撮影現場にカメラが入ったのはメディア初!

 
 KONAMIの小島プロダクションが3月20日からインターネット上で配信を開始した情報番組“コジマ・ステーション”。小島プロダクションの開発フロアに専用セットが組まれ、木曜日19時から生放送されている。ふだんは関係者以外いっさい立ち入ることができない小島プロダクションの開発フロアに、ファミ通の記者が潜入! 番組のセットやVTR収録の取材、さらには小島監督へのインタビューを敢行した。ぜひ刮目してほしい。

※本記事は、週刊ファミ通2014年5月22日号(2014年5月8日発売号)に掲載された記事に加筆、再編集したものです。

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【コジマ・ステーションとは?】
 コジマ・ステーションは、Youtube、Ustream、Twitchで視聴が可能。ゲームだけにとどまらず、映画やホビーの情報も発信している。番組のホームページでは、過去の放送をアーカイブ視聴できる。次回放送は、2014年5月22日(木)19時より生放送!
※番組ホームページ

 まずは、専用セットのリポートを写真中心にお届け。ここにメディアのカメラが入るのは、当然初のこと。

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▲セット全景。このセットのすぐ裏で、『メタルギア ソリッド V』の本篇『ファントムペイン』の制作が進められている。
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▲ゲームの開発フロアにセットがあるため、生放送中はランプが点灯し、スタッフに知らせる。
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▲小島監督の映画コーナーがもある“コジステ”らしく、本物の映写機も置かれている。
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▲本番中の様子。カメラ、音響など、多くのスタッフが放送を支えている。
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▲アートディレクターの新川洋司氏によるホビー紹介コーナーも。

VTR収録にも密着取材

 
 『メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ』に続く『メタルギア ソリッド V』の本篇である『ファントムペイン』で、美人スナイパーのクワイエット役を演じるステファニーさん。彼女が小島プロダクションの制作の裏側を取材するという新コーナー“ステファニーのコジプロ潜入”(2014年4月24日放送)のVTR撮影にも密着。オンエアを見逃した方は、アーカイブ放送をチェックしよう。

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▲KONAMI本社のある東京ミッドタウンでの撮影のひとコマ。ステファニーさんと打ち合わせる小島監督。
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▲小島監督みずからが三脚を操作して画角をチェック。VTRの撮影は一眼レフが使われている。
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▲3Dフォトスキャンの実演。『グラウンド・ゼロズ』の実際のスキャン作業もここで行われた。
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▲演出も小島監督が細かく指示を出す。ここは、FOX ENGINEで再現されたこともある会議室。
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▲コジプロ内に作られた3Dフォトスキャンのスタジオ。全方位から撮影して3Dデータを生成する。
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▲実際にゲーム制作時のスキャンに使われた小物類。手前の物体は、ゲームをプレイした人はピンと来るはず!

本番前の小島監督を直撃!

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▲小島秀夫氏。ゲームデザイナー。株式会社コナミデジタルエンタテインメント上席執行役員(EVP)。小島プロダクション監督。代表作は、『メタルギア』シリーズや『ポリスノーツ』など。

 リハーサルを終え、本番まで1時間を切ったタイミングで、小島秀夫監督を直撃取材。小島プロダクションみずからがメディアとなり、情報を発信していく意義について訊いた。

──これまで、Webラジオ番組の“ヒデラジ”などで情報を発信されてきましたが、先日から映像番組の生配信を始められましたね。

小島 3月20日に『メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ』が発売されましたが、プレイヤーの皆さんはプレイステーション4のSHARE機能などを使って、自宅から自分のプレイを世界に向けて発信しています。コアなゲーマーどうしが、動画配信を使ってコミュニケーションが取れる土壌ができたわけですね。僕らも、そんな時代が来るのを見越して、自由度の高いオープンワールドのゲームを創ってきたので、僕ら自身もプレイヤーの皆さんに対してプレゼンテーションできる流れを持ちたかったんです。

