『エースコンバット インフィニティ』開発陣インタビュー

 
 週刊ファミ通2014年5月8・15日合併号では、正式サービス開始が2014年5月20日に決定した『エースコンバット インフィニティ』(以下、『ACE ∞』)の最新情報を公開した。記事内に収録しているプロデューサーの河野氏とディレクターの井崎氏、アートディレクターの糸見氏へのインタビューを、完全版としてお届けしよう。

『エースコンバット インフィニティ』開発陣インタビュー完全版_01
▲左から、プロデューサー・河野一聡氏、ディレクター・井崎夏樹氏、アートディレクター・糸見功輔氏。

『ACE ∞』がF2Pとなった理由

 
──サービス開始日が意外と早い時期になりましたが、まずは本作のテーマからお聞かせください。

河野一聡氏(以下、河野) 早いですか? こちらとしては、かなり長いあいだ作り続けていました(笑)。5月20日に、ようやく皆さんにお届けすることができます。

井崎夏樹氏(以下、井崎) 19年間続いてきた『エースコンバット』シリーズの“自由に空を飛べて、どのように戦ってもいい”という根本の楽しさに立ち返りました。メインモードのひとつとしてマルチプレイがある『ACE ∞』では、どのようにこの楽しさを提供できるかを突き詰めています。プレイヤーの皆さんの多くは、「エースになりたい」という願望を持っていると思うんです。ただ、マルチプレイでプレイヤー間に腕前の優劣がハッキリ現れてしまうだけの遊びでは、それは我々が目指している“自由”にはつながりません。そこで、プレイヤーが好きなように空の戦場へ飛び込み、それぞれがエースパイロットの実感が得られる新たなマルチプレイを設計しました。

河野 いわゆるフリー・トゥ・プレイ(以下、F2P)にした理由は、「『エースコンバット』を好きになってくれる人たちをもっと増やしたい……」と考えたことがきっかけです。現在シリーズ作を遊んでいただいている方々がいてくれて、つぎにファンになってくれそうな人は、「興味はあるけれど、フルプライスではちょっと……」という、体験版などのトライアルで止まっている人たちなんですね。本作では、まず気軽にプレイしていただき、自分が上達して「俺、コレ好きかも」と感じていただけるまで機会を確保する。トライアルとのハードルを越える手法として、F2Pに行き着いたわけです。

──F2Pとして立ち上げるときに、『鉄拳レボリューション』や『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』、『ソウルキャリバー・ロストソード』などは参考にされましたか?

河野 もちろんです。これまでのタイトルでの積み重ねがなければ、F2Pの『エースコンバット』は到底実現できなかったでしょうね。

井崎 F2Pの仕組みで僕が魅力的に感じたことがあります。それは、リリース後にどんどん改良していけることですね。新しいルールを期間限定で遊んでいただいたりとか、さまざまなチャレンジができますし。

河野 終わりのない開発期間が延々と続くとも言えますが(笑)。

──(笑)。βテストの手応えはいかがでしたか?

河野 ワールドワイドで1週間ずつ実施して、30万人弱のお客様にプレイしていただきました。満足度が85%を超えていますので、数字で見ると目標は十分に達成できたと言えます。手応えに関しては、僕よりも井崎のほうが実感していると思います。

井崎 原点回帰をひとつのテーマにしたことは、非常に多くの方々に受け入れていただきました。日米どちらのユーザーからも、好感触なメッセージをたくさんいただけたので、「この方向性は間違っていなかった」と確信しましたね。

──ユーザーからの要望は、どのようにフィードバックしているのでしょうか?

