新生『シャイニング』のテーマは“竜”と“楽器”!
週刊ファミ通2014年5月29日号(2014年5月15日発売)にて電撃発表された、セガの『シャイニング』シリーズ最新作『シャイニング・レゾナンス』(今冬発売予定)。これまでのシリーズ作から世界観やシステムを一新した本作では、“アルフヘイム”と呼ばれる地を舞台に、ドラゴンの生き残りである主人公“煌竜イルバーン”と、“少女”の物語が描かれる。
ここでは、本作のプロデューサーを務める澤田 剛氏と、キャラクターデザインを担当したイラストレーターTony氏のインタビューをお届け。主人公である煌竜イルバーン、彼とともに旅をするソニア、キリカ、アグナム、そして主人公を狙う帝国の騎士、ゲオルグというキャラクターの魅力やデザインについてお話をうかがったほか、RPGの王道を追求したシステム、『シャイニング』シリーズの今後の展開についても語っていただいた。
※このインタビューは、週刊ファミ通2014年5月29日号(2014年5月15日発売)に掲載された文に加筆したものです。
左
セガ プロデューサー 澤田 剛氏
右
イラストレーター Tony氏
■シリーズのつぎの10年につながる、新しい王道ファンタジーを目指して
――初めに、『シャイニング・レゾナンス』の企画が立ち上がった経緯を教えてください。
澤田剛氏(以下、澤田) Tonyさんに初めて参加していただいた『シャイニング・ティアーズ』を発売してからのこの10年は、シリーズをリニューアルし、皆さんに新しいイメージを持っていただくことに尽力してきました。その目標は達成できたと思いますので、『シャイニング・レゾナンス』では、つぎの10年につながる、また別のイメージを打ち出したいと考えたんです。そのために、今回は僕は一歩引いた立場で開発に参加し、若いスタッフに企画を練ってもらいました。
――“竜”と“楽器”を題材にした理由は?
澤田 “王道ファンタジーに回帰しよう”と考えていたので、竜を登場させることは自然と決まりました。一方で、『シャイニング・ブレイド』や『シャイニング・アーク』で好評だった歌、ひいては音楽をもっと活かしたいとも思って。竜と音楽を、どうしたらシンクロさせられるか? と考えて生まれたのが、本作の世界観とシステムです。
――原点回帰の象徴である竜と、近年のシリーズ作の象徴である音楽が合わさって生まれたのが『シャイニング・レゾナンス』なのですね。
澤田 そうですね。据え置き機で展開することも、原点回帰の表れだと言えます。いまの世の中、RPGを据え置き機で作る機会が減っていると思いますが、スタッフ一同、「もう一度、据え置き機でやりたいよね」と思っていましたので。
――『シャイニング・レゾナンス』というタイトルの意味は?
澤田 “レゾナンス”は、共鳴、響きという意味です。
Tony氏(以下、Tony) これまでの作品の中でも、文字数が多いですよね。
澤田 最近は、“ハーツ”、“ブレイド”など、わかりやすい言葉が多かったのですが、タイトルのイメージを変えたかったので、「どういう意味?」と聞かれるような言葉にしました。
――ハードをプレイステーション3に移したことで、キャラクターデザインの幅は広がりましたか?
Tony 携帯機に比べて、高精細な描画が可能なので、デザインの面でも無理がきくようになりました。キリカの振り袖のような揺れものをデザインに取り入れることができましたね。そのデザインに合わせて、フライトユニットさんがとてもがんばってくださって。
澤田 キャラクターモデル制作をお願いしているフライトユニットさんは、以前、『シャイニング・フォース イクサ』に参加されていました。シナリオ監修の火野さんも、『イクサ』以来ですね。今回は、これまでシリーズに参加してくださった方の総力を結集させて作っています。
――キャラクターモデルは、Tonyさんのイラストが、そのまま3Dになったかのように見えます。
澤田 フライトユニットさんは、Tonyさんの絵をよく研究されていて。前々から、Tonyさんの絵でモデルを作りたいと思っていたそうなんですよ。Tonyさんの塗りや線、目のハイライトが、見事に再現されているのがおわかりいただけると思います。
Tony 衣服の模様などのディテールにも注目していただければと思います。
■主人公が恋をすると何かが起こる!
――この世界で生き残っている、いわゆる“天然”のドラゴンは、主人公だけなのですか?
澤田 そうです。ほかの竜は滅びてしまっていて、その魂は“ドラゴンソウル”という結晶になっています。その結晶も、とても稀少ですが……。唯一のドラゴンであるがゆえに、ドラゴンの力を求める人たちや、ドラゴンスレイヤーなどに狙われます。
――煌竜イルバーンのデザインは、どなたが担当されたのですか?
