未来のスター実況者たちが集結!

 2014年8月9日、東京・六本木ヒルズYouTube Space Tokyoにて、ゲーム実況動画制作者向けのセミナーイベント“YouTube Gamers' Day”が開催された。

 本セミナーは、ゲーム実況動画を通じてゲームの面白さを伝えるYouTubeチャンネルを利用したチャンネルネットワーク“ファミ通×電撃 ゲーム実況エクストリーム”が主催して開催されたもの。これからゲーム実況動画を制作しようとしている人や、すでに動画配信を実施している人たちに向けて、より多くの視聴者を集めるためのポイントなどが、わかりやすく解説されていった。

※ファミ通×電撃 ゲーム実況エクストリームについては→<こちら>

ゲーム実況動画制作者向けのセミナーイベント“YouTube Gamers' Day”が開催、人気実況者になるための実践テクニックとは?_01
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新世代は“ゲーム実況”時代!

 動画制作のテクニックなど具体的な話に入る前に、まずKADOKAWA 浜村弘一 常務取締役が登場。“伸長する新世代機とゲーム実況の関係”をテーマにした講演を行った。

 ここでの“新世代機”とは、プレイステーション4、Xbox Oneのこと。この両ハードは、欧米でかなりの勢いで普及が進んでいるが、「なぜこんなに売れたかを調べていくと、けっこうゲーム実況と関係があるということがわかってきました」(浜村)。

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 ここで改めて数字を見ると、PS4とXbox Oneはどちらも2013年11月に北米でローンチを迎えたが、PS4は1ヵ月余りで280万台、Xbox Oneも182万台を売り上げた。2014年4月の段階では、PS4が700万台、Xbox Oneが500万台を突破している状況。4月以降も勢いは衰えを見せておらず、今後も前世代機を大幅に上回る販売台数を記録し続けることが予想されている。
 これほどまでに伸びている理由は、ひとつには、前世代機からのスパンが長かったことが大きいのではないか、と説明する。ゲームの歴史を見ると、5~6年に1回、新型機がリリースされるのがいままでのサイクルだったが、Xbox 360の発売からXbox Oneの発売までには、約8年もの時間が流れている。つまり、「結果的にゲームファン待望の、という空気があった」(浜村)というわけだ。
 ソフトの充実振りも見逃せない。今後も『Evolve』や『アンチャーテッド』新作、『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』など、多数の注目作が控えているが、なかでももっとも欧米で注目を受けているのが、『Destiny(デスティニー)』だ。何よりもまず開発費の膨大さは桁違いで、宣伝費やマーケディング、インフラ整備などの費用も含めると、5億ドル――日本円で500億円もの制作費が投じられているのだという(これまでゲーム史上最高と言われている『グランド・セフト・オートV』でも3億ドル弱という規模)。調査会社の予想では、2014年で最大の売上本数を記録することは確実で、最低でも1500万本、最高で2000万本ほどの販売本数に達し、売上では6億~9億ドルが見込まれているのだそうだ。

 さらに、PS4&Xbox Oneの強みは、そうしたAAAタイトルばかりではなく、「あいだを埋めるタイトル」(浜村)、つまりインディータイトルも揃っていることだ。インディーの開発支援体制は、日本でも欧米でも整ってきている。たとえばUnreal Engineのようなゲームエンジンを導入しようとする場合、昔ならば莫大な資金が必要だったが、いまでは、最新の“Unreal Engine 4”が月額19ドルを支払うだけで利用できる。

 こうして、インディーの台頭でゲームの種類が増え、AAAタイトルはより大きくリッチになり……と、ますます充実してきているわけだ。

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 そして、そうした次世代ゲーム機の勢いを支えているのがゲーム実況である……というのが、本講演の主題だ。PS4発売後の報道を見ると、発売から2週間後、累計210万台のセールスを達成した時点で、“SHARE”機能で650万ものコンテンツが共有されたことが明らかになっている。さらにその1ヵ月後には、インターネット中継は2200万回以上にも達し、2014年3月4日時点では、“SHARE”回数が1億回を突破した。ゲーム実況は欧米ではもの凄い人気で、PS4を支える大きなコンテンツとなっているのだという。

