『ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories-』著者、渡辺大祐氏にインタビュー

『FFXIII』シリーズ完結後の後日譚を描く小説『ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories-』。その著者である渡辺大祐氏は、『ファイナルファンタジー』シリーズや『キングダム ハーツ』シリーズのシナリオに携わってきた人物。今回は、その渡辺氏に、小説を執筆することになった経緯などをうかがった。
2014-07-11 15:45:00

●ライトニングとホープのその後は……!?

FFXIII』シリーズ完結後の後日譚を描く小説『ファイナルファンタジーXIII REMINISCENCE -tracer of memories-』。その著者である渡辺大祐氏は、『ファイナルファンタジー』シリーズや『キングダム ハーツ』シリーズのシナリオに携わってきた人物。今回は、その渡辺氏に、小説を執筆することになった経緯などをうかがった。
※本インタビューは、週刊ファミ通7月17日号に掲載されたものです。



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渡辺大祐氏

―― 今回の小説は、『ファイナルファンタジーXIII』(以下、『FFXIII』)シリーズのシナリオに携わられた渡辺さんが直々に執筆されたということですが、その経緯を教えていただけますか?

渡辺 最初、僕はこの企画に参加していませんでした。これまで『FFXIII』と『XIII-2』では、映島巡先生に小説の執筆をお願いしてきたんですが、3作目である『ライトニング リターンズ FFXIII』(以下、『LRFFXIII』)は、前2作からタイトルを変えていることもあり、小説の内容もテイストを変えようということになったそうです。

社内の人間で話をするなかで、ディレクターの鳥山(求氏)が「キャラクターにインタビューしよう」というアイデアを出し、プロットを考えていく際に、途中から僕も参加することになりました。

―― 渡辺さんが参加してからは、どのような流れで執筆されていったのでしょう。

渡辺 僕が入ったときは、“キャラクターインタビュー”という軸は決まっていましたが、インタビューする順番などは決まっていない状態でした。

そこで、通して読んだときに、一貫性と起伏のある流れにしたいということで、社内の出版部の編集者と相談しながら、インタビューの順番やプロットを練っていったんです。でも、そのプロットをもとに小説を書くのは、プロの作家さんにお願いするんだろうな、と思っていて。

そうしたら、「いや、書くのは渡辺だよ」という話をされ、「ええっ!? チェックとかじゃなくて書くの!?」って(苦笑)。

「ヤバイ……世に出すのなら、小説としてちゃんとした作品を書かないと」と、編集者に監督してもらって久々に腰を据えて書きました(笑)。

―― 渡辺さんは、スクウェア(当時)に入社する前に、マンガのノベライズを書かれているんですよね。

渡辺 はい、それ以来です。確か『デュープリズム』の攻略本に、ちょっとしたショートを書いたりはしたんですけど。『FF』には長らく関わってきていますが、こういう形で読み物を出すのは今回が初めてです。

―― 久々というのもあり、苦労されましたか?

渡辺 そうですね。とくに、『LRFFXIII』が、僕としては「終わった!」という感覚がものすごくあったので、きっちり完結した物語におまけを付け足すのは野暮じゃないかという気持ちがありました。

それだけに、出すのであればしっかりとまとまったものにしなくてはいけないわけです。

映画で、スタッフロールが流れているときに、NGシーンを見せるものがあるじゃないですか。あれはあれでおもしろいんですけど、それまで映画に入り込んでいたのに、急に現実に引き戻される感じがするときもあるんですよね。今回の小説も、下手をしたらそうなりかねないなと。

ですので、NGシーン集ではなく、たとえるならオーディオコメンタリーのような位置づけに……振り返って、物語をさらに深く掘り下げられるようなものにしようと思いました。


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―― 確かに、『LRFFXIII』は、“ライトニングのその後が、少しだけわかって終わる”というきれいな終わりかたをしていますから、後日談とするならどう持っていくか、というのは難しいですよね。ただ、個人的には、ゲームでは語られなかった部分が補足されていたりと、とても楽しめました。最後は、ちょっと意外でしたね。「あっ、深く突っ込んでいかないんだ」という。

渡辺 そこで深く突っ込んで長々と語らせるのは、ラストの雰囲気を壊すし、キャラクターにも似合わないので、「どうやって突っ込ませないように話を持っていくか」というところが構成のテーマでした(笑)。

