“Symphonic Fantasies”に続き、再び日本凱旋
スクウェア・エニックスは、2014年5月4日、東京・上野にある東京文化会館 大ホールにて“Final Symphony Tokyo - music from FINAL FANTASY VI,VII and X”と題した、オーケストラコンサートを開催。本公演は、2009年にドイツで、2012年に日本で凱旋公演された“Symphonic Fantasies Tokyo - music from SQUARE ENIX”の続編とも言うべきオーケストラコンサートで、昨年ドイツやイギリスでも公演され、大成功を収めている。
本コンサートの特徴は、1曲ずつ演奏する形式ではなく、楽曲が交響曲に編曲され、楽章によって構成・演奏されるというところ。バラエティーに富んだ楽曲が、交響曲として整合性を持たせるため、大胆にアレンジされており、聴き慣れたメロディーもかなり新鮮に聴くことができる。
指揮:エケハルト・シュティーア
ピアノ:カタリーナ・トロイトラー
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
作曲:植松伸夫
作曲・編曲:浜渦正志
作曲・編曲:ヨンネ・ヴァルトネン
編曲:ロジャー・ワナモ
<第1部>
1. Fantasy Overture - Circle within a circle within a circle
作曲:ヨンネ・ヴァルトネン
2. FINAL FANTASY VI - Symphonic Poem
ティナのテーマ / 魔導士ケフカ / 幻獣界 / 戦闘 / メタモルフォーゼ etc.
3. FINAL FANTASY X - Piano Concerto
ザナルカンドにて / ビサイド島 / 祈りの歌 / 雷平原 / 襲撃 etc.
<第2部>
4. FINAL FANTASY VII - Symphony in Three Movements
FFVIIメインテーマ / J-E-N-O-V-A / ティファのテーマ / エアリスのテーマ etc.
<アンコール>
ENCORE 1:Final Fantasy VII -Continue?
ENCORE 2:Final Fantasy series -Fight,Fight,Fight!
コンサートでは、まず本公演のコンポーザー・アレンジャーのひとりであるヨンネ・ヴァルトネン作曲による『Fantasy Overture』からスタート。
続いては、今年で発売から20周年を迎える『ファイナルファンタジーVI』から“FINAL FANTASY VI - Symphonic Poem”と題された交響曲が披露された。アレンジはロジャー・ワナモ氏。
演奏前には、『FF』シリーズのほとんどの作品で作曲を担当した植松伸夫氏が登壇。シリーズとしては、スーパーファミコン最後の作品となった『FFVI』。プレイステーション以降は、CD-ROMで容量も増えたことで物量は膨大し、チームは大規模化。また、CGなど専門知識が必要とされ、それぞれのプロフェッショナルが分業するという制作体制になった。たが、『FFVI』までは、「『FF』シリーズは初代から“ゲームが好き”という思いの人が集まってみんなで作っていました。いま振り返ると(乱暴な言いかたをすれば)素人っぽい作りかたです。その素人っぽい作りかたの頂点の作品が『FFVI』」(植松氏)。そうした昔ながらの制作体制の最後の作品になったという点で、『FFVI』には特別な思い入れがあるとのこと。また、植松氏は「『FFVI』発売以降、いろいろな経験を積んだ当時のスタッフで、いつか『FFVI』のような2Dの作品を作ってみたいですね」と抱負を語った。
『FFVI』に続いては『FFX』から“FINAL FANTASY X - Piano Concerto”。曲名からもわかるとおり、ピアノがフィーチャーされたアレンジとなっており、ピアニストのカタリーナ・トロイトラーさんが登場。演奏前には『FFX』では作曲にも参加し、『FFX/X-2 リマスター』では音楽ディレクターや新規アレンジを担当、本コンサートの“FFX - Piano Concerto”でもアレンジを担当した浜渦正志氏が登壇。『FFX』の楽曲は、これまでもピアノコンサートやオーケストラコンサートなど、さまざまなコンサートで演奏され、アレンジし尽くした感がある、という浜渦氏。本コンサートでは、「発売から10年経った『FFX』を、いまの自分の視点から感じたことを盛り込みました。イタズラの多いアレンジになっていると思います」(浜渦氏)と説明。その説明どおり、メリハリの効いたピアノとオーケストラの静と動も合わさり、いままでに聴いた『FFX』のアレンジとはまた違った迫力と魅力に満ちていた印象だ。
20分ほどの休憩を挟んで今回の目玉とも言える第2部“FINAL FANTASY VII - Symphony in Three Movements”へ。編曲はヨンネ・ヴァルトネン氏。ニブルヘイム事件、花火に消された言葉、星の危機という3楽章から構成。第3楽章の“星の危機”には『偉大なる戦士』などの楽曲がフィーチャーされていたが、楽曲の演奏の前、楽曲解説のために登壇した植松氏は、ヒーローになるためには何が必要かを問われ、ヒーローを主人公という言葉に置き換え、「自分の人生の主人公は自分。なので、みんな主人公なわけです。自分の思い描いた人生をやりたいようにやるしかない。なので自分の主張を通していい。だけど自分の主張を相手に飲んでもらう代わりに、相手の主張も飲まないといけない。相手の言い分も飲む。これがヒーローになるポイントかな」(植松氏)と深イイ話を披露。これは植松氏が楽曲を制作するうえでも信条としていることなのかもしれない。
『FF』コンサートでは定番とも言える『片翼の天使』や『J-E-N-O-V-A 』なども大胆にアレンジされ、これまでとはまた異なる『FFVII』の魅力を感じさせてくれた“FFVII - Symphony in Three Movements”。アンコール終了後も万雷の拍手が鳴り止まず、今回の“Final Symphony Tokyo”も大盛況のまま終了した。
長時間プレイされるゲームだからこそ、ゲーム音楽はバラエティーに富んだ構成になっている。その多彩な楽曲を多数盛り込みつつ楽章として成り立つよう調和させ(メドレーとはここが違う)、盛り上げどころもしっかり作り、さらに大胆にアレンジした遊び心あふれる部分もあるなど、ゲーム音楽の奥深さ、新たな可能性すら感じさせてくれた“Final Symphony Tokyo”。“Symphonic Fantasies Tokyo”公演のようにぜひCD化されることも期待したい!