藤岡氏がアメリカのゲームファンの前で、武器のジェスチャーを披露
2014年7月24日(木)~27日(日)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテインメントの祭典“Comic-Con International 2014”(略称:コミコン)が開催。開催3日目にあたる7月26日(土)には、カプコンによるプログラム“Monster Hunter”が行われた。
海外では、シリーズ最新作にあたる『Monster Hunter 4 Ultimate』(『モンスターハンター4G』)は、2015年の早い段階で発売予定。今回実施されたセッションは、そんな『モンスターハンター4G』に登場する新武器や新モンスターにスポットをあてつつ、シリーズの魅力を改めて分析する……というもの。しかも、藤岡要氏みずからがプレゼンを行うとあっては、中々に貴重な機会と言えるだろう。ちなみに、あらかじめお伝えしておくと、北米では『モンスターハンター4』は発売されていない。つまり『Monster Hunter 4 Ultimate』(以下、『MH4U』)で初めてチャージアックスや操虫棍といった新武器に触れることなる。そんなわけでセッションは『MH4U』で北米ユーザーが初めて触れることになる操虫棍の解説から始まった。
『モンスターハンター』シリーズは、マルチプレイで遊ぶために、武器ひとつひとつの役割やテンポ感、遊び心地がかぶらないように設計しているという藤岡氏。『MH4U』で操虫棍を導入したきっかけは、「棒術のアクションを取り入れることで、アクションのテンポ的にも個性が出るのではないか?」と思ってのことだという。それに『MH4U』で追加された“段差”という地形を、操虫棍で体験してもらえるようにということで、“ジャンプ”というギミックがアイデアとして出てきたという。たた、それだけだと『モンスターハンター』とおもしろくないということで、追加されたのが“虫”の要素。ご存じの通り、『モンスターハンター』では、モンスターの素材を活かしながら自分の鎧などを作ることになる。生き物との関わりが、とても強いゲームだ。“虫”を使うのは初代『モンスターハンター』のころから出ていたアイデアで、今回「虫と棒術をミックスすることはできないか?」ということで開発が進んでいったという。そこで、武器を使って虫を操る⇒モンスターに“弾”を貼り付けて虫を誘導する……というアイデアが生まれ、棒の後ろの部分には“弾”を射出するためのポンプが、前部には発射するための“マズル(射出口)”が、それぞれデザイン案として取り込まれていったという。さらに、棒の後ろの部分に笛にして、それで虫を操れるようになった。
一方で、『モンスターハンター』シリーズの醍醐味として、武器の強化がある。操虫棍の強化はどうするのか……というときに、「せっかく虫を使えるのだから、虫を育てることで武器を強化できるようにしよう」ということになったのだとか。虫の育てかたで武器の属性が変化したり、虫の属性が変わる。ユーザーの皆さんの好みにカスタマイズをしてもらおう」というアイデアとなった。そうして、操虫棍が誕生したのだ。
ちなみに、『モンスターハンター』の開発チームは、武器のアクションにもこだわりがあるとのこと。動きに関しては、昨今の主流であるモーションキャプチャーを使っているが、当然『モンスターハンター』の世界のこと、非現実的な動きを取り入れないといけないケースも多い。開発陣は人としてのリアルな動きと、アクションゲームとして気持ちいい動きを両立させるために、開発者がみずからモーションキャプチャーのアクターとなって、本当に必要な動きを撮影するのだとか。藤岡氏自身もアクションにはこだわりが強く、モーションキャプチャーの収録時には、なるべく立ち会うようにしているらしい。
ここでセッションは“クエスチョン・タイム”へ。藤岡氏みずからが武器のジェスチャーを見せて、何の武器を使っているか、あててもらうというのだ(当選者にはもちろん景品がプレゼント!)。驚かされたのが、藤岡氏が誠に切れ味鋭い動きで、ジェスチャーを披露したこと。本物さながらの動きに、会場からは期せずして大歓声が沸き上がっていた。出題を終えるや藤岡氏は、「僕が今日いちばん緊張したところです。うまく切り抜けてよかったです」とコメントし、来場者の笑いを誘っていた。ちなみに、なんのゼスチャーかわかります? 答えはこの記事の最後で。当たってもプレゼントはありません。あしからず。