 一方で、PS4の日本での盛り上がりはいまひとつだ。年末商戦期でもない2月に発売され、ローンチで32万台を販売するというのは、決して悪い数字ではない。しかし、いまに至っても累計販売本数は64万台ほどに留まっているのは、欧米での勢いと比べると見劣りする感は否めない。それはやはり、日本市場の特性として、携帯ゲームが主導していることが大きいとしつつも、「でも大手メーカーに聞くと、ゲームショウあたりからは大きな発表があるとも聞きますし、これから伸びてくるはずです」(浜村)とのこと。

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 では日本における、PS4でのゲーム実況の状況はどうだろうか? ここではまず、12000人を対象とした“PS4で期待していることは?”というアンケートの結果が示された。もっとも多い回答は、やはり“グラフィックへの期待”。ついで新型コントローラなどが票を集めるが、“SHARE”機能はあまり期待を集めていないことがわかる。さらに発売後も、実況機能を利用している人の割合は、欧米よりもはるかに低い。
 その理由は、PS4の実況機能が、当初YouTubeやniconicoに未対応だったことも大きいとしつつ、「メーカーの考えかたというのもあると思います」(浜村)。
 欧米では、動画に関して“何をアップしてもかまわない”というスタンスを取っているメーカーが多いのだそうだ。それは、何より『マインクラフト』という極めて大きな成功例があることが大きい。
 一方日本では、プロデューサーよりもクリエイターの意向が強いメーカーが多く、そしてクリエイターは実況配信をあまり好まないケースが多いのだという。また、実況することを前提に契約がなされていないため、声優さんの声が配信できないように設定されるパターンなども多く、それが盛り上がりに水を差すことにもなっている……というのだ。
 とある人気ゲームのケースでは、日本では当初実況が推奨されていなかったが、欧米のチームから「そんなやりかたでは売れない!」とガンガンクレームが入り、結果として日本でも実況オーケーとなったのだそうだ。
 それほど、日本と欧米とでは温度差があるのが現状。しかし“ファミ通×電撃 ゲーム実況エクストリーム”では、「メーカーさんとそんなことでは欧米に負けますよ、とお話をしています」(浜村)のだそうで、実際に協力を申し出てくれるメーカーは増えているのだという。

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 ここで改めて強調されたのは、「日本でも実況がもっと盛んになってきたら、もう一度据え置きゲーム機が伸びる可能性は大いにあります」(浜村)ということだ。近年、ハードの世代交代に伴って家庭用ゲーム市場は縮小傾向にあったが、新しいゲーム機が登場し、これからは伸びるターンに入る。ここに“実況”の後押しがあればなおさらだ。
 さらに、スマートフォンやオンラインの分野は、凄い勢いで伸長している最中だ。つまり、「ゲーム実況をする人にしてみれば、ゲーム市場は右肩上がりで、すごく伸びているんです」(浜村)とういわけだ。

 そして最後に、「欧米でもアジアでも、家庭用ゲームもスマホも、凄い勢いで伸びています。YouTubeなら世界中で見てもらえますし、世界中から見に来てくれれば、再生数はすごく伸びるはずです。私たちと皆さんがいっしょにやれれば、もっと伸びるはず。この中からスターが生まれて、一緒に大成功を収められるとうれしいな、と思います」(浜村)と呼びかけて、講演を締めくくった。

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世界に10億人のユーザー! 実況者の“戦場”YouTubeとは?

 続いて、“ファミ通×電撃 ゲーム実況エクストリーム”運営チームの小島創より、YouTubeに動画を投稿するうえでの基礎知識やテクニックなどが説明された。

 まずは実況者にとっての“戦場”であるYouTubeについて。いまや世界に10億人のユーザーを有し、1分あたり約100時間分の動画がアップロードされるという、空前の規模を誇るYouTube。ユーザー層を分析すると、PCユーザーは2295万人、モバイルユーザーは1861万人とPCユーザーが優勢ながら、若年層ではモバイルユーザーが圧倒的。これは遠からずモバイルユーザーが主流になることを示唆しており、モバイルでの視聴を意識することが極めて重要であることは間違いない。

