バットモービルとゲームプレイの融合を心がけた

『バットマン:アーカム・ナイト』のゲームディレクターが明かす 新世代機向けに特化したからこそ実現できたクオリティー_01

 既報の通り、ワーナー エンターテイメント ジャパンより、プレイステーション4/Xbox One用ソフト『バットマン:アーカム・ナイト』が発表された(→記事はこちら)。本作は、おなじみ“ダークナイト”バットマンを主人公に据えた、オープンワールドを舞台にしたアクションゲーム。海外でも高い評価を得ている、Rocksteady Studios開発による『アーカム』シリーズ三部作の最終章にあたる。

 ファミ通.comでは、ロンドンにオフィスを構えるRocksteady Studiosで行われた『バットマン:アーカム・ナイト』のスタジオツアーに潜入。同作のプレゼンに参加する機会を得た。ここでは、その模様をお届けしよう。

 当日は、ゲームディレクターを務めるセフトン・ヒル氏が実際にデモプレイを披露しながら説明する……というスタイルで行われた。それは、「ゲームそのものに語ってもらおう」(ヒル氏)という意図によるもの。実際のところ、プレイステーション4/Xbox One向けにフォーカスして開発されている本作は、新世代機のポテンシャルを遺憾なく堪能できる1作。現状の市場規模などを鑑みて、いわゆる“縦マルチ”タイトルがまだまだ多い現状において、新世代機に特化した開発体制は、注目に値する。グラフィックだけを見ても“超絶”のひと言で、たとえば、バットマンの詳細なディテールひとつとってもため息がでるほどの美麗さだ。

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 さて、まずは『バットマン:アーカム・ナイト』のストーリーから紹介しよう。本作は、『バットマン:アーカム・シティ』の1年後から始まる。宿敵・ジョーカーは倒され、悪の勢力は沈静化。ゴッサム・シティの犯罪は史上最低のレベルになっている。とはいえ、ヴィラン(悪役)たちは、ただ手をこまねいていたわけではない。ゴッサム・シティを支配したければ、バットマンを倒さなければならないことに気づいたのだ。物語の冒頭では、スケアクロウがアーカム・アサイラムから戻ってきて、ゴッサム・シティに対して化学兵器を使った大規模な襲撃を実行に移すことに……。そして、その夜ヴィランたちはゴッサム・シティに一斉攻撃を仕掛けることにした。目的はただひとつ……バットマンを倒すことだ。

 「本作は、私たちが作ってきたゲームの中でも、もっとも大規模なゲームであることは間違いありませんが、それと同時にもっともパーソナルなゲームでもあります。本作のテーマはバットマンへの攻撃です。バットマン、そして彼が象徴するものを葬り去ろうとしているのです」(ヒル氏)

 ヒル氏がプレゼンにあたってまず強調したのが、舞台となるゴッサム・シティの壮大さ。オープンワールドを舞台とした本作において、ゴッサム・シティはまさに“裏の主役”とでも呼ぶべき存在だが、本作では街の規模は『バットマン:アーカム・シティ』の5倍! 新世代機ならではの機能を活かして、建物の描写などもより緻密になっている。

 ゴッサム・シティのスケールアップにともない見直されたのが、バットマンの動き。フィールドが広くなるのにあわせて、バットマンの動きもよりスムーズになっているのだ。バットマンの移動の基本は、高所から飛翔する“グライド”と、ワイヤーを駆使する“グラップリング”となるが、両アクションともに本作では洗練。“グライド”は飛行距離が伸び、“グラップリング”はさらに速く移動できるようになったのだ。さらに、“グラップリング”中のブーストやフリップ(宙返り)も可能になった。「移動時の爽快さもアップしました」とヒル氏。

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 また、バットマンの攻撃方法も豊富に。その一例が“フィアー・テイク・ダウン”で、敵に気付かれずに近づき、3人までなら同時にまとめて倒せるようになった。また、攻撃されている相手を持ち上げて別の敵に向かって投げ飛ばすことで、敵に2倍のダメージを与えるという新しいアクションも実装された。新世代機にともなって、バットマンのアクションは、より多彩になっているのだ。

 そして、『バットマン:アーカム・ナイト』最大の特徴とも言えるのが、バットモービルの登場。映画などではおなじみのバットモービルだが、『アーカム』シリーズに登場するのは本作が初。それだけ、舞台となるゴッサム・シティが、バットモービルを駆使するのに見合った広大さになったということなのだろう。当然デザインは、ゲームオリジナル(!)だ。

 「私たちは、バットモービルが登場するゲームを作りたいと思っていました。究極のクルマが登場するゲームが求められていると感じたので、かなりの時間をかけています。そしてまた、バットモービルがゲームプレイといかに融合するかについても試行錯誤しました。バットマンが必要なときに、いつでもバットモービルがスタンバイしていると感じてほしかったのです」(ヒル氏)

 こうコメントしたヒル氏は、「このゲームでもっとも格好よい動きで、私のお気に入りでもあります」として、ジャンプ中のバットモービルから抜けだして、クルマのスピードを利用して街の上空へと“グライド”、そしてダイブして降下し、再びバットモービルに乗り込むというデモが披露された。その一連の動きは、まさに「かっこいい!」と惚れ惚れするほど。バットモービルとバットマンのアクションが違和感なくつながっており、ヒル氏の“バットモービルとゲームプレイの融合”の意味が実感できた。

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 本作の物語では、ヴィランたちがバットマンに一斉攻撃を仕掛けるというのは前述の通りだが、デモでは、リドラーの謀略として、バットモービルで制限時間内にコースをクリアーしなければならない……というミッションが紹介された。本作にはさまざまなヴィランが登場するようだが、個々のヴィランにはそれぞれ興味深いストーリーがあるとのこと。「必ずしもメインのゲームとサブのミッションという区分けがあるわけではない」(ヒル氏)とのことで、『バットマン:アーカム・ナイト』では、バットマンとヴィランによる壮大なドラマが楽しめそうだ。

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▲バットマンをサポートするゴートン市警本部長。

 あと、登場キャラクターについても言及しておきたい。デモでは、ジェームズ・ゴートン市警本部長や“オラクル”など、おなじみのキャラクターが確認できたが(もちろん、『バットマン』には欠かせないヴィランも多数登場する!)、最後に謎のキャラクターが確認できた。その名は“アーカム・ナイト”。“アーカムの騎士”と名前を持つ彼の素性は一切不明。敵か味方かも判然としない。どうやら本作のカギを握る存在となりそうだが……。続報を待ちたい。

 冒頭でも触れたとおり、本作はあえて新世代機向けに振り切ったからこそ実現できた、高いクオリティーを持つゲームだ。それゆえにこそ、新世代機のポテンシャルを推し量るには、最高の1作と言えるだろう。2014年注目の1タイトルであることは間違いない。

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▲新キャラクターの“アーカム・ナイト”。その素性は一切不明だ。

(取材・文 編集部/F)