澤田 煌竜ほか、ドラゴンは皆、開発スタッフがデザインしています。煌竜のこのツノのような部分は、みんなの音楽を受け取る器官なんです。アンテナのような役割を果たしています。
――主人公は年齢不詳に見えますが、性格は若い男の子?
澤田 若い男の子ですね。狙われたり捕らわれたりしてきたため、初めのうちは臆病なのですが、仲間と交流するうちに成長していきます。じつは、パーティーとの絆を深めると、身体の色が変わったり、空を飛んだりできるようになるんですよ。それから、彼が恋をすると何かが起こるんです!
――幼いときに出会った、初恋の少女がいるのですよね。誰がその少女なのか、気になります。
澤田 主人公にもプレイヤーにもわかりません。複数登場するヒロインのうち、どの子が初恋の彼女なのか、考えながらプレイしていただければと。
――今回はソニアとキリカ、ふたりのヒロインが公開されましたが、「どっち派!?」という意見が、早くも出てきそうですね。
澤田 社内でも分かれてます。僕はね、もう「澤田さんの好みはわかってますから」ってみんなに言われるんですけど……(笑)、ソニア派です。
Tony 僕はキリカ派ですね。今回のエルフは皆、オリエンタルな衣装を着ていて、とくにキリカは和風を意識して描きました。
澤田 いままでのエルフは、古典的なファンタジー小説に出てくるようなデザインだったのですが、今回はイメージを変えたかったので、オリエンタルでいこう! 金髪で和服にしよう! と。
Tony ほかにも、チャイナ服を着ているエルフなども登場しますよ。
キリカ・トワ・アルマ
――キリカはどのような性格なのでしょうか?
澤田 初めのうちは、堅苦しく、ちょっとツンとしている子ですね。竜に仕える巫女として、大切に育てられてきたので。人よりもドラゴンに興味があるんです。
――いままでのヒロインと比べると、ちょっと露出が少ないような……。
澤田 衣装には……秘密があります(笑)。ご期待ください。
――期待しています(笑)。一方、ソニアはどのような子なのですか?
Tony キリカとは対照的な、元気なヒロインですね。
ソニア・ブランシュ
澤田 このソニアとキリカが、主人公を助けようとそれぞれ動き出すところから物語は始まります。主人公が、囚われの姫君のポジションなんですよね(笑)。ソニアはパーティーのリーダーで、物語を引っ張っていくポジションにいます。自分の力を使うことに躊躇している主人公を鼓舞して、主人公のケツを叩きまくる。
Tony 幼なじみ系ですね。
澤田 そうですね、先ほども言いましたが、僕の好きそうなキャラクターです(笑)。気が強い子が好きなので、そういうキャラクターを作っちゃうんですよ。
Tony 『シャイニング・ウィンド』のシーナは、その典型でしたね(笑)。
――(笑)。ソニアのデザインのコンセプトは?
Tony 『シャイニング・ウィンド』のクララクランとは違う聖騎士を描こう! ということで、ロングスカートではなく、活発そうなコスチュームにしました。
澤田 前作『シャイニング・アーク』は、いわゆる“剣と魔法の世界”とは違う世界観だったので、その反動で、純粋なファンタジーの、鎧の騎士にしよう! と考えました。
――ソニアとキリカは冒頭で登場するとのことですが、アグナムはどのように物語に関わってくるのですか?
澤田 詳しくはまだ言えませんが、比較的早く仲間になります。こんな外見ですが、空気が読める、とてもいい人です。みんなのサポート役ですね。
Tony アグナムは、描いていておもしろかったです。魔導師なのに、接近戦が得意というキャラクターで。
アグナム・ブレットハート
澤田 前から見るとロッカーなのに、後ろから見ると魔導師のシルエットをしているのが、Tonyさんのデザインの妙です。前から見ると、「どこのロッカー?」という感じなのに。
――アグナムも、パーティーを引っ張っていきそうなタイプに見えますが……?