河野 お客様の生の声を聞いて、「この方は、本当は何を欲しているんだろう?」ということを発言から分析しつつ、必要なものを入れていく……といった作り方をしています。

井崎 一見、別々のことを言っているプレイヤーが、本質的には同じものを求めている場合もありますからね。

──なるほど。つぎに、オンライン協同戦役の流れや駆け引きなどの見どころをお聞かせください。

糸見功輔氏(以下、糸見) 協同戦役モードでは、陸海空の大群が大規模な戦いをくり広げている戦場へ、傭兵である8人のプレイヤーが乗り込んでいきます。この8人は4人ずつ、ふたつのチームに分かれて戦果を競い合います。一定時間戦場で戦い、総スコアの高いチームが勝者となって、報酬や機体の開発・強化に必要な設計図をより多く手に入れることができるんですよ。報酬で機体をカスタマイズしたら、その機体を駆ってさらに戦場へ挑んでいく……というサイクルになります。

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オンライン協同戦役では、何を意識して飛ぶ?

 
──スコアは、どのように稼ぐのでしょうか?

河野 基本的に、当然、敵を撃墜することがスコアにつながります。耐久力のある敵が出現したら仲間といっしょに集中攻撃したり、敵の数が多いときは手分けして殲滅を目指すといった感じで、チームワークと戦略を考えることが勝利への近道になりますね。

井崎 ライバルチームが狙っている敵機を横取りすることも可能です。“自由に飛行し、自由に戦える”、“誰もがエースになれる”という、『エースコンバット』としてのおもしろさにつながっているルールだと思っています。ほかにも、アクセントとして緊急ミッションを用意しています。

──その緊急ミッションの流れについてお聞かせください。

井崎 緊急ミッションはランダムで発生します。バリエーションは豊富で、内容の予測がつかないため、一見空中戦がメインとなるステージでも、「もし対地戦の緊急ミッションが発生したら……」と、あえてアタッカー機体で出撃するといった選択肢もあるわけです。

──なるほど。出撃中は、緊急ミッションが発生する前の合図などがあるのでしょうか?

井崎 出撃前に観察眼を光らせていると、「これって(緊急ミッションとして)戦艦が出現する予兆なのでは?」と、読み取れるようになってきますね。反対に、予想が裏目に出てスコアを落とすこともあると思いますが。ちなみに、参加しているプレイヤーが上級者で、敵をあっという間に撃墜していると緊急ミッションが早めに発生します。

河野 ただ、僕がプレイすると、なぜか毎回僕以外の機体が集中している地点で緊急ミッションが発生するんですよね(笑)。

──(笑)。通常の敵を撃墜し続けるより、緊急ミッションの達成を優先したほうがスコアにつながるのでしょうか?

井崎 そうですね。乱戦の中で敵を撃墜しつつ、予兆に気づいたらイチ早く緊急ミッションが発生しそうな場所を予測することも重要です。

──なるほど。ところで、味方機を狙っている敵機を撃墜したときに入る“レスキューボーナス”についてですが、ひとり先行し囮になり味方に助けてもらうという戦術は有効ですか?

井崎 有効ですね。ただ、ボーナスをあまりにも高く設定してしまうと、プレイスタイルを強制してしまうので、慎重にバランスを取っています。味方が狙われていても、目の前に別の敵機が背を見せていたら、そちらを倒したほうが結果的にスコアが高いかもしれませんね。

河野 うまく連携を取らないと、仲間も自分も囮になっていた……なんてこともあるかもしれませんよ。

──連携と言えば、本作でも方向キーで簡易チャットを送れるのでしょうか?

井崎 そうですね。ただ、これまでのシリーズ作では上下左右でサインを送っていましたが、本作では方向キーの左右のみを使用します。

河野 方向キーの上下を空けてある理由は、今後の拡張のためです。大型アップデートのタイミングで、“何か”が追加されるかもしれませんね。

──それ、めちゃめちゃ気になります(笑)。

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ストーンヘンジは世界に6基ある!?

 
──話は変わりますが、カラーリングや機体の改造は、どのレベルまで可能なのでしょうか?

糸見 デザイン変更はふたつありまして、ひとつは“スキン”と呼んでいる機体全体のデザインです。もうひとつは、機体につける“エンブレム”です。エンブレムは貼れる箇所がいくつかありますが、すべての箇所に貼ることもできますし、ワンポイントだけ貼るといったことも可能です。

──スキンの色は自由に変更できるのでしょうか?