 そしてYouTubeに投稿される動画は多彩だが、ゲーム実況は、その中でももっとも急激に伸長しているカテゴリーなのだそうだ。すでにゲーム関連の動画は、全体の24.5%を締めているそうだが、いまだ伸び続けており、現在トップの音楽カテゴリを抜き去るのも時間の問題だろうとのこと。ただしYouTubeのゲームトレンドは、ニコニコ動画などと比較すると、よりカジュアルで、スマホゲームの人気も高い。人気動画を目指すうえでは、そうした傾向も意識する必要があるだろう。

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 では、人気実況動画を作るためにはどうすればいいか? ここでポイントとして挙げられたのは、軸となる、【1】実況者(誰が?)、【2】タイトル(何を?)、【3】切り口(どうプレイする?)という3つのポイントだ。
 “【1】誰が?”は、すなわち自分自身が表現できて、ほかの実況者と差別化ができるポイントだ。声がいい、リアクションがいい、トークがうまい……などなど、自分の得意なものを見つけ、活かすことが重要、というわけだ。
 “【2】何を?”は、実況するタイトル選びのことだが、まず自分が楽しめて、そのゲームの楽しさを伝えたいと思えることは大前提としたうえで、”実況”というフォーマットにマッチしていること、YouTubeのトレンドに合致していること、などを意識すると、視聴回数アップにつながりやすい。もちろん、最新ゲームタイトルであれば、視聴者の興味が高いぶん有利ではあるが、権利関係では難しいケースも多い。その点“ファミ通×電撃 実況エクストリーム”では、最新タイトルのライツクリアランス情報を共有できるため有利になるだろう、とのことだった。
 “【3】どうプレイする?”については、“やり込み”やゲーム内外での“縛り”、ネタやモノマネなどの切り口を加えることで、動画に個性が生まれ、大きくおもしろさが膨らむ可能性がある。

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 最後にまとめとして、「人気動画を分析すると、やはりいま挙げた3要素のいずれかが秀でているもの。どれかひとつでも負けない要素を作りたいところではありますが、とはいえ気負いすぎず、まずは動画を作ってみましょう。自分にあったスタイルを模索しながら、走りながら考えるほうがベターだと思います」(小島)と、実践しながら工夫を重ねていくことを勧めて、セッションを締めくくった。

動画をより多くの人に観てもらうために

 続いては、同じく“ファミ通×電撃 実況エクストリーム”運営チームより、花崎憲士が登壇し、完成した動画をアップロードする際のテクニックについて説明がなされた。

 動画をアップする際には、メタ情報(タイトル、サムネイル、タグ、説明文)を作成する必要がある。このメタ情報が悪いと動画を見てもらえなくなるため、「ある意味では動画の中身よりも重要です」(花崎)と、しっかり作り込む必要があることが説明された。
 そしてメタ情報の中でももっとも重要なのが、サムネイルだ。具体的には、文字を入れるなら見やすく大きく。“人の顔”のように訴求力のある画像、ないしイラストを配置する。高解像度で、モバイルの小さな画面で見てもはっきり見えるように作る……など、とにかく力を入れて作るべきだと力説された。

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 さらに、再生数を底上げするうえで、チャンネル登録者を増やすことの重要性も、改めて強調された。チャンネル登録者には、動画をアップするたびに通知がされるため、視聴時間の初動が大きく増える。するとYouTubeに人気動画であると認識されやすくなり、トップページや関連動画などで、視聴者の目に触れるチャンスが増える。そこでさらに再生数が増え……と、いいスパイラルを生むためには、チャンネル登録者の数がものを言うわけだ。
 登録者を増やすには、単純な方法ではあるが、“とにかく呼びかけること”が効果的なのだとか。動画の終わりに、登録を促進する動画、静止画を入れること。これはテンプレとして作っておいて、アップする動画の後ろに必ず付け加えるようにしておくのは、人気実況者にとっては常套手段。効果的な導入を、人気実況者の動画から学ぶのもいい手だという。

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 そのほか、再生数を挙げるためのヒントが説明されていった。動画の最初の10秒で視聴者を引き込むための工夫(視聴者に呼びかけたり、アイキャッチを挿入したり)や、更新時間の工夫(ターゲットとなる視聴者層の生活時間に合わせて更新する)、視聴者とコミュニケーションを取る(動画内でよびかけたり、コメントに返信したり)、などなど、工夫するべきポイントは無数にある。
 そうした工夫とともに、“アナリティクス”、つまり統計データを活用することも重要だという。YouTubeにチャンネルを作ると、再生回数やユーザー層、視聴端末、視聴者維持率、登録者数などの多彩な統計データを確認することができる。
 また、動画作成時に参考となるサイトについても紹介された。

