3月21日に開催された“ゲーム音楽で歌おう!踊ろう! バンド×DJ ゲーム音楽ライブ”のリポートをお届け
2014年3月21日、22日に沖縄・浦添市てだこホールにて開催された“沖縄ゲームタクト”。著名なゲーム音楽家が沖縄の地に集結して行われたこのイベントの、まずは3月21日に開催された“ゲーム音楽で歌おう!踊ろう! バンド×DJ ゲーム音楽ライブ”のリポートをお届けしていこう。開催からかなり時間が経ってしまったが、その分すべての楽曲についての細かなリポートとなっているので、ゲーム音楽ファンはじっくりと読んでほしい。なお、そのほかのステージについても近日公開するのでもうしばらくお待ちいただきたい。
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赤いジャージで屈伸運動!? スペシャルゲストも登場したTEKARUステージ
トップバッターとして登場したのは、ゲーム音楽プロダクション・ノイジークロークの社員で結成されたバンド“TEKARU”。坂本英城氏(オルガン)、加藤浩義氏(シンセサイザー)、いとうけいすけ氏(ベース)、川越康弘氏(ドラム)の4人に、サポートメンバーとして『戦国無双』シリーズや『討鬼伝』のサウンドディレクターを務めた中條謙自氏(ギター)を加えての編成だ。
写真を見ていただければわかるように、全員が着用している赤ジャージがバンドのトレードマーク。その容姿や奇抜なパフォーマンスからコミックバンドと思われがちだが(失礼!)、自社のタイトルをプログレ風味にアレンジして演奏する実力を持ち合わせているのだから、余計に気になる存在だといえる。
最初の演奏曲目は『勇者のくせになまいきだ:3D』より“ファイナル・ギャザリング!”。モールス信号のように同じフレーズを奏でるベースの上をキーボードの音がうねりまくるTEKARUを代表する一曲だ。リズムに合わせて屈伸運動をくり返すメンバーの姿に、思わずいっしょになって屈伸を始める観客の姿も見られた。
2曲目の『無限回廊』より“Prime #919”を演奏するにあたって坂本氏がステージに呼び込んだのは、サラ・オレインさん。『ゼノブレイド』や『タイムトラベラーズ』のエンディングテーマを歌唱する彼女だが、なんとこの日はヴァイオリン奏者として、しかもTEKARUメンバーと同じ赤ジャージを身にまとって登場したのだから、観客は目を丸くするばかりだ。
だが、いざ演奏が始まると和やかな雰囲気から一転し、激しいギターのバッキングに乗せてヴァイオリンがメロディを奏でる特徴的なサウンドに、来場者はノリノリに。原曲が弦楽四重奏というだけに、なんとも独特な雰囲気のアレンジに仕上がっていた。
TEKARU最後の楽曲は、坂本氏作曲による『討鬼伝』のメインテーマ“鬼討ツモノ”。パワフルなロックビートと勇壮なメロディが融合したドラマチックな一曲に、すでに総立ちで盛り上がっていた観客は大きな拍手と歓声を贈っていた。
ちなみに、各バンドの演奏後にはトークタイムが設けられていたのだが、「僕はすね毛がほとんどないんです」(坂本氏)、「演奏中にサラさんと二回、目が合った」(中條氏)など、思わずツッコまずにはいられないゆる~いトークで来場者の笑いを誘っていたのが、なんともTEKARUらしかったことを付記しておきたい。
電子なダンスミュージックと電磁のベシャリで盛り上がったDJステージ!
