今度はPvEや探索要素も!
アイスランドのレイキャビクで開催中の、CCP Gamesのオフラインイベント“Fanfest 2014”。2日目の昼に、プレイステーション3で運営中の無料FPS『DUST 514』の基調講演が行われた。
登壇したのは新エグゼクティブ・プロデューサーのJean-Charles Gaudenchon氏。同氏はまず『DUST 514』のローンチから現在までを振り返りつつ、UPRISINGアップデートの1.8で、新要素も加わり、バランス改善も進んできたことに触れた。
そして次のステップとして、真のサンドボックスな一人称視点の体験として発表したのが“Project Legeion”だ。PCをプラットフォームとして、探索要素や、PvP(対人戦)だけでなくPvE(NPCとの戦い)も混在した、『DUST 514』をベースにした新たなタイトルとなる。
講演ではリアルタイムデモで、一新されたグラフィックなどが披露されたが、実際これはどんなタイトルなのか? クリエイティブ・ディレクターのアトリ・マル・スヴェンソン氏にインタビューを行ったので、早速その模様をお届けしよう。
――『DUST 514』のコンセプトは誰もが驚いたものでした。ローンチは必ずしもベストではなかったですが、UPRISINGアップデートを重ねるに連れてひとつずつ問題も解消されてきた。さて、次はなんでしょう?
アトリ・マル・スヴェンソン氏(以下アトリ) まずはそれを継続します。コミュニティをモニターして、何が必要とされているのかを自覚して取り組む。UPRISING1.8では、数々の修正に加えてクローキング(ステルス機能)などクールな機能を入れることができ、新たな戦術が生まれたわけで、コミュニティの反応も良かったです。
そして、企画段階であったコンセプトを進化させる新たなアイデアにも取り組みます。それが“Project Legion”です。今はPCをターゲットにしているこの新プロジェクトですが、我々のビジョンをまたひとつ現実のものにできるのに興奮しています。
――“Project Legion”とはなんでしょう? 『DUST 514』とはどう違うのでしょうか?
アトリ まずお伝えしたいのは、『DUST 514』で積み重ねてきたものをベースとしていますが、これが『DUST 514』の移植ではないということです。まったく別の派生進化と言えるでしょう。
端的に言えば、Project LegionはEVEユニバースにおける真のサンドボックスMMOFPSと言えます。CCPの核である“サンドボックス”というキーワードの元に作られたものです。Fanfestやカンファレンスで『DUST 514』のコンセプトを話す中で、サンドボックスの概念をどう取り入れるかについてもお話してきましたが、その実現の第一歩になります。
具体的に『DUST 514』とはゲーム体験の核となるループが異なります。『DUST 514』の場合は、現時点では戦闘して、マッチを探して、戦闘してって感じで、商品を購入したりするのもNPCとですよね。Project Legionのループは、とても違ったものです。どちらかと言うと伝統的なMMOや、『EVE Online』に近い。
――つまりマルチ対戦を繰り返していくタイプではないと。
アトリ 例を挙げると、あなたは自由に宇宙をスキャンできます。そして「これは」という星へと降下して探索する。まぁそこには戦闘ドローンがいるとか、その環境なりの脅威があるわけですよね。それを跳ね除けながら資源を探していく。その資源はPvPで使う武器やツールの素材だったりするので、マーケットを通じて別のプレイヤーに売る……。となるとそこにはプレイヤー主導の経済が生まれます。NPCに売るのとはちょっと違いますね。
でも依然として『DUST 514』と同じく宇宙の傭兵でもあって、あるコーポレーション(『EVE Online』のプレイヤー集団)が「この惑星のエリアを占拠したい」と思っていたら、あなたは助けることができます。
――つまりPvEもPvPもありえると。
アトリ そうです。それにEVEユニバースにはとてつもない数の星系があって、High Sec(その地域の治安機構が働いている高セキュリティ帯)、Low Sec(それがない低セキュリティ帯)といった具合に治安が異なる。High Secでは他プレイヤーを殺すことはできず、コラボレーションしてうまくやってかなきゃいけない。でもLow Secではフレンドリーファイアがオフになります。
――あぁ、それはすごくMMOですね!
