『妖怪ウォッチ』快進撃! ヒットメーカー・日野晃博氏が語る『妖怪ウォッチ』ブームの秘密と今後の野望!【インタビュー完全版】

『妖怪ウォッチ』プロジェクトの仕掛け人であるレベルファイブ代表取締役社長/CEOの日野晃博氏に、大ブレイクの秘密や、今後の展望などを語ってもらった。

●ブームの仕掛け人は、またしてもこの人!

 いま、『妖怪ウォッチ』関連コンテンツの人気が大爆発している。年明け以降、ゲームソフトはつねに売上ランキング上位に位置し続け、店頭では品薄状態に。テレビアニメは毎週高視聴率を記録し、玩具の人気に至っては、全国的に入手が極めて困難になるほどだ。一連の“妖怪ウォッチブーム”は一般メディアでも盛んに取り上げられており、すでに社会現象化しつつあると言っても過言ではない。

 昨年7月にゲームが発売されて以降、緩やかに人気を高めてきた『妖怪ウォッチ』が、年明け以降にいきなり人気急騰した理由とは……? 『妖怪ウォッチ』プロジェクトの仕掛け人であるレベルファイブ代表取締役社長/CEOの日野晃博氏に、大ブレイクの秘密や、今後の展望などを語ってもらった。

※本記事は週刊ファミ通5月1日号(2014年4月17日発売)に掲載された特集記事に加筆したものです。


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●「ヒットは確信していたものの、さすがにここまでとは予想外でした」

――『妖怪ウォッチ』のここまでの成果を、どのように評価されていますか?
日野 もともとクロスメディアタイトルとして、『イナズマイレブン』に匹敵するだけのものになってくれるとは思っていましたが、年明けからの人気ぶりは、予想を超えていますね。1月にテレビアニメが始まり、おもちゃが登場したことで、クロスメディアのコンテンツがすべてそろった状況になったわけですが、そこからの『妖怪ウォッチ』ブームの過熱ぶりには、僕たちも驚いています。

――ゲームの販売本数も65万本を超えましたが、その勢いは、衰えるどころか増している印象ですね。
日野 すでに多くの受注をいただいており、生産本数は100万本を超えています。近い将来、販売本数も確実に100万本を超える、というラインまできています。

――発売から半年以上経ってから、さらに勢いが増すというのは、一般的なロングセラー商品とも違いますし、こんな売れ方をするゲームは見たことがないですよ。
日野 1月~2月くらいには週販が3万本くらいだったのが、最近では4万~5万本ベースになって、日に日に上がっているんですよね。ある意味、異常事態だと思いますし、「ブームになるってこういうことだよね」というのを肌で感じています。


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▲アニメ放映開始の翌週にあたる2014年1月3週から顕著に勢いが上がり、3月には、なんと発売日直後に迫る5万本弱の販売本数を記録した週も。

――おもちゃの人気も、ものすごい勢いですね。
日野 おもちゃはバンダイさんに展開していただいていますが、当初の予想よりも大きく売れているものもあって……それどころか、実際には売り切れで買えない状況になっているので、本当ならそれ以上に売れるくらいの人気なんですよ。

――とくに妖怪メダルの人気ぶりが凄まじいとか。メダルと言えば、『仮面ライダーオーズ』のメダルも人気になりましたが、それ以上との声もあります。
日野 ええ、『オーズ』のメダルも大ヒットしましたよね。でも確かに、『妖怪ウォッチ』では、それを超える勢いでお客様からの支持をいただいているようですよ。

――やはりおもちゃの企画も、当初から想定されていたのですか?
日野 『ダンボール戦機』で、プラモデルとの連動効果の大きさを実感したので、『妖怪ウォッチ』でも、企画時からおもちゃ化を前提にして設定を作りました。身の回りに置いたり、身に付けたりできるアイテムというのは、感情移入してもらうためにも大事ですし、おもちゃ展開があることで、ブームを作るためのたくさんの協力者が生まれるんです。

――その協力者の筆頭は、おもちゃを販売しているバンダイですよね。バンダイとは、早い段階から協力して制作されていたのでしょうか?
日野 それはクロスメディアでは当然のことですね。僕が最初に数十ページの企画書を作った時点から、おもちゃの企画はありましたし、企画ができてから2ヵ月後には、おもちゃを作り始めていました。僕が最初に考えた時点から、ウォッチとメダルというのはありましたが、それを大辞典に入れる、といったアイデアは、バンダイさんと商品企画を進める中で生まれてきたものですね。

――やはり制作している段階から、手応えは感じておられたのですか?
日野 もちろんブレイクしてくれるとは信じていましたが、さすがにここまで、日本中の子どもたちが妖怪に熱中してくれて、グッズも即売り切れで、というところまでは予想しきれませんでしたね。


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▲DX妖怪ウォッチ

▲妖怪メダル

●『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』のような長寿番組にするために

――『妖怪ウォッチ』のクロスメディア展開としては、漫画、ゲーム、アニメと、スタート時期がかなり空いていたように思いますが、これは何か意図がおありだったのですか?