2組目としてDJブースとともにステージに姿を現したのは、バンダイナムコスタジオの大久保 博氏。まずは手始めとばかりに『鉄拳レボリューション』から太いベースが特徴であるダブステップな一曲“Fiji”を披露。予めサンプリングした音ネタを、PCとMIDIコントローラー“LaunchPad”を駆使してプレイする姿は、なんとも未来感が漂っていた。
大久保氏のプレイ後に「いやー、どうもどうも!」となんとも調子のいいトーンでステージに出現したのは、『リッジレーサー』や『ドラッグ オンドラグーン』の楽曲で知られるDETUNEの佐野電磁氏。さらに、ノイジークロークの加藤氏も加わり何をするのかと思いきや、なんとクラブサウンドがどうやって作られているのかを教える“DJレクチャー”のコーナーをスタート。楽器と違って見た目のイカツイDJ機器だが、ボタン一発でかっこいいフレーズを出せたり、別々の楽曲どうしを繋げたりすることを軽妙なトークで説明し、さらには場内のお客さんをステージに呼び込んで“体験プレイ”をさせると、なんとも自由なスタイルだが、音楽好きが集まっていた場所だけに多くの観客は、その様子を興味深そうに見入っていた。
佐野氏のトークDJによって場が盛り上がったところで流れだしたのは、大久保氏による“That's RALLY-X (NEW RALLY-X REMIX)”。『リッジレーサー』のサウンドに『NEW ラリーX』のフレーズをミクスチャーしたトランス感の高いサウンドに、ホールはダンスフロアへと変貌を遂げていた。
続いては加藤氏のターン(DJだけに)だが、ここでゲストボーカルとしてステージに踊り出たのは、ボーカリストのSAK.さん。本イベント用に制作した“Waiting For The Sun”に続き、加藤氏が手がけた『Dance Dance Revolution』の楽曲から“Genie In a Bottle”、“Find The Way”の3曲を伸びやかなボーカルにて歌いあげると、場内はさらに盛り上がりを見せていた。
霜月はるかさんの歌声と谷岡久美さんのピアノが極上の癒しを奏でる
続いてステージに登場したのは、『アルトネリコ』『アトリエ』シリーズでおなじみのシンガーソングライター・霜月はるかさんだが、そのピアノ伴奏を務めるのは『ファイナルファンタジーXI』などの楽曲を手がける谷岡久美さん。先ほどまでの激しいダンスミュージックから一転、澄み渡る癒しの音色がホールを包み込んでいった。
1曲目に演奏された“夢を織る家”は、『アーシャのアトリエ~黄昏の大地の錬金術士~』のゲーム中で聴けるポップなイメージを残しつつ、この日は霜月さんのボーカル+谷岡さんの生ピアノ伴奏のみで披露。素朴ながらもかわいらしさの増したサウンドに、場内はほっこりとした空気となっていた。
「『聖剣伝説』の菊田裕樹さんの作詞・作曲で、初めてごいっしょさせていただいた楽曲です。歌うのは難しいんですが(笑)」との霜月さんコメントに続いて演奏されたのが、『エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~』の挿入歌 “あめつちのことわり”。こちらもまた谷岡さんのピアノ伴奏となったが、ケルティックな独特のメロディラインと早口言葉のように入り組んだ歌詞を、見事なまでに歌い上げた。
3曲目は谷岡さんが作った曲を霜月さんがカバーするコラボとして『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』から“星月夜”が選ばれた。“星月夜”といえば、ゲームで耳にした誰もを平穏な気持ちにさせる名曲だが、ピアノの伴奏で歌われる霜月さんバージョンも、また違った魅力にあふれる素晴らしい演奏に。演奏後の場内は、静寂から一転して大きな拍手を集めた。
霜月さんが歌う最後の曲は『勇者30 SECOND』の挿入歌“遥かな空間へ”。作詞作曲を手がけたなるけみちこさんをコーラスに、編曲担当の岩垂徳行氏をギターに迎え、さらにボンゴに川越康弘氏、ヴァイオリンにゲームタクトオーケストラのコンサートマスター松原まりさんが参加するスペシャルユニットが伴奏を行うという、これまたこのイベントならではの顔ぶれが実現。生歌・生演奏ならではの温かみのあるハーモニーが、ホール内に充満していった。