◆GoogleTrends→<こちら>
各種検索の検索量推移を最大5つのキーワードまで同時に確認できる。
◆YouTube キーワードツール→<こちら>
キーワードにどれだけ人気があるかを比較できる。たとえば“マインクラフト”と“Minecraft”のどちらが検索されやすいかがわかる。
◆VidStatsX→<こちら>
登録数が多いトップ100チャンネルと、過去7日間でどれくらい登録者数が増えたかなどがわかる。なぜ登録数が増えたのかも分析可能。
◆Wiztracker→<こちら>
ゲーム限定などカテゴリ別のチャンネルランキングが見られる。
◆niconico→<こちら>
ニコニコでの流行がYouTubeに流れるケースもあるので参考に。

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 そして最後に、再生数が伸びやすいタイミングについての解説が。伸びる時期はふたつあり、ひとつは、まさにいま、夏休みなのだそうだ。学生が夏休みで時間に余裕があることから、何もしなくとも、再生数が夏休み前の1.5倍に増えたり、といったことも珍しくないという。
 同様に3月中旬から末も、春休みで伸びやすくなるそうだ。しかもこの時期は年度末で、企業が予算消化のために広告を多く入れるため、広告単価が上がる傾向があり、いつも以上に条件がよくなるのだとか。
 いずれにせよいまの時期は、まさに人気実況者になる大きなチャンスであり、積極的に動画をアップするべき期間だと言える。ここまで説明されたようなポイントを、いきなりすべてクリアーするのは困難だが、やはりまずは動画をアップしながら、少しずつスキルアップを図っていくことが重要だろう。

人気実況者がリアル登場! “赤髪のとも”さんと“茸”さんが人気の秘密を伝授!

 ここからは、実際にYouTubeにチャンネルを開設し、多数の登録者=ファンを持つ実況者を壇上に招き、気になる事柄を答えてもらうことに。

 まず登場したのは、“赤髪のとも”さん。おもに、複数人でワイワイ遊んでいる様子を巧みに編集した動画を、毎日定期的に更新することで、多くのファンを持つ人気実況者だ。“赤髪のとものゲーム実況チャンネル!!”は、なんと56万以上の登録者を誇る。

★赤髪のとものゲーム実況チャンネル!!<こちら>

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――ともさんと言えば、複数で楽しそうにプレイする動画が特徴的ですね。
赤髪のともさん(以下、とも) 動画をアップするようになったのは5年くらい前からですが、それより前から、こういうノリで、みんなでゲームを遊んでいたんですよ。5年前のころって、複数実況ってあんまり多くなかったですし、いつものノリで投稿したほうがウケるんじゃないかと思って始めました。

――お仲間たちとは、どんな知り合いなんですか?
とも リアルな知り合いもいますし、別のゲームで知り合った、実際にはあったことはないんですが、skypeで話したりしている友だちもいますね。

――実況するゲームタイトルは、どうやって選んでいるんですか?
とも 自分のチャンネルのウリは、複数でどんちゃん騒ぎしている動画なので、それがしやすいゲームですね。オンラインでもふたりでしかできないようなゲームもありますよね。そういうタイトルではなく、4人より6人、6人より10人、というふうに、同時に遊べる人数が多ければ多いほど、自分の色に合っていると思うので、そういうタイトルを選んでいます。

――ご自身にとってターニングポイントになった動画は?
とも 最初に投稿したのは『メタルギアオンライン』で、16人でドンパチにぎやかにやる動画だったんですが、目的がなかったんですよ。つぎは『ロストプラネット2』で、これは4人でチームを組んで巨大な敵を倒すんですが、紆余曲折の末にボスを倒す達成感があって、とてもウケがよかったんですね。つぎに選んだのが『モンスターハンター』で、ここでけっこう伸びました。やっぱり、目的を設定して、そこにみんなで向かっていったり、ちょっと脱線したり。そういうのが受けたのかな、と思います。

