まずはE3 2014で公開されたトレーラーをチェック
2014年6月10日〜12日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲーム見本市E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2014。E3会場で、北米では2014年11月11日に発売される予定のPS4、Xbox One、PC向けソフト『ザ・クルー』の開発者インタビューを実施した。
美しい……。トレーラー映像の内容は、アメリカ東海岸にあるマイアミから西海岸のロサンゼルスまでのドライブをタイムラプス形式(コマ撮り動画)にまとめたもの。流れる景色と味わい深いBGMが見事にマッチして、良質なロードムービーを観ているかのような錯覚を感じさせてくれる。
『ザ・クルー』は、アメリカ全土が舞台のオープンワールドタイプのドライビングゲーム。決められたコースはなく、プレイヤーの目に映る場所は、ほぼ走破できるのが特徴だ。”クルー”と呼ばれるチームを結成し、仲間とともにドライブを楽しむもよし、レースに興じるもよしと、自由なドライブを楽しむことができる。これまでに公開されたトレーラー映像は、ライバルカーとの競争やマシンのチューニングなどにスポットを当てたものが多かったが、最新トレーラー映像は趣向が異なり、仲間たちとドライブを楽しむ様子が描かれている。プレイヤー次第でいろいろな走りが楽しめるのが、『ザ・クルー』の醍醐味なのだろう。本作のクリエイティブディレクターであるJulian Gerighty氏に、ゲームの魅力についてうかがった。
クリエイティブディレクター
Julian Gerighty氏
——E3 2014で公開された本作の最新トレーラー映像ですが、じつにすばらしい内容ですね。4台のクルマがアメリカ東海岸から西海岸までドライブするというシンプルな作りではありますが、メロディアスなBGMと相まって、ロードムービーのような趣きがあると思います。個人的には、今年のE3でもっとも美しいトレーラー映像のひとつだと感じました。この映像は、これまで公開されてきた『ザ・クルー』のトレーラー映像とは趣向が異なりますが、それはなぜですか?
Julian Gerighty氏(以下、Julian) そう言ってもらえるとうれしいですね。今回のトレーラー映像ができあったのは、おもにふたつの要因からです。ひとつめは“偶然そのもの”(笑)。我々開発チームは『ザ・クルー』を作り上げるために全精力を注いでいるので、E3で新しいトレーラー映像を出展するための、コストや時間をなるべく節約したかったのです。CGを起こしてカット割りでつなぐオーソドックスな映像はお金と時間がものすごくかかるんですよ。ゲーム開発に明け暮れているうちにE3の会期が迫ってきて、「いよいよ時間がない」というときに「ゲームプレイを映像化しよう」と思いつきまして。それで、“クルー”どうしである4台のクルマが、マイアミからニューヨーク、ロッキー山脈を通って、ロサンゼルスまでドライブするところを撮影してほしい、と開発チームにリクエストしました。そして、これはもうひとつの要因ですが、開発チームはできあがった映像に当初テクノミュージックを合わせようとしていました。私は「レースゲームとテクノの相性がいいのはもちろんだが、このゲームはプレイヤーに自由な発想で遊んでもらいたいゲームなので、テクノではない別のムードを表現したい」と反対し、皆さんにお披露目した形になったのです。
——あの映像は、Julianさんご自身がディレクションされていたのですね。
Julian はい。ある種の妥協から生まれた映像ではありますが、いろいろな要素が絡み合い、結果的によいものができたと思います。私は以前マーケティングの仕事をしていたので、いろいろと調整することが得意分野なのです。
——なるほど。私はトレーラー映像を見て、ゲームの広がりを感じました。仲間といっしょにドライブするだけでも、記憶に残るゲームプレイが楽しめそうですね。
Julian そうですね。たとえばこんな話があります。私たちはユーザーとのつながりをいくつも持っていて、あるコミュニティーの中からひとりを開発の現場に招いて、本作に関する意見や感想を聞いてみました。ゲームを遊んでいると、新規のストーリーやレース、チャレンジなどの情報が画面にポップアップされるのですが、彼は「それらがわずらわしい」と指摘してくれたのです。それを受けて、画面のユーザーインターフェースを整理して、さらにオプションで全部非表示にできるように修正したところ、その彼はレースもチャレンジもやらずに、ひたすら3日間アメリカをBMWで運転することを楽しんでいました。「このほうがドライブに没頭できる」と。それを見て、こちらも「こんな楽しみかたもアリだな」と感じたのです。
——ただドライブするだけでもおもしろい、と。とは言え、本作はレースゲームなので、いろいろなシチュエーションのレースが用意されていて、ゲームとしてしっかり楽しめる作りになっているんですよね?
