そして筆者にとっては、高杉晋作の物語でした。

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 2014年2月27日にマーベラスAQLから発売されたリズムゲーム・アドベンチャーゲーム『幕末Rock』。この夏にはテレビアニメ化を控えている本作ですが、皆さん、この『幕末Rock』がどんなゲームか、詳細はご存じですか? クールな男性キャラクターが多数登場する、豪華声優陣の歌が楽しめる……という点だけを見て、「女性向けのゲームなんだな」と決めつけちゃったりしていませんか? 「幕末の志士と恋愛するゲームなんだ」と勘違いしちゃったりしていませんか?

 それは大きな間違いです。いえ、“女性が楽しめる”という点は間違っていませんが、男性だって楽しめるゲームなんです。私は本作をクリアーし終えたとき、80~90年代のザ・直球の少年マンガを読み終えたような気分になりました。恋愛要素は、清々しいくらい、まったくありません。でもそれでいい、だって登場人物はみんな、音楽以外目に入っていないRockバカなので。暑苦しくって、ちょっとうるさいぐらいです

 私はどちらかというと、リズムゲーム目当てでプレイを始めたのですが、物語にも引き込まれてしまったのは、うれしい誤算でした。この“うれしい誤算”を、女性読者はもちろん、男性読者にも伝えたい……と思ってお届けするのが、このプレイインプレッションです。え、「2月発売のゲームなのに、なんでいまさら?」って? ハイスコアを追及しているうちに、時間が経っちゃったんです……ごめんなさい!


 『幕末Rock』のあらすじをざっと紹介しましょう。時は幕末。徳川幕府は、“最高愛獲(トップアイドル)”の“新選組”に、“天歌(ヘブンズソング)”と呼ばれる洗脳ソングを歌わせることで、人々を支配していました。そんな状況に疑問を覚える坂本龍馬、高杉晋作、桂小五郎ら“志士(ロッカー)”たちは、“Rock”の力で日本を変えようと奮起。“超魂(ウルトラソウル)”の欠片、“片魂(ピースソウル)”をその身に宿す龍馬たちは、“雷舞(ライブ)”を行うことで、洗脳された人々を解放していきます。

 ……と、漢字とふりがなだらけで面食らった人もいるかもしれませんが、要約すると悪に対抗するため、主人公たちが魂の力を歌に込めて戦う、というお話です。

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▲幕府に対抗して歌う、坂本龍馬(中央)、高杉晋作(右)、桂小五郎(左)。声はそれぞれ、谷山紀章さん、鈴木達央さん、森久保祥太郎さんが担当。

 このあらすじだけでも、少年マンガっぽいですが、物語の展開も、少年マンガらしいものばかり。ライバルと出会い、敵どうしなのに通じ合うものを感じたり、仲間たちが力を発揮していく一方で、自分だけ力が覚醒せずに悩んだり、闇に落ちてしまったライバルを救ったり、恩人に再会したと思ったら……だったり、敵の罠だとわかっていながらも、あえて飛び込んでいったり。ネタバレを避けながらざっと挙げてみただけでも、これだけのアツいドラマが待っているのですよ!

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▲新選組のメンバー、土方歳三(左)と沖田総司(右)。声は森川智之さん、小野賢章さんが担当。龍馬たちとはライバルなのに、公式サイトではメインキャラクター扱いってことは……もう言わなくてもわかりますね。
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▲少年マンガらしさをさらにアップさせる、フキダシや擬音の表現。

 物語はチャプターに分かれていて、各チャプターはテレビアニメ1話ぶんぐらいの、ほどよい長さになっています。冒頭の第1~2話は、物語の背景の説明を含むためか、展開がちょっと遅いな、と感じるところもありますが、キャラクターが揃う第3話あたりからぐんぐんおもしろくなってくる

 王道の少年マンガ展開ゆえ、「この後、こういうお話になるんだろうな」と先が読めることもありますが、ぶっとんだ世界観とキャラクターが合わさることで、王道だけれども飽きない内容になっています。とくに吉田松陰は、「世の中の歴史ファンに怒られるのではないか?」と思うほど、史実とはかけ離れた姿に……。

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▲これが吉田松陰先生。大事なことなので2回言いますが、これが吉田松陰先生です。中尾隆聖さんのボイスが、またなんとも言えない味を出しているんですよ。
▲“天歌泰平(ソングオブピースフル)”を進める井伊直弼(声:安元洋貴さん)と、超美少年な徳川慶喜(声:斎賀みつきさん)。