──そこで映像が必要になったと。

小島 映像でしかできないことをやりたいというのもありますが、今回は“生”にこだわっているんですよ。もちろんアーカイブでも視聴できますけど、いままさに生で小島プロダクションの開発フロアから配信しているという、プレイヤーの皆さんと時間を共有する一体感を出したかった。リアルタイムなオープンワールドのゲームを遊ぶのと同じような、地続きな感じですね。Webラジオは、あれはあれで深夜番組のノリで好きだったんですけど(笑)。

──コジステは生配信なだけに、番組中にユーザーとコミュニケーションが取れますよね。

小島 少しタイムラグはありますが、UstreamやTwitterでの反応がすぐ手元で見られます。これがあるから、生がいいというか。ユーザーのコメントに対してさらにリアクションを返すと、喜んでくれますね。いままでは、ゲームを何年かじっくり創って、それを発売したらつぎの制作へ、というスパンでしたけど、いまは発売後もこういった配信やプレイ動画を観ながら、共通の話題で盛り上がるということが技術的に可能になりました。ここは大きく違うところですね。

──番組専用のセットが開発フロアに組まれていますが、だいぶ気合が入っているように感じます。

小島 気合というわけではありませんが、いまはパソコンとツールさえあれば、どなたでも簡単に映像が作れる時代です。僕らはエンターテインメントのプロなので、映像のクオリティーひとつにしてもアマチュアの方とは違う、プロなりの仕掛けをしないとダメだと思っています。そこは気を遣っているところですね。かなり時間と労力をかけているのですが、あまり理解はされません(苦笑)。

──番組中のVTR撮影も内製なんですね。

小島 カメラはコジプロのデモ班でデモを作っている子が回しているんですけど、ふだん撮影をしているわけではないので、半分素人みたいなものです。本業はCGでの映像作りなのですが、僕はよく彼に「実際にカメラでファインダーを覗いてフレームを切らなあきませんよ」と言っていたんです。それで、彼は自分でカメラを買って、いろいろな映像を撮っていて。

──なるほど。そういう意味では素人ではないと。

小島 そうです。素人とは言いながらもCGのプロ。彼らといっしょに映像を撮っていくことでチーム力も高まりますから。ゲームの制作者って、本当は何でもできるんです。それは、モノを観てもらえればわかると思うので。

──番組の1コーナーで、全世界のプレイヤーのデータを集計した、世界累計記録の発表が非常に興味深いです。

小島 麻酔銃での最長ヘッドショット距離が300メートルとかいうやつですが、あれって当然テクニックもありますけど、いちばん重要なのはアイデアなんです。どうやってその距離を当てるかではなくて、いかにして300メートル先の敵を狙えるシチュエーションを作るかというところにその人の個性が出るんです。番組で一例を紹介すると、それを真似ることはできますが、その先が重要です。世界記録以上の距離になるように、敵をどこでホールドアップさせて、どこから狙えばいいか、いろいろ考えると。そこがおもしろいんですね。そういうゲームってなかなかなかったと思うので、僕らとしてもそこは推していきたい。そのヒントとして、番組でも毎回“魅せプレイ”というのをやっています。

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▲全プレイヤーのミッションプレイ数や累計発砲数を始め、片輪走行した最長時間やカラスの駆除数など、ありとあらゆるプレイデータが蓄積されている。

 
──最後に、コジマ・ステーションの今後についてお聞かせください。

小島 ゲーム制作と並行しつつだったり、木曜日は映画に行けなくなったりで、けっこうしんどいです(苦笑)。とはいえ、こうした放送は非常に重要だと思っています。

──当面は続けられるということでしょうか。

小島 毎週の放送や制作体制については検討しているところですが、番組自体は続けていきます。セットも作りましたし。生放送のよさって、その番組に合わせて自分の生活形態を変えることだと思うんです。昔は、ゴールデンタイムのドラマの時間帯は銭湯が空っぽだったとかありましたよね(笑)。いまはいろいろと便利になりすぎて、自分の好きな時間に録画やアーカイブが観られる時代ですが、生で観るからこそ味わえる臨場感があります。そういう、生活を変えてもらえるような、魅力的な番組にしたいとは思いますね。