アジアのニーズに応えるために必要なことは?

 2014年7月31日(木)~8月3日(日)、中国・上海にある上海新国際博覧中心にて、中国最大規模のゲームイベントChinaJoy 2014が開催。ChinaJoyと併催される形で行われたチャイナ・ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(CGDC)。8月1日(金)には、カプコン台湾ジェネラルマネージャーの越知雄一氏による“Capcom’s development know-how and market strategy in platform revolution age”が行われた。

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 講演は、まずはゲーム市場の現状分析から行われた。全体で700億ドルのマーケットであるゲーム業界。そのうち、アジア・パシフィックは36%にも及び、北米や欧州を凌ぐ数字。今後は中国の勢いがすごく、「今後、世界全体のゲーム市場のシェアの半分くらいは、アジアしかも中国で占められるのではないか」と越知氏は展望する。

 一方、グローバルにおけるカプコンの位置づけは、コンシューマーゲームにおけるソフトの占有率としては、日本3位、北米13位、欧州14位となる。ちなみに、カプコンのコンシューマーゲームの売り上げに占めるアジアの割合は5%程度。越知氏は、中国におけるコンシューマーゲーム機解禁の動きを歓迎する。「コンソールゲームのオンラインは、クオリティーの部分で差別化もできるし、カプコンもいままでそこで戦ってきたので、おもしろいものを提供できる自信はあります」と越知氏は語る。ただし、今後を考えるとコンシューマーゲームは“ステイブル(安定した)”で、伸びは少ないと越知氏は見る。今後、もっとも期待されるのは、中国市場に牽引されたPCオンラインゲームだ。中国のオンラインゲームは爆発的な伸びを見せており、2017年の売り上げは、2012年の倍以上になる見込みだという。

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 2013年に台湾にオフィスを設立するなど、近年富にアジア戦略を進めているカプコン。では、いままでの経験からカプコンはどうアジアを攻めていくのか? 先日、中国や東南アジアなどに7作を投入することを発表したばかりのカプコンだが(⇒記事はこちら)、台湾や韓国への開発拠点設立もあわせて、「アジアに向けてタイトルを作っていくためです」と越知氏は断言する。日本向けのゲームを中国に持ってきてもなかなかフィットしない。たとえば容量ひとつとってもそうで、いまや国内では100メガ以下のソフトにはめったにお目にかかれない。ところが中国では、100メガもあったら、ダウンロードするのにいくら時間がかかってしまうのか? という状態になってしまうというのだ。あとは、課金。中国ではフリー・トゥ・プレイが前提となるが、そのぶん課金に対するシステムが洗練されており、「すべての欲望に対する課金での解決策が用意されている」(越知氏)という。

 カプコンとして、差別化を図れる部分はどこかというと、じっくりと時間をかけられるぶん、ゲームのおもしろさや見た目のクオリティーとのこと。「そこにアジアのやりかたを混ぜていくかがいちばん大事です」と越知氏は続ける。

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▲カプコンでは、独自のゲームエンジンを開発し、マルチプラットフォームに対応しているのが、これにモバイルも対応させたらおもしろいのでは……と越知氏。ちなみに、ご多分に漏れず、カプコンでも開発費は年々上昇しており、2001年に比べて3倍になっているという。

 さて、アジアにおけるカプコンの開発拠点は2箇所で韓国と台湾。どちらも2012年に設立されている。家庭用ゲーム機にしてもオンラインの比重が高く占めるようになるので、アジアのマーケットで結果を出すためには、オンラインの経験が多い人たちと組むのがベストとの判断から、両拠点を設立したという。ただのローカライズではダメなので、現地のカルチャーにあわせた仕様の追加、通信の技術にあわたせた問題の解決なども現地法人で行う。日本のゲームはクオリティーが高いが、場所が変わればニーズも異なる。遊びかたも変わってくるのだ。日本のゲームファンはゲームを味あうのに対し、アジア地域はスポーツ感覚でゲームを遊んでいる。競争するのが好き。そういう要素が日本のゲームでは弱いのでは……と越知氏。あとはソーシャル性も日本よりもアジアのほうが強いという。

 そんなアジアのゲームユーザーのニーズに応えるべく、台湾スタジオでは単なるローカライズだけでなく、ほぼ開発ができる体制になっている。今年の7月に中国で『鬼武者Soul』をリリースしたが、制作したのは台湾のメンバーだという。『鬼武者Soul』では日本のノウハウを活かしつつ、台湾での経験を加味。サーバーやセキュリティー、運営の部分も調整したという。結果として、日本語版と内容は相当変わったのだとか。

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 今後カプコンでは、『ブレスオブファイア6 白竜の守護者たち』や『ストリートファイター バトルコンビネーション』、『deep dawn』 などをこの年末から来年にかけてリリース予定。

 今後アジアのマーケットは確実に大きくなると越知氏は断言する。当然アジア地域のフォローを強化しなければならず、とくに“オンライン”がカギを握る。そのためには、アジアの力を借りたいと越知氏。そのために、カプコンは台湾と韓国に拠点を設けたのであり、中国に関しては、いろいろなパートナーと組んで結果を出す戦略だという。

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▲『ストリートファイター バトルコンビネーション』は、中国ではTeeplayと組むことが発表された。
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▲今後も技術革新は進む。会場では、新型エンジン“Panta Rhei(パンタ レイ)”で制作した最新作『deep dawn』の映像を上映。プレイステーション4向けの基本プレイ料金無料タイトルとして、期待が高まる。

(取材・文 編集部/F)