「Wii Uビジネス全体が総じて低調な推移に」

 2014年5月7日、任天堂が平成26年(2014年)3月期の決算短信を発表した。決算短信によると、平成26年3月期の連結業績(平成25年4月1日~平成26年3月31日)は、売上高は5717億2600万円(前年同期比△10.0%)、営業利益464億2500万円の損失、経常利益は60億8600万円(前年同期比△41.9%)、当期純利益は△232億2200万円となった。

 この数字は、今年1月に下方修正した業績計画である、売上高5900億円、営業損益350億円の赤字をさらに下回るもの。差異が生じた理由に関して任天堂では、「ニンテンドー3DSハードウェア及び、Wii Uハードウェア、Wii Uソフトウェアが想定した販売数に至らなかったことで売上高は想定を下回りました。営業損失が想定よりも拡大したのは、売上高が想定を下回ったことに加え、たな卸資産の評価減や研究開発費が想定よりも増加したことなどによります」(通期業績予想との差異に関するお知らせより)としている。

 決算短信によると、任天堂の当期の経営成績に関しては、ニンテンドー3DS(3DS LL/3DS/2DS)では、昨年10月に全世界で同時発売した『ポケットモンスター X・Y』が1226万本の販売を記録したほか、日本では前期に、欧米では2013年6月に発売した『とびだせ どうぶつの森』が全世界で380万本(累計766万本)を販売。また、『ルイージマンション2』、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』、『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』なども順調な売れ行きとなり、それぞれ200万本以上を販売。さらに、サードパーティーのタイトルからもヒット作が生まれ、販売数量はハードウェアが1224万台、ソフトウェアが6789万本となったとのこと。

 Wii Uは、『スーパーマリオ 3Dワールド』、『New スーパーマリオブラザーズ U』、『New スーパールイージ U』など、5作品がミリオンセラーとなったものの、Wii Uビジネス全体は総じて低調な推移となり、ハードウェアは272万台、ソフトウェアは1886万本の販売に留まったと説明している。

 このほか、ニンテンドーDS(DSi LL/DSi/DS Lite/DS)の販売数量は、ハードウェアが13万台、ソフトウェアが1029万本、Wiiの販売数量はハードウェアが122万台、ソフトウェアが2616万本とのことだ。

 これらの状況により、売上高は5717億円(うち、海外売上高3947億円、海外売上高比率69.0%)となった。「欧米における本体値下げの影響などによりWii Uハードウェアの採算が依然として厳しい状況にある中、利益率の高いソフトウェアの販売数量を十分に伸ばせなかったこともあり、売上総利益は1632億円となりました。その結果、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回り、営業損益は464億円の損失となりました。また、為替相場が前期末に比べ円安になったため為替差益が392億円発生し、経常利益は60億円となりました。一方で、主に米国における繰越欠損金などに対する繰延税金資産の取崩しを行った影響により、当期純損失は232億円となりました」(決算短信より)としている。

 次期の見通しに関しては、ニンテンドー3DSについては、「ハードウェアの全世界累計販売台数が4300万台を超え、ソフトウェアの販売を拡大させるのに十分な普及規模となりました」としつつ、対応ソフトウェアとしては、『マリオゴルフ ワールドツアー』を全世界で5月に、『トモダチコレクション 新生活』を欧米で6月にそれぞれ発売。また、『大乱闘スマッシュブラザーズ for ニンテンドー3DS』を全世界で夏に発売するほか、「次期においても継続して有力タイトルを発売することで、ニンテンドー3DSのプラットフォームビジネスから、しっかりとした利益を産み出すように努めていきます」(決算短信より)とのこと。

 一方で、Wii Uに関しては、「厳しい販売状況が続いている」(決算短信より)としつつも、プラットフォーム活性化のための取り組みを重点的に行うとのこと。具体的な取り組みの内容としては、「Wii U GamePadの特長を活かしたソフトウェアの提案、標準搭載しているNFCリーダーライター機能の活用、ニンテンドーDSのバーチャルコンソールをWii Uのソフトウェアラインアップに順次加えていくなど、Wii U最大の特長であるWii U GamePadの存在意義を高めることで、Wii Uプラットフォームの販売拡大につなげていきます」(決算短信より)とのこと。さらに、対応ソフトウェアとしては、全世界で5月に発売する『マリオカート8』、今年冬に発売する『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』という、幅広いお客様に“ひとりでもみんなでも”楽しんでもらえるふたつのソフトを軸として、順次高品質なタイトルを発売していくほか、ニンテンドーeショップを通じたデジタル配信ビジネスにも積極的に取り組んでいく予定だ。

 これらの取り組みにより、次期の業績については、売上高5900億円、営業利益400億円、経常利益350億円、当期純利益200億円を見込むとしている。

 なお、中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題については、同社の強みをもっとも活かせるハード・ソフト一体型のビデオゲーム専用機プラットフォームを経営の中核として、今後も独自の商品やサービスを提供するとのこと。また、ニンテンドーネットワークIDの導入やスマートデバイスを活用することなどで、長期にわたってユーザーとの強いつながりを築いていくための取り組みを推進し、任天堂のプラットフォームのビジネス拡大を目指すとしている。

 さらに、「娯楽を“人々のQOL~Quality of Life(生活の質)~を楽しく向上させるもの”と再定義し、ビデオゲーム専用機とは別の領域で、“人々のQOLを楽しく向上させるプラットフォームビジネス”を新たに展開していきます。最初のステップとしては“健康”をテーマとし、娯楽企業としての強みを活かしたユニークなアプローチで取り組みます」(決算短信より)とのことだ。

 このほか、任天堂が保有する豊富なキャラクターをより積極的に活用し、同社のキャラクターをビデオゲーム以外の場でも、より多くの人の目に触れるようにするとともに、キャラクターライセンスビジネスから一定の収益を得ることを目指すとしている。