格闘ゲーム入門用に最適の一本!
アークシステムワークスより2014年7月24日に発売されたプレイステーション3用ソフト『アンダーナイトインヴァース エクセレイト』のプレイインプレッションをお届けする。
“円環ノ凶渦”(ブラックオービター)、“虚空ヲ分ツ断層-壱層”(ベイカントシフト ファースト)、“連鎖のネファリウス”、などなど。本作に登場する必殺技の名前を見ただけで、己の中にある“厨二魂”が刺激されて、胸の高まりを感じてしまうライターの浅葉たいがです。スタイリッシュなキャラクターと、伝奇ライトノベル風世界観で注目を浴び、各地のゲームセンターで人気を博している『アンダーナイトインヴァース エクセレイト』がついに家庭用に登場ということで、今回は、本作のプレイインプレッションを書かせていただきます。
本作はスピーディーかつ、爽快感あふれるバトルが持ち味の2D対戦格闘ゲームです。スピーディというと、空中連続技が難しい、ガードを揺さぶる技が多すぎてあっという間にやられてしまうというといった、敷居が高いイメージも強いかもしれませんが、本作は2D格闘ゲームの中では、連続技の難度も低めかつ、ガードについても、覚えることができればそれほど難しくないという、かなり間口の広い作品に仕上がっています。
連続技が簡単といっても、ある程度のレバー、ボタン操作や、必殺技のキャンセルといったテクニックは必要ですが、“目押し”や“複雑なコマンド入力”を求められる状況はほとんどありません。さらに、本作の必殺技コマンドはどれも出しやすく、短いものに設定されているので、格闘ゲームの入門用ソフトとしてもオススメできます。具体的には、236(※)、214(※)、623(※)、22(※)の入力を覚えれば、本作のほとんどの必殺技をくり出せます。超必殺技クラスのものでも41236(※)、64321(※)などのコマンドなので、練習すれば、自在に出すことも難しくありません。
さらに、コマンド入力は苦手という人や、初心者に向けたシステムとして、Aボタンを連打することで、通常技コンビネーション→必殺技→EX必殺技とつなげてくれる“スマートステア”が用意されています。本作は、技から技がテンポよくつながっていくため、連続技のバリエーションが多いのが特徴ですが、この“スマートステア”をベースに連続技を構成しても、かなりのダメージを与えることが可能なので、素早い必殺技キャンセルが苦手という人でも、ゲームの爽快感を味わいやすいのもうれしいところです。
※コマンドのテンキー表記。記事中では、+ボタン(レバー)の入力方向をキーボードのテンキーに見立てて表記しています
戦況の優劣を表す“グラインドグリッド”ゲージがもたらす、本作ならではの緊張感
本作のバトルシステムの最大の特徴である“グラインドグリッド”ゲージ(以下GRDゲージ)は、ほかの対戦格闘ゲームには類を見ない、メリハリのある緊張感を生み出してくれます。このGRDゲージは、戦況の優劣をあらわすゲージで、具体的には、前進や攻撃を当てるといったアグレッシブな行動や、テクニカルな行動をとることで、増加していきます。そして、対戦開始から10カウントごとに、GRDゲージが多いほうに自動で発動する“ヴォーパル”状態では、攻撃力がアップし、さまざまな行動の動作をキャンセルする“チェインシフト”と呼ばれる連続技、連携に特化したシステムを仕様することが可能になるというのが最大の盛り上がりどころで、ヴォーパル状態で相手のガードをこじあければ、通常時とは比べ物にならない大ダメージ連続技を狙うことができるんです。体力ゲージだけでなく、GRDゲージを奪い合うという本作ならではのかけひきは、緊張感にあふれています。
このほかにも、前方に小さく浮かび上がる“アサルト”や、相手を吹き飛ばす衝撃波を発動し、一定時間強化状態になる“ヴェールオフ”など、独自のシステムが多く存在する。これらの多彩なシステムは、どれも簡単な操作で繰り出せるようになっているので、バトルに慣れてくれば、スムーズに発動することが可能になるはずだ。
新キャラクター、ナナセとビャクヤのバトルスタイル