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日野 少しずつコンテンツが揃っていく、というのは決めていたことです。ただ、今回は事情もあって、ある程度時期が離れてしまいましたが、なるべくなら間隔は短いほうがいいだろうとは思います。でもコンテンツ自体がいいものであれば、ある程度間隔が空いたとしても浸透していくだろう、というのは確信していました。実際、アニメもおもちゃもない段階で、ゲームが30万本弱は売れていましたから、コンテンツの魅力は認めてもらえていたと思います。

――アニメが始まるまでのあいだには、多少の不安もあったりはしたのでしょうか?
日野 そうですね。もっとガツンといくつもりだったといいますか……30万本は十分いい数字ではあるのですが(笑)。若干、ヒットの度合いが想定よりも弱かったな、というのはありましたが、アニメとおもちゃが出てからが本格始動だとは思っていましたので、そこはグッと我慢、でしたね。

――そしてゲームの発売から半年経って時点で、さらなるブレイクを果たした要因については、どのように分析されていますか?
日野 やはり、アニメがひとつのキーになったのは間違いないですね。キャラクター性も含めて、企画からかなり工夫をしたものですし。

――アニメも毎週、高視聴率を記録していますよね。『妖怪ウォッチ』のアニメは、どんなところを重視して制作されているのでしょうか?
日野 “物語を見せる”番組ではなく、“コント番組”に、というのがコンセプトです。僕がシナリオのディレクションをしていますが、最初に指示をしたのは、起承転結があってきれいに完結する、きちんとしたストーリーはいらないんだということです。たとえば校門の前で事件が始まり、そのまま解決せずに校門の前で終わってもいい。笑えればいいんだ、ということですね。起承転結はなくてもいいけれど、オチがあればいいんです。

――そうした内容にしようと考えたのは、なぜなのですか?
日野 直前に作っていた『イナズマイレブン』で、ストーリーをずっと作っていくたいへんさを強く感じていたのが大きいですね。『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』のような長寿番組にするには、無限にお話を生み出していける形を作らないといけない。それじゃあどんな形で? と考えると、『ドラえもん』のように、毎回毎回、ひとつの状況からお話を発生させるようなもので、かつ、いつ見ても楽しいもの。続きものというより、一話完結のコントバラエティーにするのがいいだろう、と考えたんです。だから『妖怪ウォッチ』のアニメは、一見お話があるようで、どの話数から見ても楽しめるんです。


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――確かに、言われてみれば『ドラえもん』的な要素もあるように感じますね。
日野 ドラえもんの図式を使いつつも、キャラクター設定などはいま風にアレンジしています。たとえば現代では、のび太くんほどドジな子は、そうそういないんですよ。じゃあいまのいちばん残念な子はどんな子なのかと言うと、すべてのステータスがふつうで、特徴のない子が辛いんですよね。平均的な能力で、個性がない。それが現代の助けてあげたくなる主人公像なのだろうと思って、それを投影したのが主人公のケータくんなんです。だから、「ケータってふつうだよね」ってフミちゃんからも言われる(笑)。でもそういう、ダメでもなく、よくもなく、いつも「ふつうだね」と言われるのが、主人公像として、みんなが共感できるんです。

――ああ、なるほど。それはすごくわかります。
日野 ジャイアン的なポジションを考えても、いまは、あそこまで暴力ふるって人の物を取り上げたり、という感じではないだろうと。そこでクマは、もうちょっとフランクで、ガキ大将ポジションだけど、まわりからやいやい言われてシュンとなることもあるような、現代風のガキ大将なんです。だから、暴力をふるったり強引なことを言ったりするような脚本については、「それは行きすぎだよ」とディレクションしています。

――そうした配慮があるからこそ、子どもたちが共感できるのですね。
日野 いまの子どもたちが、「ああ、あるある!」と言えるものに、というのは強く意識しています。お話の題材としても、ゲーム、アニメチームに“子どもリサーチ”をやらせて、子どもの等身大の悩みを取り上げていきました。たとえば子どものころって、トイレの“大”に行くのがものすごく恥ずかしいんですよね。大に行くのをバラされるのは、最高の屈辱(笑)。そういったテーマでお話を作って、すべての小学生が共感できる“あるある”を組み込んでいく、という戦略はありました。


