防御というアクション自体が、今回のプレイアブル版では存在していない。おそらく敵の攻撃は、回避と銃による牽制、そして新システムの“リゲイン”で対処することになりそうだ。

 ちなみに、アクションの操作は『デモンズ』のものがベースになっていると考えて差し支えない。ただし、盾がないこともあり、L1ボタンは武器の変形に用いることになっている。今回のプレイアブル版での操作に限る話になるが、左手での攻撃(銃など)はL2ボタンを使う。L1ボタンで武器を変形させる際だが、長柄にするときに両手持ち(ひとつの武器を両手で持つ)になり、威力の高い攻撃が出せる。では、『デモンズ』で両手持ちに使っていた△ボタンは、というと、アイテムの使用に割り当てられた。今回のバージョンでは回復アイテム(おもに拾ったり敵を倒して補充できる消費型)専用となっている。□ボタンもアイテム使用の際に使う。石や火炎壺のような投擲アイテムも使用できる。『デモンズ』などのファンにだけわかることかもしれないが、ガード崩しにはキックが使える(右スティック+L1)。さらに、ジャンプ攻撃も同じアクション(右スティック+L2同時押し)でくり出せるので、操作面は早く馴染めるのではないだろうか。もうひとつ重要なことを書くと、新アクションとして、ロックオンした状態で回避ボタンを押すと、ローリングにはならずに、ロックポインターを中心に横移動できるようになった。これで後ろに回り込みやすかったり、素早い回避が可能となる。と、思い出したが、パリィやバック・スタブは現時点ではできないようだ。

 ゲームの進めかた自体は『デモンズ』などと大差はない。ザコ敵(と言っても、あいかわらず油断ならない)を倒し、大型のザコ敵(『デモンズ』などのファンなら青目、赤目、黒騎士クラスと言えばわかるだろう)を倒し、エリアのボスを倒して、先のエリアへ進んでいくスタイル。今回のバージョンでは、ボスが1体で、見事倒せればクリアーとなる。フロム・ソフトウェアは、世界的にも評価の高い、計算し尽くされた3Dダンジョンを構築することで有名だが、今回も“探索”のおもしろさは十分に堪能できる。「こちらからは開かない」などのメッセージでもおなじみのショートカットが、うまくつながっているのは見事だ。もっとも、今回のバージョンでは、死んだらゲームオーバー、かつセーブもできないため、ショートカットはほとんど意味を成さないが、雰囲気だけは確認できた。回収できるアイテムも各所に配置されている。細かいことだが、はしごの上り下りに関してもダッシュ上りと滑り降りが可能なので、ストレスがない(スタミナも減らない)。あくまで、今回の仕様なので、変わる可能性はあるかもしれないが。

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■新システムの“リゲイン”

 さて、盾を持たず、防御もせずに、攻撃と回避だけで戦い抜くとなると、かなりプレイが難しい印象を受けるかもしれない。アクションゲームが得意な人なら問題ないだろうが、“リゲイン”なるシステムがある。敵の攻撃を食らった際、HPを示す赤のゲージが減る。しかし、もとのHPの部分に黄色のゲージが約3秒ほど残る(時間は私的感覚だ)。その間に敵を攻撃し、返り血を浴びるたびに黄色のゲージに沿って赤いHPのゲージを取り戻せるというシステムだ。つまり、ダメージを受けてから約3秒のあいだに敵を攻撃して返り血を浴びると、減ったHPが回復するということ。HPを取り戻す前に敵を倒してしまうと、HPが取り戻せなかったりと、少々コツがいるが、叩かれたら叩き返すというアグレッシブな戦いが展開する。つまり、プレイヤーは能動的に動く“死闘”が楽しめることになる。