セガの名曲の数々に場内が灼熱化したH.ステージ
バンド×DJステージのトリを飾ったのは、セガサウンドユニット[H.]だ。この日は、Hiro氏(キーボード)、光吉猛修氏(ボーカル・ベース)、庄司英徳氏(ギター)、福山光晴氏(キーボード・トランペット)のコアメンバーに加え、ドラムの工藤詠世氏も参加したフル編成での登場。一発目から『ファンタシースターポータブル2 インフィニティ』の主題歌“Ignite Infinity Feat.Takenobu Mitsuyoshi”を披露し、観客のボルテージを一気にマックスまで持っていった。
結成から10周年を超えたレパートリーの豊富な[H.]、Hiro師匠の「古い曲も聴きたいでしょう?」との発言から演奏されたのは、『電脳戦機バーチャロン』より“in the blue sky”と、『アウトラン』の“MAGICAL SOUND SHOWER”。いずれも一大ブームを飾ったタイトルの楽曲というあたりが、[H.]とセガというメーカーの歴史を感じさせるところだ。なお、“MAGICAL SOUND SHOWER”は、なるけ氏(アルトサックス)、岩垂氏(トロンボーン)、川越氏(パーカッション)を加えたスペシャルセッションにて演奏。福山氏のトランペットと合わせてホーン・セクションの加わった厚みのある演奏は、とてつもない迫力を醸し出していた。
続いては、『チェインクロニクル』から“Battle For Justice”、そして『ソニック ロストワールド』より“Windy Hill - Zone1 H.Version”と、なんと新曲を二連発で披露。前者はミドルテンポで緊迫感を感じさせるロックインスト、後者は2ビートで鳴り響くドラムがソニックらしい疾走感を醸し出していた。ちなみに、ソニックの曲を[H.]が演奏するのは、じつは初めてのことなのだとか!
新曲ラッシュはさらに続き、庄司氏も楽曲を手がけた『龍が如く 維新!』より、イメージソング“with you”を初披露。ムーディーなピアノソロやゴスペル調の女性コーラスといった大人の香りのする楽曲に、光吉氏がメロウな歌声を乗せて切々と歌い上げた。
ここまでですでに6曲と、盛りだくさんの楽曲で熱くさせた[H.]。「名残惜しいですが最後の2曲です!」という光吉氏のセリフを受けてスタートしたのは、『アフターバーナー』より“After Burner Remix”。怒涛のようなギターサウンドに場内の興奮がさらに高まったところで、立て続けに流れだしたのは『バーニングレンジャー』の主題歌“Burning Hearts ~炎のANGEL~”。[H.]ライブでは定番のオーラス曲だけに、イントロが流れた直後に歓声が沸き上がるほどに、オーディエンスの興奮は最高潮に。総立ち&大合唱はハイテンションを保ったまま、バンド×DJステージの幕は一度閉じた。
アンコール楽曲は、あのレースゲームを全員でセッション&大合唱!
[H.]のメンバーがステージを去ったあとも観客の興奮は一向に冷める様子はなく、即座にアンコールを求める手拍子がホールに鳴り響く。それに即応して[H.]メンバー、さらにはバンド×DJステージに立った全員が姿をあらわすと、拍手の音量はさらに大きさを増していた。
「どこの会社の曲をやるかで揉めそう(笑)」というジョークをよそに、ステージ上では着々とアンコールの準備が進行し、ついには舞台からはみ出そうなほどの作曲者が勢揃いした。そして、光吉氏の「みんなで歌える曲を用意したので、声を枯らしてね!」という掛け声で流れだしたのは、なんと『DAYTONA USA』の代名詞とも言える名曲“Let's go away”! ノリノリの曲調もさることながら、ステージ上と観客が一体となっての「デーイートーーナーーー!」のシャウトで大興奮状態に。まさに、ゲーム音楽家とゲームファンとが音楽を通じて一体となった瞬間であったといえる。
(取材・文 ライター/馬波レイ)