撮影は「ファンを裏切りたくない」という気持ちからスタートした

 ファインフィルムズにより、カプコンの格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズを原作とした実写版『ストリートファイター 暗殺拳』が、2014年8月2日に東京都・ヒューマントラストシネマ渋谷で1回限りの特別劇場公開が行われた。ここでは、若き日の“剛拳(ごうけん)”を演じた尚玄(しょうげん)さんへのインタビューの内容をお届けしよう。

実写版『ストリートファイター 暗殺拳』若き日の剛拳を演じた尚玄さんにインタビュー 撮影でこだわった細かいキャラクターの動きとは_02

――尚玄さんはゲーム『ストリートファイター』シリーズをプレイしたことはありますか。
尚玄さん(以下尚玄) 僕はちょうどスーパーファミコンの『ストリートファイターII』の世代でしたので、よく遊んでいました。そうそう、子どものころからファミ通を読んでいましたよ。今回、ファミ通さんからインタビューを受けるのは、とても不思議な感じですね。

――『ストリートファイターII』でお気に入りのキャラクターはいましたか。
尚玄 ”ガイル”の技がダイナミックで好きでしたね。また、ロサンゼルスでワールドプレミアを開催したときに『ウルトラストリートファイターIV』のトライアルが用意されていたので、そのときには久しぶりに“リュウ”を使ってみました。ちなみに、僕はゲームは上手くはないです(笑)。子どものころは、どちらかと言えば外で遊ぶほうが好きな性格でしたね。

実写版『ストリートファイター 暗殺拳』若き日の剛拳を演じた尚玄さんにインタビュー 撮影でこだわった細かいキャラクターの動きとは_01

――今回は剛拳という、もとのゲームで筋肉隆々なキャラクターを演じられていましたが、役作りにおいて大変だったことはありますか。
尚玄 それはもう筋肉の増量ですね。2013年の1月にオーディションで役が決まったのですが、そのときに別の仕事のために体重を落としていたこともあったので、撮影に入る前に1日5食べたりして、体重を12、13キロ増やしました。

――アクションシーンにおいて、ポーズにこだわった点はありますか。
尚玄 そこは監督にすごくこだわりがありました。僕には“剛拳の構え”がありましたし、ファンをがっかりさせたくはなかったので、現場でゲームの動画を見て、キャラクターの細かい動きを研究しました。

――今回、弟である“豪鬼(ごうき)”との確執が大きくクローズアップされていますが、尚玄さんにはご兄弟はいらっしゃるのですか。
尚玄 僕はひとりっ子なので兄弟はいません。ただ、今回共演したガク・スペース(豪鬼役)は僕と年齢が1歳しか違わないですし、僕と同じくアクションではなくテレビドラマをメインにやっている俳優ということもあって、“暗殺拳”の型のトレーニングなどを本物の兄弟のように切磋琢磨してやっていくことができました。そういう意味では、兄弟というよりも、いいライバル関係が築けてよかったですね。

――ガク・スペースさんと共演をしていて、大変だったことはありますか
尚玄 アクションをしていると、“フリ”ではなく本当に拳や蹴りが当たります。その“痛み”も含めて、ガクとは本当にリアルで、いい共演ができたと思います。

実写版『ストリートファイター 暗殺拳』若き日の剛拳を演じた尚玄さんにインタビュー 撮影でこだわった細かいキャラクターの動きとは_03

――今回のストーリーでは“殺意の波動に目覚める”ことが描かれていました。尚玄さんは、最近殺意の波動に目覚めるくらいに怒ったことはありますか。
尚玄 プライベートではそんなことはないですね(笑)。ただ仕事上、感情的になるキャラクターが多く、演技ではリアルな感情を作っているので、そういう意味では殺意の波動に目覚めているのかもしれませんね。

――尚玄さんは英語がお得意ということですが、ブルガリアでの現地の撮影スタッフとのコミュニケーションもとくに問題はなかったのでしょうか。
尚玄 まったく問題ありませんでした。とても仲よくさせていただきましたね。

――本編でもたくさんの英語の台詞を話されていましたね。そういえば、作中で伊川東吾さん演じる轟鉄(ごうてつ)が、尚玄さん演じる若き剛拳に「ここからは英語で話そう」と言うシーンがありました。そこでも、とくにドキッとすることはなく、英語をスムーズに話すことができたのでしょうか。
尚玄 はい。あのシーン、大好きなんです。とにかく東吾さんはすばらしい俳優さんで、人間としてもすごく尊敬できる方です。じつはあのシーンの後、轟鉄先生が涙目になっていたんです。本編ではカットされてしまったのですが、言葉を交わすことがなくても、師匠として、親として、轟鉄先生を感じることができてうれしかったですね。

実写版『ストリートファイター 暗殺拳』若き日の剛拳を演じた尚玄さんにインタビュー 撮影でこだわった細かいキャラクターの動きとは_04

――今回の実写版映像は、ゲームのファンが多く観ていると思います。『ストリートファイター』のファンに向けて、メッセージがあればお願いします。
尚玄 今回の実写映像は「ファンを裏切りたくない」という気持ちからスタートしました。先ほどもあげたように、細かいキャラクターの動きを遵守しながら作り込んでいます。また、今回は映像作品ということもあり、僕が登場している回想シーンを含めて、“心の動き”が丁寧に描かれています。このことがゲームにも深みを与えているのではないか、と期待しています。今後、続編を作りたいとも考えていますので、応援をよろしくお願いします。

 DVD『ストリートファイター 暗殺拳 コンプリートエディション』は2014年10月2日に発売予定。DVDには“本編コンプリートバージョン”が150分(劇場公開版は101分)収録される。また、本作に登場したキャラクター“剛拳”がプレイできるXbox 360、プレイステーション3用ソフト『ウルトラストリートファイターIV』は2014年8月7日に発売する。

 ゲームの設定とキャラクターをリスペクトし、“波動拳”や“竜巻旋風脚”などのおなじみの技のルーツを知ることができるうえ、ゲームそのままの“構え”を観ることができる『ストリートファイター 暗殺拳』は『ストリートファイター』ファンこそが楽しめる内容だ。ぜひ、尚玄さん演じる若き日の剛拳と、“リュウ”や“ケン”の本格的なアクションを観てほしい。

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【尚玄(しょうげん)さん プロフィール】

 1978年6月20日生れ。海外でモデルとして活躍後、2005年に映画『ハブと拳骨』で俳優デビュー。以降、『カフーを待ちわびて』(09)、『TAP 完全なる飼育』(13)などに出演。5万回斬られた男・福本清三主演で注目され、2014年6月14日より関西で先行劇場公開された『太秦ライムライト』に、生意気な若手スター・工藤純役で出演した。

 本作『ストリートファイター 暗殺拳』ではリュウとケンの師匠・剛拳役(回想部分)で出演。たくみな英語を駆使し、鍛えた肉体で、みごとに本作の世界観にあったキャラクターを演じている。

(取材・文:編集部/オスカー岡部)