澤田 どちらかというと、一歩下がって、みんなを支援する位置にいます。ソニアを立ててあげる、空気の読める人です。みずからサポート役に立って、嫌な仕事も積極的に引き受けます。
Tony やんちゃな雰囲気に似合わず、面倒見がいいんです。
澤田 料理男子でもあるんですよ。炎を自在に使えるので、火の調整が得意。女性陣は、料理の腕はいまいちなので……。
――ソニアもキリカも、料理は苦手そうですもんね(笑)。
澤田 姫様と巫女様ですから(笑)。
――アグナムが現実にいたら、モテること間違いなしですね……。デザインもとてもカッコいいですし。最初に資料を見せていただいたとき、アグナムが主人公なのかな? と思ってしまいました。
澤田 今回は、Tonyさんに「みんな主人公っぽいデザインで」とお願いしているんですよ。そう、主要な敵キャラクターも全員Tonyさんが描いているのも『シャイニング・レゾナンス』のポイントですね。敵もカッコいいんですよ、少年マンガのライバルのようで。
Tony 『シャイニング・ハーツ』や『シャイニング・アーク』では、世界観や、それぞれのキャラクターの役割に合わせてデザインしたんですけど、今回は『シャイニング・ウィンド』のように、ひとりひとりがメインキャラクターに見えるように描きました。
澤田 Tonyさんが男性をたくさん描いているというのも、今回のポイントです。主要な男性キャラクターはすべてデザインしてもらいました。
Tony ヒゲのおじさんなど、これまで描いたことのないタイプの男性が多くて、おもしろかったですね。
――ヒゲと言えば、今回公開されたキャラクターの中で唯一の敵キャラクター、ゲオルグですね。
Tony 重厚な鎧をまとった、貫禄のある男性です。威圧感がある感じを出せたらなあ、と。
澤田 おじさんファン、お待たせしました! ゲオルグは、ずーっと爪を隠しているタイプです。強いんだけど、その力をあまり見せようとはしない。
Tony 持っている武器も怪しげです。何か、胸の内でいろいろと考えている男なんじゃないかと思います。
ゲオルグ・ザルバード
■戦場を駆け巡る楽団、センターは誰にする?
――バトルでは、パーティー全員が楽器を手に戦うのですね。
澤田 はい。“パーティー=楽団”というのがポイントです。パーティーメンバーの中からひとり、楽団のセンターポジションを担当するキャラクターを決めることができて、誰をセンターにするかで音楽の効果も少し変わります。ほかにも、“音”を使った仕掛けを用意していますので、楽しみにしていてください。
――パーティーにドラゴンがいることも見逃せない点ですが、ドラゴンを操作することもできますか?
澤田 もちろんです。ドラゴンを操作しているときは、怪獣ゲームを遊んでいるみたいで、おもしろいですよ。とてもダイナミックで。ただ、強力なぶん、制約はあります。使いどころが肝心ですね。
――楽器を奏でることで、ドラゴンもパワーアップするのですか?
澤田 楽器の音色とドラゴンが共鳴することで、ドラゴンの力が発揮されていきます。さらに、ドラゴンと仲間のコンビネーション攻撃もありますよ。たとえば、仲間がイルバーンの背に乗って突撃したり。キャラクターごとに、コンビネーション攻撃の内容は違います。
――パーティーメンバーを考えるのが、とても楽しくなりそうですね。
Tony アグナムを使う人、多そうですよね。
澤田 アグナムは男性ファンにも人気が出そうですよね。開発スタッフも、アグナムの技やモーションは、はっちゃけて作っていますので。ギターをガン、ガンと叩きつけるような技があったり。この武器、ギターじゃなくてリュートなんですけど(笑)。
■『シャイニング・ティアーズ』から『シャイニング・レゾナンス』まで キャラクターデザインの変遷
――Tonyさんが『シャイニング』シリーズに参加してから10周年とのことですが、10年前、澤田さんがTonyさんにキャラクターデザインを依頼することになった経緯、理由を改めて教えていただけますか?
澤田 当時の僕は、『シャイニング』シリーズを新たなブランドとして新生させるという命題のもと、「いままでの『シャイニング』のイメージとは違うものを作らなければならない」と思っていました。これからの世の中で通用するような、アニメやライトノベルのテイストを取り入れたものにしなければ、と思ってイラストレーターの方を探している中で、Tonyさんのことを知ったんです。
Tony そのとき、僕は仙台で働いていました。澤田さんからご連絡いただいて、それがすべての始まりでしたね。
澤田 『シャイニング・ティアーズ』は2004年発売ですが、開発は2001年、2002年ぐらいから始めていますから、10年以上のお付き合いになりますね。あのとき、Tonyさんとお仕事を始めることができて、本当によかったと思っています。
――Tonyさんは、『シャイニング』シリーズのキャラクターデザインを手掛けることになり、プレッシャーなどを感じましたか?
Tony プレッシャーはありましたが、もともとゲーム業界で働いていましたので、大きなお仕事をいただいて、「やるぞ!」と意気込んでいました。
澤田 『シャイニング・ティアーズ』のころは、開発は手探りでしたね。『シャイニング』って何なんだろう、と考えて。どの部分を残して、どの部分を新しくするのか、ですとか。
Tony 獣人、剣と魔法、中世のような世界観、といった部分は意識しましたね。
――約10年、『シャイニング・ティアーズ』から『シャイニング・レゾナンス』にいたるまで、キャラクターデザインへのアプローチの仕方は、どのように変わっていきましたか?