――複数実況と、ひとりでやる実況との違いはどんなところにあると思いますか?
とも わかりやすくいうと、口数が違いますよね。ひとりだと、しゃべり続けないと実況にならないんですが、複数なら、自分がしゃべらなくても、誰かが茶々を入れたりしてくれるし、どう転んでもおもしろいんです。そこが、ひとりだと自分が全部やらないといけない。単純に、複数実況のほうが楽なんだと思います(笑)。

――複数の人が集まる動画では、どうやって盛り上げているのでしょうか?
とも まず、勝手にしゃべる人は放し飼いって感じですね(笑)。でも6人とか8人とか集まると、しゃべるタイミングがわからなくて、しゃべらなくなる人が出てくるんですよ。でもそういう人って、けっこうおもしろいネタを隠してたりすることが多いので、そこは意識的に話を振ってみたりするようにしています。そうすると、パート1ではしゃべらなかった人が、最終回では前面に出てきていたりして(笑)。そういう人が前に出てくる後押しになるんですよね。

――そのほかに工夫しているところはありますか?
とも 気を遣ってるのは、最初から最後まで賑やかだと、見ている人も疲れると思うので、緩急をつけるようにしています。賑やかにやっているところもあれば、「今日は何を食べる?」なんて雑談をしたりするのんびりした時間も入れたりして。そういう波ができるようにしています。沈んでいるパートがあるからこそ、賑やかな部分のハネがあるんじゃないかな、と。自分ではそう思って作っています。

――ともさんの動画では、エンドカードを見ても、スマホからの視聴者を意識されていますよね。
とも アナリティクスでスマホとPCの割合がわかるんですが、自分の動画で見ると、スマホの人のほうが多かったんですよ。PC向けももちろん大事ですが、多いほうを取るということで、エンドカードでは、先にスマホの方向けの案内を入れています。

――やっぱり、アナリティクスは見ているんですね。
とも 暇さえあれば見ていますね。がんばって編集した動画がこけたときは、本当にショックで。動画を録る気がなくなったりします(笑)。

――ともさんのチャンネル登録者数は56万人以上にもなっていますが、登録者数の伸びは、ぐーんと上がったのでしょうか、それともじわじわと?
とも 最初の1年は、500人しか増えなかったんです。2年目か3年目くらいに『マインクラフト』の動画を投稿したら、そこでグーンと伸びて、10万人を突破しました。やはり、自分の色にあった題材を見つけて根気よくアップしていけば、いずれ伸びていくと思います。


 続いては、ニコニコ動画でブレイクした後、YouTubeでも人気を博している“茸”さん。現在は、ニコニコ動画のコミュニティに加えて、YouTubeにゲーム実況用のチャンネルと、顔出しでさまざまな試みを行うチャンネルも持ち、いずれも高い人気を博している。

★茸(たけ)のYouTube実況ちゃんねる<こちら>

★茸(たけ)の顔出しなんでもちゃんねる<こちら>
★実況界の毒キノコ(ニコニコミュニティ)<こちら>

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――茸さんはニコニコで早くから有名でしたが、YouTubeでは後発なんですよね。
茸さん(以下、) まだチャンネルを作ってから、1年経っていません。ただ、ニコニコにアップしていた動画を、僕の代わりにYouTubeにアップしていた人がいたんです。そこで見てくれていた人が、昨年10月にチャンネルを作ったときに移動してきてくれたので、チャンネルを作ってから1週間で、いきなり60000人が登録してくれました。

――いまも、ニコニコに動画を上げていないわけではないですよね?
 もちろんやっています。

――YouTubeとニコニコとの違いって、どんなところでしょう?
 シンプルに、YouTubeさんのほうが高画質で上げられる、といったことはあります。あとは、ニコニコを昔から知ってる人はわかると思いますが、いまのYouTubeって、ニコニコの2008年くらい、新しい人がいっぱい出てきたころに似ているんですよ。YouTubeでは、いまがパイオニアになれるチャンスだと思います。
 ……あと、YouTubeは、コメントがやさしいですね、とにかく(笑)。動画をアップしたら、「待ってたよー」とか、「うp乙!」とか。ニコニコだともうちょっと、ね(笑)。