―― なるほど(笑)。でも、“ライトニングらしさ”が感じられて、とても納得できました。ほかのキャラクターも、シナリオを書かれている方が執筆されているので当然といえば当然なんですが、キャラクター性や流れに違和感なく入り込めますね。

渡辺 それはよかったです。本当に、ゲーム本編のシナリオを書いているときと、同じくらい苦悩したんですよ。

たとえば、『FFXIII』でホープとスノウが仲直りするシーンがありましたが、それはプロットにはただ“仲直りする”と書いてあるだけなんです。それをいかに仲直りさせるかというのを考えるんですけど、「こんなにこじれた関係、どうやって仲直りするんだよ!」って悶々と(笑)。

―― ああ、仲直りの方法までは、プロットの段階では詰めていないわけですね。

渡辺 そうなんです。かといって安易に仲直りさせると一気に嘘くさくなるので、キャラクターの身になって、いっしょに悩んでセリフを考えるしかないのですが、今回もそんな感じでした。

「こんなに書くのが難しいプロット、どこのどいつが考えたんだッ!? ……俺か!」と、かつての自分を呪いながら(笑)。

――(笑)。最初がホープで、各キャラクターを回った後にまたホープに戻るという、ホープが鍵になっている構成というのは、最初から決まっていたのですか?

渡辺 最初の段階からそうでしたね。彼は『FFXIII-2』でも『LRFFXIII』でも、いろいろなものを俯瞰して見る立場にあったので、作品を方向づけるには適任だろうな、というのがありました。

ホープは仲間の中でも特別な位置づけだったのもあり、彼から、というのが妥当かなと。


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―― カイアスも、彼は現世にはいませんから、出すのなら語り手を“あちら側”に送らなければいけないわけですよね。

渡辺 そうですね。ラストシーンのイメージはわりと早くから決めていて、その締めのところでは、語り手の気持ちが旅を経て変わっているだろうと思っていました。

そこに行く前の区切りとなる、重々しさを持っているのがカイアスかなと。それとカイアスは、あまりインタビューという形式にしたくなかったんですよ。「あのときどうしたの?」って質問されたカイアスが、あの重厚ボイスで「私はこう考えてやっていた」とか親切に答えるのは、ちょっと嫌じゃないですか(笑)。

―― イメージと違いますものね(笑)。細部にまで気を配って書いていらっしゃるのがよくわかるのですが、執筆したなかでとくに印象深い、あるいは苦労したのは、どのあたりでしたか?

渡辺 時間がかかったのは、最初のホープのところです。

ホープとの対話で物語に入ってもらうことができたら、あとは話を進めていく流れができるのですが、小説を書くのが久々でしたし、シナリオではト書きで済ませるところをどうするかといったこともあり、自分の文体のリハビリに時間がかかりました。ホープだけで、全体の3割くらい時間をかけた印象です。

あとは、『FFXIII-2』の後の罪を抱えたノエルが、ほかとはテイストが違うぶん、手探りになったというのはありました。

―― ホープは、1回目は語り手の旅のきっかけになりますが、2回目は神隠しの経緯が詳細に語られることで、物語により深みが増したように感じます。


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渡辺 『FFXIII-2』から『LRFFXIII』のあいだにホープたちが過ごした時代の出来事については、小説の内容を詰めていくときに、ベニー松山先生との打ち合わせの中で設定を作っていったものを肉付けしています。

じつは僕、ベニーさんを目標に小説を書き始めたんですよ。

―― そうだったんですか。

渡辺 中学生のときに、ベニーさんの書いた『小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春』を読んで、大人っぽいハードな文体にハマり、「自分でも書いてみよう!」と思ったのが、この道に進んだきっかけなんです。だから、ベニーさんが“心の師匠”みたいなところがあって。そういえば、ベニーさんの人生初のサインは、僕がもらったらしいんですよ(笑)。

―― それはどういうことですか?

渡辺 僕が中学生のころ、1988年に、ゲームクリエイターのロバート・ウッドヘッドさんもいらして、“ウィザードリィフェスティバル”というイベントが開催されたんです。そこで、ベニーさんも壇上で挨拶をされていたので、配っていたクリアファイルにサインをもらいに行きました。ところがベニーさんは、それまでサインをねだられたことがなかったらしく、ふつうに“ベニー松山”って名前だけ書いてくださって(笑)。

それから時が流れ、確か『FFXII』のときに、スタジオベントスタッフの山下(章)さんのご紹介でベニーさんに引き合わせていただいたんです。そのとき、『灰と青春』の初版本にサインしてもらったのですが、「あれっ、これ、昔もらったサインとは違いますね」と言ったら、ベニーさんがハッとして「あのときの少年はキミか!」って。

―― ホントですか!?