アトリ イエス(笑)。だからある星系の星を調べて、どうもそこにいい資源がありそうだけどLow Secにあるなんて時は、それはもうある程度の危険を覚悟しないといけないし、友達を連れて行ったほうがいい。そういった状況では、プレイヤーの役割が複雑な意味あるものになりますよね。パイロットでもあるし、ガイドであり、他の採掘者から警戒する人でもあるし……。
これこそがサンドボックスなゲームにする理由です。我々は戦闘システム、ビークル(乗り物)システム、スキャナーシステム、そういった仕組みやツールを用意して、プレイヤーの役割はあくまでプレイヤーの行動によって決定され、また相互干渉により新たな意味が生まれていく。これぞCCPスタイルです。
――間違いないですね。プレイヤーの行動の意味という部分でも『EVE Online』に近付いた気がします。
アトリ 意義ある第一歩と言ったわけがわかりましたか? 個人的にもとても興奮しています。エンジン部分もUIを始めとしていろいろ変わっているので、明日画面をお見せしたらどう思うか楽しみですよ。(※このインタビューは発表前日に収録された)
――ベースとなっているのはアンリアルエンジン4ですか?
アトリ ベースは3です。ただ『DUST 514』のためにものすごい改造したものを土台としていて、新たなグラフィックテクノロジーを盛り込んでいたり、内容はかなり異なります。以前我々が使っていたものよりも強固なものになっています。地形やパーティクルエフェクトなんかも『DUST 514』より、さらに細かなディテールを表現できるようになっています。
――『DUST 514』のプレイステーション3や、あるいは4ではなく、PCをプラットフォームに選んだ理由はなんでしょうか?
アトリ ひとつには、PCは我々にとって次世代への第一歩に最適だからです。PCのファンにもEVEのFPSという体験を提供したかったということもあります。そして我々はこのゲームをプロトタイピング(試作)しながら作っているというのもPCが向いている点です。作っているのもPCですしね。
――確かに、何かものすごく新しいことを試す時にPCは向いていますね。例えば『DayZ』とか。
アトリ あと『Rust』とかね。上海で『Rust』を遊んでて、よく日本のプレイヤーらしき人に頭をかち割られていますが(笑)。
――わー……(笑)。ところで、そういった新しい試みが始まると『DUST 514』のプレイヤーが置いて行かれるように思ってしまいそうですが、そこはどうでしょうか?
アトリ UPRISING1.8で新たなものを入れたように、『DUST 514』のサポートはちゃんと継続していきます。Project Legeionによって今遊んでいるものが中断されるというようなことはありません。
――キャラクターのデータは別なんでしょうか?
アトリ (通訳役のスタッフに向かって)あ、もうわかったから訳さなくていいよ。えぇと、まだわからない、というのが正直な所です。基本的な方針として、我々はプレイヤーの皆さんやコミュニティのことをつねに気にかけていますが、それ以上のことは今はお話できることがありません。できるだけ多くの人がハッピーになる形を模索したいと思います。
――ところでひとつのエリアはどれぐらい大きいんですか?
アトリ 『DUST 514』と同じですが、5キロメートル×5キロメートルでとても大きいです。ちなみにテクニカルディレクターはもっと大きく出来ると言っていますね。
――もうひとついいのは、EVEのファンはハードコアなPCゲーマーが多くて、「PCで遊びたいんだけど……」と思っていた人へのいい回答になります。アンリアルエンジン4とか、例えばプレイステーション4への興味は?
アトリ 単純な興味はあります。しかし我々はエンジンを日々改良していて、次世代エンジンにも近づいて来ている。その上にシステムを構築しています。でもそこでアンリアルエンジン4そのものに移行するというのは、ちょっと大きな仕事なわけです。今は基本のプレイヤー体験の構築に集中したいですから。プレイステーション4についても同じように、ソニーさんとはうまくやっていて、個人的にも好きですが。今はゲームの核となる部分を作ることに全力を注ぎたいのであまり考えていません。
――『DUST 514』も安定してきたし、今日は細かい話になるかなと思っていたんですが、頭がふっ飛ばされるような面白い話でした。期待してます!
アトリ それは良かった。ぜひ皆さんにも、発表が終わったら意見を聞かせてほしいですね。(文・取材・写真:ミル☆吉村)