グロ表現が苦手な人はとっととスルーしてください

洋ゲー界の最後の秘境はイタリアにあった! グロテスク表現マックスな、90年代の香り漂うPC専用怪奇派格ゲー『Death Cargo』_01

 NecroStormの格闘ゲーム『Death Cargo』をご存知だろうか? 恐らく本誌読者のほとんどは、タイトルはおろかメーカー名も初耳だと思う。
 それもそのはず、NecroStormは本来ゲームメーカーじゃなくて、イタリアから、「アダム・チャップリン」や「ホテル・インフェルノ」といった低予算ながら突き抜けたスプラッター映画を世に送り出してきた、知る人ぞ知る映画会社。

 その社長ジュリオ・デ・サンティ氏が一念発起して、自らディレクターを務めて自身の夢見た格闘ゲームを数年かけて作り上げ、ゲーム業界に殴り込みをかけたのが本作『Death Cargo』なのである(そのほか脚本や、キャラクターのひとりエージェント・マルコムも熱演)。

 その中身は、90年代から実写格ゲーがタイムスリップしてきた挙句に有毒ガスに侵されてハイパー突然変異を起こしたようなショッキングな内容。
 そんなわけで、『モータルコンバット』の近作が中学生向けにしか見えなくなるぐらいの盛大なスプラッター表現は、まったくもって万人にオススメできない! しかし、ヒシヒシと伝わってくるデ・サンティ社長の「ちょっとぐらいの粗なんて知るか! 俺はコレが作りたいんだ!」と言わんばかりのインディー魂にはノーぼかしノーカットで応えたい。
 だから「グロいのちょっと無理」という人はもちろん、念のため、「オゲー」とか「キモい!」と言いたいだけのインターネット当たり屋な人とかも、大変申し訳無いが閲覧はご遠慮頂きたい。いいですか、止めましたからね!

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▲実写ゴア格ゲーという、いまやほぼ絶滅したジャンルが生々しく甦る!

最後の秘境ぶり: そもそも入手が困難

 本作のプラットフォームはPC。ということで「へー、次のSteamのセールで買うかな?」と思った人もいるかもしれないが、残念! NecroStormは、80~90年代のホラービデオが怪しかった時期を至上とするようなメーカーであり、あらゆるゲームがデジタルプラットフォームで流通するようになった21世紀の時流なんかには乗らないのである。

 というわけで基本は昔ながらのDVDのパッケージ販売であり、“ビデオマーケット”などの輸入ビデオ店を通じてゲットするか、イタリアに直接発注するしかない。コレクターズ・エディションが約30ユーロ、スタンダード・エディションが約22ユーロで、国外発送にも対応。
 それとは別に、最近デジタルエディションも約15ユーロで販売スタート。収録キャラクターが少ない(プレイアブルキャラ6人は同じだが、DVD版は6人の非プレイアブルキャラを収録)といった弱点はあるが、記者が手に入れたのもこのバージョン。

 支払いはペイパル経由で受け付けており、デジタルエディションの場合、取引が完了するとメールが送られてくる(特定のメールアドレスでエラーを起こすようだが、数日経って来なければ再送を依頼すればオーケー。すぐに送ってくれる)。中身はプログラムをまるごと圧縮したRarファイルの直リンアドレスという、アングラ感あふれる男らしい内容。

 しかし、これですぐにプレイできるわけではない。圧縮ファイルをダウンロードし、適当な場所に解凍して、中に入っている実行ファイルを直接ダブルクリックして動かし、表示されたコード番号をサポートに送り返すと、対応するアンロックコードを教えてくれ、それを入れるとようやく遊べるという、超人力な対海賊版システムを採用しているのだ。
 なお、やりとりはすべて英語でオーケー。サポートの英語も盛大にスペリングミスしているぐらいなので、こちらも「This is my code. Give me unlock code. Thank you」ぐらいの適当ぶりで問題なし!

 ちなみに直近のパッチ(というか差し替え用の実行ファイルそのもの)を当てると、stdrt.exeというファイルの動作がアンチウィルスソフトに思いっきりひっかかったりするのだが、本作でゲーム制作環境として採用しているMultimedia Fusion 2が利用するファイルでもあり、よくマルウェアとして誤検知をくらうことがあるので、多分大丈夫なハズ……。しかし挙動を検証したわけではないので、あくまでも自己責任ということでお願いしたい。(追記:NecroStormから返答があり、「次回パッチではそのファイル使わない設定にするよ」とのこと。)