渡辺 ホントなんですよこれ! ベニーさんは、「純真な少年にテキトーなサインを渡してしまった。あのときの少年はまっすぐ育っているだろうか」って覚えていたらしくて(笑)。

―― では、ベニーさんといっしょに考えた設定を使った小説を書くというのは、感慨深いものがおありなのでは?

渡辺 超感慨深いです。そうした事情で個人的に感慨深いというのもありますし、終わった作品についてこれだけまとまったものを書かせていただけたのも感慨深いですね。

僕らのやっているシナリオという仕事は、キャラクターモデルが演技をしたり、そこに声がついたりして“完成品”になっていきます。今回は、いろいろな方にご協力いただきながら、最初から最後までひとりで書いたものが形になるという過程が楽しかったですね。

あとは、皆さんに読んでいただいてどう感じていただけるかなあ、という。あの、広い心で読んでください(笑)。


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―― ちなみに、これを機に、また小説を書きたいというお気持ちは?

渡辺 今回はちょっと特殊で、比較的静かな話だったのでなんとかなったのですが……アクションシーンを書くには、リハビリが必要だろうなと(苦笑)。

でも逆に言うと、よくこれだけ地味なシーンばかりの話で、最後まで書かせてもらえたなと思います。派手な盛り上がりもない作品でいいのかな、という気持ちはあるんですけど。

―― 会話のテンポなのか、最後までグイグイ読んでしまって、“静かな”という気はしなかったです。

渡辺 そうですか。それはシナリオの仕事をしてきたことで、会話のテンポがよくなっているというのがあるからかもしれません。

いつも頭の中で音読しながら書いていて、抑揚やバランス、句読点の区切りも音読して響きがいいように書いているので、そういう点ではうまくいったのかもしれないですね。とはいえシナリオも、若いころはがむしゃらに書けたというか、何も考えずに「エイヤー!」と斬りかかっていくような勢いで書けたんですが、キャリアを積んでくると「こう斬りつけたら、ああ返される……」と、いろいろと見えてしまうようになったからか、どんどんスピードが落ちているような(苦笑)。

―― 慣れると、執筆が早くなっていくのかと思いました。

渡辺 もちろん、本当は早くならないと駄目なんですが(苦笑)。『FFX』のザナルカンド遺跡のくだりなどは、ほとんどひと晩くらいで書き上げていたんですけれどね。

あのころの制作体制は、僕と野島(一成)さんがひとつのファイルを共有して、担当を分けたりもせずに、そのファイルだけでやり取りしながら仕上げていっていたんです。本当にスムーズに乗れて、「いまこそ! 決断! する時だッ! ッターン!(エンターキーを押す音)」とかやって、「うるさい」って言われるくらいで(笑)。


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―― ノリノリですね(笑)。キャリアを積むに従い、こだわりも強くなっていろいろ考えてしまうといったところでしょうか。

ところで、渡辺さんは『デュープリズム』からゲーム制作に携わられて、『FF』や『キングダム ハーツ』シリーズなど多数の作品のシナリオを書かれてきました。

FFXIII』シリーズは、3部作を終えて小説まで書かれることになりましたけれど、渡辺さんにとって、『FFXIII』はどんな作品でしたか?

渡辺 『FFX』だと自分にとって「青春」! とひと言で言えるのですが、『FFXIII』シリーズは途中でヘトヘトになって、息切れした時期もあったので、僕にとってはすごく複雑な思いがある作品です。

確か、立ち上げたのが2004年。半年くらいやってから僕はチームを離れ、イヴァリースというところに出張へ行き、戻ってきたらカオスとコスモスの戦いに参戦したりして、つきっきりで書き続けていたわけではないのですが、それでも10年くらいはずっと関わっていた作品でした。全力でやってうまくいったこともあれば、心残りなところもあり、「よかった」あるいは「悪かった」と、単純に言い切れない部分はありますね。


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―― 長いシリーズでしたから、それだけに悲喜こもごもだったというか。