Tony 基本的には、『シャイニング・ティアーズ』から意識して変えたことはないですね。自然と、その時の流れでデザインしていきました。
澤田 最近は、キャラクターのイメージをちょっと伝えただけで、すんなり具現化してくれますね。
――もう、澤田さんの好みも、バッチリわかるということですね(笑)。
Tony そうですね(笑)。
澤田 毎日キャラクターのネタを考えていますね。僕は風呂で考えることが多いんですよ、キャラクター案を。思いついたら、すぐにスマホにメモしておくんです。今回、『シャイニング・レゾナンス』で「難しいな」と思ったのは、前作までのキャラクターとはかぶらないタイプを考えること。これまで、ものすごい数のキャラクターを描いてもらっていますから。
Tony 『シャイニング・レゾナンス』は、いままでにない斬新な組み合わせがあって、楽しかったですね。アグナムの“ロッカー”で“魔導師”とか。
澤田 男のキャラクターを生み出すのは楽しかったですね。今回は魅力的な男キャラもたくさん出てきます!(強調)
――(笑)。
澤田 それから、キリカの“金髪”、“和服”、“エルフ”は、昔から「いつかやろう」と温存していたイメージです。いまでも、キャラクターのネタはいろいろと考えてキープしてあります。Tonyさんと僕は、昔からインスピレーションがマッチしていたのですが、10年以上のお付き合いで、より合うようになりましたね。
Tony 10年経って、澤田さんとのキャラクター作りも熟成されたということですね。
澤田 まだまだ描いてもらいますけどね!(笑)
■新作はこれだけじゃない!? ファンイベントも企画中!
――2014年はシリーズにとって記念すべき年ということで、『シャイニング・レゾナンス』以外にもさまざまな展開があるのでは? と期待が高まります。
澤田 今年は、いろいろな形でシリーズを楽しんでいただきたいと考えています。すでに発表しているアーケードゲーム『BLADE ARCUS from Shining(ブレードアークス フロム シャイニング)』(2014年稼動予定)は、『シャイニング・ブレイド』をベースにした2D格闘ゲームです。『シャイニング』シリーズで人気のキャラクターに加えて、新キャラクターがふたり登場します。
――どのようなシステムを採用しているのですか?
澤田 タッグ式で、途中で交代もできますし、パートナーからサポートもしてもらえます。パートナーによって、技の性能がちょっと変わったりするようなことも考えているんですよ。キャラクターの組み合わせが戦略に関わってくるところが、『シャイニング』らしいポイントだと思っていますので。この辺は開発スタッフと試行錯誤をしている最中ですね。それから、ストーリーは、格闘ゲームとしてはかなりボリュームがありますよ。キャラクターごとにシナリオは異なりますし、ボイスはすべて録り下ろしです。
――『シャイニング・ブレイド』の世界の、いつの時代のできごとが描かれるのですか?
澤田 『シャイニング・ブレイド』本編の途中のお話です。
――先ほど、“いろいろな形で”とおっしゃっていましたが、『BLADE ARCUS from Shining』以外にも、何か展開があるのでしょうか?
澤田 詳細は言えませんが……『シャイニング・レゾナンス』は、新しい世界を舞台にした作品ですが、前作までの世界についても、新展開を用意しています。そのひとつが『BLADE ARCUS from Shining』であり、ほかにも……あるかもしれません。また、ファンの皆さんが参加できるイベントも企画しています。イベントでは、できればライブもやりたいな、と。
――続報を楽しみにしています。最後に、読者へのメッセージをお願いします。
Tony 『シャイニング・レゾナンス』では、僕の絵に近い、高精細なキャラクターが動き回ります。楽しみにしていてください!
澤田 いままでの世界観とは違う、新しい『シャイニング』です。シリーズファンの方はもちろん、シリーズ未経験の方にも、ぜひ遊んでいただきたいです。よろしくお願いします。
Tony氏のアトリエを独占取材!
今回のインタビューは、Tony氏のアトリエで行われた。本記事では、『シャイニング・レゾナンス』キャラクター生誕の地である、このアトリエの風景を特別公開。ファン必見です!
シャイニング・レゾナンス
メーカー | セガ |
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対応機種 | PS3プレイステーション3 |
発売日 | 今冬発売予定 |
価格 | 価格未定 |
ジャンル | RPG / 冒険・ファンタジー |
備考 | キャラクターデザイン:Tony(AlbionWorks)、開発:メディア・ビジョン、キャラクターモデル制作:フライトユニット、シナリオ監修:火野峻志 |