ナナセは、素早い動きと長めのソードを使った斬撃を持ち味とするキャラクターで、相手や状況に応じて、さまざまな戦術を組み立てることができるのが魅力です。通常技のリーチは平均程度ですが、機動力を活かせば、相手に一気に接近することが可能で、非常に使いやすいキャラクターといえそうです。ジャンプ攻撃は技によって、横、下、上と、攻撃する方向が異なるため、うまく使いこなせば、攻めの起点や空対空など、一通りこなせそうな印象でした。わかりやすい性能の通常技とは対照的に、必殺技にはトリッキーなものがそろっているのも特徴のひとつです。空中から飛び道具を繰り出す“フルールに想いを寄せて”は、攻めの起点として重宝しそうです。この技は、弾速が非常に遅いため、繰り出してから地上ダッシュで追いかける、追い越すというような形で、同時攻撃を仕掛けられます。
さらに、相手を引き寄せる効果のある竜巻のようなものを発生させる“アンジュの誘い”や、突進攻撃を繰り出したあとに3種類の技に派生できる“レーヴを追いかけて”など、幻惑効果の高い必殺技を持っているので、スピーディかつ華麗に戦いたいというプレイヤーにはぴったりのキャラクターになりそうですよ。
ビャクヤは、背中の後ろの”鉤爪”を使って戦うキャラクターです。プレイしてみて印象的だったのは、攻撃範囲の広いジャンプB。この技は、見た目通りビャクヤの周囲に攻撃が発生するため、相手を飛び越えてから攻撃する“めくり”を狙いやすいのが魅力です。地上技も、“鉤爪”を伸ばして攻撃する技はリーチが長いため、けん制や、とっさの反撃技もそろっています。
必殺技では、クモの巣のようなものを画面中に設置する“この辺に仕掛けておこうかな?”が、立ち回りのアクセントとして活用できそうでした。クモの巣にヒットすると、相手を長時間拘束するため、そのまま連続技に持ち込めるので、見返りが高いうえに、“この辺に仕掛けておこうかな?”の動作後半をキャンセルして、つぎの技に派生できるので、設置を止めようとする相手に奇襲をかけたり、この派生までの流れを攻めに組み込むといったことも可能です。このほかにも、突進しつつ連続攻撃を繰り出す、連続技向きの必殺技“どう料理しよう?”や突進しつつクモの巣のようなものを設置する“そろそろ食べごろかな?”など、使い勝手のいい必殺技も併せ持っているので、シンプルな戦い方でも、ある程度強さを引き出すことができそうでした。
家庭用ならではの要素を活用して、楽しみつつ上達を図ろう
格闘ゲームの家庭用といえば充実した“トレーニングモード”の存在がアーケードゲームとの大きな違いです。本作の“トレーニングモード”も、自分や相手の状態設定や、相手に特定の行動を覚えさせる”レコーディング機能”などを搭載しており、連携や連続技の練習はもちろん、特定の技や状況を想定した反撃や対策の練習を行うことが可能です。
さらに、本作のトレーニングモードには、自分が入力しているレバー、ボタンが、何フレーム押されているかという詳細なキーディスプレイが搭載されているため、これをうまく使いこなせば、さらにハイレベルなトレーニングが可能です。さらに、ネットワークバトルの通信遅延、俗に言われる“ラグ”に対策する、“入力遅延設定”が搭載されているのも、驚かされるところなんですが、プレイステーション3を有線接続して、ネットワーク対戦に影響のない環境を構築すれば、通信遅延を感じさせないバトルを楽しむことが可能ですよ。
遊びやすさと新鮮なプレイ感覚が魅力
2D格闘ゲームとひと言に言っても、飛び道具やけん制技で“飛ばせて”、対空迎撃で“落とす”といったところを重視したものや、ダッシュ、空中ダッシュでスピーディーに攻めあうものなど、ゲーム性はさまざまです。どういったゲームを面白いと感じるかは、プレイヤーの好みに寄ってくる部分も多いのですが、本作は、いろいろな格闘ゲームのエッセンスを、少しずつかみ砕いて、キャラクター別に割り振っています。“飛ばせて落とす”ができるキャラクタ-もいれば、“相手を転ばせて強烈な起き攻めを仕掛ける”、“多彩な空中制御行動で上から積極的に攻める”といった行動を得意とするキャラクターもいます。
使っているキャラクターはもちろん、相手にするキャラクターが少し変わるだけで、ゲームがまるで違って感じられるのが、本作の最大の魅力だと僕は感じます。そうした個別の戦術を持つキャラクターたちに加えて、本作ならではのバトルシステムが合わさることで、ほかの格闘ゲームには類を見ない面白さが生まれています。何か新しい2D対戦格闘ゲームを遊んでみたいという人にはもちろん、初心者の方にもオススメな本作、ぜひとも遊んでみてください。
(文 ライター/浅葉たいが)