 さて、この物語の主人公は坂本龍馬ですが、龍馬はある意味、最初から完成されているキャラクターです。とにかく音楽を愛していて、おバカなくらい真っすぐで、器が大きい。人々から愛される、主人公らしい主人公です。

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 一方、未熟の代表とも言えるキャラクターが、高杉晋作。プライドが高くて、素直ではなく、龍馬とはすぐにケンカするし、他者をすぐに認めることができない。幼なじみの桂小五郎に、しょっちゅうたしなめられています。

 しかしこの高杉も、お話が進むにつれて成長していきます。ケンカばかりしていた龍馬がピンチになると、助けようとする。不仲だった相手とも、コミュニケーションをとるようになる。そして辛いできごとを乗り越える……。プレイヤーがこの物語を通じてもっとも感じられるもの、それは最初から最後まで龍馬の近くにいる高杉の成長だと言っても過言ではありません

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▲最初のころは、あんなに反発していたのにねえ……。

 高杉の見せ場は第7話! 詳細は書けませんが、物語の内容と、リズムゲームパートでプレイする高杉のソロ曲「生きてゆこう」がマッチしていて泣かせます。ノリのいい曲が多い中で、「生きてゆこう」はしみじみと聴かせる曲。でもRock。主題歌の「What's this?」に並ぶ名曲だと個人的には思ってます!

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▲こんなセリフも、ゲームをプレイするうちに、Rockでカッコいい気がしてくる。
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 ちなみに、本作の物語の大筋はひとつですが、エンディングは複数用意されています。マルチエンディングだとは知らなかった私は、とくに意識せずにプレイを進めていたのですが、自然と高杉らしいエンディングになりました。高杉の成長が見える、とても読後感(プレイ後感?)のいいエンディングでしたよ。

 ……というわけで、私にとっては、『幕末Rock』は高杉晋作の物語でした。もちろん、プレイヤーによっては、桂小五郎の物語になったり、沖田総司の物語になったりすると思いますが、「ああー、久しぶりに王道の少年マンガらしいお話を楽しんだわー」という気持ちになれることは保証します。楽曲はどれもカッコいいですし。

 ただ、リズムゲームパートについては、HARDの上の難易度も欲しかったな……というのが正直な意見ではあります。コアなリズムゲームプレイヤーには、ちょっと物足りないかな。次回作があるなら、やり込み派向けの要素追加をお願いします!

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▲リズムゲームのルールはシンプル。○や×などのアイコンが画面下部のラインにかかるタイミングで、対応するボタンを押していくというもの。
▲ボタンを押すと、画面内のボタンのアイコンが歌詞に変化する演出がカッコいい。ベストタイミングから多少ズレてしまっても、“歌詞がカッコよく配置されている”と思えば、自分を許せる気がする。
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▲リズムゲーム時の映像も見どころのひとつですが、プレイしている時は、正直、見ている余裕がない。映像を楽しみたい人は、あとでギャラリーでゆっくり見よう! 楽曲のみくり返し聴くことも可能です。

 ファンにはうれしいことに、テレビアニメ化を記念して、土方歳三と沖田総司の新曲が楽しめる無料ダウンロードコンテンツがPlayStation Storeで配信中です。無料とは太っ腹! このインプレッションを読んで、『幕末Rock』に興味を持たれた方は、ぜひ本編と、ダウンロードコンテンツをプレイしてみてください。そして7月から始まるテレビアニメを楽しみましょう!

■筆者紹介
ロマンシング★嵯峨

週刊ファミ通&ファミ通ドットコム編集者。2014年は、おもしろいリズムゲームがたくさんあって幸せ。『幕末Rock』のお気に入りの曲は「生きてゆこう」だと書きましたが、龍馬の「Crash My Head」も好きです。とても明るい曲で。


幕末Rock
メーカー マーベラスAQL
対応機種 PSPPSP
発売日 2014年2月27日発売
価格 5800円[税抜]
ジャンル アドベンチャー・リズムゲーム / 歴史・音楽
備考 ダウンロード版は5238円[税抜]、プロデューサー:石田健博、キャラクターデザイン:藤坂公彦、イラスト制作:スタジオディーン、 シナリオ:StoryWorks、映像監督:松根マサト(アリスフロムジャパン)、楽曲製作:テレビ朝日ミュージック