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――子どもたちに共感して、楽しんでもらえるものを……というのは、新しいゲームファンを獲得するうえでも、多くのゲームメーカーが取り組んでいる大きな課題だと思います。その点で、レベルファイブ作品は群を抜いた成果を挙げられていると思うのですが、なぜレベルファイブではそうした作品作りができるのでしょうか?
日野 僕は、子どもたちが「ここがおもしろいね」といってくれる部分って、ずっと昔からある、変わっていない基本的なおもしろさだと思うんです。そういう基本の部分だけは、忠実に動かさないように心がけています。

――毎回新しいものを作ってはいても、根っこのおもしろさは昔ながらのものである、というわけですね。
日野 大人の目線で「君たちが見たことのないものを見せてあげるよ」と奇をてらったようなものではダメですね。子どもたちは新しいものを見たがっているわけではないんです。なぜなら、経験の少ない彼らにとっては、見るものすべてが新しいものなのだから。

――確かに、子どものころは、世界が未知のものだらけでした。
日野 いまの子どもたちがわかるようにアレンジしてはいますが、つねに僕は、昔からの基本通りのおもしろさを見せているつもりです。『妖怪ウォッチ』のキャラクターデザインを設定するときにも、アニメチームから、何案も提案をもらったんですよ。候補の中には、いま風のアニメで使われているような先進的なキャラクターデザインもありました。でも僕はその中から、いちばん……何というか、言いかたは悪いかもしれませんが、“古い”デザインを選んだんです。スタッフからは、「これを描いたデザイナーさんは、ベテランで若くない方ですよ」と言われました(笑)。でも僕は、「いや、この古さでいいんです」と。絵の新しさより、親しみやすさのほうを重視したいから、いちばんスタンダードなデザインでいこう、と。

――なるほど。“古いデザイン”という見かた自体が、大人の感覚を基準にしたものなのですね。
日野 子どもたちに向けて作品を作るときには、大人のクールなものを押しつけるのはいけないな、と思うんです。自分が子どもだったとき、こんな絵をみたらどう思っただろう? と。そういうことをひとつひとつ、“自分の子どものころ”に聞いている感じなんです。


▲アニメのエンディングで採用され、いまや日本中の子どもたちがマネをして踊るようになっている「ようかい体操第一」。これも、“子どものころの自分”に聞きながら、見ていて恥ずかしくないもの、マネをしたくなるものを……と追求し続けた末に生まれたものだ。


――しかし、子どものころの感覚を強く持ち続けて、しっかり思い出してジャッジするというのは、かなり難しいことですね。それができることも、日野さんの大きな武器なのでしょうね。
日野 どうでしょうね(苦笑)。ただ僕と同じ考えかたは、月刊コロコロコミック編集部の方々も強く持っているんです。たとえばゲームのパッケージを最初に作ったときに、主人公のケータくんとフミちゃんが、肩を寄せ合っている、昔の“明星”などのアイドル雑誌のような構図の案があったんです。それを、僕がディレクションする前の段階で、たまたまコロコロさんの目に触れる機会があったのですが、そこでコロコロの人たちに言われたのが、「これは子どもの感覚でいうと恥ずかしいですよ」と。「男と女が背中合わせでかっこいいね」というのは高校生以上の感覚であって、小学生の子どもたちとしては、男が女の子と背中合わせになったり、顔を横に並べたりするなんていうのは、「うわ、お前、女にそんなに近づいちゃって!」みたいな感じなんですよね(笑)。

――ああ、ありましたね、「お前、女とベタベタしやがって恥ずかしい!」みたいな(笑)。
日野 そういう感覚があるということは、もちろん僕自身としても注意して、気づいていることではありますが、コロコロさんから教えてもらうこともあるんですよ。


●「最近はつねに、カバンの中に『妖怪ウォッチ』グッズを準備しています」

――レベルファイブでは、過去にいくつものクロスメディアタイトルを成功させていますが、『妖怪ウォッチ』ならではの工夫などはありますか?
日野 『妖怪ウォッチ』の場合は、ゲームでも主人公の性別を選べるようになっていたり、なるべくユーザー層を狭めないような工夫はしてます。アニメでも、子どもたちが見ても楽しいネタだけではなく、あえて大人にしかわからないネタを入れたりもしています。それによって、家族で見ていて、大人は笑うけれど、子どもにはわからなくて、「なんで笑うの?」というコミュニケーションが起きたりするんです。

――子どもを中心にしつつも、より幅広い層が見て楽しめるものに、と。
日野 子どもはジバニャンがカワイイから観て、大人はお話のシュールさに惹かれて観る、というように、いろいろなところに“ひっかかる”ポイントを作って、大人から幼児まで、みんながハマれるように心がけています。ここは、いままでの作品とは違うところですね。

