バンダイナムコゲームス馬場氏、カプコン小林氏、スクウェア・エニックス門井氏が登壇

いまのゲーム作りはきびしい!? “今、この時代におけるゲームの作り方”セミナーで3人のクリエイターがゲーム作りを語る【マチ★アソビVol.12】_01

 2014年5月3日(土)から5日(月)までの3日間、徳島県徳島市で開催されたエンターテイメントイベント“マチ★アソビ”。2014年5月5日(月・祝)には、バンダイナムコゲームスの馬場英雄氏、カプコンの小林裕幸氏、スクウェア・エニックスの門井信樹氏によるセミナー“今、この時代におけるゲームの作り方”が行われた。

 登壇した3人は“マチ★アソビ”というイベントについて、「学園祭のノリというか、きちんとしたイベントとは異なる雰囲気があって楽しい」(馬場氏)、「ゲームセンターで行うイベントのノリに近いですよね。ゲームセンターの文化で育ってきているので親近感があります」(門井氏)とコメント。小林氏も関東だけではなく、日本の各地でイベントが行われるようになったことを語り、「札幌でイベントを行った際に100人も集まってくれたことがうれしかったです。行けていない県にも今後行けるようにしたいですね」と地方でのイベント参加に意欲を見せた。

 本題となる“今、この時代におけるゲームの作り方”では、現代のゲーム作りに関する流れを紹介しながら、その中で何を重用視しているかを3人が語る。テーマごとに順を追って紹介していく形式となっており、テーマは“企画立案”、“開発体制”、“キャラクター&世界観の制作”、“シナリオ制作”、“キャスティング(声優)”、“楽曲(BGM、主題歌)”、“予算管理”、“プロモーション”、“メディア展開”といったものが掲げられた。

 企画立案について、いまの時代は会社で企画を通すことが非常にきびしくなっていることを、3人が口を揃えて語る。自由な発想の企画やオリジナルのタイトルなどは企画が通りにくくなっており、ユーザーのニーズなどを細かく分析したうえで企画を立てているとのこと。小林氏の代表作である『戦国BASARA』シリーズも第1作目が“大ヒット”と言えるほどではなかったため、2作目の企画を通すのが非常に困難だったと語るほどで、現在のヒットを考えると企画を通すことの困難さが非常によくわかるエピソードだと言えるだろう。また、『ドラゴンズドグマ』もオリジナルタイトルであるため、その困難さがうかがい知れる。日本の市場でオープンワールドのRPGを出すというのは、大きなチャレンジ。“自身に実績がなければ通らなかったのではないか”と小林氏も分析するほど。そんななか、アーケードを中心に活動している門井氏は、基板を含め、ゼロから作っていけるため、“遊び”や“ギミック”を中心とした企画作りができるのだという。最近ではヘッドマウントディスプレイに興味を持っているそうで、実際にソニーまで足を運び、現在の最先端の技術がどんなものなのかを確認するほど。ゲームセンターに行かなければできないという点を重視した企画にすることで、企画が通りやすくなるとのことだ。逆に、『テイルズ オブ』シリーズなどは、「止まることを許されないシリーズ」と馬場氏は語る。現在も、ひとつの作品を作っている最中に、つぎの作品の企画を作り始めているとのこと。つねにユーザーに楽しい体験をしてもらうため、アンケートなどは必ず行い、ユーザーのニーズを分析し続けながら、企画制作に臨んでいるという。

 キャラクターや世界観の設定については、門井氏からアーケードゲームならではの設定方法が語られた。というのも、アーケードゲームの場合、限られた時間の中でキャラクターを選択するため、パッとキャラクターを見ただけでどういう能力を持っているのか、どんな役割をするキャラクターなのかがわかるようにしなければならないとのこと。ただし、性能を重視したキャラクター作りに終始してしまうと、今度は見た目で人気を得られないキャラクターが出てきてしまうという。そのバランスやギャップなどをうまく狙うことで、キャラクター人気を保ちつつ、性能がわかるようなキャラクター作りをしているそうだ。また、そうしてできあがったキャラクターに命を吹き込む声優のキャスティングについては、3人とも“声が合っていること”がイチバン大事なことであると語る。そのうえで、“いろいろな役を演じている”、“芝居がしっかりしている”といった点を見ているとのこと。また、各事務所などのボイスサンプルなどではなく、アニメなどでしっかりと演技しているものを参考にしているという点も挙げられた。ボイスサンプルには、一瞬のみ発することのできる声色などもあるため、実際に演技をしてみると長続きしないということもあるからなのだそう。『テイルズ オブ』シリーズで、必ずオーディションを行っているのは、こういった点のチェックを行うためでもあるとのことだ。ほかにも、イベント出演が可能かどうか、ゲームが好きかどうか、など、プロモーション展開についても視野に入れていると語られた。

いまのゲーム作りはきびしい!? “今、この時代におけるゲームの作り方”セミナーで3人のクリエイターがゲーム作りを語る【マチ★アソビVol.12】_02

 そんなプロモーション展開については、アーケードとコンシューマータイトルで異なる手法が取られている。コンシューマータイトルであればテレビCMや雑誌・Webメディア、公式サイトでの情報展開などが中心。アーケードタイトルだと、ゲームセンター内での広告や、各地での大会などといったユーザーイベントがそのまま宣伝になるとのこと。ただし、共通点として、“実際にゲームをプレイしてもらうこと”、“テレビ番組や生放送番組などで楽しそうにプレイしている姿を見せること”が重要であると語る。これはゲームセンターに足を運んでもらうための施策にもなっているということだ。

 そしてメディア展開については、現在は多角的な戦略が重要になっており、ゲームユーザー以外の人にも商品のことを知ってもらうことを意識しているそうだ。そのための仕掛けとして、さまざまな企業とのコラボレーションや、マンガ化、アニメ化、舞台化といったものが行われている。この取り組みについては、馬場氏から「カプコンさんの仕掛けを見ていると、まだまだ我々もやれることがいっぱいあるんじゃないかと感じます」と感嘆の声が上がった。また、シリーズものの作品であれば、ソフト発売から1年後につぎのタイトルが出ると仮定して、そのあいだの1年間は待っているファンにとっては長いものであると認識。そのあいだをメディア展開で埋めて楽しみながら待ってもらうような施策を取り入れているとのことだ。

 今回のテーマである“今、この時代におけるゲームの作り方”。セミナー開始直後に3人が口を揃えて「テーマが重い(笑)」と語ったように、今回のセミナーではゲーム作りの“たいへんさ”を露呈するような話題が多かった。聴衆からの質疑応答でも「ゲームの評価として売り上げ以外の要素が評価されることはあるのか?」という質問に、3人とも会社の評価はドライで、“数字”で見られると答えていた。ただし、それは“会社の考えかた”で、作り手としては、ユーザーの感想や満足度、また開発の手応えに関しても評価をしているとのこと。それ以外にも、これまでにはなかった“マチ★アソビ”のような地方イベントが各地で行われるようになり、ユーザーの顔が直接見える場所でのイベントが実施できることをとてもうれしく思っているそう。「我々も楽しんでやっています」と馬場氏が力強く語ったように、より開発スタッフがユーザーの声を聞き、楽しみながらゲーム作りができる環境が徐々に増えてきているのかもしれない。地元で、自分の好きなゲームのイベントが開催される折には、ぜひイベントに参加し、開発者にゲームについての感想を伝えてみてほしい。きっと真摯に受け止めてくれるはずだ。