あのバースを越えるキャラクターが生まれる!?
2014年6月10日〜12日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲーム見本市E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2014に先駆けて実施されたユービーアイソフトの新作発表会“Ubisoft E3 2014 メディアブリーフィング”。同イベントにて、対応ハードはプレイステーション4、Xbox One、PCで、北米では2014年11月18日に発売される予定の『Far Cry4』が発表された。
そうそう、求めていたのはこんな感じ! 『ファークライ』シリーズの最新作である『Far Cry4』のトレーラー映像を目にしたとき、記者は腑に落ちたというか、妙に納得できたのだった。ヒマラヤ国境付近のエキゾチックでちょっとアブない雰囲気や、ついさっきまであった日常が突然非日常に切り替わる感じ、そしてぶちキレまくった敵キャラクター……どれをとっても最高! 狂気とバイオレンスがテーマの猛毒アクションアドベンチャー『ファークライ3』のファンとしては、その続編がテイストがきちんと継承し、正当進化していることが確認できて、うれしい限りだ。
とくに今度の敵キャラクターであるPagan Minに注目したい。前作『3』のカバーにもなったボス格キャラクターのバースは、常軌を逸したサイコパス野郎だが、独自の哲学を持っており、敵ながら魅力的な人物。彼の存在感を越えるのは難しいかもしれないが、『Far Cry4』のトレーラー映像を見て『もしかしたら……』と期待せずにはいられない。Pagan Minは登場シーンからして弾けまくっているからだ。この新登場の悪役キャラクターが、主人公と今後どのように絡んでいくのか楽しみだ。
E3の会場で、本作の開発の中核を担うクリエイティブディレクターのAlex Hutchinson氏にお話をうかがう機会があったので、気になる疑問をぶつけてみた。ちなみに、Alex氏はユービーアイソフトの人気シリーズ『アサシン クリード』の『III』のクリエイティブディレクターだった人物だ。そんな彼が新作にかける意気込みについて語ってくれた。
''『Far Cry4』
クリエイティブディレクター
Alex Hutchinson氏''
——これまで『アサシン クリード』シリーズを手掛けていたAlexさんにとって、新しいチャレンジになりますね。
Alex Hutchinson氏(以下、Alex) トリプルA級タイトルの担当にはプレッシャーはつきものです。私はいつもなるべくエキサイティングなものを取り入れるように心掛けているので、やりがいと手応えを感じています。
——Alexさんは、『アサシン クリードIII』を作り終わってからすぐに『Far cry4』の開発チームに入ったのですか?
Alex 『III』の開発が終わって、しばらく新しいIPについて考える時間があったのですが、そのとき考えたアイデアは、今後発表できたらと思います。2012年のクリスマスくらいから開発チームに合流しました。『ファークライ3』チームの8割が今作でも開発に携わっていて、あとの2割は新しい人間です。私もそこに含まれます。
—『ファークライ3』が世界販売本数累計900本というスマッシュヒットを記録して、『ファークライ』というブランドは変わりましたか?
Alex もちろん影響がないとは言えません。技術はどんどん進化していきますが、ゲームの要素もそれにともない変わってきます。多くの人に遊んでもらえるように、ファンの好みを把握し、マップや環境、物語などを新しく構築する必要がありました。
——プレイヤー層を拡大していくのか、それともファンにマッチした作品になるか、どちらでしょうか。
Alex いちばん大事なのは、遊んだことがない人もシリーズのファンも両方楽しめることです。『ファークライ』シリーズは、見かけは混沌そのものに見えますが、ゲームプレイの面ではじつはシステマチックなゲームです。それはすごくいいことで、プレイヤーが好きなように遊べてやりたい放題に遊べます。今回は地形に高低差があったり、象などの野生動物が出てきたりと、楽しさが2倍になっているんです。また、ストーリーはプレイヤーを導いてくれる役割を持ちますが、そのテイストは失わないようにしました。
——ゲーム自体は間口が広がって遊びやすくなっているが、ある意味で人を選ぶような強烈な個性を持つストーリーのテイストは残っている?
Alex そうなればいいと思っています。
——Pagan Minは、『3』のバースと比べてどんな人物ですか?
Alex このゲームはミリタリーものではないので、ふつうとは違うおもしろいキャラクターを盛り込むことができます。バースは頭のネジが外れていたキャラクターでしたが、Pagan Minはどちらかというと正常だけどエキセントリックな感じです。
——『3』から引き続き、『Far Cry4』のカバーアートに敵キャラクターのPagan Minを採用していますね。
Alex プレイヤーの視線でゲームを見てもらいたいからです。本作は一人称視点のゲームなので、プレイするときは自分自身ではなく敵キャラクターが見えるわけです。カバーアートはよりわかりやすく象徴的であるべきなので。
——ゲームの舞台をヒマラヤにした理由は?
Alex まずはエキゾチックな場所を選びました。主人公がバカンスで出かけてたいへんなことがになるので、観光地としての名所であること(笑)。野生動物がたくさんいるのもいいですしね。あとは多様性に富んだ地形で、山がたくさんある点もよかったです。
——『ファークライ』のウリのひとつは見えている場所に行けることだと思います。遠くに見えている山に上ったりすることはできますか?
Alex 今回の舞台は谷なので、あまり遠くの山までは行けません。でも、あるミッションではヒマラヤの高い山に上ることがありますが、そこはヘリコプターで行きますが(笑)。
——高低差があると、クルマでの移動がたいへんなのでは?
Alex 『3』では高い場所に行くためには、道を探してぐるっと回り込む必要がありましたが、それを解決する方法として小型ヘリコプターを用意しました。それと、グラップルというワイヤーを使って高所に上ることが可能です。
——ソニー・コンピュータエンタテインメントのカンファレンスで、『Far Cry4』の協力プレイのデモプレイが公開されましたが、自分のゲームに誰かが参加してくるタイプなのですね。
Alex ひとりでじっくり遊びたい人も、にぎやかに遊びたい人もいます。協力プレイのバランスを取る方法として、いままで遊んでいたシングルプレイをジャマされないようにしました。いつでも出たり入ったり気楽に遊べるところです。
——今年の各社の動きを見ると、ゲーム業界に協力プレイのブームが来ているような気がします。
Alex 個人的には3年前くらいから各社が流行らせようとしていたと思いますけどね。ネットワークの技術が発達して、シングルプレイと協力プレイが融合することで火がついたと思います。
——本作には対戦モードは収録されていますか?
Alex 対戦モードはありますが、メインのゲームとは別のものになります。今後の楽しみを残すためにも、現時点ではヒミツにいしておきましょう。
——今回は発表の時点で発売時期が決まっていたのが印象的でした。
Alex 最初から「いつまでに発売する」ということが決まっていたので、もちろんプレッシャーがありますし、急がなければなりません。でも、『3』でベースを確立したので、それをもとにいいペースで開発を進められています。……三ヶ月後に同じ質問をしてみてください。もしかしたら違う答えを出すかもしれませんね(笑)。
——『ファークライ3』は発売延期を重ね、やっと出た印象があります。今回はそうならないようお願いしますね(笑)。
Alex Oh!! 延期は絶対にしてはならないことだと思います。そのためにも我々はがんばらないといけませんね!