おつぎはモンスター。まずは、おなじみイャンクックが生まれた経緯が語られた。『モンスターハンター』では、最初にモンスターのスタンダードになるリオレウスやリオレイアなどの飛竜種をおもに作ったらしい。ただし、リオレウスやリオレイアは非常に強いので、いきなりハンターに挑んでもらうのは難しい……ということで、飛竜がどう動くかを段階的にレクチャーするモンスターにしようということで、イャンクックが生まれたという。そのため、「基本的な動きや弱点はわかりすく、飛竜種でありながら弱い」という立ち位置のもと、デザインが始まった。そのときに設定も考えられたのだが、弱いので憶病な性格、憶病な性格であるゆえに耳が鋭いというふうにつめられていった。耳が効くという設定から、デザインに耳のデザインにパラボラアンテナが取り込まれた。さらに、イャンクックは虫や木の実が好物。ただし、対象が小さいので、土ごと掬って食べてしまうというのが設定として出てきた。そのためスコップのような巨大なくちばしが生まれたのだ。「そういった、モンスターの生態やゲーム的な部分を、ゲームの中に生かしていくのが『モンスターハンター』の特徴でもあります」と藤岡氏。
それらの設定は、実際にゲームの中にもしっかりと生かされている。イャンクックは耳がよいぶんそれが弱点でもある。大きな音を出すアイテムに弱くて隙を作ってしまうのだ。さらに体力が少なくスタミナが弱いので、大きな隙を作ることも多い。「『モンスターハンター』では、ゲームの中で表現されるモンスターの特徴が攻略につながっています。スタミナが減ったり、怒ったりといった感情表現をしてくれることで、プレイヤーはそれに気づいて、いま自分が何をすべきかを考えていくんです」と藤岡氏。
さて、ここで“質問タイム”その2。イャンクックは日本ではあるあだ名で呼ばれていますがそれは? 日本のゲームファンには楽勝だったかしら。答えは記事の最後で。
続いては、『MH4U』からの登場となるガララアジャラだ。そもそも初代『モンスターハンター』のころから「ヘビのようなデザインのモンスターを取り入れたい」という思いはあった。それが『MH4U』では、地形の変化などいろいろな試みができたので、ヘビ型のモンスターにチャレンジすることになったという。『モンスターハンター』の開発陣には生き物好きなスタッフが多く、ヘビを飼っているメンバーもいる。開発陣は、ガララアジャラの制作にあたっては、デザイナーたちがそのスタッフの家に取材にいって、ヘビの質感やディテールを研究したのだという。ただし、ふつうにヘビを作っていても『モンスターハンター』らしくないということで、特殊な音波を使って獲物を麻痺させて、麻痺した獲物を囲んで捕獲してしまうというアイデアが生まれた。甲殻をすりあわせて音を立てて捕獲するというところからイメージが膨らみ、デザインの顔つきもどんどん変わっていった。結果として、バリのガルーダのデザインをイメージとして取り入れることになったのだとか。
さて、ここで最後の“クエスチョン・タイム”。ガララアジャラの鳴き声は、ある道具を使っているそうですが、その道具とは? 熱心なファンの方からご存じなのかしら? コミコンの会場では、かなりやさしいヒントを出さないと、正解者は出現しませんでした。答えは記事の最後で。
藤岡氏の話を聞いていると、武器にしてもモンスターにしても、いかにしっかりとした必然性とアイデアをもって発想されていったかがわかる。『モンスターハンター』シリーズが、緻密な世界観の構築のうえに成り立っているかをうかがわせるセッションだったと言えるだろう。
[クエスチョン・タイムの答え]
その1:藤岡氏がジェスチャーした武器は?
(答え)太刀
その2:イャンクックのあだ名は?
(答え)クック先生
その3:ガララアジャラの鳴き声を出すために使っている道具は?
(答え)箸
(取材・文 編集部/F)