というわけでご開帳

 と、グロテスク表現がダメな人の目に万が一にでも動画が入らないように行数も稼いだので、それじゃあ実際どんなゲームなのか、動画で早速見ていただくとしよう。(編注:動画中に出てくるキャラが消える現象自体は、そういう技。しかしキャラが消えるバグに出会ったこともある。)

 プレイアブルキャラクターが6名であることはすでに書いたが、本作で衝撃なのは、全員の技コマンドが共通ということ。コマンド入力は、方向と4つのボタン(FAST、LUNGE、STRONG、TW)を組み合わせて行う。FAST、LUNGE、STRONGはおおまかに小中大攻撃と考えてもらって差し支えない。

 ユニークなのはTWで、必殺技のコマンドに混ぜると強化版の上位技になるほか、連射で専用技が出たり、ジャンプ中に押すことで二段ジャンプになったりもする(ちなみに「実写アクションで高いジャンプはおかしい」というこだわりにより、通常のジャンプは低い)。

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▲技のコマンドは全キャラ共通!

 『モータルコンバット』っぽいグラフィックから想像しやすいと思うが、もちろんモーコンの究極神拳(フェイタリティ)にあたるトドメ技もある。しかも非常に出しやすい。
 実写映像が流れる“Deathrip”は、敵の体力がゼロになって、フラフラしている間に左右どちらかのスポットに立ち(アイコンで明示されるので、対応する間合いを覚える必要もない)、TWボタンを押すだけ。後は制限時間内に連射してゲージが溜まれば、無事に発動、敵が骨丸出しになったり肉塊になったりする(左右どちらで出すかでも演出が異なる)。

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▲もちろんトドメ技はエグい! 出すのは簡単、スポットに立ってTWボタンを押し、後はゲージが時間内に貯まるように連射するだけ。
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▲成功すると“Deathrip”が炸裂! 実写映像でキッツい一発をカマす。次戦で超必殺ゲージなどにボーナスがつく。

 敵がフラフラしている状態で必殺技を叩き込んだ場合も、特殊演出が入って“Liferip”というトドメ技になる。Deathripのようなムービー演出こそ入らないが、やっぱりえげつないイタリアンスプラッターな結果が待っているので、ついついいろいろ試したくなるのが人の性。
 なお、Deathripの連射に失敗したり、どっちも決めずに時間切れになった場合も、ステージキルが発動して、上からガトリングガンがぶっ放されてミンチになったりするので、スプラッターからは逃げようがない。

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▲TWボタンの代わりに必殺技でトドメを刺すと、“Liferip”になる。体力バーにボーナスがつく。

 特殊演出が入ってくる技は、キャラの一本目の体力バーがゼロになる“Breakpoint”時にもある。この時に特定の技を当てることで、専用の画像がカットインされ、なんと体力の1/3をさらに奪ってしまうのだ。

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▲一本目の体力バーがゼロになった“Breakpoint”で特定の技を当てると特殊演出が入り、2本目のバーからさらに1/3を奪う。

ナイナイ尽くしだが、燃える情熱は確かにある!

 ゲームモードはストーリーモード的な“コンカーモード”のほか、アーケードモード、対戦モード、トレーニングモードの4種類。しかし、現在のゲーム業界の常識から外れた“こだわり”(と、もしかすると技術的限界)により、オンライン対戦モードをはじめ、いろいろ足りない。
 ちなみにオンライン対戦モードがないのは「ゲーセンか友達の家に行かなきゃ対戦できなかった頃の雰囲気を大事にしたいから」らしいのだが、それはいいとして、ゲームパッドのボタンの再配置もない(もしくは未だやり方がわからないぐらいUIがひどい)のはいかがだろうか?

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▲ボタンの再配置は現状では未実装!

 だが、それもいずれいろいろ解決していくのかもしれない。そもそも本作、販売ページの表記に従えば「UNLIMITED DLC」つまり永遠にDLCでコンテンツを追加するつもりなのである。果たしてそんなことを本当に実行できるかは、その時が来てみないとわからない。なんせ販売ページにはそう書いてあるものの、昔のQ&Aでは「DLCとか作んねーよ。バグ取りとかはするけど」とも答えているのだ。
 いったい何が本当で何が嘘なのか? インターネット以前の怪しいビデオ通販を想像させるよくわからなさも、2014年には逆に新しい。ただひとつ確かなのは、他のどこにもない異形のゲームを作ってやろうと決め、バグだらけではあるけど形にしてみせた情熱。ここまで述べてきたような数々の理由により、多くの人にオススメすることはまったくできないが、その熱量は間違いなく2014年上半期最高のカルト作であると称え、紹介を締めくくりたい。(文・編集:ミル☆吉村)