【ファミキャリ!会社探訪(12)】サバイバルホラーの野心作、『サイコブレイク』を開発するTango Gameworksを訪問!_08

“ファミキャリ!会社探訪”第12回はTango Gameworks!

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナーの第12回は、Tango Gameworks。
 同社は、“サバイバルホラーの生みの親”である、日本を代表するゲームクリエイター・三上真司氏が設立した開発会社。現在は、ゼニマックスグループの一員として、ワールドワイドで発売予定の大作サバイバルホラーゲーム『サイコブレイク』を開発中だ。今回はディレクターを務める三上真司氏にお話を聞いた。


若くて優秀なクリエイターたちに活躍の場を

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--簡単に経歴からお願いします。
三上真司氏(以下、三上) カプコン在籍時にグループの子会社であるクローバースタジオに所属したり、実質フリーに近い感じで、プラチナゲームズと仕事をさせてもらいました。その後、2010年3月に完全に独立して、株式会社Tangoを作りました。その半年後の10月にゼニマックスグループの一員となり、名前もTango Gameworksに変更しました。
--Tangoを設立するきっかけは?
三上 僕の中では、日本は“ゲーム発祥の地”なのです。しかし、数年前から、海外に主導権が移ってしまいました。“日本はゲーム発祥の地”という思いを大事にしたいのがひとつ。プラスして、日本にいる多くの若くて優秀なクリエイターたちに、できるだけ多くのチャンスを与える受け皿のようなものが欲しいという考えからです。日本発のゲームを途絶えさせたくないなと。また、たとえばソーシャルゲームのように、日本だけに受け入れられるものではなく、ワールドワイドにアピールできるような“ジャパンメイド”のゲームを作っていきたい、と考えています。
--ゼニマックスグループに入った経緯は?
三上 ひと言でいえば、相性がいいということになりますが、ほかと比べて、クリエイティブに対する自由度が高かったからというか、クリエイターのことを尊重してくれる会社だと思います。
--現在の三上さんの仕事は?
三上 分かりやすくひと言で言うと、“現場監督”です。開発現場では、ゲームの開発ディレクターをやっていて、それから、ゼニマックス本社との報告や調整などです。

“ホラーテイストのありかた”にこだわった『サイコブレイク』

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--ワールドワイドで注目を集めている『サイコブレイク』について、教えてください。
三上 “見て怖い”のが映画だとすると、“プレイして怖い”のがこの『サイコブレイク』だと思います。ゲーム的にはクラシックスタイルで、古典的ではありますが、コアなゲーマーがプレイしても楽しめるし、ゲームをあまりプレイしない人向けには“カジュアルモード”という、難易度の低いモードも用意しました。かまえただけで、照準がピタッと合うので、ストーリーや世界観を楽しむのにも合っています。
--現状はどんな感じですか?(※取材日は、3月18日)
三上 ほぼ大詰めで、仕上げの作業中です。細かい調整やデバックだったり、製品化に向けての最終的なブラッシュアップだとか、そういった段階です。
--『サイコブレイク』は、Tango Gameworksとしての1作目になるわけですが、どのように開発を進められましたか?
三上 なるべく自由な雰囲気や環境で開発したかったので、ちょっと手綱を緩めていたら、最初はあまりうまくいきませんでした(笑)。各クリエイターの個性ややりかたをまとめるのに、最初は苦労しましたね。でも、それぞれのスタッフが持っている“あきらめない熱意”のおかげで、形になっていったと思います。
--開発規模もそれなりに大きいと思いますが、三上さんはいわゆるチームリーダーとのやり取りが中心なのですか?
三上 いや、僕はこれまでチームリーダーを置くスタイルを取ったことがないんですよ。チームリーダーは、みんなをまとめるのではなく、作ったもののクオリティーでリードすればいいというのが、僕の考えなんです。僕が担当者とじかに話したほうが、フィルターを通さないので、話が早いわけです。そういう意味では、僕なりの開発手法で面喰ったクリエイターがいたかもしれませんね(笑)。
--Tango Gameworksが作ったからこそ、『サイコブレイク』はこうなったという、魅力はどんなところですか?
三上 グラフィックの緻密さは、Tangoというか、日本人ならではかもしれませんね。細かいところまで手を抜かないし、人間の描写にもこだわりました。あとはホラーテイストのありかた、少し心霊現象的なテイスト。全体的にではなく、ホラーのエッセンスのひとつとして、敵のデザインなどは、和的な怖さがにじみ出ていますね。
--やりがいを感じた部分は?
三上 どんなゲームでも完成するまではたいへんなのですが、今回は会社として初めてとなるタイトルになるわけです。また、最初からワールドワイドで展開するタイトルですが、“怖い”という表現に関しては、ご期待に添えられると思います。ただ、“カジュアルモード”については悩んでいるんですよ。画面を見て興味を持ってくれた人が、実際にプレイしてどうなのか。ボス戦などで、「私、無理だから」と言ってコントローラを隣の人に渡してしまわないか、とかね。ホラー要素に、「死にたくない」、「ゲームオーバーになりたくない」という緊張感を混ぜ合わせて作っているので、自分でプレイしたほうが臨場感もあって、絶対におもしろいです。怖いし(笑)。“カジュアルモード”でもいいので、ぜひプレイしてもらって、「ゲームはおもしろいな」と感じてもらえればと思っています。