――確かに、家族で観るのに最適、と評価する声が多いですよね。
日野 家族で愛されるコンテンツにするというイメージは当初からありました。親が子どもに見せたくなるアニメであってほしいし、作品をきっかけに、親子のあいだで会話ができるといいな、と。いま『妖怪ウォッチ』は、親子関係を円滑にするという点で、そうとう貢献していると思いますよ(笑)。

――編集部でも、子どもといっしょに見ている者が多いです。そしてみんな、おもちゃが買えなくて困っている、と話しています(笑)。
日野 ビジネスのつながりでいろいろな方が来社されますが、必ず第一声は、「子どもが大ファンなんですが、『妖怪ウォッチ』のグッズが手に入らないんです」と……つまり間接的に、「グッズありませんか?」と求められているのだと思いますが(笑)。それだけ、お子さんのいる家庭に関しては、『妖怪ウオッチ』の威力はすごいんだな、と肌で感じるレベルですね。ですので、最近はつねに、社長室やカバンの中に、『妖怪ウォッチ』グッズを準備しています(笑)。


●ジバニャンがCMタレントデビュー!?

――早くもゲーム第2弾を発表されたのには、本当に驚きました。まず、どんな作品になるのかを教えてください。(※関連記事:『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』が7月10日に発売決定 2バージョンでお目見え
日野 1作目の『妖怪ウォッチ』では、まだまだ完成形ではないというか、やり切れなかった部分もあったんです。それは、“子どもの世界のオープンワールドを作ろう”ということ。ひとつの街を遊び場にして、いろいろなことができるように、ということを目指して作ってきたのですが、『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』(以下、『2』)では、それが完成型になります。それをぜひ見ていただきたいと思っています。

――でも、まだまだ第1作目もすごい勢いで売れている中で、『2』が出てくるとなると、もったいないような気もしますが……?
日野 そうですね。この状況で「『2』を出します」と言われても、「えっ?」と思う方もいると思います。でも発売時期の設定も、一年前から決まっていたことですし、計画にのっとって多くの人が動いていますから、「予想以上にゲームが売れているから『2』はまだ出しません」というわけにはいきません。2作品を同時に売り出していく戦略に切り替えて、しっかり売っていくつもりです。

――『妖怪ウォッチ』プロジェクト全体としての、今後のビジョンを教えてください。
日野 まだお話しできないことも含めて、かなり先まで考えています。いまの課題は、つぎの“妖怪のスター”をどんなふうに作っていくか、といったことですね。

――“妖怪のスター”と言いますと?
日野 妖怪をタレントとして扱っていこうと考えているんです。まずは“ジバニャン”と“コマさん”というふたりのスターを売り出していますが、3人目のスターはどうしようかな、とか(笑)。妖怪たちが子どもたちの人気者になっていくと、いずれは芸能事務所のように、妖怪たちの人気を管理していかないといけなくなると考えています。

――妖怪がそこまでの存在になっていく、とお考えなのですね。
日野 はい。じつはいま、『妖怪ウォッチ』のグッズが、どこにいっても大人気で買えない状態なのに、なぜか“ウィスパー”のグッズだけが余っていることがあったりするんです(笑)。ウィスパーは、ゲームでもアニメでも、主人公のケータくんにイジられるというか、嫌われキャラみたいになっているのですが、小学生諸君も、そのケータのウィスパーへの評価に同調してしまっているんですね。「ウィスパーなんか買わないよね」、「買ったら負けだよな」みたいな(笑)。つまり、すでに子どもたちのあいだでも、「『妖怪ウォッチ』が好きだからなんでも欲しい」ではなく、だんだんと妖怪ひとりひとりの人格が認められてきて、好き嫌いがはっきり生まれてきているんです。僕らが準備をする前に、すでに子どもたちがタレントとして扱ってくれている、という現象が起きているんですよ。


Ph13_ジバニャン01 Ph07_おにび乱舞-2 イラストAさしかえ

▲ジバニャン

▲コマさん

▲ウィスパー

――具体的には、それをどのような方向に活かしていかれるのでしょうか?
日野 たとえば妖怪たちが宣伝してくれるCMなどですね。商品によっては、ふつうのタレントを起用するよりも、CMタレントにジバニャンを起用して宣伝したほうが効果的だったりすると思うんです。

――ジバニャンのグッズなどではなく、一般の商品の宣伝にジバニャンを起用してもらったり、ということですね?
日野 はい。そういう起用も許諾していって、妖怪をタレントとして世間に認めさせたいと考えています。ほかにも、ブランドを落とさない方向のアクションならば、積極的に広げていきたいですね。




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