糸見 パレット変更の機能は、収集する楽しみのため、あえて外しています。そのぶん、バリエーションは豊富に用意していますよ。また、期間限定でゲットできるスキンも検討中です。

河野 エンブレムは現時点で300種類以上ありますね。制作過程で大量に作り、大量のボツ案を闇に葬っています。

井崎 ちなみに、シリーズ作に登場したエンブレムはほぼ網羅しています。あと、機体の改造に関するお話ですと、特殊兵装は、種類がとても多いです。キャンペーンモードがメインだった過去作では似たような用途の特殊兵装を削っていましたが、本作では「ライバルより0.1秒でも早く敵を仕留めたい」という競争心が生まれますので、特殊兵装を細分化しました。

糸見 初心者には誘導弾などの使いやすい兵装、ベテランは連射の利く無誘導弾……といった具合に、いろいろな使い分けができると思いますよ。

──なるほど。今度は機体の話になりますが、謎の試作機“ADFX-????”は、『エースコンバット・ゼロ』に登場したアイツですか?

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▲謎の試作機“ADFX-????”。

 
河野 「どうせアイツだろ?」と思われる方が多いと思いますが、アレではないですね(笑)。

──カラーリングも、“片翼”ではなく黄色いですね。

糸見 実際の試験機で使われているカラーリングを参考にしています。残念ながら『エースコンバット04』の“黄色中隊”とは関係ありません(笑)。

井崎 ちなみにレーザーを撃っていますが、試験機なので突出して強いわけではありません。

河野 「じゃあ何なんだ!」ってなりそうですね。(笑)

──この機体だけでなく、B7Rやアヴァロンダムなどの追加マップも公開されましたが、世界設定的に過去作とのつながりはあるのでしょうか?

糸見 本作の舞台は、いままでシリーズ作を遊んでいただいた方にも、初めて遊ぶ方にも楽しんでいただけるよう、『エースコンバット6』までの架空の世界とも、『エースコンバットX2』や『エースコンバット アサルト・ホライゾン』などの現実世界とも異なる“第3の世界”を設定しました。最初のテーマは、もし映画版の『エースコンバット』を作るならどうなるか? というところからスタートしています。小説版の『エースコンバット イカロス・イン・ザ・スカイ』を執筆した山本平次郎先生にも協力していただきました。B7Rやアヴァロンダムも、地球上のどこかにある設定ですよ。

──『エースコンバット・ゼロ』でのアヴァロンダムは、終盤のステージでしたが、本作でも難度が高いステージになるのでしょうか?

糸見 そうですね。本作でも高難度のステージになります。

河野 僕がプレイしたときは、ダムに到達する手前で撃墜されました。

──ということは、ダムの手前の峡谷地帯もあると……?

糸見 ステージはフルリメイクなので、バッチリ楽しめますよ。

──かなり広大ですね。ちなみにダムの先には、地下施設への入り口が開いていることを期待していいのでしょうか?(笑)

糸見 開いているかもしれませんね(笑)。あと余談ですが、ストーンヘンジは“地球に落ちてくる隕石を迎撃する装置”としてリアルに考えた結果、本作の世界に6基存在しています。

──地球の自転を踏まえると、確かにそのくらい必要になりそうですね。最後に、ファンへひと言ずつお願いします。

井崎 『ACE ∞』は、お客様とともに成長していくタイトルだと考えています。サービス開始後は、御意見箱のようなものを用意する予定なので、プレイして感じたことはどんどん投稿してください。いただいたご意見は、よりよい形でフィードバックしていきますので、皆様よろしくお願いいたします。

糸見 キャンペーンモードと協同戦役モードは、ストーリー上も密接につながっている設定となっています。ぜひ、両方のモードをプレイして、『ACE ∞』の世界を堪能してください。

河野 ジェット戦闘機に乗り、誰もがエースパイロットになれるゲームは、世界で『エースコンバット』ただひとつです。これはスゴイことです。戦闘機好きの方はもちろん、そうでない方も、ぜひお友だちを誘って飛んでみてください。最終的には皆さんの“場”を作りたいですね。

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