渡辺 そうですね。ああ、そうだ。少し前に40歳になったのですが、僕の30代が、ちょうどまるまる『FFXIII』に携わっていた期間でした。

なので、「僕の“中年の記録”です」ということになってしまう(笑)。あと、やはりひとりで書いていたら、もっと地味な話になっただろうなというのはあります。

鳥山の構想や、シナリオチームのみんなで作ってきたものなので、「えっ、ここでそんな大事件があったら、その後どうなるんですか!?」とか、「『今度は時を越えるぜ!』……えっ、どうやって!?」とか、「『おい、世界滅ぶぞ、13日で!』……えっマジで!?」とか、ひとりではなくチームでアイデアを出し合ったことによって、思ってもいなかった展開にできたという部分がありました。

つまらないことを言うと……「まるで人生の縮図のようだ」(笑)。いろいろと経験させてもらった作品でしたね。書き上げたときは、寝込んでしまいましたし。

―― グッタリして。

渡辺 もうグッタリです。最後の最後に書いたのは、ライトニングのバトルボイスでした。本編のシナリオは、ムービーを作ったりする都合でわりと最初のほうに書いていて、その後、サブエピソード関連に入っていき、最後にバトル用ボイスが残ったんです。バトルボイスは、「いくぞ!」、「どうだ!」といった気合入りまくり系のセリフなので、書くと疲れるんですよね(笑)。

それに、きちんと考えないと似た感じのものばかりになるので、バリエーションをつけるにはどうしたらいいかというのもあって。確か最後はブーニベルゼ戦用のバトルボイスで、「くたばれ神様ぁ!」というような、何か気持ちが乗るものでした(笑)。


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―― そんな気分だったと(笑)。ほかに、印象に残っているセリフやシナリオ、気に入っている場面というと、どのあたりになりますか?

渡辺 『LRFFXIII』で言うと、ラスボス戦からエンディングのあたりですね。じつは僕のシナリオがすごく遅れていて、皆さんにすごく苦労をかけてしまったのですが、ここまで迷惑をかけた以上はいいものを書かなければ! と思いつめて、ようやく納得のいくものが書けたなと。

付き合いの長いキャラクターが多いですから、誰のセリフを書くのも懐かしかったんですが、なかでもスノウ関連のイベントは印象深いです。彼はお話のうえで損な役回りというか、これまではなかなかかっこいいところを作ってあげられなかったんですけれど、ライトニングとの関係……あの距離感は、すごく気に入っています。

FFXIII』で、ホープの家に行くシーンがありますよね。スノウが目を覚ました後に短い会話があって、ライトニングが謝った後に「ほんとの名前を教えてくれたら許してもいいな」と言うのですが、ただ上から「許してやるよ」というのではなくて、ヘコんでいたライトニングが“調子に乗るなよ”って感じに言い返して、それをきっかけに空気が和み……という。あのあたりの、ライトニングとの男女の友情めいた関係性は、書いていて楽しかったです。

あとは、ホープ。ライトニングというキャラクターを完成させたのは、ホープなんです。もし『FFXIII』の序盤でホープという人間に出会っていなかったら、ライトニングはどこか欠落したまま、途中で軍隊に突っ込んで死んでいるだろうと思っていて。

―― ああ、納得です。

渡辺 ホープがついてきたことによって、ライトニングの“保護者スイッチ”がオンになったというか(笑)。

ヴァイルピークスの逃避行で、ホープが寝ているときに見せる笑顔は、「ライトニングがこのゲームで最初に見せる笑顔と言っていいです」とト書きにも書いていて、あのときにスイッチが入った感じですね。個人的には、ライトニングというキャラクターは、あの笑顔の瞬間に“立った”のだと考えています。


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―― 今回の小説では、ホープがライトニングに会えていないのではないか、という可能性を匂わす記述がありますよね。

渡辺 エンディングの後の出来事を、オフィシャルで「こうしてます、ああしてます」とすべて書いてしまうのは好きではないので、いろいろな解釈や想像ができるように、余地を残しているところはあります。

あまり曖昧にしすぎるのも逃げになってしまうので、そのあたりのバランスは難しくて、永遠のテーマなんですけれど。ただ今回は、外見の描写もほとんどしないなど、あえて読まれる方に委ねる部分を多くしています。

―― それが、小説というメディアの魅力の部分でもありますよね。作中で、ほかにあえて入れている仕掛けはありますか?

渡辺 あえて言うなら、ラストの一文ですね。“彼女が××にめぐりあう”という記述です。

―― ……なるほど!

渡辺 オフィシャルで書き過ぎるのは、やっぱり好きではないのですが(笑)、誰にめぐりあうのか、想像しながら読んでくれたらと思います。楽しんでいただければ幸いです。


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