5年、10年後のゲーム業界を背負って立つ会社に

-現在のゲーム業界について、どんな印象をお持ちですか?
三上 「畑が広くなったな」というのが正直な感想です。僕たちが農家だとしたら、いままで米だけを作っていればよかったところに、野菜や果物など、いろいろなものを作れるようになってきた。それだけのことだと思います。自分たちが作りたいものを作る、という僕たちの姿勢は変わりません。
--転職を考えている人に向けて、なにかアドバイスをお願いします。
三上 重要なのは、やはりゲームに対して“愛”を持っていることですね。それから、ゲーム開発にはチームワークが大事です。自分の主張を、いかにチームの中で中和していくか、そうした気配りも必要です。Tango Gameworksの設立時には、技術重視でスタッフを集めましたから、いまは技術的には高い会社だと思います。今後は、人に負けないゲームへの情熱や愛を持っていること、さまざまな人がいるチームの中でうまくコミュニケーションを取り、自分の仕事を成果として結び付けられる人。技術も大事ですが、トータルでは人間がいちばん大事なのです。
--今後のビジョンについて教えてください。
三上 Tango Gameworksから、まだ表に出ていないような若いクリエイターが、世界がアッと驚くようなゲームを作る、それが理想ですね。いつか実現したいし、世界中から「この会社がなくなったら困る」と思われるような会社にしたい。
 “ゲーム愛”を持って、集団の中でうまく仕事ができる人、そして、欲を言えば技術もある人(笑)。僕たちは、5年、10年先の日本のゲーム業界を背負って立つようなクリエイター集団を目指しています。共感できる人は、ぜひウチを志望してください。

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●TangoGameworksってどんな会社?

 世界的なゲームクリエイターである三上真司氏が、カプコンから独立後の2010年3月に設立した株式会社Tangoが同年10月に、ベセスダ・ソフトワークスなどを有するZeniMax Mediaグループの一員に加わり、Tango Gameworksに。外資系グループの中のスタジオでありながら、国産のAAAタイトルの開発をしているモデルケースとして、世界でも注目を集めている。また、三上氏みずからがディレクターとして現場の指揮を執り、クリエイター目線でのゲーム開発にこだわっているスタイルも特徴。第一弾となるタイトル『サイコブレイク』(PS4、PS3、Xbox One、Xbox 360、PC/発売元:ベセスダ・ソフトワークス)。

<会社概要>
ゼニマックス・アジア株式会社 Tango Gameworks
●エグゼクティブプロデューサー:三上真司
●設立年月日:2010年10月28日 ●従業員数:非公開
●事業内容:家庭用ゲームソフトウェアの企画・開発・販売

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▲三上氏が統括する開発現場はスタッフが増えるにつれ、“レ”の字型のフロアいっぱいへと伸びていったそうだ。
▲社内からは、湾岸地域を一望できる。とくに、夜景はとてもキレイだとか。
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▲『サイコブレイク』は、『バイオハザード』シリーズの生みの親・三上氏が、“サバイバルホラー”を純粋に追求したというタイトル。