 この緊張感と興奮は、やはり実際にプレイしてみないとわからないと思うが、個人的には、かなり“血が騒いだ”。血が涌き上がるというか、本能的に血が沸騰する感覚。返り血を浴びて、攻撃を続け、相手にとどめを刺す。野性的な戦いに近い経験ができたのだ。さらに、その感覚を後押しするのが、変形武器の形状だ。いかにも、肉を切り裂き骨を砕くといった形状の柄物を振り回していると、肉感的な感覚が目覚めるようだ。「オーバーだな」と思うなら、ぜひいつかプレイしてみてほしい。この感覚こそ、『Bloodborne(ブラッドボーン)』のもたらす新たな戦いなのだと実感できるだろう。

 なお、プレイヤーキャラクターである狩人は、返り血を浴びることで、その顔や衣服がどんどん赤く染まっていく。それとともに自分も高揚するようで、人間の本性がむき出しにされる感覚が味わえるところも、本作の“怖さ”であるような気がする。

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■世界設定が生むリアルな怖さと戦い

 本作の時代設定は、現代に近い。ヴィクトリア時代のようなイメージだろうか。街にはガス灯が灯り、建物はゴシックでモダンだ。本作の舞台であるヤーナムという街は、神々やドラゴンがいるような世界ではない。今回のプレイアブル版では、物語の説明はいっさいないが、その雰囲気は伝わる内容になっている。敵となる獣のなかには、人のようでいて人ではない者がいる。4〜5人くらいが連れ立って、街を徘徊している群衆もいる。もちろん場所によって位置が固定されている敵もいるのだが、配置を覚えるのはひと苦労だろう。当然、群衆に突っ込んで多対一になる愚策は避け、おびき出しながら個々と戦うのが基本となるのだろうが、人数が多いときは悩ましい。弓はないので、代わりに石を投げつけて、おびき出すことになる。音を立てたり、短銃の弾を当てればこちらに気づくこともあるが。

 群衆を攻撃せずに観察していたら、獣を燃やしている街の中心に集まり、大人数の集団になってしまった。これは、時間の経過とともに状況が変化するということなのだろう。それぞれの行動を観察し、状況を考慮して戦略を立てないと生き残れないのだ。敵の出現位置が固定だった『デモンズ』と比べると、リアルさは大きくアップしている。敵のAIも、いきなり背後から銃撃してきたり、物陰から飛び出してくるところをみると、だいぶ賢くなっているのかもしれない。

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■苦しいけれど、挑戦し甲斐のある難度は健在

 『デモンズ』からのファンはとくに気になるであろう、全体的な難度の話をしよう。プレイアブル版を初見でプレイした印象だが、難度は『デモンズ』などと近い感じがした。『デモンズ』では、盾を使った戦いのコツであったり、ザコなのに強敵という難度に苦労したものだが、今回もプレイヤーの心理の裏を突いた敵の配置などは健在だ。フロム・ソフトウェアが手掛けるゲームであることが実感できる。ネタバレになるので詳しくは書けないが、『デモンズ』などとは異なるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の存在には驚かされた。

 そして、ボス戦。霧の壁みたいものがなく、気がついたら背後の出口が閉ざされ、勇壮な音楽が流れて、ボスが登場した。プレイアブル版のボスは、“聖職者の獣”という名前の大型キャラクター。大きな左手をブン回して攻撃してくるうえに動きも速い、一撃が強烈なタイプだ。5回目の挑戦である作戦がひらめき、どうにか勝つことができたが、かなり歯応えのある敵だった。アクションが苦手なプレイヤーは心が折れかけるかもしれないが、『デモンズ』でもそうだったように、どこかに“抜け道”が用意されているようだ。それで必ず勝てるというものではないが、わずかな希望を見いだせるだけでも、挑戦する意欲が戻ってくる。腕と知恵でなんとかギリギリ勝てるところが、『デモンズ』からつながるSCE JAPANスタジオとフロム・ソフトウェアのゲームならではだ。

 この新たな世界に、日本のプレイヤーが触れる機会が今後あるかどうかはわからないが、もしあるのならば、ぜひ体験してみてほしい。その価値はある。

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