Julian もちろん! レースは200種類、チャレンジと呼ばれるイベントは600くらい用意しています。その上、本作のメインストーリーは、『レッド・デッド・リデンプション』のシナリオに携わった人物が書いたものなので、レースゲームとしての基本的なおもしろさは保証します。
——本作の目玉は、“クルー”と呼ばれる仲間といっしょに遊ぶシステムですが、“クルー”の増やしかたが気になります。ゲーム中にプレイヤーが集まるフォーラムのようなものがあり、そこで募集するのか、ゲーム上で自然に出会った人たちが“クルー”となっていくのか、どちらでしょうか?
Julian “クルー”の増やしかたについては、開発チームで検討を重ね、デバッグも何度も行いました。その結果、ひとりでプレイするより複数のプレイヤーと遊んだほうが楽しいという意見が多かったので、本作ではプレイヤーどうしが自動的にマッチングするようにしました。最大8人までいっしょに遊べるので、その人たちとプレイして、意気投合すれば“クルー”になればいい。こちらとしては、プレイヤーに友だちになってもらうチャンスをなるべくたくさん作り、クルーになることを奨励しています。
——本作はレースゲームなので、競争が大きなポイントとなりそうですが、レースは“クルー”どうしでするのか、それとも敵チームとレースをするのですか?
Julian 両方含まれています。メインストーリーのレースでは、ひとりまたは4人のクルーで協力プレイをすることになりますが、4人のあいだでスコアが高い人が優遇されるので、その競争があります。我々はそれをCo-op(協力)とCompetition(競争)を足した造語で“コーペティション”と呼んでます。もちろん、敵チームとのレースも楽しめます。
——わかりました。これからする質問は、E3会場でいろいろな方に聞いているのですが、今年のゲーム業界を見ると、“協力プレイ”がキーワードになっていて、どのゲームもソーシャルな部分を重視している気がします。『ザ・クルー』は、かなり早い段階からゲームのコアな部分に協力プレイを取り入れていると思いますが、Julianさんはいまのトレンドについてどう思いますか?
Julian それについては、ふたつの立場から語らせてください。ひとつは本作のクリエイティブディレクターとして。いまの時代は、オンラインでもそうでなくても、すべてがつながっていて、動的なゲームプレイが大事だと思っていて、協力プレイはそれにマッチしていると思います。また、ユービーアイソフトのパブリッシャーとしての立場から言うと、本作を手掛けたゲーム開発会社“アイボリータワー”は、8年前に『テストドライブ アンリミテッド』というハワイをベースにしたオープンワールド・レースゲームを作っていて、当時からシングルプレイとマルチプレイを盛り込んでいました。ユービーアイソフトはこの『テストドライブ アンリミテッド』に着目し、ゲームのクオリティーというよりは、そこに取り入れられているシステムや、ゲームに対する姿勢を高く評価し、よい部分をブラッシュアップして新しいゲームを作ろうと思い、『ザ・クルー』のプロジェクトがスタートしたのです。
——最後に、海外では『ザ・クルー』のPC版のβテストが2014年7月23日からスタートします。プレイヤーにどんなところを楽しんでもらいたいですか?
Julian これまでデバッグでプレイテストをたくさん行ってきましたが、いよいよ多くの方に触ってもらえる機会を用意することができました。プレイヤーの皆さんには、自分なりのゲームを楽しんでほしいですね。本作にはいろいろな要素がありますが、やらなければならない要素はありません。レースもチャレンジも気分次第で遊ばなくてもいいのです。プレイヤーそれぞれに異なる楽しみかたがあるのが、このゲームの“魔法”みたいなものだと思っています。βテストでは、一部のイベントは制限されてはいるものの、世界はすべてオープンにするので、最初の入り口だとおもってぜひ楽しんでほしいですね。
——なるほど。インタビューはこれで終了です。ありがとうございました。
Julian 最後にひと言いいですか? 昨年から引き続き、今回のE3でもまた取材をしてくれてありがとうございました。私自身、ファミ通が大好きなのでうれしいです。『ザ・クルー』は北米では今年の11月に発売される予定なので、来年以降は別のタイトルのプロモーションでお会いしたいですね。それでは、また!