――茸さんの場合、ターニングポイントとなった動画はありますか?
 やっぱり『マインクラフト』で伸びたかな、というのはあります。それまでいろいろなゲームでやっていたんですが、ほとんど伸びなくて。それが『マインクラフト』を始めたら、ドカンと伸びました。やはり『マインクラフト』は自由度が高くて、『マインクラフト』をベースに、いろんなスタイルができることが大きいと思います。

――茸さんは顔出しのチャンネルも持っていますよね。使い分けというか、違いはどのように?
 “ 茸(たけ)のYouTube実況ちゃんねる”は、ゲームが絡んでいることが大前提です。“茸(たけ)の顔出しなんでもちゃんねる”は、商品レビューなんかをやっていて、最近はちょこちょこ、企業さんから「レビューしてよ」なんてお話しをいただけたりしています。こういう、カメラを設置してレビューができる環境を作ってみたりして、可能性を広げてみるのはいいかな、と思います。何で伸びるかわからないですからね。

――でもニコニコもあるし、両立はたいへんでは?
 はい、たいへんです(笑)。でもできちゃってますね……ほかに趣味がないんで(笑)。これが生き甲斐で、動画を上げるのが楽しいんです。

――実況の題材にするタイトルは、どうやって選んでいますか?
  僕はけっこう特殊なほうだと思います。ゲームを選ぶ理由が、「これで動画を作ったときに、どんなタイトルをつけるかな」なんですよ。たとえば最近だと、“命がけのセクハラ”という動画を上げていますが、このタイトルで動画を作りたくてゲームを選びました(笑)。『オペレーターズサイド』という、マイクでしゃべりかけて女の子を捜査させるゲームですね。

――では茸さんの場合、動画タイトルを見ていくとおもしろいかもしれませんね。
 もともとニコニコでやっていたんですが、ニコニコはゲーム実況者がとにかく多いんですよ。つねに戦国時代で、どう生き残るか、というところでやってきたので、そのせいかもしれません。

――動画の撮影編集には、どれくらい時間をかけていますか?
 僕はゲームによって変わるんですよ。『オペレーターズサイド』の場合、テロップなどを入れすぎると邪魔になって、ゲームのおもしろさを殺してしまう。逆に『マインクラフト』はシンプルだから、足していかないと華がないんですよね。なので、『マインクラフト』の動画の場合、編集に丸2日かかったりしますが、逆に『オペレーターズサイド』のようなゲームの場合、切って張って整えて終わり、でアップできちゃたりしますね。

――今後YouTubeでの活動を続けていくうえで、目標などはありますか?
 僕はいつも実況動画を上げるときは、自分よりワンランク上の実況者の方を見つけて,その方を抜くことを目標にやっています。いまはともさんですね(笑)。あれほど完璧な実況者はいないですよ。まず……友達が多いのがすごい(笑)。後は、毎日動画を上げていますし、投稿速度もすごい。しゃべりも編集技術も、エンドカードもすごいです。

――茸さんも、アナリティクスを参考にしていますか?
 僕はあんまり見ていないんです。ときどき見てみると、視聴者はやっぱり10代の方が多くて、あまり動きがない(笑)。ただ、視聴デバイスはやっぱりスマホで、PCの2倍くらいになっています。そこは今後は考えていかないといけないな、と思っています。

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▲セミナー終了後には、懇親会が開かれた。ここで、実況者どうしが親交を深めることで、おもしろいコラボ企画がまとまったりしたのかも?

 いまやYouTubeは、世界中で無数のクリエイターたちが競い合っている、もっとも巨大なメディアで、もっともアツイ舞台だと言える。そこで成功を収める方法論は、とても短時間で語りきれるものではないだろう。今回のセミナーでは、膨大なノウハウの一端が解説されたに過ぎないのかもしれないが、それでもより高みを目指す実況者たちにとっては、示唆に満ちた内容だったのではないだろうか。

 これほど大きなチャンスが開けているというのは、大げさな言い方をすれば、人類の歴史の中でも稀なことかもしれない。作り手の側に踏み出していくのならば、いまが最高のタイミングだ。“ファミ通×電撃 ゲーム実況エクストリーム”では、さまざまな面において、実況者を手厚くサポートしてくれる。「やってみたいが、どうしていいかわからない」というような人は、ぜひ利用してみてはいかがだろうか。